ソーシャルレンディングとp2pレンディング(個人間融資)の歴史

ソーシャルレンディングとは

高い期待利回りを誘因に、多くの個人投資家を惹きつける一方で、柔軟かつスピーディーな審査態勢をアピールポイントに、資金需要者の開拓も進む、新たな投資・資金調達スキーム、ソーシャルレンディング。
順調な市場規模拡大の反面、国内のソーシャルレンディング業界には未成熟な点も多く、一部の悪質なソーシャルレンディング事業者による不祥事や、行政処分を受けた事業者(及びその関連業者)を中心とした複数業者の組成ファンドにおける延滞発生等、懸念・トラブルも発生しています。

ソーシャルレンディングの特徴①【高い期待利回り】

ソーシャルレンディングファンドの実際の期待利回りは、個別のファンドにより千差万別ですが、

  • 無担保・無保証型、投資利回りを最優先した、アグレッシブタイプのファンドの場合で、10パーセント前後、
  • 不動産担保に第一順位抵当権を設定し、表面的な期待利回りよりも、ファンドとしての保全効能を重視したファンドの場合で、5パーセント前後、

という、他の投資商品と比較して、かなり高めの期待利回り設定が為されている点は、ソーシャルレンディング投資の特徴の一つといえます。

ソーシャルレンディングの特徴①【高い期待利回り】

東証マザーズ上場企業が運営するソーシャルレンディング「OwnersBook」のファンド例。第一順位抵当権案件(シニアローン)の場合でも、5%前後の高い利回りが期待されている。
引用元:OwnersBook(https://www.ownersbook.jp/project/index/all/1/1/)

高い利回りは、投資家にとっては魅力と映る反面、資金需要者にとっては、高利な資金調達は、経営を圧迫する危険性が指摘され得ます。
現に、高利回りを謳うファンドから資金調達した借り手企業において、ファンドへの元利金返済を遅延するケースが発生しており、投資家においても、留意を要する状況が発生しています。

ソーシャルレンディングの特徴①【高い期待利回り】ただし、延滞リスクがある。

2019年3月5日、延滞発生が報告された、クラウドリースのファンド「事業性ローンファンド51号」。同ファンドにおいては、年利換算10%という、極めて高い期待利回りが設定されていました。
引用元:クラウドリース(https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=2164)

ソーシャルレンディングの特徴②【借り手匿名化】

貸金業法規制の関係で、借り手事業者の具体的な商号等情報は、ソーシャルレンディング事業者から投資家に対して、開示されていません。
借り手事業者の匿名化に連動し、借り手事業者所有に係る担保物(不動産など)の具体的情報もまた、投資家に対して開示されておらず、このため投資家においては、

  • ファンドへの出資是非の判断にあたり、ファンドから資金を借り受ける事業者の具体的な情報を基にした、正確な判断が出来ない。
  • 借り手事業者の所有する不動産に担保権が設定される場合においても、当該不動産担保の評価額について、あくまでもソーシャルレンディング事業者の”言い値”を信頼するしかなく、当該不動産担保物評価額の妥当性について、自助努力によって検証する術(すべ)を持たない。

というデメリットがあります。

上掲事情を利用するようにして、「借り手企業が、ソーシャルレンディング事業者の社長の親族の会社だった」というケースや、「借り手において、事業の実態が、無かった」等と言うケースも発生しており、主に投資家保護の観点から、強く問題視されています。

ソーシャルレンディングの特徴②【借り手匿名化】

ソーシャルレンディング事業者から資金を借りる融資先企業の情報開示については、金融庁も検討を進めている、との報道もあります。
引用元:日本経済新聞(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31871260W8A610C1MM8000/)

p2pレンディング(個人間融資)とは

日本のソーシャルレンディングと類似している、とされるのが、欧米を中心に古くから隆興している、個人間融資(p2pレンディング)と呼ばれる仕組みです。

「p2p」とは、どういう意味か。

“p2p”は、”peer to peer”を略式表示したものであり、”peer to peer”を敢えて日本語訳するとすれば、「対等な者同士」という意味合いとなります。

従来型のレンディング(=融資)の場合、

  • 資金を貸し付ける、金融機関(=レンダー)と、
  • 資金を借り受ける、債務者(=ボロワー)の立場は、

はっきりと区分けされており、互いは異質(=対等ではない)な存在でした。

これに対し、p2pレンディング(=対等な者同士の融資)の場合、レンダーもボロワーも、ともに、一(いち)個人であり、かつ、その立場は、容易に入れ替わり得ます(=レンダーとして活動していた個人が、資金需要に応じて、ボロワーとして活動することもある)。

「p2p」とは、どういう意味か。

p2pという概念は、通信ネットワークに関し言及されることが多くあります。「サーバー」と「クライアント」が明朗に分離していた従来型ネットワークと違い、端末同士が対等立場で情報の要求・提供を行い、かつ、互いの立場が容易に入れ替わり得るのが、p2p型のネットワークモデル、といわれます。
画像引用元:Udemyメディア「P2P(ピアツーピア)とは?仕組みから活用例まで詳しく解説」https://udemy.benesse.co.jp/ai/p2p.html

p2pレンディング(個人間融資)におけるサービサーの役割

純粋なp2pレンディング(個人間融資)市場における、サービサーの役割は、主に下記2点となります。

  1. レンダーとボロワーのマッチング:
    インターネット通信技術を介し、大量のレンダーとボロワーをマッチングすることにより、p2pレンディング(個人間融資)のプラットフォームとして活動します。
    その収益源としては、レンダー及びボロワーからの手数料徴収や、会費収入が見込まれます。
  2. レンダーの債権回収フォロー:
    ボロワーからの元利金返済が遅延した場合、貸金業のプロ事業者ではない一般個人レンダーとしては、自力での債権回収が困難となります。
    このため、p2pレンディング(個人間融資)のプラットフォームサービサーにおいては、レンダーの債権回収プロセスへのサポートが、その主要な業務のひとつとして、期待されることとなります。

世界最古のp2pレンディング(個人間融資)サービサー、ZOPA(ゾーパ)を知る。

世界最古のp2pレンディング(個人間融資)サービサー、ZOPA(ゾーパ)

引用元:ZOPA(https://www.zopa.com/)

2005年、p2pレンディング(個人間融資)サービスを開始し、累積クライアント数(ボロワー)は数十万人に達しているという、世界最初のp2pレンディング(個人間融資)サービス、ZOPA(ゾーパ)。

情報引用元:ZOPA(https://www.zopa.com/)

p2pレンディング(個人間融資)を理解する上で、同社のサービスについて情報収集を行うことは、有意でしょう。

①p2pレンディング(個人間融資)サービサー【ZOPA(ゾーパ)】の歴史

  • 2004年:英国にて創業
  • 2005年:サービス公開。第1号ローンを組成。
  • 2014年:FCA(Financial Conduct Authority。英国の金融行動監視機構)によるp2pレンディング規制がスタート。
  • 2014年:機関投資家向けサービスをスタート。
  • 2016年:銀行設立構想を発表。
  • 2017年:スペイン・バルセロナに開発拠点を新設。
  • 2018年:銀行業免許を取得(※ただし、完全版ではなく、一部条件付きの物)


上掲情報引用元:ZOPA(https://www.zopa.com/about/our-story)

②各種ビジネスアワード受賞歴

  • Banking Tech Awards Winner 2018 Best Use of Emerging or Innovating Technology
    https://awards.bankingtech.com/categoriespt/judged-awards/
  • Moneywise Customer Service Awards Winner 2018 Most Trusted P2P Platform
    https://www.moneywise.co.uk/customer-service-awards/p2p/2018
  • British Bank Awards Winner 2018 Best Personal Loan Provider
    Best Alternative Finance Provider
    http://www.britishbankawards.co.uk/previous-winners
  • AltFi Awards Winner 2017 Consumer Platform of the Year
    http://www.altfi.com/awards/2017
  • その他多数


上掲情報引用元:ZOPA(https://www.zopa.com/about/awards)

p2pレンディング(個人間融資)サービサーzopaの、各種ビジネスアワード受賞歴

ZOPA社のホームページには、同社の歴代の各種ビジネスアワード受賞歴が、多量に掲載されています。
引用元:ZOPA(https://www.zopa.com/about/awards)

③同社が提供する投資商品

世界最古のp2pレンディング(個人間融資)サービサー、ZOPAの投資商品

引用元:ZOPA(https://www.zopa.com/lending)

↑ZOPA(ゾーパ)では、Zopa Core(※期待年利4.5パーセント)、Zopa Plus(※期待年利5.2パーセント。Zopa Coreのボロワーよりも格付けの低いボロワーに対しても貸し付けを行う)等の投資商品が提供されています。

  • 最低投資額は1,000ユーロから。
  • 他のレンダーに対して、貸付債権(Loan)を譲渡することも可能(※この場合、ZOPAは1パーセントの手数料を徴収)。
  • 元本保証なし。

上掲のようなポイントが明記されています。

上掲情報引用元:ZOPA(https://www.zopa.com/lending/rates)

④資金需要者にとってのp2pレンディング(個人間融資)サービサー「ZOPA(ゾーパ)」

世界最古のp2pレンディング(個人間融資)サービサー、ZOPA、借り手にとって

引用元:ZOPA(https://www.zopa.com/loans)

↑ZOPA(ゾーパ)の借り手向けページにおいては、ZOPAの融資商品について、下記のような説明が表記されています。

  • 承認済ローン総額:39億ユーロ以上
  • 年利:3.3パーセント~34.9パーセント
  • オンライン申し込み可能。
  • 1日300件以上のローンを承認している。
  • 繰上返済可能。
  • 資金使途については、カーローンやリフォーム費用など、幅広く対応可能。


上掲情報引用元:ZOPA(https://www.zopa.com/loans)

⑤同社の手数料構成

ZOPA(ゾーパ)のウェブサイト(https://www.zopa.com/about/how-zopa-works)によると、同社の徴収する手数料は下記のとおり。

  • 資金需要者から徴収:
    ①融資取組手数料(origination fee)
    ②ローン手数料(loan servicing fee)
    ※いずれも、貸付金利に含まれる、とのこと。
  • 投資家から徴収:
    投資家(レンダー)が、自身の有する債権を、他のレンダーへと譲渡・売却する際に、1パーセント相当の手数料を徴求。


上掲情報引用元:ZOPA(https://www.zopa.com/about/how-zopa-works)

ソーシャルレンディング≠p2pレンディング(個人間融資)?

日本のソーシャルレンディングは、厳密には、p2pレンディング(個人間融資)と、本質を異にする。

類似されていると称されることの少なくない、日本のソーシャルレンディングと、純粋な意味でのp2pレンディング(個人間融資)ですが、その実態は、複数の点で、異なります。

【相違点1】p2pレンディング(個人間融資)と違い、日本のソーシャルレンディングの場合、ボロワーは事業者(企業)。

今般の国内ソーシャルレンディング業界において、資金の借り手(ボロワー)は、原則として、法人(企業)であることがほとんどです。
一部のソーシャルレンディング事業者において、個人事業主へと融資するファンドが組成されているケースがありますが、これは少数派です。

本来のp2pレンディングでは、ボロワーはあくまでも、一般の生活者(個人)を想定していますから、この点は、国内ソーシャルレンディング業界と、純粋な意味でのp2pレンディング市場との、大きな相違点となります。

日本のソーシャルレンディングでは、厳密には、p2pレンディング(個人間融資)とは本質を異にする。

大手ソーシャルレンディン事業者「maneo」のファンド例。このように、今日の国内ソーシャルレンディング市場のおいて、資金の借り手は、事業者(企業)であるケースがほとんどです。
引用元:maneo(https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=6959)

【相違点2】レンダーは、厳密にいえば、投資家個人ではなく、ソーシャルレンディング事業者。

日本においては、貸金業を営む事業者は、貸金業登録事業者として、登録を受ける必要があります(貸金業法第三条第1項)。
このため、一般個人投資家が、レンダー(資金の貸し手)となることは、出来ません。
これらの事情を踏まえ、日本のソーシャルレンディング業界においては、

  • 第二種金融商品取引業の登録を受けたソーシャルレンディング事業者が、匿名組合を組成。
  • 一般個人投資家は、上掲の匿名組合に対して、”出資”(=貸付ではなく)を行う。
  • ソーシャルレンディング事業者は、別途、貸金業事業者の登録を有しているから、当該登録に基づき、第三者事業者に対して、レンディング(=資金融資)を行う。

上掲の仕組みが採用されています。

この点も、純粋な意味でのp2pレンディング(個人間融資)と、日本のソーシャルレンディングとの、大きな相違点の一つです。

【相違点2】レンダーは、厳密にいえば、投資家個人ではなく、ソーシャルレンディング事業者。

SBIソーシャルレンディングのビジネススキーム図。個人投資家は、厳密には「レンダー」ではなく、あくまでも、SBIソーシャルレンディングの組成するファンドへの「出資者」であり、実質的なレンダー(資金の貸し手)は、貸金業登録事業者である、SBIソーシャルレンディングであることが分かります。
引用元:SBIソーシャルレンディング(https://www.sbi-sociallending.jp/pages/aboutsl)※赤線四角過囲み線は当ラボ加筆。

日本のソーシャルレンディングが、p2pレンディング(個人間融資)へと昇華するために必要な物

①貸金業法改正

本記事でも述べました通り、本記事執筆本日現在、貸金業法の規制の関係で、貸金業の登録を行っていない一般個人投資家が、第三者に対して(業として)資金を融資し、利息収入を得ることは、許容されていません。
国内ソーシャルレンディングが、純粋な語意通りのp2pレンディング(個人間融資)へと転化するためには、まず、この点の規制緩和が必要となりましょう。

②スコアリング活用等による借り手情報の整備

金融・IT先進各国では、既に幅広く導入されている、個人の金融成績スコアリング、及びその利用ですが、日本においては、まだまだ、発展途上、というのが現状です。
ボロワーが一般個人となる場合、その与信管理においては、対企業レンディングの場合とは、全く異質なデータ・ノウハウが必要となります。
データの適正な取り扱い方法の確立を含め、大幅な環境整備が必要な分野でしょうが、金融情報を幅広く収集する家計簿アプリが広く普及するなど、データ収集・活用の下地は、整いつつあります。

日本のソーシャルレンディングが、p2pレンディング(個人間融資)へと昇華するために必要な物

みずほ銀行とソフトバンクが共同出資し設立された、J.Score(ジェイスコア)。AIによる金融スコアリングサービスを提供しているほか、スコアリング結果に基づいた独自金利でのレンディングサービスも実施されています。
引用元:J.Score(https://www.jscore.co.jp/)

③借り手保護・投資家保護の両立

p2pレンディング(個人間融資)においては、透明性の高い市場運用、プラットフォーマー破綻時の投資家救済スキームの確立など、「投資家保護」の態勢確立が必須です。
ただし、それと同時に、「借り手保護」についても、当然、厳正・適正に運用されるべきです。

金融スコアリングに基づいた各種与信上の成績(個人情報)の管理、及び必要に応じての匿名化は勿論のこと、万一の期失(期限の利益喪失)発生時に、レンダーとボロワーとの間の直接的・物理的な接触を防ぎ、プラットフォーマー(金銭消費貸借契約締結時のプラットフォーマーが破綻している場合は、約定情報を引き継いだ後任プラットフォーマー)が、いかに公正かつ穏当な支払い・債権回収を後押し・サポートしていくか、という点が、平和裏なp2pレンディング(個人間融資)市場運行に向けては、重要なポイントとなります。
当然、そうした環境の整備を、いかに、プラットフォーマー事業者に対し、関連法規整備によって、有意に義務付けていくか、という点において、監督官庁(金融庁など)の運営手腕にも、大きな期待が寄せられるところとなるでしょう。

まとめ

本記事におきましては、ソーシャルレンディングと並び称されることの多い、p2pレンディング(個人間融資)の特徴、及び、同サービスモデルの草分け的存在である、英・ZOPA社のサービス紹介を行ったうえで、本日の国内ソーシャルレンディングと、純粋な意味でのp2pレンディング(個人間融資)との間の相違点などについて、検証を行いました。
少しでも、ご参考と為さって頂ける内容と出来たのであれば、幸甚です。

その他、当ラボサイトに掲載中の、「ソーシャルレンディング業界Q&A・豆知識」の全コンテンツは、こちらのカテゴリーページからご覧下さい。

ソーシャルレンディング・ラボ【ソーシャルレンディング業界Q&A・豆知識】コンテンツ一覧

投資家、資金需要者、双方から、高い注目を集めている、ソーシャルレンディング。しかしながら、当ラボの私的見解と致しましては、業界にまだ未成熟の部分も多く、いくつかの「危険会社」の存在も気にかかります。ソーシャルレンディング投資開始にあたっては、こちらの過去記事も、是非、ご参照下さい。

ソーシャルレンディング・ラボの考える、【ソーシャルレンディング危険会社ランキング】はこちら

それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会いいたしましょう。

※本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ソーシャルレンディングファンド等)への投資勧誘等を目的としたものでは、ありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設等、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。
また、英国ZOPA社の関連情報につきましては、同社英語サイト(https://www.zopa.com/)の内容を参照させて頂きました。
日本語訳については、誤訳の無いよう、注意を払っておりますが、正確な一次情報については、必ず、英国ZOPA社のホームページ(https://www.zopa.com/)をご参照下さいますよう、お願い致します。

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