FIREが「羨ましい」のは事実だろうか|羨望の陰にある、FIRE達成者ならではの苦悩を紐解く

「羨ましい」と話題のFIRE。その仕組みとは

FIREは、「Financial Independence, Retire Early」の略。
できるだけ早期に、会社からの経済的な独立を果たして、早期退職をし、人が羨むような、楽しいセカンドライフを始めよう、というムーブメントのことを指します。

人が羨むFIRE達成までのステップとは

まずは、目指すべきFIREスタイルをしっかりと選び抜く

日本ではあまり知られていませんが、FIREムーブメント発祥の地であるアメリカでは、目下FIREには、以下の4つの種類があると言われています。

  • ファットFIRE:
    潤沢な資金を背景に、FIRE達成後も生活水準を落とすことなく、人が羨ましいと感じるような、悠々自適のセカンドライフを楽しもう、というFIREスタイル。理想的なFIREスタイルといえますが、必要な資金元本が大きく、実際に実現できるのは、一部の富裕層に限られます。
  • リーンFIRE:
    FIRE達成後の生活に必要な資金をできるだけ切り詰めることで、前述のファットFIREほどには資金量を蓄えずとも、より早期に、会社からの早期退職を成し遂げよう、というFIREスタイル。FIRE達成後も、ミニマリスト並みの倹約生活の継続が必要となります。
  • バリスタFIRE:
    FIRE後も、簡単なアルバイト作業や、自分の経験を生かした個人事業などには取り組み続け、FIRE後の生活費を補填していこう、というFIREスタイル。日本では「サイドFIRE」と呼ばれていることもあります。
  • コーストFIRE:
    フルリタイアに必要な資金量をしっかりと計算し、無理のない資産運用を続けていけば、その目標額に現実的に達すると見込まれるだけの、投資「元本」を、まずはしっかりと蓄え終えた段階のことを示すFIRE。

人から羨ましいと思われるようなFIREを実現するためには、上記したような4つのFIREスタイルの中から、その人自身のライフスタイルや収入量、生活水準等に見合ったFIREスタイルをしっかりと見極め、選び抜いておく必要があります。


参考:
FIREは、実は全部で4種類?|ファットFIRE、リーンFIRE、バリスタFIRE、コーストFIRE|それぞれの特色・注意点を徹底解説

FIRE達成ルートのシミュレーション

FIRE達成ルートのシミュレーション
FIRE達成に向けては、自身のFIRE前後の生活、及び必要な資金量等に関して、綿密な事前シミュレーションが肝要となります。
※画像はイメージです。

目指すべきFIREスタイルがある程度固まったら、今度は、以下のような点に関するシミュレーションを行い、実際にFIREに向かって踏み出します。

  • 自分自身のFIRE後の生活には、毎月いくら程度の支出が必要なのか
  • 老後に年金を受け取り開始するまでの間、毎月の家計の赤字は、どの程度となりそうなのか
  • 家計のキャッシュフロー上の赤字を補うためには、どの程度の運用益(資産運用からの配当金や分配金など)を獲得していくことが必要なのか
  • 過度なリスクを取りすぎない範囲で資産運用を行う場合、期待できる利回りがどの程度なのか
  • 上記の利回りで、生活費を補填すべく投資収益を得ていく場合、必要な資金元本はどの程度なのか
  • その資金元本をしっかりと貯蓄するためには、毎月いくらずつ貯金に回し、どの程度の年月をかける必要があるのか
  • 自分はいつ頃から、どの程度の金額の退職金を受け取ることができそうなのか。早期退職に伴い、退職金はどの程度減額されてしまいそうなのか
  • 早期退職により厚生年金の加入期間が短くなるが、自分は、何歳ごろから、いくら程度の老齢年金を受け取ることができそうなのか

上記したような点に関する、綿密なシミュレーションを省略して、勢いだけでFIREに踏み切る事は、極めて危険です。

必要に応じて、ファイナンシャルプランナーや税理士、公認会計士等の、いわゆる「お金のプロ」のアドバイスも仰ぎながら、できるだけ念入りに、事前シミュレーションを実施することが必要です。


参考:
FIRE(早期退職)実現のためには、結局、いくら必要なのか|毎月の貯金額も検討

FIRE達成に必要な資金を、稼ぐ

必要なシミュレーションを終えたら、今度は、実際のFIRE達成に向けて、まずは現在の自分の本業で、しっかりと稼いでいくことを始める必要があります。

現在の勤務先に、昇進や昇給、昇格等に関する内部規定がある場合、その規定文章をよく読み込んで、同期入社した同僚たちよりも、早期に昇給、昇格を勝ち取れるよう、努力する必要があります。

また、現在の勤務先の企業規模等に応じて、これ以上の昇給等が難しいと判断した場合は、ある程度ドライに事態を割り切り、転職活動なども進める必要があります。

さらに、本業でできるだけ所得を向上させていくのと合わせて、本業が終わった後の空き時間を活用するなどして、副業にも積極的に取り組んでいく必要があります。

昨今では、クラウドワークスやランサーズなど、インターネットを用いたクラウドソーシングサービスを利用して、自分の特技を活かして取り組むことのできる副業も多く存在します。

現在の勤務先の、副業に関する社内規程等をよく把握した上で、できる限り、自分の1日あたりの所得を最大化していくことが重要です。

FIREのための必要元本を貯める

本業や副業などを通して、どれだけ所得を大きくしたとしても、それに応じて支出もズルズルと膨らんでしまっていては、人が羨むようなFIRE生活に入る事は、なかなか困難です。

1日あたりの稼ぎを最大化していくのと合わせて、月々の生活に必要な支出をできるだけ切り詰めて、毎月の所得に対する貯金の額、すなわち、「貯蓄率」を、可能な限り早期に高めていく必要があります。

人によっては、生活費(住居費や食費等)を切り詰めるために、日本よりも物価水準の低い国への、海外移住なども、併せて検討することがあります。

FIREのために、資金を「殖やす」

稼ぎ、そして、貯める、と言うだけでは、FIRE達成に必要な資金量は、なかなか蓄積されません。

FIRE達成を1日でも早く引き寄せるためには、貯めた資金に関して、「お金にも働いてもらう」と言う考え方の下、資産運用に回していく必要があります。

FIREを目指す会社員が、積極的に取り組んでいる資産運用手法の1つには、インデックス投資などが挙げられます。

「FIRE=羨ましい」は本当か。FIRE達成者が抱える苦悩とは

FIRE達成後も、極度の倹約生活は続く

意外と意識されていないことですが、FIRE達成前の倹約生活は、FIRE達成後も続くこととなります。

FIRE達成前の倹約生活に関しては、FIRE達成と言う大きな目標があればこそ、自分を律し、ときには家族一丸となって、真摯に取り組むこともできましょう。

しかしながら、FIREを達成する年齢によっては、FIRE達成前の節約生活よりも、FIRE達成後の倹約生活の方が、長く、そして厳しいものとなる可能性もあります。

端から見れば、羨ましい、とも思えるようなFIRE生活に見えても、その実態は、極めて経済的にシビアな、ゆとりのないものとなってしまうリスクも十分にあります。

誰もが羨む「ファットFIRE」を達成可能なのは、ほんの一握りの富裕層に過ぎない

誰もが羨む「ファットFIRE」を達成可能なのは、ほんの一握りの富裕層に過ぎない
皆が羨む、悠々自適のセカンドライフ。しかし、そんなFIREを実現できるのは、一部の富裕層に限られる、との指摘もあります。
※画像はイメージです。

FIREと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、潤沢な資産を築きあげて、会社を早期退職し、何の経済的な心配もなく、悠々自適のセカンドライフを満喫する、そんな「成功者」の羨ましいばかりの生き様でしょう。

しかしながら、上記したようなFIREスタイルは、複数あるFIREの種類のうち、「ファットFIRE」と呼ばれるものであり、FIREムーブメント発祥の地であるアメリカでも、このファットFIREを実現できるのは、FIRE希望者全体のうち、ほんの一握りであると言われています。

実際問題として、ファットFIREを実現できるのは、各種のスポーツ界でスーパースターと言われるような選手や、起業したビジネスを上場企業等の大企業に極めて高値で売却することに成功したビジネスマンなど、ごく一部の富裕層に限定されます。

誰もが羨む、夢のようなセカンドライフを手にできるのは、大勢のFIRE達成者の中でも、ほんの一部に過ぎない、というのが現実なのです。


参考:
FIREはなぜ「難しい」のか|難しいはずのFIREを少し簡単にしてくれる、ちょっとしたコツとは

羨ましいどころではない?FIRE後最大の恐怖は、「バブル崩壊」

FIREを達成すると、その後は金銭的な悩みからも解放される、と誤解されていることが多くありますが、現実はそこまで羨ましいものではありません。

特に、FIREを達成した人が、その後、最も恐れているのは、「FIRE後のバブル崩壊」であると言われています。

実際に、FIRE後にバブル崩壊が起こると、生活費として定額で資金を引き出している場合、株安に伴い、多量のファンド(の持分)を売却しなくてはならなくなります。

定期収入が無いため、安値で投資信託を取得するチャンス、と考えることも出来ません。

また、バブル崩壊後の不況は、場合によっては十数年以上に及ぶこともある、とされています。

こうした事情を鑑みれば、理想としては、早期退職に伴って定期収入がなくなり次第、全てのリスクを放棄し、投資市場から撤退したいわけですが、余程の元本が無い限り、ある程度リスクを取って運用継続しないと、年金収入だけでは、生活を賄っていくことは不可能です。

このため、市場に資金を置き続けることになるわけです。

FIRE達成後の、大規模な経済変動に、ビクビクと覚え続けるような毎日。
そんな日々を、心から羨ましいと感じることができる人は、どれだけいるのでしょうか。


参考:
FIREのリスクとは|早期退職がもたらす思わぬリスクを徹底検証

インフレーションにおびえる、FIRE後の数十年

会社員が毎月受け取る給与は、様々な所得の中でも、物価の高騰等の変化に対して、ある程度連動しやすいものであると言われています。

一方で、FIREによって早期退職をしてしまうと、それまで受け取っていた給与のような、インフレーションに連動しやすい所得が、途絶えてしまうこととなります。

このため、FIREを達成した後に、急激なインフレーションが起こるとは、その人の相対的な購買力は、大きく低下してしまうこととなります。

平均以下の支給額しか期待できない年金

日本の年金制度は、「国民年金」と「厚生年金」との、2階建てで構成されています。

このうち、厚生年金の受取額は、

  • 厚生年金への加入期間の長さと、
  • 厚生年金加入期間中に支払ってきた、年金保険料の大小によって、

変化することとなります。

会社から早期退職すると、当然のことながら、厚生年金の加入期間が短縮されますので、老後の受け取り年金においても、厚生年金部分が、定年退職者等と比較すると、大きく減額されることとなります。

早期にセカンドライフに入り、皆から羨ましいと言われる存在だったはずの人が、実際に同期の人達が定年退職を済ませた頃には、悠々自適の年金生活を送る元同僚たちのことを、逆に、「羨ましい」と眺めるようになるのも、不思議なことではありません。

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