ソーシャルレンディングとビットコイン

ソーシャルレンディングとは

銀行預金等と比し、高い期待利回りが呈示されているとして、個人投資家を中心に、広く注目を集めている、ソーシャルレンディング。
企業等の資金需要者からも、「銀行等従来型金融機関と比し、スピーディーかつ柔軟な融資審査を期待できる」等として、関心を集めつつあります。

順調な市場規模拡大の一方で、一部のソーシャルレンディング事業者が、不適切な管理・運営により、監督官庁から行政処分を受ける、という事態も、複数発生。
また、行政処分を受けたソーシャルレンディング事業者を中心に、借り手企業からソーシャルレンディング業者への元利金返済に延滞が生じるケースも確認されており、投資家保護態勢の強化が急務とされています。

ソーシャルレンディングの仕組み

ソーシャルレンディングの基本的な構図・フローとしては、下記の通りです。

  1. 第二種金融商品取引業の登録事業者であるソーシャルレンディング業者が、ファンド(匿名組合)を組成。自身のホームページ等において、ファンド情報を公開し、投資家を勧誘。
  2. 投資家が、ファンドに対し、出資を行う(=匿名組合出資を行い、匿名組合員となる)。
  3. ソーシャルレンディング業者は、貸金業の登録事業者でもあるため(※)、募った資金を、別の借り手企業に対し、融資する。
  4. 借り手企業が、ソーシャルレンディング業者に対して、元利金を返済。
  5. ソーシャルレンディング業者としては、借り手企業から収受した返済元利金を原資に、投資家(=匿名組合員)への利益分配を行う。

(※)ソーシャルレンディング業者の中には、第二種金融商品取引業を司る法人と、貸金業を司る法人とを、別法人とし、2社態勢にてソーシャルレンディングサービスを提供しているケースもあります。

ソーシャルレンディング活用のメリット

投資家にとってのメリット

  • ソーシャルレンディング業者の組成・公開するファンドにおいては、銀行定期預金等と比し、高い期待利回りが呈示されている。
  • 各ファンドには、最低1万円程度の少額から投資を行うことが出来る。
  • 投資にまつわる諸手続きはオンラインで完結し、簡便である。
  • 上場企業に対して融資を行うファンドや、借り手企業への融資にあたり、借り手の保有する不動産へと担保設定を行うファンド(≒不動産担保付きファンド)も募集されている。
  • 先着方式による募集のみならず、抽選方式による募集も併用しているソーシャルレンディング事業者がある(=投資家としては、仮に、募集開始時刻に間に合わなくとも、その後、募集終了期限までの間に、抽選方式を済ませておけばよい)。
  • 借り手企業から収受した利息金を、毎月、投資家に対して分配しているソーシャルレンディング事業者も存在する。
  • 家計簿管理アプリ大手「マネーフォワード」等の、自動連携機能に対応している事業者もある(=資産の一元管理が可能)。
  • 法人名義での口座開設や、親権者の監督に基づく、未成年者口座の開設についても、受け付けてるソーシャルレンディング事業者がある(=特に、法人名義口座の活用は、高所得者にとっては税務上のメリットが大きい)。
  • 匿名組合型とすることによって、投資家の「有限責任性」が確保されている(商法第536条による)。
  • 大企業から出資を受けている企業や、上場企業の子会社が、ソーシャルレンディング事業を展開しているケースもある。
  • ロボアドバイザー等を活用したインデックス投資と異なり、「いつ頃までに、どの程度の利益を収受し得るか」が、あらかじめ約定されている。
  • 実際の貸付業務(回収業務等を含む)は、匿名組合の営業者であるソーシャルレンディング事業者が執行するため、投資家においては、運用期間中、ファンドの実務にタッチする必要が無い(=逆に言えば、投資家は、匿名組合の実務に関与する権利を持たない)。
  • マイクロファイナンス機関向けの融資案件等、社会的インパクト(投資の経済性と、社会的な意義との両立を目指す)を重視したプロジェクトに対しても、投資が行える。
  • ソーシャルレンディング・ファンドへの出資持分には取引市場が無く、当然、(需給の変動に基づく)「値動き」がないため、個別株式投資のように、日々の値上がり・値下がりに、一喜一憂する必要が無い。

借り手企業にとってのメリット

  • ソーシャルレンディング業者による融資審査においては、銀行等従来型金融機関と比し、スピーディー、かつ、柔軟な融資審査を期待できるとされている(=創業から間もない企業や、直近数期において赤字決算が継続しているような企業でも、貸付条件によっては、融資を受けられる場合がある)。
  • 銀行よりも高めの担保掛け目を期待できる場合がある(=同じ担保物でも、ソーシャルレンディング業者からは、銀行よりも多めの資金を借り受けることが出来る場合がある)。
  • 借り入れ元本については、融資期間中の分割返済を求められず、満期の一括返済を許容される場合がある。
  • 「資金使途自由」の資金調達が行える場合がある。
  • 銀行からすでにシニア・ローンを借りていたとしても、同一の担保不動産で、メザニン・ローンを調達できる場合がある。
  • 「物上保証可」(=担保物となる不動産の所有者は、借り手企業本人でなくとも構わない)、としているソーシャルレンディング事業者もある。
  • 銀行等の一般的金融機関が、「審査のための人的コストに見合わない」として消極的な、「短期ローン」にも、ソーシャルレンディング事業者ならば、積極的に応じてくれることがある。
  • ソーシャルレンディング事業者を通じたファンド募集によって、自社のサービス・ブランドに関して、全国の個人投資家向けに、認知度向上を図ることが出来る場合がある。

ソーシャルレンディング事業者にとってのメリット

  • 自己資金ではなく、投資家から募った資金を原資に、新たな融資プロジェクトに取り組める。このため、自己資金100パーセントで融資する場合と比較して、自身のリスクを限定したうえで、ハイリスク・ハイリターンな融資案件にも、積極的にコミットできるようになる。
  • 匿名組合型を採用することにより、投資家の反対表明を危惧することなく、自身の裁量で、ファンド運営を行うことが出来る。
  • 自社のグループ企業を借り手とするファンドを組成すれば、自社グループにとって、新たな資金調達チャネルを獲得できることと同義。
  • 従来型の貸金業界では希薄であった、「テック感」を付帯することにより、自社のバリュエーションを高めることが出来る場合がある。

ソーシャルレンディングのデメリット

投資家にとってのデメリット

  • 匿名組合契約において、ソーシャルレンディング業者(営業者)は、投資家に対し、元本保証を行わない。このため、投資家においては、元本棄損リスクを負う必要がある。
  • 匿名組合契約期間中の、途中解約は、認められない(=ファンドの運用期間中は、資金を返してもらうことが出来ない)。また、出資持分を換金するための取引市場(セカンダリ・マーケット)が整備されていない。
  • 匿名組合型であるため、投資家の出資した資金は、営業者の財産として取り扱われることとなる。このため、仮にソーシャルレンディング業者が破綻等した場合、出資している資金や、ソーシャルレンディング業者の預託金口座に預け入れている資金も、ソーシャルレンディング事業者の財産として破産財団に組み入れられ、その後の破産手続きの中で、棄損するリスクがある。
  • 融資先の属性が良くないケースがある(≒銀行等の一般的金融機関から低金利で融資を受けることが出来ない企業が、ソーシャルレンディング事業者から高金利で資金調達を行う、という側面がある)。
  • 匿名組合スキームを用いた、第二種金融商品取引業分野の取引であるため、日本投資者保護基金の補償対象とはならない。
  • ロボアドバイザー投資等では一般的な、積立投資機能や、分配金自動再投資機能などが提供されていない。また、特定口座も利用できない。
  • (金融庁の指定銘柄しか投資できない、)つみたてNISAはもとより、一般NISA枠を利用した投資も行えない。
  • 借り手企業が、ソーシャルレンディング事業者への元利金返済を遅延させた場合、ソーシャルレンディング事業者から投資家への分配・償還にも、遅れが生じてしまうこととなる。
  • 不動産クラウドファンディングで利用されている「優先劣後スキーム」のような、投資家の出資元本を保護するためのスキームが提供されていない。
  • 貸金業法の求める「借り手保護」の観点から、借り手企業の具体的な商号などが、投資家に対して非開示(匿名化)とされているケースもある。
  • 匿名組合の特質として、投資家は、仮に、ソーシャルレンディング事業者(組合の営業者)の事業運営に対して不満があったとしても、その不満を実際に反映させる権利(事業への参与権)を持たない。

借り手企業にとってのデメリット

  • ソーシャルレンディング業者からの借り入れ金利は、銀行等一般的金融機関からの借り入れ金利と比し、高利であることが多い。
  • ソーシャルレンディング業者が行政処分等を受けた場合、その後の借り換えが不調となる可能性がある。
  • ノンバンク型の貸金業者(=ソーシャルレンディング事業者)からの借り入れ履歴の存在が、その後の、銀行等の与信・審査において、一定の影響を及ぼす可能性がある。
  • 借り手匿名化解除に対応済のソーシャルレンディング事業者から融資を受ける場合、融資条件や金額、といった情報が、投資家に向けてオンラインで開示される可能性がある。

ソーシャルレンディング事業者にとってのデメリット

  • ファンド出資の中途解約を「不可」とする場合、基本的には、短期の資金調達しか行えない(=投資家が、資金拘束を忌避し、短期運用ファンドを志向するため、)。逆に、出資の中途解約を「可」としてしまうと、経済変動等に応じて、多量の投資家から、一斉に、解約申請が殺到してしまうリスクがある。
  • 自己資金100パーセントで融資を行う場合と比較して、融資プロジェクトからの(自社の)利益高が小さい。
  • 貸金業の登録や、第二種金融商品取引業の登録を取得するためには、許可取得申請コストの負担が必要となる。その他、必要なシステム・サービス開発のためには、一定の初期投資が必要となる。
  • 貸金業法の要請する「借り手保護」と、金融商品取引法の求める「投資家保護」の両立という、難しい舵取りを迫られることとなる。

参考:
【2021年9月最新版】ソーシャルレンディングおすすめ10社&危ない3社比較ランキング【投資初心者必見】

ビットコインとは

世界最大級の仮想通貨システムとして知られる、ビットコイン。
その概要、及び、ビットコイン活用のメリット・デメリットを概説致します。

ビットコインの概要

ビットコインは、サトシ・ナカモトを名乗る人物によって投稿された論文の内容に基づき、2009年にその運用が開始された、世界最大級の、仮想通貨システムです。
ビットコインシステムは、ピア・ツー・ピア型のシステムネットワークによって管理されており、ビットコインの譲渡・移転等取引(=トランザクション)は、従来型金融機関(銀行等)の関与・仲介を得ることなく、あくまでも、ユーザー同士の間で、直接的に行われます。
トランザクションの正当性については、ビットコインネットワークに参加しているノード(パソコン等の端末)によってチェック・検証され、正当と認められたものについては、「ブロックチェーン」と呼ばれる、分散型台帳へと記録されていく仕組みとなっています。
トランザクション処理作業(≒マイニング作業)に対する報酬として、ビットコインは新規発行され、マイニング報酬を目的とする大手企業のマイニング事業開始等も、一時期、大きな話題となりました。

ビットコイン活用のメリット

ビットコイン活用のメリットはいくつかありますが、そのうち、代表的な物としては、下記数点があります。

送金手数料が安い。

銀行等仲介機関に対して支払う手数料が無い分、ビットコインの送金手数料は、他の一般通貨と比べると、廉価であるとされています。
これは、個人間のマイクロペイメント(少額支払い・送金)においては、特に大きなメリットとなり得ます。

国際間送金が容易。

通常、国際間で送金を行う場合は、銀行等金融機関を経由し(=手数料を支払い)、一定の手続きを踏む必要があります。
この点、ビットコインの送金の場合は、そうした手数料・手続き時間等を節約する効果が期待できます。

原則として、いつでも取引が可能。

銀行等金融機関の営業時間を考慮する必要がないため、24時間365日、原則としていつでも取引(送金等)を行うことが出来る、というメリットが見込まれます。

ビットコイン活用のデメリット

メリットも少なくない、ビットコイン活用ではありますが、いくつか、看過が難しいデメリットもあります。

利用可能な店舗等が少なく、経済的実用性が乏しい。

その他の支払い手法(現金や、クレジットカード等)と比べると、ビットコインによる支払いを受け入れている店舗は、少なくとも日本国においては、まだまだ、少数派です。
日常的な経済活動において、実用性が低い、という点は、ビットコインのデメリットの一つといえます。

取引所が破綻してしまうリスクがある。

銀行預金等において活用される「預金保証制度」のようなシステムが無い中、ビットコイン取引所が急遽経営破綻等すれば、取引所内にて管理しているビットコイン資産が喪失等してしまうリスクがあります。

値動きが大きい。

ビットコインは、実用通貨というよりは、まだまだ、投機・投資の対象として捉えられている側面があります。
このため、一般の流通通貨と比べ、ボラティリティ(値動きの幅)が極端に大きい、というデメリットがあります。

ソーシャルレンディングとビットコインの関係

ここまでは、ソーシャルレンディングとビットコイン、それぞれの特徴や、メリット・デメリットを確認してまいりました。
ここからは、ソーシャルレンディングとビットコインとの、いくつかの関係性について、概説して参ります。

ビットコイン等仮想通貨のマイニングファンド

トランザクション作業の対価となる、マイニング報酬は、魅力的ですが、大手のマイニング企業も少なくなく、一般個人がマイニング作業に独自で取り組むことには、限界があるとも言われています。

そうした中、

  • 資金の出し手と、
  • マイニング作業の実行者とを、

分離したスキームが隆興しており、これは「クラウドマイニング」と呼ばれています。

そうした仕組みを活用し、マイニング事業を行う事業者へと、資金融資を行う、ソーシャルレンディングファンドが存在します。

ソーシャルレンディングとビットコイン01

引用元:SAMURAI「仮想通貨マイニングファンド」https://samurai-crowd.com/item/detail/aK-phh5OCJBtmRQ60SViQA==

↑それがこちら、SAMURAIの、「仮想通貨マイニングファンド」です。
マイニング対象通貨については、

■マイニング対象仮想通貨
貸付先の行うマイニング事業では、ビットコイン、ビットコインキャッシュ等を対象仮想通貨とする予定です。


引用元:SAMURAI「仮想通貨マイニングファンド」https://samurai-crowd.com/item/detail/aK-phh5OCJBtmRQ60SViQA==

↑上掲のように、ビットコインを含むことが明記されています。

ビットコインプレゼントキャンペーンを実施していたソーシャルレンディング業者も。

ソーシャルレンディングとビットコイン02

引用元:SAMURAI「ビットコインプレゼントキャンペーン」https://samurai-crowd.com/news/detail/40

↑ビットコインを含む仮想通貨のマイニング企業へと融資する、「仮想通貨マイニングファンド」を組成していたソーシャルレンディング業者「SAMURAI」は、一時期、ビットコインのプレゼントを行うキャンペーンを実施していました。
※現在、上掲キャンペーンは終了しています。

ビットコイン等仮想通貨取引損益と、ソーシャルレンディング損益は、雑所得内の損益通算が可能

ソーシャルレンディング投資を通して得た分配金収益は、現在の所得税法では、「雑所得」に該当します。
これは、ビットコイン等の仮想通貨取引で得た収益についても、同様です。
雑所得に関しては、同じ雑所得分野の中でのみ、損益通算が認められています(※一部の雑所得については、不可とされている物もあります)から、ソーシャルレンディング投資の損益と、ビットコイン等仮想通貨取引の損益については、互いに損益通算を行うことが可能であるとされています。
(※最新税法については、あらかじめ、税務専門家等へと御確認下さい。)

ソーシャルレンディングとビットコインまとめ

本記事におきましては、ソーシャルレンディングとビットコイン、それぞれの概要、及び、メリット・デメリットを取りまとめたうえで、互いの関連案件についても、数点、概説をさせて頂きました。
少しでも、ご参考と為さって頂ける内容と出来たのであれば、幸甚です。

それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会いいたしましょう。

※本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ソーシャルレンディングファンド等や、一部の仮想通貨等)への投資勧誘等を目的としたものでは、ありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、一部仮想通貨の購入等、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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