写真をNFTアートとして出品していく利点&注意点とは

写真家がNFTアート販売に挑戦するメリット

写真家がNFTアート販売に挑戦するメリット

写真というデジタルデータに非代替性トークンを紐づけ、そのNFTを売却することで、自身の写真撮影をマネタイズすることが出来る

NFTアートの登場まで、「写真家」としての活動を収益化するのは、極めて難しい状況が続いていた

フォトグラファーとして活動、すなわち写真の撮影や現像には、機材の調達費用や出張費等、諸々のコストがかかります。
一方で、NFTアートが一般化する前までは、フォトグラファーが、自身の撮影した写真を使ってマネタイズすることは、極めて難しい、というのが実情でした。

特に無名の写真家の場合、素晴らしい写真の撮影に成功しても、オフラインでの個展などを開催するコストを負担することは難しいのが通例。
結局、自身のブログなどに写真をアップすることになりますが、デジタルデータという特性上、すぐに画像をダウンロードされたり、スクリーンショットを撮られて流用されてしまったり、というケースが相次ぐことに。

結局、取り得るマネタイズ手法としては、

  • シャッターストックなどの写真画像サイトに、フォトグラファーとして登録し、細々とロイヤルティをもらったり、
  • はたまた、出張カメラマンとして活動し、七五三の撮影や、卒業式・入学式・運動会、などといった写真撮影の機会に仕事をもらったり、
  • 最近では、「ココナラ」などのスキルシェア・サービスに登録して、「綺麗な写真の撮影方法」などを教えたり、

等と言った方策に限られる、というケースが大半。

いずれにせよ、収入量は限られ、フォトグラファーとして生計を立てる、というのは、極めて困難(=一部の人気写真家を除けば、実質、不可能)、というのが、業界の実情とされてきました。


参考:
NFTアートの作り方-デジタルアートの作り方や、仮想通貨ウォレット(メタマスク)の作り方等を、初心者向けにスクリーンショット付で徹底解説

「写真をNFTアートとして販売する」ことで、フォトグラファーとしてのマネタイズが可能に

しかしながら、2021年以降、デジタルアートに非代替性トークンを紐づけ、NFTアートとして販売する手法が広がり始めてから、写真家のマネタイズに、少しずつではありますが、活路が開かれつつあります。

旅先の国々で撮影した写真をNFTアートとして販売しているケース

NFTアートのマーケットプレイスとして知られるOpenSea(オープンシー)。
そんなオープンシーの中で、写真に特化したNFTアートコレクションとして知られているのが、「Moments: Around The World」(https://opensea.io/collection/matw/)です。
50か国以上を旅してきた写真家が、そのうち15か国(エジプト、ヨルダン、フランス、ポルトガル、エチオピア、台湾、トルコ、ギリシャ、グアテマラ、香港、モロッコ、キューバ、アメリカ、メキシコ、チリ)にて撮影した、60枚の写真を、NFTアートとして出品しています。

2020年にアメリカ・ニューヨークで撮影された「Never Forget」という写真(NFTアート)は、2021年8月に、5イーサ(当時のレートで、約1万6千ドル)という高額で取引されたという記録もあり、コレクション全体の、二次流通も含めた流通総額は、2022年2月現在、87イーサ(1イーサ=20万円とすれば、1,700万円強)にまで達しています。


参考:
NFTアートは「売れた後」が肝心-NFTアートが売れたらすぐにやるべきToDoリストとは

日本・東京の街並みを撮影した写真が、NFTアートとして人気を博しているケースも

東京の街並みの様子を写した写真をNFTアートとして出品し、収益化に成功している事例もあります。

「Tokyo Stories – A Street Photography Collection of 30」(https://opensea.io/collection/tokyostoriesbyteemu)では、敢えて薄暗い、ダークな雰囲気の写真を中心にNFTアート・コレクションが展開されており、二次流通も含めた流通総額は5.3イーサ(1イーサ=20万円とすれば、約100万円)に達しています。

撮りためた「自撮り写真」がNFTアートとして大ヒット

NFTアート・コレクション「Ghozali Everyday」(https://opensea.io/collection/ghozali-everyday)は、インドネシアの大学生Sultan Gustaf Al Ghozaliさんが、18歳から22歳までの間の5年間(2017~2021)、撮り続けた自撮り写真を、NFTアートとして出品しているもの。

写真アートとしての良し悪しの判断は人それぞれですが、二次流通も含めたvolume tradedは2022年2月現在で394イーサ。
1イーサを20万円と仮定すると、約7,800万円程度にまで到達しています。


参考:
「NFTアート作りを子供にやらせる」は、ありなのか-国内・海外の事例から読み解く、メリット&デメリットとは

NFTを販売したとしても、写真データそのものや、写真の著作権等は、フォトグラファーの手元に残る

OpenSeaのようなNFTアート販売サイトで、NFTアートを販売した場合、仮に、NFTが売れたとしても、トークンに記録される所有者情報が変更されるだけです。

原本にあたる写真データそのものは、NFTアートとして出品したあとも、そして実際にNFTが売れた後も、引き続き、写真家の手元のパソコン等に保存しておくことが出来ます。
また、撮影した写真の著作権や、商業利用に関する権利なども、特段の定めが別途存在しない限り、NFTの所有者情報(より正確には、保有者のウォレットアドレス)が変更されたからといって、購入者に即時に移転していくようなことは有りません。

※もっとも、NFT販売にあたり、別途任意の契約関係を交わせば別段です。
また、NFTを買い付けた人が、「この写真は自分が購入したものなので、勝手に使わせてもらう」等と主張した場合、それを止めるためには、相応の労力が必要となることには、留意を要します。

NFTアート化した写真が二次流通した場合でも、継続的にロイヤルティ収入を得られる

OpenSeaの場合、NFTアートを出品するにあたり、ロイヤルティの設定を行うことが出来ます(上限は10パーセント)。

ロイヤルティ設定を済ませたNFTアートの場合、NFTが写真家の手元を離れ、その後、最初の購入者から、次に買い手に対して、NFTが転売された場合においても、当初設定した料率通りのロイヤルティが、フォトグラファーの手元に入ることとなります。

写真を含むデジタルアートが二次流通した場合においても、継続的にロイヤルティ収入を得ることが出来る、というのは、写真家がNFTアート販売へと挑戦するうえで、大きなメリットと言えましょう。


参考:
NFTアートの始め方|SNSで話題のNFTアート投資の始め方も徹底解説

無名の写真家の場合でも、OnCyber等を利用すれば、NFTアートのオンライン・ギャラリーを開くことが出来る

昨今のNFTへの注目・関心の高まりに合わせて、様々な企業が、NFTアート向けの新サービス提供を開始しています。

中でも、NFTアートの出品者の間で人気が高いのが、OnCyberというサービス。
OnCyberを、自身の仮想通貨ウォレットと紐づければ、ウォレット内の、写真を含むNFTアートを、OnCyberが運営するオンライン・ギャラリー内に、無料で展示することが出来ます。

ギャラリーごとにURLが発行されるため、写真家としては、
「僕の写真を見たければ、このオンライン・ギャラリーを覗いてみて下さい」
と、名刺代わりに利用することもできます。

そして、実際にオンライン・ギャラリーを訪れた人が、展示されている写真(NFT)を気に入れば、マーケット・プレイスから購入を進めることも可能です。

「自分の写真を飾った個展を開いてみたい」
という夢を抱きながらも、なかなか実現できなかった、という写真家は、少なくありません。
そんなフォトグラファーでも、NFTアートのスキームを利用すれば、無料で簡単に、自分だけの写真展を開くことが出来るわけです。

写真をNFTアートとして出品していく際の注意点

写真をNFTアートとして出品していく際の注意点

一部の写真ファンが、NFTアートへの挑戦を批判してくる可能性がある

昨今、人々から高い注目を集めているNFT。
しかしながら、特に海外では、盛り上がりを見せるNFTアート業界に対して、批判的な立場をとる人も少なくありません。

NFTに対して寄せられることの多い批判的な見解としては、下記のようなものがあります。

NFTブームが、巡り巡って、地球温暖化を促進している

NFT(非代替トークン)の大半は、イーサリアム・ブロックチェーン上で機能しているトークンです。
2022年現在、イーサリアム・ブロックチェーンは、ビットコインなどと同様、マイナーへのマイニング権の割り当てを、

  • プルーフ・オブ・ステーク(PoS)ではなく、
  • プルーフ・オブ・ワーク(PoW)形式にて行なっています。

すなわち、イーサリアム・ブロックチェーンのマイナーとしては、マイニング報酬を得るためには、イーサ(イーサリアム・ブロックチェーン上で機能している暗号資産)を保有しているだけでは不十分であり、高性能コンピュータを用いて、大量の演算処理をこなす必要があります。

この演算処理を行うために、コンピュータは多量の熱を放出し、かつ、大量の電気を消費します。
これらの熱や、電力重要を賄うための火力発電などが、地球温暖化を促進している、との主張が、実際に存在します。

こうした事情が結びつき、NFTブームが、結果的に、地球温暖化を早めている、との批判を生んでいるわけです。


参考:
せっかく作ったNFTアートが売れない時の対処法

NFTブームが、却って、クリエイターたちの創作活動を阻害している

前述のように、イーサリアム・ブロックチェーンのマイナーたちは、マイニング報酬を得るために、コンピュータを用いて、高度な演算処理を大量に行っています。
そして、少しでも演算処理のスピードを速まるために、GPUと呼ばれるコンピュータ・パーツが必要となります。
特に高性能なGPUに関しては、昨今、マイナーからの強い需要により、品薄状態が続き、価格も高止まりしています。

しかしながら、GPUを必要としているのは、イーサリアム・ブロックチェーンのマイナーたちばかりではありません。
デジタルアートや動画、3d映像などを創作するクリエイターたちにとっても、GPUは必要不可欠な機材です。

最近の暗号資産ブーム、ひいては、マイナーたちのマイニング活動の活発化により、アーティストたちの手元に、十分なGPUが行き渡りづらい状況が生じている、と言われています。

こうした事情を鑑み、「NFTブームは、むしろ、クリエイターたちの創作活動を、間接的に阻害している」との批判が繰り広げられることもあります。

既に一定のファンが付いている写真家は、既存のファンとの対話を大切に

現在写真家として活動しており、一定数のファンに支援されている写真家の場合、NFTへの取り組みを表明すると、主に上記のような論拠に基づき、一部の写真ファンから批判を受ける恐れがあります。

既存のファンからの信頼関係を損ねないよう、一方的に取り組みを開始するのではなく、ファンとの間で、必要なコミュニケーションをしっかり確保しながら、ローンチを進める必要があります。


参考:
NFTアートの販売方法は-販売サイトの種類や手数料、オークション販売&固定価格販売の違いも検証

日本の市場規模はまだ小さいため、原則として、海外の写真愛好家に向けて販売する必要がある

昨今、NFTアートは、日本国内でも急速に認知度を高めつつあります。
しかしながら、今、NFTアートに注目している日本人の大半は、デジタルアートのクリエイターや、写真家など、自身のアート作品をNFTアートとして出品し、なにがしかのマネタイズを図りたい、と考えている層です。

そうした人たちの出品するNFTアートを購入する、コレクターや、投資家、と呼ばれる層の人々は、まだまだ、日本のNFTアート業界では、少数派です。

このため、仮にフォトグラファーが、自身の写真データをNFTアート化し、日本人向けに出品・販売したとしても、「なかなか売れない」という事態に陥る可能性が高い、というのが実情です。

仮に写真家が、NFTアートの世界である程度の成功を収めたいのであれば、日本人向けの販売は後回しにして、海外のコレクター・投資家に対し、自身のNFTアートを売り込んでいく必要があります。

当然のことながら、自身のNFTアートの「入れ物」に相当する「コレクション」のタイトルや説明文、さらには、各NFTアートの概要欄等については、いずれも、日本語ではなく、英語をメイン言語に据えて、書きこんでいく必要があります。

新たなNFTアート作品を出品した際も、日本人のフォロワー向けに日本語でツイートするのではなく、外国人のフォロワーを積極的に獲得し、彼らに対し、主に英語でツイートを発信していく必要があるわけです。

こうした「言葉の壁」を乗り越えていけるか、どうかが、NFTアートの世界で写真家として一定の成功を収めることができるか、どうかの、一つの鍵となるといっても過言ではありません。


参考:
NFTアートの書き方とは-「コレクション」や「Description」の効果的な書き方まで徹底解説

写真そのもののコピーやスクショを防止する機能は、NFTにはない

NFTアートについて好意的に取り上げたブログ記事やSNSの投稿などでは、時折、「NFTアートは唯一無二のデジタルデータだから、コピーは改ざんをされない」等と喧伝しているケースがありますが、些かの誇張を含んでいる場合がありますので、注意が必要です。

NFT(非代替トークン)そのものは、確かに、唯一無二ですが、そのNFTと紐づけられているデータ(例えば、写真)の唯一無二性(他にはその写真データが存在しない事)を立証するような機能は、NFTには、ありません。

仮に、写真家が、自身の撮影した写真をNFTアートとして出品・販売したとしても、

  • その写真の元データは、写真家自身のパソコンや、カメラ等のデバイスに残り続けますし(勿論、写真家が自らデータを消してしまえば、別段ですが…)、
  • OpenSea(オープンシー)のようなNFTアート販売サイトで、表示される写真データを右クリックしてダウンロードすれば、誰でも、手元にその写真を入手することが出来ます。
  • 仮に、写真データがIPFS(分散型サーバー)に保管されたとしても、事情は変わりません。

また、上記のような手法で写真を入手した第三者が、勝手に写真の内容を加工して、「私のNFTアートです」として出品することも、物理的には可能です。
※写真家自身が、そうした出品を発見できれば、出品者に対して取り下げの要請等はできましょうが、素直に応じてくれるかは未知数ですし、そのような改ざん・偽物出品を、全て発見できる保証はありません。

こうした「NFTアートの限界(出来る事と、出来ない事)」についても、あらかじめよく把握したうえで、実際の出品・販売の是非を、慎重に検討する必要があります。


参考:
NFTアートと日本|日本人クリエイター、及び投資家にとって、NFTアートの持つ意義とは

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NFT(非代替性トークン)検証チーム
fill.mediaは、国内の融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)や、不動産クラウドファンディング、ロボアドバイザー、インデックス投資業界等の最新情報を提供する、投資・金融情報総合メディア。
その他、昨今、主に若年投資家の間で大きな関心を集めつつあるFIRE(Financial Independence, Retire Early)に関する最新情報を専門的に扱う、FIRE(早期リタイア)専門の検証チームや、不労所得に関する検証グループ、その他、不動産投資全般について検証を行うチーム等があります。

NFT(非代替性トークン)検証チームでは、ブロックチェーン技術のアート・ゲーム分野への応用(NFTアートや、NFTゲーム)等に関し、そのメリット・デメリット等を検証し、深く掘り下げた分析・情報を提供しています。

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