【過去ファンド検証】クラウドリースのソーシャルレンディングファンド「オータムキャンペーンローンファンド【第3弾】4号」の場合。

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを題材に、各社の特徴や、ファンドごとのリスク・リターンのバランス等を検証する本企画。
今回は、クラウドリースが2018年9月に資金募集を行った過去ファンド、「オータムキャンペーンローンファンド【第3弾】4号」を分析していきましょう。

本ソーシャルレンディングファンドの概要

同社のホームページから確認した、本ソーシャルレンディングファンドの概要としては、下記の通りです。
※なお、案件1及び案件2のうち、資金の大半を融資する「案件1」のほうに関してのみ、下記、検証をさせて頂きます。

スキーム図


引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=2876

資金の借り手

事業者F社、と記載があります。同社は、クラウドリースの関連会社にあたります。

貸付資金の総額

本ファンドによる貸付は、1,000万円、とのこと。
※総計1億円の融資のうちの、一部となります。

借り手の資金使途

事業者Fは、クラウドリースからの借入金を活用し、アミューズメント事業者SAから、商社を経由し、事業者SAの営業用設備等を買い取ります。
そのうえで、事業者Fは、事業者SAに対して、当該営業用設備を、割賦にて、販売します。

貸付・運用の期間

9か月間の貸付・運用とのこと。

設定担保

担保の設定は為されません。ただし、

  • 事業者SAから事業者Fへの支払い(割賦代金の支払い)は、約束手形によって執り行われます。
  • 事業者SAが、割賦代金の全ての支払いを完了するまで、営業用設備等の所有権は、事業者Fに留保されます。
  • 事業者SAのグループ会社が、事業者SAの事業者Fへの支払いを、連帯保証します。

上記のようにして、保全が図られている、とのこと。

返済原資

事業者Fからクラウドリースへの元利金返済の原資については、これといって、明記がありませんでした。
もっとも、文脈から察するに、事業者Fとしては、
事業者SAから支払われる割賦代金を原資に、クラウドリースへの返済を行うのでしょう。

わたしたち個人投資家の期待利回り

11パーセント、とのこと。

資金募集の達成度は


引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=2876

100パーセントの資金募集を完了したファンドです。

運用・返済状況は

貸付実行が2018/09/28、返済完了(予定)が2019/07/01、というファンドですので、
本記事執筆本日現在、鋭意運用中、というところかと思料されます。
クラウドリースにおいて、延滞中ファンドの存在は公表されていませんから、
利払いに遅延は発生していないものと思料されます。

本ソーシャルレンディングファンドのポイント

私が考える、本ソーシャルレンディングファンドのポイントは、下記の通りです。
なお、あくまでも、私の個人的な見解です。

利回りや貸付期間は、なかなかのバリュー。

10パーセントを超える想定利回りは、ソーシャルレンディング各社の一般的なファンドの平均値を考えれば、非常に高利といえますし、
貸付期間が1年未満、というのも、好感出来ます。
無担保といえど、上記のように、複数の保全措置が取られている事も、
ある程度、評価できるものと考えます。

それでは、本ファンドのリスクを、どう考えるか。

いくつか、気にかかる点があります。

ファンドのスキーム

まず、しっかりと把握する必要があるのが、本ソーシャルレンディングファンドのスキーム構成です。

事業者SAは、既に所有している、自身の営業のために必要な設備を、事業者Fに対して、商社経由のうえで、売却します。
そのように、自社の固定資産を第三者に売却したうえで、
リースバックを受ける、というのなら、話は分かります。

自社の資産のうち、流動性資産(現金等)の割合が、固定資産と比べて、どうしても、小さい。
そんな時、固定資産を第三者に対して売却し、代わりに現金を得ることによって、流動性資産の割合を増やす。
そのうえで、売却してしまった資産については、売却先から、賃借する(リースで借り受ける)。
売却先に対する毎月・毎年のリース料(賃借料)は、全額、損金として計上。
これによって、節税メリットをも享受する。
このようなスキームの実行によって、

  • 資産の流動性を高めて、
  • さらに、以後長期にわたって、節税メリットも享受

という効果が得られるわけです。これは、よく見かける話です。

しかし、今回の場合、少々事情が異なります。

というのも、事業者SAは、事業者Fに対して、自らの営業用設備を売却した後、
当該設備について、リースバックを受けるのではなく、
当該設備を、事業者Fから、割賦で(=分割支払いで)買い戻すのです。

上述した、「よく見るスキーム(=売却した資産について、リースバックを受けるスキーム)」と比べて、

  • 手元の資産を現金化して、資産の流動性を高める事が出来る、という点は同一ですが、
  • 節税メリットは、基本的に、狙いにくくなります。

要は、「とにかく、資産を現金化したかった」のではないか、という見方を、せざるを得ません。

もう少し、突っ込んだ書き方をすれば、
自社の設備を活用して、資産の流動性を高めたければ、まず第一に検討すべきなのは、
ごく平易に、自社の設備を担保にして、外部金融機関などから、資金を借りること、です。

ではなぜ、事業者SAは、そうした「鉄板の」手法をとらないのか。
この点を考慮すると、

  • 現金として必要な資金の金額と比べて、営業用設備の担保評価が、足りなかったのではないか?
  • もしくは、堅めの金融機関からの担保評価では、営業用設備について(何らかの理由で)担保価値が認められなかったのではないか?

等という疑問が、(少なくとも、私の心の中で)出てきます。

上記のような「鉄板」タイプの手法をとらず、
すなわち、銀行等の外部金融機関の意見を関与させることなく、
一旦、事業者Fに売ってしまって、その後、事業者Fから設備を買い戻し、ただし、支払いは、分割支払いにしてもらう、という形をとれば、
設備を互いに売買する際の価額については、あくまでも、事業者SAと事業者Fとの間の、言い値で、やり取りが出来るわけです。

そして、そのような「言い値」での売買取引のための資金を、外部金融機関が、事業者Fに対して提供する事は、考えづらいが、
クラウドリースを通し、案件をファンド化することによって、広く個人投資家から資金を募れば、
ある程度の利回りを提供すれば、資金は集まるのではないか、
そのような見立てが、垣間見えるような気が、してしまうのです。
(※あくまでも、個人的な私見です。)

そして、

◆事業者SAについて◆
東日本を中心に、32店舗を営業する
年商859億7千万円、業歴25年超の老舗企業です。

引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=2876

↑上記のように、輝かしい経歴を誇る事業者SAは、
なぜ、そのような手法を取ってまで、今、現金を必要としているのか。
このあたりが、いささか、気になります。

※繰り返しとなりますが、あくまでも、私の個人的な見解です。

事業者SAの事業撤退リスクをどう考えるか。

上述もしましたが、本ソーシャルレンディングファンドの場合、下記数点の施策により、保全が図られています。

  • 事業者SAから、事業者Fへの、割賦代金の支払いは、約束手形による。
  • 事業者SAが支払いを終えるまで、当該営業用設備の所有権は、事業者Fに留保される。
  • 事業者SAのグループ会社が、事業者Fへの支払いについて、連帯保証する。

いずれも、事業者SAが、事業の継続を希求する限りにおいては、非常に有効な、牽制策となり得るものです(=事業者SAとしては、事業者Fに対し、しっかりと支払いを行わないと、その後の事業の継続が覚束なくなる)。

しかし、事業者SAが、事業の継続を希望しなくなってしまった場合は、どうか。

勿論、ごく平易に考えれば、

◆事業者SAについて◆
東日本を中心に、32店舗を営業する
年商859億7千万円、業歴25年超の老舗企業です。

引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=2876

↑上記のような企業が、そう簡単に、事業の中止を決定することは、あり得ないものと思いますが、
万が一、事業者SAが、そのような決断をした場合、
現在想定されている保全措置は、果たして、事業者SAから事業者Fへの支払いを、どの程度、保全してくれるでしょうか。

勿論、事業者SAが使用していた、営業用設備一式(中古)は、事業者Fが、原則、自由に換価(売却等)出来るでしょうが、
果たして、そのような中古営業用設備には、どのくらいの値段が、つくものでしょうか。

ノンリコースであることの明記。

ファンド概要には、下記の明記があります。

Crowd Lease社と事業者Fの融資契約は「責任財産限定特約付」融資(ノンリコースローン)の取扱いとして対応します。
事業者Fの返済原資は、事業者Fを売主・事業者SAを買主とする本件売掛債権に限定され、
事業者FがCrowd Lease社に返済できなくなった場合でも、事業者Fの保有する他の財産に対する強制執行はできません。

引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=2876

要は、端的に言えば、
事業者SAから事業者Fへの支払いが滞り、
事業者Fが、事業者SAからの債権回収に失敗した場合、
クラウドリースは、事業者Fから、返済を受ける事は、難しくなる、という事です。

これらの事情が、投資家として放念を許されぬ、リスク要因となります。

総論

  • 年利換算10パーセントを超える利回りや、1年未満のごく短期の運用である点は、好感できるが、
  • ファンドのスキーム上、借り手事業者が、いささか無理な資金繰り策を講じているようにも見受けられ、
  • 各種保全策が講じられているものの、いずれも、借り手事業者が、事業継続を希求しなくなった場合は、さしたる効力が期待できるものではなく、
  • 関連会社への貸付は、あくまでもノンリコースであるため、ある種、私たち個人投資家に、リスクが転嫁されているようにも見受けられる。
  • リターン(=利回り)のみならず、こうしたリスクについても総合勘案のうえ、慎重な出資是非を要する。

といったあたりが、私の本ソーシャルレンディングの見立て・総論となります。

本ソーシャルレンディングファンド検証のまとめ

ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを検証し、各社の特徴を探る本シリーズ。
クラウドリースのソーシャルレンディングファンド「オータムキャンペーンローンファンド【第3弾】4号」の検証をさせて頂きました。

しつこいようで申し訳ありませんが、
本記事文中の表現は、いずれも、私のごく個人的な意見に過ぎません。
その点は、くれぐれも、ご承知おきください。

しかし、あくまでも、その限りにおいて、
少しでも、「これからソーシャルレンディング投資を始めてみよう」とお考えの読者様にとり、
ファンド概要の読み込みの具体例として、ご参考になさって頂ける内容と出来たのであれば、嬉しい限りです。

なお、私は現在、国内23社のソーシャルレンディング事業者に、資金を分散投資中です。
そんな私が、国内23社中、厳選した3社のみ、「おすすめ事業者」としてご紹介しておりますのが、下記の別記事となります。
お時間ございましたら、ぜひご覧ください。

【ソーシャルレンディングのおすすめ会社はどこですか?】23社分散投資中の筆者が、ソーシャルレンディング投資初心者の読者様におすすめする、厳選3社がこちら。

ソーシャルレンディング各社をランキング形式で分析したこちらの過去記事もおすすめです。

【ソーシャルレンディングランキング決定版】利回り・投資対象国・担保設定状況・投資のしさすさ。異なる4つの視座から人気ソーシャルレンディング事業者を徹底ランキング。

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【ソーシャルレンディング各社徹底比較】投資家登録数・累計投融資額・年利平均…。主要ソーシャルレンディング各社を7つの視座から横断比較してみた結果、見えてきた真実とは。

それぞれ、是非、ご一読下さい。

それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会い致しましょう。


本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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