不動産クラウドファンディングのシステム開発について

不動産クラウドファンディングとは

不動産クラウドファンディングは、

  • 新たに不動産を取得したい、と考えている事業者が、
  • クラウドファンディングによって資金を募り、
  • 募った資金で、不動産を取得し、事業(不動産の賃貸や、バリューアップ後の売却等)を行い、
  • 事業から生じた収益を、投資家に対して分配する、

というビジネスです。

不動産クラウドファンディングの仕組み

不動産クラウドファンディングの仕組みを理解するにあたっては、

  • 不動産クラウドファンディング事業者
  • 投資家

という、両極のステークホルダーの立ち位置、関係性を理解する必要があります。

不動産クラウドファンディング事業者の役割

「不動産クラウドファンディング事業者」というと、聞きなれないですが、要は、「国土交通省、ないしは、都道府県知事から、不動産特定共同事業法に基づく許可・登録を取得した、不動産事業者」のことです。

不動産クラウドファンディング事業者は、ファンド情報を自らのサービスサイトに掲載し、投資家からの出資を募り、集まった資金を元手にして、不動産を購入します。
そして、必要なリノベーション・リフォーム等を施したうえで、(一般的には)賃借人を集め(=リーシング)、その不動産を運営します。
ファンドの運用期間中に、賃借人から収受した賃料収入(インカムゲイン)を元手に、投資家に対する利益分配を実施するほか、最終的には、不動産を第三者に売却し、投資家への元本償還原資を確保します(※売却益=キャピタルゲインが生じた場合は、投資家への追加分配を実施するケースもあります)。

投資家の立場

投資家は、不動産クラウドファンディング事業者の募集するファンド情報を閲覧したうえで、気に入ったファンドがあれば、オンラインで、出資申込を行います。
国内の不動産クラウドファンディング事業者の多くが、昨今、(先着順ではなく)抽選方式で募集を行っているため、ファンドの募集期間終了後、不動産クラウドファンディング事業者側が抽選を行い、当選すれば、投資家と不動産クラウドファンディング事業者との間で、「匿名組合契約」が電磁的に締結される運びとなります。
なお、当該「匿名組合契約」において、不動産クラウドファンディング事業者は、「(匿名組合の)営業者」となり、投資家は「匿名組合員」という立場となります。

不動産クラウドファンディングのメリット

不動産クラウドファンディングのメリットを考えるにあたっては、

  • 不動産クラウドファンディング事業者と、
  • 投資家、

それぞれの立場から、俯瞰のうえ、検証する必要があります。

不動産クラウドファンディング事業者にとってのメリット

不動産事業者にとっては、

  • 築年数や建築法の関係などで、銀行融資が付きづらい物件についても、比較的容易に、購入資金の調達が行える
  • 不動産投資に興味を抱いている個人投資家にアプローチできる
  • 自身の投資リスクを抑えたうえで、新たな不動産プロジェクト(不動産投資)に取り組むことができる
  • (上場時のバリュエーションにとっての必要な)「テック感」を、会社に色付けすることが出来る
  • (不動産クラウドファンディング事業者が、投資用不動産開発・販売業者である場合)不動産投資家への投資用不動産販売が不調でも、ファンドに不動産を買い取らせることが出来る。

などといったメリットがあります。

投資家にとってのメリット

不動産クラウドファンディングに出資をする個人投資家にとっても、

  • 1万円程度の少額から投資できるため、投資初心者や、若年投資家でも、比較的気軽に取り組むことができる
  • 投資に関する実務は、クラウドファンディング事業者(不動産事業者)に一任することが出来る
  • (実質的に)不動産投資の代替として取り組むことが出来る
  • 想定されている期待利回りが高く、実物不動産投資(アパート経営や、マンション投資等)と比較しても、遜色がない
  • 運営会社の劣後出資によって、投資家の優先出資元本を(一定程度まで)保護する、「優先劣後スキーム」が採用されているファンドがある

等といった利点を享受することが出来ます。


参考:
【2021年6月更新】不動産クラウドファンディングとは?|不動産クラウドファンディングのメリット・デメリット・リスクから徹底解説。上場企業運営サービスも

不動産クラウドファンディングのリスク・デメリット

不動産クラウドファンディング事業者の募集するファンドに投資するにあたって、投資家は、あらかじめ、下記のようなリスク・デメリットについて、留意しておく必要があります。

元本割れのリスク

不動産クラウドファンディング事業者は、ファンドの運用期間中に投資対象不動産を第三者に売却することによって、ファンドの元本償還原資を確保します。
逆に言えば、不動産市況の急激な悪化等により、ファンドの運用期間中に、不動産の売却が奏功しなければ、不動産クラウドファンディング事業者としては、元本償還原資を確保できません。
償還原資確保を急ぐあまり、投資対象不動産を投げ売りするような事態となれば、投資家の出資元本についても、大幅に毀損してしまう恐れがあります。

流動性上のリスク

不動産クラウドファンディング事業者の多くが、ファンド出資の中途解約を「原則として不可」と規定しています。
万が一、ファンドの運用期間中に、投資家から、一斉に、中途解約・資金返却要請があれば、不動産クラウドファンディング事業者のキャッシュフロー自体が、ショートしかねないため、です。
不動産クラウドファンディング事業者の募集するファンドの運用期間は、同じクラウドファンディング投資であるソーシャルレンディングと比較すると、ある程度、短期間のものが多くありますが、中には、1年以上の運用期間を予定しているケースもありますので、留意が必要です。

運用期間延長のリスク

上述の通り、ファンドの運用期間中に、投資対象不動産が売却できなかった場合、不動産クラウドファンディング事業者は、投資家への元本償還のための資金を確保できません。
そして、この場合、不動産クラウドファンディング事業者側の判断で、ファンドの運用期間が、(従来予定よりも)長く、「延長」となる場合があります。

運営会社の倒産リスク

不動産クラウドファンディング・サービス運営会社の中には、東証一部上場企業などの大企業もありますが、未上場のベンチャー企業(小規模な不動産事業者)も、決して少なくありません。
万が一、不動産クラウドファンディング事業者自体が経営破綻した場合、投資家の出資元本も、大きなダメージを受けることとなる場合があります。

なお、不動産クラウドファンディング事業者の募集案件の中には、
「投資対象不動産については、ファンドの運用期間中、(サービス運営会社のグループ会社が)マスターリース契約で借り上げを行うことにより、賃料収入の安定化を図ります」
などと謳っているケースがあります。
この場合、マスターリース契約の相手方が経営破綻した場合、マスターリース契約が不履行となる恐れがあり、ファンドが、従前予定通りの賃料収入をあげられなくなるリスク等が浮上します。

スキーム上の問題点

不動産クラウドファンディング事業者が提示する不動産案件の多くは、とても魅力的な物件のように見えますが、よくよく考えてみると、

  • 本当に、収益性の高い、良い不動産なのであれば、(不動産クラウドファンディングで資金調達をするまでもなく、)銀行が喜んで資金を融資するはずだし、
  • わざわざ、不動産クラウドファンディングで案件化・ファンド化するまでもなく、不動産事業者が、自分で取得・投資するだろう、

という見方も出来ます。

不動産クラウドファンディング事業者のセールストークを鵜呑みにすることなく、「なぜ、この物件は、不動産クラウドファンディングのスキームで、取得されようとしているのだろうか?」という点を、冷静に考えてみる必要があります。

税務上の不利益

実物不動産投資であれば、

  • (不動産投資で生じた赤字の)他の所得分野との間での、損益通算や、
  • 通算・相殺しきれなかった損失の、翌年以降の繰越控除、

などといった仕組みが整備されており、実際に、(投資収益よりも、むしろ、)節税を目的として、不動産投資に取り組む投資家・企業もあるほどです。

しかしながら、不動産クラウドファンディングの場合、上述のような「税務上のメリット」は一切整備されておらず、「税務上、冷遇されている」といっても、過言ではない状況です。

不動産クラウドファンディングを展開するためには、許可申請とシステム開発が必要

不動産事業者が、不動産クラウドファンディングを実施して資金調達を行うためには、

  • 不動産特定共同事業の許可申請と、
  • 不動産クラウドファンディングを管理するためのシステム開発が、

必要となります。

前者については、行政書士や弁護士が申請代行を受託しているケースが多くあります。
また、後者については、システム開発会社に委託するケースが多いようです。

不動産クラウドファンディングのシステム開発会社一覧

不動産クラウドファンディングのシステム提供を行っている企業は多数ありますが、

  • システム開発会社が、事業として、不動産クラウドファンディングのシステム開発を行っているケースと、
  • すでに不動産クラウドファンディングを事業として展開している企業が、構築したシステムをOEM展開しているケース、

の2種に大別できます。

それぞれ、詳しく見て参りましょう。

システム開発会社による不動産クラウドファンディング・システム開発

システム開発会社によるシステム提供(不動産クラウドファンディング事業者によるOEMではない)としては、下記のようなケースが挙げられます。

ENjiNEのケース



引用元:https://relic.co.jp/services/enjine/real_estate/

「ENjiNE」というのは、株式会社Relic(東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー8F)の運営している、購入型クラウドファンディング・サイトの名称です。
そして、Relic社は、クラウドファンディングサイト構築支援サービスとして、「CROWDFUNDING NETWORK Powered by ENjiNEシリーズ」を展開しており、

  • 購入型クラウドファンディング
  • 越境型クラウドファンディング
  • 寄付型クラウドファンディング
  • ふるさと納税型クラウドファンディング
  • 融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)

などのシステム開発を手掛けており、不動産投資型クラウドファンディング版も、その流れで提供されています。

実際の導入事例としては、アイディ株式会社運営の不動産クラウドファンディング「ぽちぽちファンディング」や、株式会社パートナーズによる「パートナーズファンディング」が挙げられます。

  • 匿名組合型・任意組合型​の双方に対応できるほか、
  • 契約書の自動発行機能​も搭載、
  • 投資募集についても、先着式・抽選式の両方に対応できるなど、

実際のクラウドファンディングサイト運営において役立つ、様々な機能を取り揃えています。

サイブリッジのケース



引用元:サイブリッジ

サイブリッジグループ株式会社(東京都新宿区北新宿2-21-1新宿フロントタワー20F)でも、不動産クラウドファンディング・システムの構築を受託しています。
株式会社SATAS(東京都港区南青山2-24-15 青山タワービル 9F)運営の不動産クラウドファンディング「WARASHIBE」では、サイブリッジ社のシステムが採用されているとのこと。

不特法クラウド



引用元:不特法クラウド

「不特法クラウド」は、株式会社レプス(京都市)が提供しているクラウドファンディング・システム。
クラウドファンディング型の不動産特定共同事業に特化して開発されており、

  • eKYCでの本人確認や、
  • 会員管理機能、
  • 預託金機能などが、

パッケージで提供されています。
既に国内6サイトにシステム提供をしている、とのこと。

パイプドビッツのケース



引用元:パイプドビッツ

システム開発会社、株式会社パイプドビッツ(東京都港区赤坂 2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル)は、きらめき不動産株式会社の不動産クラウドファンディング「ONIGIRI Funding」のシステム開発を手掛けています。

すでに不動産クラウドファンディングを展開している企業によるOEM販売

自社が不動産クラウドファンディングを営んでいる企業が、これまでの実績等を活用し、システムのOEM展開を行っているケースとしては、下記のようなものがあります。

FANTAS technology社のケース



引用元:FANTAS technology

不動産クラウドファンディング・サービス「FANTAS funding」を展開しているFANTAS technology 株式会社は、2020年11月、プレスリリースを通じて、自社の不動産クラウドファンディング・システムのOEM提供をスタートする旨を明らかにしました。
提供メニューには、システム開発のほか、

  • 投資家向けのサービスサイトの制作や、
  • 投資家ユーザー獲得を含む、デジタルマーケティング広告代理、
  • その他コンサルティングや、システム保守

が含まれています。

ブリッジ・シー・キャピタル(現:クリアル株式会社)のケース



引用元:https://www.oem.creal.jp/

不動産クラウドファンディング・サービス「creal」を展開しているブリッジ・シー・キャピタル社(現在のクリアル株式会社)も、自社の不動産クラウドファンディング・システムのOEM販売開始を公表しています。

crealの累計調達額は、75億円強に達しており、国内不動産クラウドファンディング業界において大手と言えるほか、組成ファンド数39、このうち24ファンドが既に償還済、など、ファンディングの実績を積み上げている事業者です。
サービスサイトは、2020年10月に、グッドデザイン賞を受賞しているほか、プログラミング言語「Ruby」を活用したITビジネスコンテスト 『Ruby biz Grand prix 2020』でも、『Vertical Solution賞』を受賞するなど、テック面でも強さを見せています。

Author Info

クラウドファンディング投資検証チーム
金融と知識で人生をエンパワメントする複合メディア、「fill.media」。

中でも、クラウドファンディング投資(不動産投資型クラウドファンディングや、融資型クラウドファンディング)専門の検証チームでは、日本国内で展開されている不動産クラウドファンディング(不動産特定共同事業)サービス等に関する最新情報を提供するほか、クラウドファンディング投資業界の市場調査、各社の公開済ファンドの検証などを実施しています。

メディア掲載歴(一部・順不同)
・朝日新聞デジタル&m
・財経新聞
・SankeiBiz
・RBBTODAY
・楽天Infoseekニュース
・excite.ニュース
・BIGLOBEニュース
・@nifty ビジネス
・Mapionニュース
・NewsPicks
・ビズハック
・MONEY ZONE
・Resemom
・SANSPO.COM
・Trend Times
・zakzak
・とれまがニュース
・徳島新聞

コメントを残す

コメントは当ラボによる承認作業後に自動掲載されます。