実名化はいつから?ソーシャルレンディング各社の状況まとめ

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

「借り手実名化」とは

日本国には、「貸金業法」が存在し、第三者への資金融資を「業(なりわい)」として営む者は、すべからく、行政による「登録」を受ける必要があります。
※貸金業事業者としての正規の登録を受けないままに、他者に対する資金融資を、事業として行ってしまえば、それは、貸金業法違反となります。

国内ソーシャルレンディング業界においては、長きにわたり、ソーシャルレンディング事業者から資金を借りる「借り手企業」に関する情報は、投資家に対して、非開示、とされてきました(=「借り手の匿名化」)。
なぜなら、もし、借り手企業に関する具体的情報が、投資家に、知れてしまえば、実質的に、投資家(=貸金業の登録を受けていない)が、借り手企業に対し、融資を行っているものと、行政当局から、見なされてしまう恐れがあり、ひいては、投資家が、貸金業法違反に問われてしまう可能性が、往時、払拭できなかったためです。

しかしながら、この、「借り手匿名化」を、隠れ蓑(みの)のようにして、投資家に対し、虚偽の情報提示を行うソーシャルレンディング事業者が、発生。
そうした悪質なソーシャルレンディング事業者に対する行政処分が、ここ数年来、相次ぎました。

※特に投資家に対する影響の大きかった、「みんなのクレジット」や「ラッキーバンク」、「トラストレンディング」といったソーシャルレンディング事業者・サービスについては、いずれも、監督官庁からの行政処分を受け、現在、ソーシャルレンディング事業を停止、もしくは、第二種金融商品取引業の登録取消処分を受けています。

そうした状況を重くみた金融庁が、2019年3月、ノーアクションレター制度を用いた照会に対する回答、という体裁で、「所与の条件を満たせば、ソーシャルレンディング投資家は、貸金業者に当たらない」、ひいては、ソーシャルレンディング事業者としては、投資家に対し、借り手企業の具体的情報を開示しても、差支えない(=投資家が貸金業法違反に問われる恐れはない)、とする、公的な見解を発表。

これを受けて、2019年春から、ソーシャルレンディング各社において、借り手企業に関する具体的情報の、投資家向けの開示が進められています。

参考:
「ソーシャルレンディング投資家は貸金業者に該当せず」金融庁の公式見解発表|ソーシャルレンディング・ラボ

金融庁における法令適用事前確認手続(回答書)|金融庁

主要ソーシャルレンディング各社【実名化対応状況】

借り手企業に関する情報公開は、投資家保護の観点から見れば、必然・自然な要請であり、複数のソーシャルレンディング事業者は、時代の趨勢を察し、早くも、借り手に関する具体的情報の開示に踏み切っています。
しかし、その一方で、国内ソーシャルレンディング事業者の中には、依然として、借り手企業の匿名化を継続しており、かつ、その情報開示の方針等を、投資家向けに明示していないところも、あります。

そこで、本寄稿においては、国内の主要ソーシャルレンディング事業者に関し、借り手情報開示の進捗状況を、整理して参りたいと思います。

SBIソーシャルレンディング

SBIソーシャルレンディングの匿名化解除はいつから?

引用元:SBIソーシャルレンディング

3万人を超える投資家を抱え、国内最大級のソーシャルレンディング事業者のうちの1社である、SBIソーシャルレンディング
同社は、2019年5月16日、「ソーシャルレンディングにおける借手開示対応の開始について」と題するリリースを公開し、以後、借り手企業に関する具体的情報開示を、順次開始する旨を明らかにしました。

参考:
ソーシャルレンディングにおける借手開示対応の開始について|SBIソーシャルレンディング

同リリース以降に組成・公開されたファンドにおいては、

SBIソーシャルレンディングの借り手開示はいつから02

引用元:SBIソーシャルレンディング「SBISL不動産担保ローン事業者ファンドNeo 1号」https://www.sbi-sociallending.jp/pages/clon1_fund

上掲要領にて、「(投資家登録完了済の)投資家限定情報」として、借り手企業に関する情報の開示が行われています。

参考:
SBIソーシャルレンディング(公式サイト)

クラウドクレジット

クラウドクレジットの借り手開示はいつから

引用元:クラウドクレジット

多数の海外向け案件が組成・公開されている、クラウドクレジット
伊藤忠商事や第一生命といった大企業からの出資でも知られています。

同社においては、2019年5月17日、「当社の貸付先匿名化解除に関わる情報公開の方針につきまして」というプレスリリースを発表。
借り手企業に関する具体的情報の開示を進めていくことが公表されています。

参考:
当社の貸付先匿名化解除に関わる情報公開の方針につきまして|クラウドクレジット

プレスリリースによると、現在、

  • 匿名組合契約関連書面の変更手続き等、及び、
  • 既存の借り手企業からの同意取得プロセス

を進めているところ、とのことですので、以後早期のうちに、借り手企業に関する具体的情報の開示が行われるものと期待されます。

参考:
クラウドクレジット(公式サイト)

OwnersBook

OwnersBookの借り手開示はいつから

引用元:OwnersBook

東証マザーズ上場企業「ロードスターキャピタル株式会社」が運営するソーシャルレンディングサービス、OwnersBook
全てのソーシャルレンディング案件に、国内不動産担保が設定されていることでも、投資家から定評を得ています。

同社の場合、本日時点では、匿名化廃止に関する具体的スケジュールの公表が為されていませんが、運営会社「ロードスターキャピタル株式会社」から公開されたリリース「融資型クラウドファンディングに関する金融庁からの回答に関するお知らせ」によると、金融庁からの公式見解・回答を引き出した、冒頭の「ノーアクションレター制度を用いた照会」を行った事業者こそ、ロードスターキャピタル株式会社であった旨が記されています。

昨今ソーシャルレンディング業界で生じている問題は、運営会社の管理体制の不備もありますが、当局からの当該指導を意図的に悪用したとの疑念を抱かざるを得ない事例も多数あり、匿名化・複数化の運用については改善していく必要があると強く考えておりました。
そのため、当社は、2019年3月に関係協会と連名で金融庁にノーアクションレターを提出しましたところ、本日金融庁より回答を頂きましたので、ご報告申し上げます。


引用元:ロードスターキャピタル株式会社「融資型クラウドファンディングに関する金融庁からの回答に関するお知らせ」https://loadstarcapital.com/ja/news/news2019-03-18.html ※文中の太字加工は当サイトによる。

参考:
融資型クラウドファンディングに関する金融庁からの回答に関するお知らせ|ロードスターキャピタル株式会社

こうした事情を考慮すれば、OwnersBookにおいても、他の主要ソーシャルレンディング事業者と同様、比較的早期のうちに、借り手企業の実名化に対応をしてくるのではないか、と、推察しています。

参考:
OwnersBook(公式サイト)

Funds

Fundsの借り手実名化はいつから

引用元:Funds

「1円から投資できるソーシャルレンディングサービス」として、投資家の人気を集めている、Funds
同サービスの運営会社「株式会社クラウドポート」は、2019年3月18日、「貸付投資のFunds、匿名化解除に対応し貸付先の企業名などの公開方針を発表」とのプレスリリースを発表。
同リリース内において、2019年4月以降に公開するすべてのソーシャルレンディングファンドにおいて、借り手企業に関する具体的な情報を開示する旨を公表しています。

参考:
貸付投資のFunds、匿名化解除に対応し貸付先の企業名などの公開方針を発表|株式会社クラウドポート

実際に、組成・公開されている、複数のソーシャルレンディングファンドにおいて、

fundsの借り手開示はいつから

引用元:Funds「イントランス・バケーションズ 京町家ファンド#1」https://funds.jp/fund/detail/8 ※赤い囲み線は、当サイトの加筆による。

上掲要領にて、「ファンド組成企業」とは別に、実際の「借り手企業」に関する商号情報等が、開示されています。

参考:
Funds(公式サイト)

maneo

マネオの借り手開示はいつから

引用元:maneo(https://www.maneo.jp/)

国内ソーシャルレンディング業界を代表するサービサーの1社、maneo
しかし、残念ながら、本日時点では、

  • 借り手に関する情報の「匿名化」が継続されている状態であり、
  • 以後の開示方針についても、公表されているリリース等がありません。

実際、直近にて公開されていたファンドにおいても、

マネオの借り手開示はいつから02

引用元:maneo「不動産担保付きローンファンド2139号」https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=7200 ※赤い囲み線は、当サイトの加筆による。

上掲のように、借り手企業(=maneoの関連会社)、及び、最終債務者(=maneoの関連会社から資金融資を受ける、実質的な債務者)、双方に関して、社名が匿名化(イニシャル表記のみ)されている状態です。

参考:
maneo(公式サイト)

ソーシャルレンディング各社は、いちはやく、借り手情報開示を

ソーシャルレンディングファンドが、無事に期限通りの満期償還を迎え得るか、どうか、は、借り手企業からソーシャルレンディング事業者に対する元利金返済が、平和裏に、各期限通りに、履行されるか、否か、に、依拠しています。
すなわち、借り手企業に関する具体的な情報は、投資家が、各ファンドへの出資是非の検討を行うにあたり、本来、欠かすことの出来ないものです。

そして、2019年3月の、金融庁からの公的見解発表によって、国内ソーシャルレンディング業界を長らく悩ませてきた、「借り手に関する情報を、投資家に対して開示出来ない」というジレンマは、その法的根拠を失いました。
換言すれば、国内ソーシャルレンディング事業者としては、社内体制(及び、既存の借り手企業との折衝)が完了すれば、いつでも、投資家に対し、借り手企業の具体的情報の開示を行うことが出来ることとなりました。

本寄稿にて確認してまいりましたように、一部の有力ソーシャルレンディング事業者においては、早くも、投資家向けの、借り手情報開示を、積極的に推進しています。

こうした状況下であるにも関わらず、依然として、投資家に対し、借り手企業に関する具体的な情報の開示を躊躇している事業者は、ごく早期に、投資家からの信を失い得るのではないか、と、個人的には、推察しています。

既に借り手情報開示を開始、ないしは、開示方針を公表している、SBIソーシャルレンディングや、クラウドクレジットFunds、といった事業者に続き、国内の各ソーシャルレンディング事業者においては、是非速やかに、借り手企業に関する具体的な情報の全面開示に踏み切っていただきたいと、一(いち)ソーシャルレンディング投資家として、強く願います。

情報開示、すなわち、透明性の向上こそが、投資家からの底堅い信頼を生み、そして、そうした信頼関係の広がりこそが、国内ソーシャルレンディング業界を、さらに成熟させる、大切な一要素となるものと、信じているからです。

それでは、本寄稿はここまで。
拙文に最後までお目通しを頂き、ありがとうございました。

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