【種類別】ソーシャルレンディングの危険性を科学する。

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約3年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

高利回りで話題のソーシャルレンディング投資ですが、投資である以上、一定の危険性を伴います。
本記事においては、ソーシャルレンディングの危険性について、

  • 危険性の概要・種類
  • 危険性が実現してしまった具体例
  • 私が考え、実践している、それぞれの危険性の、実践的な軽減策

に焦点を当て、考察していきましょう。

ソーシャルレンディングの危険性の概要・種類を知る

ソーシャルレンディングの危険性の概要・種類を把握することが欠かせません。

敵を知れば、百戦危うからず。まずは、ソーシャルレンディングの危険性の概要を掴みましょう。

ソーシャルレンディング投資において考慮すべき危険性は、大きく分けて下記の2つに分類されます。

  1. ファンドリスク
  2. 事業者リスク

まずは、それぞれの危険性の概要を把握しておきましょう。

ソーシャルレンディングの危険性その1【ファンドリスク】の概要

本記事執筆本日現在、日本国内には20社以上のソーシャルレンディング会社があり、
それぞれのソーシャルレンディング会社が、日夜、大量のファンド(=案件)を組成しています。

わたしたち個人投資家は、各案件への出資検討に際しては、
各案件の内容をしっかりと読み込み、特に危険性には十全に注意を払ったうえで、慎重に、投資是非の判断を行う必要があります。

この投資是非の判断にミステイクがあった場合や、
投資是非の判断そのものにはミステイクは認められないものの、社会的・マクロ的な要因に(多くの場合は、運悪く、)巻き込まれることによって、
出資中のソーシャルレンディングファンドが、延滞や、最悪の場合、デフォルト・貸し倒れ、という憂き目に遭う危険性があります。

また、そのような事態までは至らずとも、
満期償還を迎えたソーシャルレンディングファンドの最終的な成績(損益)が、マイナス、すなわち、元本割れとなってしまう、という危険性も、あり得ます。

こうした危険性については、ソーシャルレンディング投資家の間で、「ファンドリスク」と呼ばれています。

ソーシャルレンディングの危険性その2【事業者リスク】の概要

固有の案件にトラブルが発生する「ファンドリスク」とは異なり、
複数の案件を組成・提供しているソーシャルレンディング会社自体が、不適切な業務運営を行っている、という危険性を意味するのが、「事業者リスク」です。
本記事執筆本日に至るまでの間に、日本国内では、3つのソーシャルレンディング会社が、運営上の問題を金融庁から指摘され、結果として、行政処分を受けています。

ソーシャルレンディング会社が実際に行政処分を受けると、その後、当該ソーシャルレンディング会社が新規組成を予定していた借り換えファンドの組成や資金応募が進まない、等のトラブルが発生し、
わたしたち個人投資家としては、当該ソーシャルレンディング会社の案件に出資していた場合、結果として、延滞や貸し倒れに巻き込まれる危険性が大きくなります。

ソーシャルレンディングの危険性の具体的な実例を知る

ソーシャルレンディングの危険性の具体的なケーススタディに入ります。

ここからは、各インシデントの具体的なケーススタディに入ります。

ここからは、ソーシャルレンディングの危険性のタイプごとに、これまで実際に発生した、具体的なトラブルケースを見てみましょう。

ソーシャルレンディングの危険性その1【ファンドリスク】の具体的ケース

まずは、「ファンドリスク」タイプの危険性が、具体的に現実のものとなって仕舞ったケースから、見ていきます。

クラウドクレジットの、為替ヘッジ無ファンドの場合

私も多額の資金を出資させて頂いてるソーシャルレンディング会社、クラウドクレジット。
中でも私が多く出資させて頂いているファンドに、「東欧金融事業者支援ファンド」、というものがあります。
満期償還歴も非常に多く、私も好んで出資しているファンドなのですが、
このように、為替ヘッジ付と、為替ヘッジ無タイプの双方が用意されていることが分かります。

ソーシャルレンディングの危険性のうち、ファンドリスクを説明すべく、クラウドクレジットのファンド例を掲出。
引用元:クラウドクレジットのファンド一覧から引用

同じ「東欧金融事業者支援ファンド」でも、上段の82号は為替ヘッジ付であり、円建て(JPY)。
これに対して、下段の78号は、為替ヘッジが付かないユーロ(EUR)建てとなっていることが分かります。
為替ヘッジ手数料が無い分、為替ヘッジ無の78号のほうが、為替ヘッジ付の82号より、想定利回りが若干高利となっていることも特徴です。

このように、「為替ヘッジ有り」「為替ヘッジ無し」の2タイプが用意されている、「東欧金融事業者支援ファンド」ですが、
このうち、「為替ヘッジ無し」のタイプについては、

  • 現地通貨建ての運用そのものは、予定通り、順調に運用・償還されたのだが、
  • 為替変動の結果により、日本円建ての最終損益がマイナスとなって仕舞った、

というケースが実在します。

最も分かりやすい例が、「東欧金融事業者支援ファンド1号」(為替ヘッジ無し)です。
同ファンドの満期報告書がこちら。

ソーシャルレンディングの危険性をご説明すべく、クラウドクレジットの第1号ファンドを例示
引用元:https://crowdcredit.jp/operation/entry/3/6

満期報告によると、

  • 予定子会社返済利息額である12,355.36ユーロに対して、実際に実現した子会社返済利息額は、満額である12,355.36ユーロを達成。
  • しかし、運用開始時に1ユーロ当たり123.60円だった換算レートが、運用終了時に1ユーロ当たり112.49円へと変化(=円高・ユーロ安)した結果、
  • 円建てでの運用損益は、358,827円の損失となってしまった。

上記顛末が綴られています。

それにしても、1ユーロ当たり123.60円から、同じく1ユーロあたり112.49円への円高・ユーロ安進行とは、尋常ではありません。
その原因は、2016年6月に実施された国民投票の結果決定した、ブレグジットでした。
※東欧金融事業者支援ファンド第1号の運用期間は、2016年2月25日から2016年9月25日です。

これに対して、ほぼ同じ時期(2016年3月16日から2016年10月25日)に貸付・運用された、「【為替ヘッジあり】東欧金融事業者支援ファンド1号」の場合は、
募集時期待利回(9.0%)とほぼ同程度である、10.0%の収益率を実現しています。
(※情報ソースは、「【為替ヘッジあり】東欧金融事業者支援ファンド1号」の満期報告書です)

なお、クラウドクレジットの他ファンド例をよく検証していくと、為替ヘッジ無しタイプのほうが、為替ヘッジ有りタイプのファンドよりも、最終的なリターンが大きい、というケースも、散見されます。
「為替ヘッジが付いていたほうが絶対に成績が良い」とは、決して言い切れないわけです。
なぜなら、「為替ヘッジ有り」タイプの場合、ソーシャルレンディング投資家が為替による差損を被ってしまう危険性をヘッジする反面、為替差益を得る可能性も、捨て去ってしまっているから、です。

このため、実際に「為替ヘッジ有り」で運用するか、「為替ヘッジ無し」で運用するか、は、わたしたち個人投資家の判断に委ねられているわけですが、
私は基本的に、「為替ヘッジ有り」タイプで運用するようにしています。

少なくとも、ソーシャルレンディング投資においては、差益を享受する可能性を放棄しても尚、差損を被る危険性をヘッジすることの効能は、余りある、と判断しているため、です。

maneoの不動産担保付きファンドの場合

ソーシャルレンディングの危険性を語るうえで、マネオの過去ファンドの延滞を検証します。
引用元:https://www.maneo.jp/apl/information/news?id=7549

本記事執筆本日現在、maneoの、「不動産事業者CU社」を最終債務者とする案件において、延滞が発生しています。

延滞の発生が多数号に渡っているため、詳説は割愛致しますが、

  • いずれの案件においても、大なり小なり、不動産に担保権が設定されており、
  • 担保権の設定順位は第一位。
  • また、各案件のLTV値(=Loan to Value。担保物の評価額に対する貸付額の割合を示します。LTV値が低ければ低いほど、基本的には危険性の小さいファンド、と解されます)は、決して、法外に高いわけではない。
  • それにも関わらず、担保物の換価(=売却)による返済原資の確保が難航している。

という特徴があります。

基本的に、不動産担保付き案件の場合、無担保案件と比べ、万が一の延滞発生時、担保権に基づき、不動産を換価する権利があるわけですから、債権回収シーンにおいて、有利な立場にあります。
ましてや、設定されている担保権が、第一順位抵当権(もしくは、第一順位根抵当権)である場合、何者にも劣後することなく、換価できる、という立場にあります。

そうした状況下であるにも関わらず、なぜ、換価・債権回収に、ここまで手間取っているか、というと、
スルガ銀行の不正融資問題以来、各金融機関からの、不動産投資向けの融資審査が、極めて厳しくなっている、という事情が影響している可能性があります。

担保物である不動産を市場で換価(=売却)するためには、当然、買い手が必要です。
そして、買い手が余程の資産家で無い限り、買い手は金融機関等から、資金調達を行う必要があるわけですが、
この資金調達の部分が、市況の影響を受けて硬直すると、当然、換価が滞り、必然的に、スムースな担保権執行・債権回収が、阻害されてしまう危険性があります。

このように、マクロ的な要因によって、
平常時であれば十分に保全効能を得られるはずのでソーシャルレンディングファンドですら、平和裏な満期償還・元本返済が難しくなってしまう、という危険性は、無視できぬところです。

キャッシュフローファイナンスのファンドの場合

ソーシャルレンディングの危険性を概説するうえで、キャッシュフローファイナンスの延滞案件を解説します。
引用元:https://www.cf-finance.jp/information/news?id=520

こちらは、「キャッシュフローファイナンス」というソーシャルレンディング会社の案件にて、延滞が発生して仕舞った時の情報リリースです。
実際に延滞が発生した案件のスキーム図を見てみると、

ソーシャルレンディングの危険性を考慮する上で、ファンドのスキーム図を確認します。
引用元:https://www.cf-finance.jp/fund/detail?fund_id=353

このように、
延滞を発生させてしまった最終債務者たるKB社は、手元キャッシュフローの改善を図るため(=要は、資金繰りを行うために)、
キャッシュフローファイナンス社の関連会社たるAH社に、
自社の在庫商品を、一旦、代金一括払いで買い取ってもらって、
その後、改めて、AH社から、当該在庫商品を、毎月一定数ずつ、買い戻していく、というスキームが組まれていることが分かります。

特段違法性のない、単なる資金繰り策であることは分かりますが、
それにしても、いささかいびつな資金繰り策であることは、一目瞭然かと思います。
逆に言えば、それだけ、本事業にとっての最終債務者たるKB社の手元資金流動性は、低い状態にあった、
より端的に言えば、お金に困っている状況だったのではないか、
すなわち、財務的に危険性の高い状態にあったのではないか、という点が、推察されるものと思います。

基本的に、各ファンドの平和的な満期償還のためには、最終債務者の順調な事業運営は欠かせません。
資金繰りに窮している最終債務者の場合、ほんの小さなインシデントで、完全にキャッシュフローがショートしてしまう危険性を具備しています。

このように、案件のスキーム上、明らかに経営状態の悪い、資金繰りに窮しているような会社が、最終債務者として、ファンドの平常運行のカギを握ってしまっている場合、
当該ソーシャルレンディングファンドは、大きな危険性を含有してしまう事となりえます。

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