ソーシャルレンディングの「次の一手」を考える
個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。
個人投資家を中心に、人気の広がりを見せる、ソーシャルレンディング。
2019年3月には、金融庁から、借り手情報開示に関する公的見解が公表され、ソーシャルレンディング事業者各社において、透明性向上に向けた取り組みが進められています。
そんなソーシャルレンディング業界における、「次の一手」は、どのようなものとなり得るのか。
私の考えを、綴らせて頂ければ、と存じます。
ソーシャルレンディングの次の【一手】借り手情報完全開示
長らく、ソーシャルレンディング事業者から融資を受ける「借り手企業」に関する情報が、投資家に対し、匿名化・非開示、とされてきた、ソーシャルレンディング業界。
しかし、2019年3月、ソーシャルレンディング業界の監督官庁である、金融庁から、
「ソーシャルレンディング事業者としては、ソーシャルレンディング投資家に対し、借り手企業に関する情報を開示しても、差支えない」
とする、公的見解が、発表されました。
参考:
「ソーシャルレンディング投資家は貸金業者に該当せず」金融庁の公式見解発表|ソーシャルレンディング・ラボ
これにより、国内ソーシャルレンディング事業者各社において、投資家への、借り手情報開示に向けて、取り組みが始まっています。
- SBIソーシャルレンディング:
借り手企業に関する情報開示を開始済。 - クラウドクレジット:
借り手情報の開示方針を公表済み。 - SAMURAI:
実名化案件の公開を開始済。 - クラウドバンク:
借り手情報について、「会員限定情報」として公開開始済。 - Funds:
借り手情報開示に関する対応を公表済み。
投資家保護の観点から見れば、借り手情報の開示は、必要不可欠とも言えることであり、今後、投資家要請・監督官庁要請に応える形で、この流れが、ソーシャルレンディング業界全体に波及していくものと、推測しています。
逆に言えば、SBIソーシャルレンディングやクラウドクレジットといった、業界大手企業が、借り手情報開示を進めていくにも関わらず、敢えて、借り手情報の非開示・匿名化に固執するソーシャルレンディング事業者があるとすれば、そうした事業者は、時代の趨勢に合わせ、淘汰されていくのではなかろうか、と、個人的には、考えています。
なお、借り手情報開示が進めば、それは確かに、透明性向上・投資家保護態勢の強化、を意味することとなりますが、あわせて、各ファンドへの投資判断における、投資家の責任範囲もまた、広がることとなります。
ソーシャルレンディング投資家としても、更なる情報収集・選球眼の鍛錬が求められることとなりますので、私自身、一(いち)ソーシャルレンディング投資家として、その点は、肝に銘じておきたい、と考えています。
ソーシャルレンディングの次の【二手】自動積立の実現
現在、投資家がソーシャルレンディングファンドに投資を行う場合、自らファンド選定を行ったうえで、都度、出資申込の手続きを行う必要があります。
反面、若年投資家を中心に、ウェルスナビやテオといった、自動投資・自動積立を行ってくれる、ロボアドバイザーサービスの人気が高まっています。
ソーシャルレンディング業界においても、借り手情報の開示が進めば、
- 借り手企業の財務状況や、
- 担保物の評価、
- これまでの過去ファンドの償還実績
等を情報源とし、各ファンドのリスク・リターンのバランスについて、ある程度、計量的・機械的に把握できるようになるでしょうから、ゆくゆくは、各ソーシャルレンディング投資家それぞれのリスク許容値に応じて、ファンドの自動レコメンド機能が提供されるようになる日も、近いのではなかろうか、と推察しています。
そして、レコメンドが自動化されれば、続いては、各投資家の月次での余裕資金量に応じた、自動積立機能を提供するソーシャルレンディング事業者も、出てくるかも知れません。
実際問題として、毎月定額の自動積立機能が提供されるようになれば、投資家としては、ドルコスト平均法の効能によって、ソーシャルレンディング・ポートフォリオ全体のリスク値を平均化することが出来るようになることが見込まれ、これは、特に、中・長期的な視座でソーシャルレンディング投資に取り組みたい、と考える投資家にとっては、大きなメリットとなり得ます。
現に、クラウドクレジットの場合、2018年11月末の時点で、ファンドレコメンド機能の開発の本格化について公表しています。
参考:
クラウドクレジット、ファンドレコメンド機能の開発を本格化|クラウドクレジット
リリース内では、自動再投資や、自動積立機能の搭載を見据えていることが明らかにされており、今後の展開に、期待が高まります。
ソーシャルレンディングの次の【三手】個人向け融資の復活
現在、ソーシャルレンディングファンドの主たる借り手は、あくまでも、企業(法人)です。
一部のソーシャルレンディング事業者においては、個人事業主への融資も行われているようですが、例外的です。
特に、一般個人消費者向けの融資は、ソーシャルレンディング事業者から、行われている様子はありません。
かつて、maneo(マネオ)等一部のソーシャルレンディング事業者において、個人向け融資が取り扱われていたことがあったようですが、借り手管理の難しさ等から、現在は、完全に下火となってしまっています。
ソーシャルレンディング事業者の立場から考えれば、
- 資金需要額の小さい、個人顧客相手に、逐一、与信業務等を執り行っているよりは、
- 1案件で多額の資金が動く、法人企業向け案件に特化したほうが、能率が良い、
ということなのでしょうが、ソーシャルレンディングの本来の起源である、ピア・ツー・ピア・レンディング(P2Pレンディング)、すなわち、個人間融資、の理念に立ち返れば、一抹の物足りなさを禁じ得ないところです。
しかしながら、今般、
- 個人の銀行口座取引履歴や、クレジットカード使用履歴を取り込み、データ化する、家計簿アプリケーションサービスの台頭や、
- 各個人の金融上の与信成績(クレジット・スコア)を自動算出する、「J.Score」等のスコアリングサービスの隆興を思えば、
近い将来、個人向けの与信業務は、更なる自動化・効率化が進むことが、期待できます。
すると、ソーシャルレンディング事業者各社においても、
- 「与信スコアリング上位10パーセントのみを借り手とするソーシャルレンディングファンド(=利回りやや低)」や、
- 「与信スコア上位30パーセント以上10パーセント未満向けに、比較的高利にて融資するファンド」
等と言った商品組成が、比較的容易に行うことができるようになるはずであり、これが実現すれば、かつて一度頓挫した、個人向け融資ファンドが、ソーシャルレンディング業界において、リニューアルされた形で、再登場してくる可能性があります。
この場合、投資家保護のみならず、借り手保護についても、関連法規等によるフォローアップが必須となりますが、奏功すれば、ソーシャルレンディング・マーケットの、更なる拡大へとつながり得る、有力な、「次の一手」となり得る物と思います。
まとめ
借り手情報開示を追い風に、更なる市場規模拡大が予想される、国内ソーシャルレンディングの、「次の一手」。
わたしも、一(いち)投資家として、しかと、見守って参りたい、と考えております。
それでは、本寄稿はここまで。
拙文に最後までお目通しを頂き、有難うございました。
投資家からも、資金需要事業者からも、高い注目を集める、ソーシャルレンディング。
しかしながら、業界の成熟は道半ばであり、業界を俯瞰すると、いくつかの「危険会社」の存在も気にかかります。
ソーシャルレンディング投資スタートにあたっては、あらかじめ、こちらのコンテンツも、ご参照下さい。
↓
ソーシャルレンディング【おすすめ会社&危険会社ランキング】最新版
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