SBIソーシャルレンディングに行政処分|1か月間の業務停止命令など

1,600億円を超える累積融資実績を持ち、国内ソーシャルレンディング業界のリーディング・カンパニーとしての地位を築いてきたSBIソーシャルレンディングに対し、関東財務局は8日、業務停止命令を含む行政処分を下した。

SBIソーシャルレンディングとは

国内金融業界大手「SBIホールディングス」の傘下企業である、SBIソーシャルレンディング株式会社が運営。
2011年のサービス開始以来、2008年から先行していたmaneo(maneoマーケット株式会社運営)とともに、国内ソーシャルレンディング業界の規模拡大に寄与してきた。

サービス開始来の累積融資実績は、1,600億円を超えており、行政処分以降ファンド募集が低調だったmaneoを抜き、国内業界1位。
本人確認済で、退会分を控除した投資家登録数は、6万名を超えており、国内ソーシャルレンディング業界のリーダー的存在と言われてきた。

しかし、2021年2月、「融資先の事業運営に、重大な懸案事項が生じている可能性がある」として、突如、外部弁護士等からなる、第三者委員会の設置を公表。
その後、一部ファンドの分配・償還遅延を発表し、2021年4月には、未償還元本相当額の償還に向け取り組むことを公表。
同月末には、第三者委員会からの調査結果報告を踏まえ、再発防止策の提示等を行っていたが、5月24日、これ以上のソーシャルレンディング事業の継続は困難である、として、自主的な廃業(ソーシャルレンディング事業からの撤退)を表明していた。

行政処分の内容は

関東財務局によれば、SBIソーシャルレンディングの運営状況に認められた問題点は下記の通り。

  • ファンドへの投資募集において、虚偽の表示をした行為:
    一部の不動産開発案件、及び、太陽光発電所開発案件において、貸付先が、ファンド表示の通りの用途に資金を用いておらず、SBIソーシャルレンディングとして、十分な確認が行われていなかった。
  • ファンドへの投資募集において、投資家の誤解を招く表示があった:
    SBIソーシャルレンディングは、ファンドへの投資募集において、投資家に対し、「融資先に対する貸付審査、及びモニタリング」を行っている、と表示していたが、実際には、適正な融資審査、及びモニタリングは、実施されていなかった。
  • 管理上の問題点:
    SBIソーシャルレンディングにおいて、営業利益を優先するあまり、コンプライアンスや、内部管理体制が軽視された状態があった。
    また、融資先に対する厳正な融資審査、及び、貸出後の適切なモニタリングが、講じられていなかった。

SBIソーシャルレンディングに対する行政処分の内容としては、1ヶ月間の業務停止命令、及び、問題点の究明等を含む業務改善命令となった。

ソーシャルレンディングとは

貸金業と、金融商品取引業(主に、第二種金融商品取引業)の資格を持つ事業者が、新たな融資プロジェクトのための資金(融資原資)を、インターネットを介したクラウドファンディング形式で調達する行為を、「ソーシャルレンディング」という。
投資家は、ソーシャルレンディング事業者の募集するファンドに対して出資することで、貸金業者の融資事業に相乗り投資を行うことが出来る。

一般的に、年率換算で数パーセント~10パーセント弱程度の高い期待利回りが提示されており、投資家にとっては魅力的に映るが、下記のような問題点もある。

  • 情報の透明性が低い:
    国内ソーシャルレンディング業界では、長きに渡り、主に貸金業法への抵触を避ける狙いから、投資家に対し、融資先企業の具体的な情報が匿名化・非開示とされてきた。
    2019年に金融庁が、「ソーシャルレンディングに投資をする行為は、貸金業行為にあたらない。ひいては、ソーシャルレンディング事業者は、投資家に対し、融資先に関する情報を公開しても差支えない」とする、公式見解を発表してからは、情報公開に積極的な一部のソーシャルレンディング事業者を中心に、情報開示が進んできたが、今なお、借り手匿名化を継続している事業者も存在する。
  • 事業者に高度な自治・内部管理が求められる:
    ソーシャルレンディング事業者は、「投資家保護」と、(貸金業法にて求められる)「借り手保護」を両立する義務を負っている。
    自己資金で融資を行う場合と比較すると、投資家に対する説明義務などを考慮すれば、事業者の負担は格段に大きい。
    特に、悪質な借り手に対して一旦多額の融資をしてしまうと、「(借手の経営状況が悪いのは分かっているが)新たな借換ファンドの募集に協力しないと、既存ファンドが貸し倒れとなり、投資家に多大な被害が講じる」という、ジレンマにとらわれることにもなりかねず、構造的な難しさがある。

これまでに行政処分を受けたソーシャルレンディング事業者は

国内ソーシャルレンディング業界の歴史はまだ浅いが、監督官庁から行政処分を受けたソーシャルレンディング事業者は少なくない。

  • 日本クラウド証券:
    ソーシャルレンディング・サービス「クラウドバンク」の運営会社と知られる日本クラウド証券は、2015年7月と2017年6月に、関東財務局から行政処分を受けている。
  • maneoマーケット:
    国内ソーシャルレンディング業界黎明期からサービス展開をしていたmaneoだが、2018年7月、行政処分を受けることに。
    以後、maneoでは、ファンドの延滞が続出し、複数の投資家が運営会社を提訴する事態に発展している。
  • ラッキーバンク:
    2018年と2019年に、当時の運営会社であるラッキーバンク・インベストメント社が行政処分を受けることに。
    このうち、2019円行政処分では、金融商品取引業の登録が取り消されている。
  • エーアイトラスト:
    ソーシャルレンディング・サービス「トラストレンディング」の運営会社。
    2018年12月、2019年3月に行政処分を受け、このうち後者で、金融商品取引業の登録が取り消しに。
  • みんなのクレジット:
    2017年3月に行政処分。代表者の借入金返済にファンド資金が流用されるなど、杜撰な管理体制が明らかに。

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