※延滞発生【ソーシャルレンディングファンド分析】クラウドリース「ハロウィンローンファンド 【第2弾】2号」の場合

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを題材に、各社の特徴や、ファンドごとのリスク・リターンのバランス等を検証する本企画。
今回は、クラウドリースが2018年10月に資金募集を行ったソーシャルレンディングファンド、「ハロウィンローンファンド 【第2弾】2号」を題材に、読み解きを進めて参りましょう。

本ソーシャルレンディングファンドの概要

同社のホームページから確認した、本ファンドの概要としては、下記の通りです。
なお、案件1、及び案件2のうち、資金の大半を融資する「案件1」のほうに関してのみ、下記、詳説をさせて頂きます。

本ソーシャルレンディングファンドの詳細情報ページのURL

こちらです。

https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=3009

本ソーシャルレンディングファンドのスキーム図


引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=3009

資金の借り手

クラウドリースにとっての直接的な債務者は、事業者Fです。
ただし同社はクラウドリースの関連会社であることが明記されていますから、本事業の実質的な債務者は、事業者SBである、と見るのが素直です。

貸付資金の総額

本ファンドからの貸付は、400万円となります。
ただし、複数号のファンドを通じ、総額では、4,000万円の融資を予定している、とのこと。

借り手の資金使途

事業者Fは、クラウドリースからの融資金を原資にして、事業者SBから、事業者SBの営業用設備等を、クラウドリース関連会社(商社)を経由したうえで、買い取ります。

本ソーシャルレンディングファンドの貸付・運用の期間

11カ月の貸付・運用となります。

設定担保

担保が供されることはありません。

返済原資

事業者SBは、事業者Fへと売却した営業用設備等を、その後、事業者Fから、改めて、代金分割支払いによって、買い戻します。
この際の支払いは、事業者SBが振り出す約束手形によって、行う、とのこと。
事業者Fとしては、そうして受け取った分割代金を原資に、クラウドリースへの返済を行う、とのこと。

わたしたち個人投資家の期待利回り

11パーセント、とのこと。

本ソーシャルレンディングファンドの資金募集達成度は

クラウドリースのソーシャルレンディングファンド分析
引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=3009

100%の資金募集を達成したファンドです。

運用・返済状況は

本ソーシャルレンディングファンド「案件1」の正式名称は、「【事業者F社向け 第187弾】事業性割賦販売ローンへの投資(11ヵ月物)(5985)」です。

クラウドリースのソーシャルレンディングファンドの正式名称
引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=3009

別号を含む本ソーシャルレンディングファンドシリーズにて、延滞が発生してしまっています。

クラウドリースで、延滞が発生したソーシャルレンディングファンドの情報。
引用元:https://www.crowdlease.jp/information/news?id=3092

本ソーシャルレンディングファンドのポイント

私が考える、本ソーシャルレンディングファンドのポイントは、下記の通りです。
なお、あくまでも、私の個人的な見解です。

単純な期待利回りは、確かに高利と言える。

ファンドとしての良悪や、リスクとのバランス、といった要素を、一切排し、単純に、本ファンドの利回りのみを観察する場合、11パーセント、という利回りは、昨今のソーシャルレンディング業界において、十分に高利と言えます。

最終債務者たる事業者SBの経営状況については、不安感を禁じ得ない。

事業者SBは今回、自社の営業用設備等を、一旦、事業者F(クラウドリース関連会社)に売り払ったうえで、その営業用設備等を、改めて、事業者Fから、代金分割支払いで、買い戻します。
一見、不合理な行動に見えますが、この行動は、事業者SBによる資金繰り策である、と言えます。

ご自身で事業を営んだことがお有りの方や、企業で財務関連のお仕事を為さったことのある方であれば、お分かりかと存じますが、このような資金繰り策は、私企業が検討しうる数多くのファイナンス手法の中で、選択される順番としては、かなり後の方、という資金繰り策となります。
要は、一般的な私企業の場合、よほどのことが無い限り、このような(一見不合理に見えるような)資金繰り策は、実施しません。

また今回、事業者SBの1店舗分の売上高のうち粗利益相当額は、営業日毎に、LLP(有限責任事業組合)名義の預金口座に入金される仕組みとなっている、とのこと。
かつ、事業者F(クラウドリース関連会社)以外の債権者は、直接的に当該預金口座の残高を抑えることは出来ない、とのこと。
言いたいことはよくわかりますが、実務上、事業者SBの立場から見れば、これは、かなり高圧的なスキーム設計、と映ったはずです。
逆に言えば、それだけ高圧的なスキームについても、甘受しなければならぬほど、事業者SBの資金繰りの状況は、窮している、という恐れが垣間見えます。

いよいよ、事業者SBの経営状況が、心配に感じられるわけです。

クラウドリースから事業者Fへの貸付はノンリコースローンであるため、元来、本事業の平和的な満期償還のためには、事業者SBの順調な事業運行が欠かせない。

まず、下記の明記があります。

Crowd Lease社と事業者Fの融資契約は「責任財産限定特約付」融資(ノンリコースローン)の取扱いとして対応します。
事業者Fの返済原資は、事業者Fを売主・事業者SBを買主とする本件売掛債権に限定され、

事業者FがCrowd Lease社に返済できなくなった場合でも、事業者Fの保有する他の財産に対する強制執行はできません。
引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=3009

すなわち、事業者SBの事業活動がとん挫すれば、即座に、事業者SBから事業者Fへの支払いはもとより、事業者Fからクラウドリースへの返済についても、完全にフリーズします。

  • LLP名義の預金口座に、営業日毎に、粗利益相当額が入金されてくる、といったところで、事業者SBが経営破綻してしまえば、そのような入金は、当然、ストップするものと思われます。
  • 約束手形、という支払いスキームが有しうる、債務者(※この場合、約束手形の振り出し人である、事業者SB)への心理的プレッシャーに関しても、そもそも、事業者SBが、金融機関からの信頼を事業に欠かせぬ物と考えていなかった場合や、金融機関からの信頼を一顧だにしない(もしくは、出来かねる)ような経営環境に置かれた場合は、やはり、有名無実化する恐れがあります。
    そもそも論として、金融機関からの信頼を、現状、十全に勝ち取っている企業であれば、今回のような(一見すると、無茶にも思える)資金繰り策を講じることなく、ごく平易に、自社の不動産や動産を担保に入れ、もっと低利で、資金調達を行うのではなかろうか、とも感じます。

総論

ファンドの表面的な利回りは、確かに、高利ですが、反面、スキーム構造には不安感を禁じ得ぬ箇所が複数存在します。
そうした事情が、今回の延滞という形で、具現化してしまったものと思料しています。

クラウドリース(正確には、クラウドリース関連会社)においては、債権回収に全力を賭し、1日でも早く、そして1円でも多く、投資家諸氏への資金償還を進めて頂きたい、と感じます。

本ソーシャルレンディングファンド検証のまとめ

ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを検証し、各社の特徴や、ソーシャルレンディングファンドごとの特色、そして、ファンド概要の読み解きのヒントを探る本シリーズ。
今回は、クラウドリースのソーシャルレンディングファンド「ハロウィンローンファンド 【第2弾】2号」を題材に、検証をさせて頂きました。

しつこいようで申し訳ありませんが、
本記事文中の表現は、いずれも、私のごく個人的な意見に過ぎません。
その点は、くれぐれも、ご承知おきください。

しかし、あくまでも、その限りにおいて、
少しでも、「これからソーシャルレンディング投資を始めてみよう」とお考えの読者様にとり、
ファンド概要の読み込みの具体例として、ご参考になさって頂ける内容と出来たのであれば、嬉しい限りです。

なお、私は現在、国内23社のソーシャルレンディング事業者に、資金を分散投資中です。
そんな私が、国内23社中、厳選した3社のみ、「おすすめ事業者」としてご紹介しておりますのが、下記の別記事となります。
お時間ございましたら、ぜひご覧ください。

【ソーシャルレンディングのおすすめ会社はどこですか?】23社分散投資中の筆者が、ソーシャルレンディング投資初心者の読者様におすすめする、厳選3社がこちら。

ソーシャルレンディング各社をランキング形式で分析したこちらの過去記事もおすすめです。

【ソーシャルレンディングランキング決定版】利回り・投資対象国・担保設定状況・投資のしさすさ。異なる4つの視座から人気ソーシャルレンディング事業者を徹底ランキング。

主要なソーシャルレンディング事業者を、投資家登録数や累計投融資額も含めた様々なポイントから比較した分析記事はこちらです。

【ソーシャルレンディング各社徹底比較】投資家登録数・累計投融資額・年利平均…。主要ソーシャルレンディング各社を7つの視座から横断比較してみた結果、見えてきた真実とは。

それぞれ、是非、ご一読下さい。

それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会い致しましょう。


本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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