ソーシャルレンディングと早期償還

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

早期償還とは

ソーシャルレンディング事業者が公開しているファンドの概要や、その償還実績を見ていると、
「本ファンドは、早期償還の可能性があります」
「当ファンドは、早期償還となりました」
といった記述を見かけることがあります。

こうして表現されている「早期償還」とは、具体的には、どのような事柄なのでしょう。
どのような原因で発生するものであり、また、私達投資家にとっては、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

ソーシャルレンディング投資にあたって、必ず接することとなる、「早期償還」という言葉。
本寄稿においては、そんな”早期償還”について、掘り下げて参りたいと思います。

早期償還とは

参考:OwnersBookの「練馬区マンション第2号ファンド第1回」の、ファンド募集概要。「早期償還」について、「可」と記されていることが分かります。
引用元:OwnersBook「練馬区マンション第2号ファンド第1回」https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1153/

早期償還の実例

早期償還の実例

引用元:OwnersBook「不動産投資案件一覧」https://www.ownersbook.jp/project/index/all/3/2/

↑こちらは、不動産担保付ソーシャルレンディング「OwnersBook」の、償還完了済ファンドの一例です。

  • 「案件ステータス」について、「期限前償還完了」(※)と記載されており、
  • 予定されていた運用期間よりも、確定運用期間(=ファンドが実際に運用された期間)のほうが、短い、
  • すなわち、本来のファンド運用の運用終了期限よりも前に(=早期の段階で)、ファンドの運用が終了した、

というケースが、複数、存在することが分かります。

(※)期限前償還=早期償還

OwnersBookとは

東証マザーズ上場企業「ロードスターキャピタル株式会社」が運営するソーシャルレンディングサービス。
全てのソーシャルレンディング案件に、国内不動産担保が設定されている、という特徴があります。
2018年には、エクイティ型案件の取り扱いもスタート。
個人投資家を中心に、幅広い人気を誇る事業者でもあります。

参考:OwnersBook(公式サイト)

早期償還発生の原因

早期償還発生の具体的な原因としては、そのほとんどが、「借り手企業から、ソーシャルレンディング事業者へと、早期繰上返済が為されたこと」であることが一般的です。

ソーシャルレンディングにおいて、ファンド(=匿名組合)の事業は、借り手企業に対する融資業務です。
また、ファンドから投資家への、分配の原資は、借り手企業が、ファンド(ソーシャルレンディング事業者が営業者)に対して支払った、元利金となります。
こうした事情を考慮に入れると、

  • 借り手企業が、ソーシャルレンディング事業者(=ファンドの営業者)に対し、本来の返済期限よりも前に、早期繰上返済を実行した場合、ファンドの事業(=借り手企業への融資)は、当然、終了を迎えることとなります。
  • 早期繰上返済が完了した時点で、ソーシャルレンディング事業者としては、以後、借り手企業から、利息金の支払いを受け取ることは、当然、出来なくなります。このため、ファンドの事業を速やかに終結させ、投資家への最終分配を行うことが、ソーシャルレンディング事業者にとっても、合理的な選択肢となります。

これらの背景により、借り手企業からソーシャルレンディング事業者に対し、早期繰上返済が為されると、基本的に、それに連動するようにして、ファンドは「早期償還」の対象となることが一般的です。

なお、ありていに言えば、借り手企業がソーシャルレンディング事業者から融資を受ける際の「資金調達金利」は、他の一般的な金融機関から資金調達を行う場合と比べて、高利であることが多くあります。
このため、借り手企業としては、ソーシャルレンディング事業者からの借入実施後、

  1. 事業成就(例:不動産の売り抜け)等や、他の金融機関等の借り換え(リファイナンス)により、いち早く、元金返済原資を確保し、
  2. ソーシャルレンディング事業者からの借入金については、これを早期に返済する(=早期の繰上返済を行う)ことこそが、

健全な財務戦略、という見地からは、ごく穏当な行動となります。

早期償還のメリット

私達個人投資家、及び、借り手企業(=ソーシャルレンディング事業者から融資を受ける企業)、それぞれにとっての、早期償還のメリットとしては、主に、下記のようになりましょう。

投資家にとってのメリット

①資金を早めに取り戻すことが出来る。

私達個人投資家が、ソーシャルレンディング投資を行うにあたり、最も忌避すべきことは、

  • 返済遅延や、
  • 貸し倒れ、

といった事態に巻き込まれることです。

その反面、早期償還というのは、「ファンドが本来の償還期限を迎える前に、資金がファンドから戻ってくる」ことを示すわけですから、

  1. 資金の安全性や、
  2. 流動性、といった観点(※)においては、

当然、歓迎すべき事柄となります。

(※)ソーシャルレンディング投資において、投資家がファンドに投資した資金は、当該ファンドが償還を迎えるまで、ファンド(匿名組合)に拘束されます。すなわち、投資家としては、ファンドの途中解約・現金化が、原則として、出来ません。

②年利換算利回りが向上する場合がある。

ソーシャルレンディングファンドで早期償還があると、年利換算利回りが向上する場合がある。

引用元:OwnersBook「不動産投資案件一覧」https://www.ownersbook.jp/project/index/all/3/2/

↑こちらは、前掲も致しました、OwnersBookの、早期償還済みファンドの、「予定利回り」と、「確定利回り」です。
ご覧になれば一目瞭然ですが、

  • 早期償還(=期限前償還)が為されたファンドの場合、
  • 事前に投資家向けに提示されていた、期待利回り(=予定利回り)と比較し、
  • 実現した利回り(=確定利回り)が、年利換算で、高くなる場合がある、

ということが分かります。
その具体的要因としては、ソーシャルレンディング事業者と借り手企業との間で締結される、金銭消費貸借契約において、早期繰上返済に係る特例(例:早期繰上返済は可とするが、その場合、借り手企業はソーシャルレンディング事業者に対し、一定率の違約金を支払う、等)が定められている可能性があるものと推察されます。

借り手企業にとってのメリット

借り手企業としては、早期繰上返済を行うことにより、ソーシャルレンディング事業者に対して支払う、利息総額(ひいては、返済総額)を、小さくできる、というメリットがあります。
前掲も致しました通り、借り手企業にとって、ソーシャルレンディング事業者からの借入金利は、他の金融機関(例:銀行)からの調達金利と比し(※各種条件面の相違はあれども)、一般的に言って、高利です。
このため、借り手企業としては、早期繰上返済を行うことにより、ソーシャルレンディング事業者からの借入期間を、出来るだけ短縮することが、財務戦略上は、望ましい行動となります。

早期償還のデメリット

私達個人投資家としては、ファンドが早期償還されることによって、「ファンドからの分配金総額が、当初の目論見よりも、小さくなる」という、デメリットがあります。

ソーシャルレンディングファンドが早期償還されることの、デメリット

引用元:OwnersBook「不動産投資案件一覧」https://www.ownersbook.jp/project/index/all/4/2/

↑例えば、OwnersBookの、「品川区オフィス第3号ファンド第2回」。

  • 早期償還によって、運用期間は、元来予定の1年3ヶ月(15カ月)から、5カ月へと、短縮され、
  • 年利換算の利回りは、従前提示されていた4.5%と比し、確定利回りは、5.1%と、向上した、

というケースです。

このファンドに、10万円を投資していた、と仮定します。

  • 元来期待されていた、分配金総額
    =10万円×4.5パーセント×15カ月/12カ月=5,625円(※税引き前)
  • 早期償還によって確定した、分配金総額
    =10万円×5.1パーセント×5カ月/12カ月=2,125円(※同上)

上記計算にある通り、

  1. 年利換算の利回りは、早期償還の関係で、向上したと、言えども、
  2. 運用期間の短縮を、吸収するには、至らず、
  3. 結果として、実現した分配金総額は、事前に期待されていた分配金総額と比較し、小さくなっている、

ということが分かります。

まとめ

本寄稿におきましては、ソーシャルレンディング投資において遭遇することの少なくない、「早期償還」というケースについて、情報をまとめさせていただきました。
少しでも、ご参考と為さって頂ける内容と出来たのであれば、うれしい限りです。

なお、私の個人的な考えとしては、「早期償還」は、私達ソーシャルレンディング投資家としては、基本的に、歓迎すべき事柄であろうと解釈しています。
上掲致しました通り、「運用期間が短縮される分、分配金総額が(事前に期待されていた分配金総額と比較して)小さくなってしまう」というデメリットは、確かに、あります。
しかしながら、(利息総額は多少目減りすると言えども)投資していた資金が、多少なりとも、増大して戻って来てくれることは、当然、投資家として、大歓迎すべきことです。

同じく上述致しました通り、借り手企業の財務戦略上は、高金利である借入金は、さっさと(借り換え等によって)返済してしまうことが、当然、正解です。
すなわち、早期償還が多い、ということは、それだけ、借り手企業の財務戦略が真っ当であることの、裏返しとも、読むことが出来ます。

また、(極言してしまえば)「多少、運用期間が短くなったとしても、それは、”返済遅延”や、”貸し倒れ”等という事態と比較すれば、よほど、良い」というのが、私の一(いち)ソーシャルレンディング投資家としての、まごうことなき実感です。
ひとつのファンド、1件の投資で、大きく利益を上げようとするのではなく、(ネットで、1万円程度の少額から投資できる、という、)ソーシャルレンディング投資ならではの手軽さを活かして、小さく、コツコツと投資収益を上げていくのが、ソーシャルレンディング投資スタイルとして、ひとつの理想形ではなかろうか、と考えています。

それでは、本寄稿はここまで。
拙文に最後までお目通しを頂き、ありがとうございました。

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