「ソーシャルレンディングは月利複利って本当ですか?」
「ソーシャルレンディング投資を検討しています。
いろいろと情報収集していたら、”ソーシャルレンディングは月利複利だから有利”というフレーズを見かけました。
これはどういう意味でしょうか?」
(30代・男性・ソーシャルレンディング投資歴:なし)
複利とは
「複利」という仕組みを端的に換言すれば、
- 投資「元本」部分だけではなく、
- 投資「利息」部分にも、さらに利息が付いていく、
という仕組みといえます。
これに対して、投資期間中、利息が付与されるのは、あくまでも、「(そもそもの)元本のみ」という場合は、それを「単利」といいます。
投資家の立場から見れば、当然、
- 「単利」型の投資商品よりも、
- 「複利」型の投資商品のほうが、
投資元本の増大ペースが大きく、投資商品として、効率的である、といえます。
月利複利とは
一言に「複利」といっても、「利息の、元本への組み入れ期間・周期」によって、その投資効率には大きな違いが生じることとなります。
たとえば、
- 1カ月複利:1カ月ごとに、利息を、元本へと組み入れる。
- 半年複利:6カ月ごとに、利息を、元本へと組み入れる。
- 1年複利:12カ月ごとに、利息を、元本へと組み入れる。
上掲のような3タイプがある場合、最も投資効率が高いのは、利息の組み入れ期間・周期が最も短い、「1カ月複利」、すなわち、「月利複利」タイプの投資商品、ということとなります。
ソーシャルレンディングは、月利複利といえるか
国内のソーシャルレンディング事業者の中には、「毎月分配型」のソーシャルレンディング事業者が、複数、存在します。
- そうしたソーシャルレンディング事業者のファンドに出資し、
- 遅滞なく、順調に、毎月、分配金を受け取り、
- かつ、受け取った分配金を、即座に、別ファンドへと再投資し、
- さらに、再投資した資金に、直ちに、利息が付与されていく環境を整備することが出来れば、
物理的には、月利複利型の投資商品として、ソーシャルレンディングを活用していくことも、不可能ではないでしょう。
ただし、上掲のような条件を満たすことは、必ずしも、容易ではありません。
各ファンドの最低投資額
例えば、毎月分配型ソーシャルレンディング事業者Aの、期待年利6パーセントのファンドに、10万円を投資している、とします。
年利換算で6パーセントの期待利回りは、月利に換算すると、0.5パーセントとなります。
税金等を一切考慮せず、極端に単純計算する場合、ソーシャルレンディング事業者からの、月々の分配金(月利)は、10万円×0.5パーセント=500円となります。
すなわち、再投資に回すことの出来る資金(利息)は、500円に過ぎない、という事となります。
一方で、各ソーシャルレンディン事業者の場合、ファンドの「最低投資額」の定めがあります。
そして、個別ファンドへの最低投資額は、概ね、「1万円」程度とされていることが一般的です。
このため、上掲設定致しましたようなケースで言えば、
- 毎月受け取る利息(月利)が、ソーシャルレンディング事業者の定める、1ファンドあたりの最低投資額に満たないため、
- たとえ、当該ソーシャルレンディング事業者が、毎月分配型の事業者であったとしても、月利複利による投資・運用が、出来ない、
という結果となります。
そのような状況を打破するためには、
- もっと期待利回り(月利換算)が高いファンドへと出資するか、
- そもそもの投資元本を増やすか、
どちらかの手法を採り、月利(月々の分配利息=再投資原資)を増やすしかありませんが、いずれも、リスクを伴うこととなります。

参考:SBIソーシャルレンディングの「不動産担保ローン事業者ファンド」。最低投資額は、「1万円」と定められています。
引用元:SBIソーシャルレンディング(https://www.sbi-sociallending.jp/pages/clofund)
出資に値するファンドの有無
ソーシャルレンディングを通して月利複利運用を行いたい場合、さらに、
「毎月、分配金を収受したそのタイミングにおいて、再投資先として適当なソーシャルレンディングファンドが存在すること」
という、追加前提条件が必要となります。
各ファンドへの出資是非の検討・判断は、まさに、個々のソーシャルレンディング投資家の選球眼が問われるところではありますが、「月利複利」による運用に固執するあまり、十分に魅力的とは言えないファンドにまで出資をしてしまう、というようでは、本末転倒と言わざるを得ません。
すなわち、
- ソーシャルレンディング事業者が、毎月分配型であり、
- かつ、毎月の月利(月ごとの分配金)は、ファンドの最低投資額以上の金額であったとしても、
- 分配金を収受したタイミングで、再投資先としてふさわしいファンドが存在しなければ、
やはり、スムースな月利複利による運用は難しい、という事となります。
出資タイミングと、運用開始タイミングの時差
ソーシャルレンディングファンドの場合、利息計算の対象となるのは、あくまでも、
- ソーシャルレンディング事業者が、借り手企業に対し、資金の貸付を、実行した日から、
- 借り手企業が、ソーシャルレンディング事業者に、借入資金を、完済した日まで、
となることが一般的です。
また、
- 投資家が、ソーシャルレンディング事業者に、出資申込を行う日と、
- ソーシャルレンディング事業者が、借り手企業に、資金融資を実行する日までの、間には、
多少の時間差があることが一般的です。
このため、純粋な意味合いでの、月利複利運用(=毎月、利息が元本に組み入れられ、かつ、投資家の手元に資金が無い期間においては、原則として常に、利息が付き続ける、という状況)とは、実績に差分が生じてくることとなりますので、この点についても、留意が必要です。

参考:maneoの、「事業性資金支援ローンファンド1578号」。例えば、募集初日(4月22日)に出資申込を済ませた人の場合、資金が運用開始となる、4月25日までの間、無利息の空白期間が生じることとなります。
引用元:maneo(https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=7166)
毎月分配型のソーシャルレンディング事業者はどこか、また、各ソーシャルレンディン事業者ごとの分配日がいつなのか、といった情報につきましては、こちらの過去記事をご参照下さい。
↓
毎月分配型のソーシャルレンディング事業者一覧(分配日情報含む)
※本記事は、質問者様への回答、及び、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ソーシャルレンディングファンド等)への投資勧誘等を目的としたものでは、ありません。個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設等、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。
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出資タイミングと貸付実行タイミングの時差などが原因でどうしても時間的ロスが生じる、ということですね。
参考になりました。
>ごんた様
コメントを頂き、有難うございます。
ご理解の通りです。
なお、
・投資家からの出資受付の締切日から、
・借り手企業への貸付実行日までの間の、日数は、
ソーシャルレンディング事業者によって、差異がございますので、併せて、ご留意ください。
定期預金なんかも全部1カ月複利だったらいいのに。
日本は単月複利の投資商品が少なすぎると思う。
コメントを頂き、有難うございます。
「湘南しんきん」の場合、1カ月複利式の預金商品を提供している模様です。
1ヶ月定額複利預金(湘南アゲイン)
http://www.shinkin.co.jp/shonan/saving/teiki_shonan_again.html
よろしければ、ご参照為さってみてください。