【2021年4月更新】ソーシャルレンディングで、ドルコスト平均法を活用した積立投資は出来るのか|積立nisa(ニーサ)も検証
私たちソーシャルレンディング・ラボへとお寄せ頂いたご質問の中で、
「ソーシャルレンディング事業者の中で、毎月定額の積立投資が出来るような会社は、ありますか」
「日頃からドルコスト平均法を用いて外貨の買い付けをしている。そのような手法でソーシャルレンディング投資を行うことは可能でしょうか」
「積立nisaを始めようと思っている。ソーシャルレンディング事業者の中で、積立nisaの対象となるソーシャルレンディング事業者はあるか」
上記のような御趣意のご質問を頂戴いたしましたので、当ラボの調査・検証結果をご報告いたします。
ソーシャルレンディングとは
貸金業者の募集するファンドに出資することで、年率換算数パーセント~10パーセント弱程度の、高い期待利回りを狙っていける点が、ソーシャルレンディングの魅力のひとつです。
ソーシャルレンディングのスキーム
ソーシャルレンディングにおける資金の流れをフロー上で追いかけると、下記のようになります。
- 貸金業、並びに、金融商品取引業(※1)の免許を持つ、「ソーシャルレンディング事業者」が、ファンドを募集する。
- 投資家は、ソーシャルレンディング事業者のサービスサイトを通じて、ファンドに対し、出資申込を行う。
- ソーシャルレンディング事業者は、集まった資金を、資金需要者(借り手企業)に対し、融資する。
- 借り手企業は、ソーシャルレンディング事業者に対し(※2)、資金の返済を行う。
- ソーシャルレンディング事業者は、回収した元利金を元手にして、出資者に対し、分配・償還を実施する。
(※1)ソーシャルレンディング事業者の多くは、第二種金融商品取引業の資格を取得していますが、中には、より資本要件の厳しい、第一種金融商品取引業の資格を有しているケースもあります。
(※2)借り手は、投資家ではなく、あくまでも、貸金業者である、ソーシャルレンディング事業者に対し、元利金の返済を行います。資金の貸し手は、(貸金業の資格を有さない)投資家ではなく、ソーシャルレンディング事業者である、という点に、留意が必要です。
ソーシャルレンディングのメリット
投資家目線から見ると、ソーシャルレンディングには、下記のようなメリットがあります。
- 少額出資:
国内で事業展開しているソーシャルレンディング事業者のほとんどは、1万円程度の少額から、ファンドへの出資を受け付けています。
中には、ファンズ(Funds)のように、「1円から出資可」としている事業者もあります。 - 高い期待利回り:
ソーシャルレンディング事業者の募集するファンドの期待利回りは、ファンドによって、千差万別ですが、「上場企業に融資するファンドの場合で、1パーセント~3パーセント弱程度」「不動産担保付きで、未上場に融資するファンドで、3パーセント~5パーセント前後」「無担保融資の場合で、5パーセント~8パーセント程度」の期待利回りで募集されているケースが多くあります。 - ほったらかし投資:
ファンドの運用期間中の実務(資金の融資や、その回収等)については、ソーシャルレンディング事業者に一任することとなります。
いわゆる「ほったらかし投資」が可能ですので、本業が忙しい兼業投資家や、主夫・主婦の方でも、気軽に取り組みやすい、というメリットがあります。
ソーシャルレンディングのデメリット
まず、ソーシャルレンディング事業者から資金融資を受ける「借り手企業」にとっては、ソーシャルレンディング事業者の課す高い貸付金利は、大きなデメリットとなります。
また、投資家においては、ソーシャルレンディングへの投資にあたり、下記のようなリスク・デメリットに対し、注意を払う必要があります。
- 延滞リスク:
ソーシャルレンディング事業者は、融資先企業から回収した利息、並びに、元本を元手にして、出資者に対する分配・償還を行います。
このため、借り手企業からソーシャルレンディング事業者への元利金返済に遅延が生じると、ソーシャルレンディング事業者から出資者への分配・償還にも、遅延が生じてしまうこととなります。 - 貸し倒れリスク(元本割れリスク):
借り手が経営危機に陥るなどし、ソーシャルレンディング事業者が、融資先企業に貸し付けた元本の、一部しか、回収できなかった場合、ソーシャルレンディング事業者から出資者への元本償還も、一部のみ、実施されることとなります。
すなわち、投資家の立場から見ると、投資した資金の一部しか返ってこない「元本割れ」が生じることとなります。 - 中途解約不可(流動性上のリスク):
ソーシャルレンディングの場合、ファンドへと出資した資金は、原則として、そのファンドが満期償還を迎えるまでの間、投資家のもとへと返ってくることは有りません(中途解約不可)。
ソーシャルレンディング・ファンドの中には、1年~複数年に渡る、長い運用期間を予定しているケースもあるため、出資にあたっては、注意が必要です。 - 事業者の不正リスク:
国内のソーシャルレンディング業界では、事業者の不正に伴う不祥事が、過去、複数回に渡り、発生しています。
中には、金融商品取引業の登録取り消しなど、重い行政処分が下されたケースもあるので、留意が必要です。 - 税務上の不利益:
ソーシャルレンディング事業者から送金される分配金は、所得の分類上、「雑所得」に該当し、総合課税の対象となります。
申告分離課税を利用することは出来ないほか、他所得分野との間での損益通算や、損失の翌年以降への繰越も、現在の所得税法下では、認められていません。
積立投資とは
「毎月3万円」などの定額を、淡々と積立形式で投資していくのが、「積立投資」です。
手動で積み立てていっても良いですし、昨今は、給与口座となっている銀行口座とも連動し、投資家自らがさほど意識せずとも、自動的に積立投資を行ってくれる、というサービスも、多数、存在します。
一度に大きなお金を用意するのは大変ですが、「塵も積もれば…」の精神で、毎月、たとえ少額でも、積み立てていくことにより、複利の効果も享受しつつ、効率的に投資元本を拡充していくことが出来るのが、積立投資の最大の魅力です。
積立投資のメリット
- 投資家本人の感情に左右されることなく、決まったペースで淡々と、投資を進めることが出来る。
- ドルコスト平均法(詳しくは後述)を利用し、「安い時には多く買い」「高い時には少なく買う」ことで、時間リスクを分散することが出来る。
- 毎月の積立額は自由に設定できることが多く、数百円~数万円程度の少額から、月々、コンスタントに投資を行うことが出来る。
- 投資信託等を活用すれば、分散投資も容易に実現できる。
- 自動引き落とし等も利用できるため、投資にあたり、手間暇がかからない。
積立投資のデメリット
- 結果的に、一括投資のほうが、利益が大きくなる可能性がある。
- 最終的に利益を得るまでには、数年~数十年という、長い時間がかかる。
- 毎月の買い付け等に、手数料が生じるケースがある。
- 利益金に対し、受け取り時に、税金が生じる。
- タイミングによっては、最終的な受け取り時に、元本割れが生じている可能性がある。
ドルコスト平均法とは
「一物百価」と言う通り、物の値段は、時勢等によって大きく異なります。
- 毎月の投資額(日本円ベース)は同一額としながら、
- 買い付け対象の物の値段が安い時は、たくさん買い、
- 逆に、買い付け対象の物が高いときは、少ししか買わないようにする、というのが、
ドルコスト平均法です。
例えば、将来のアメリカ移住に向けて、毎月少しずつ(=日本円で1万円分ずつ)、米ドルを購入している、としましょう。
この場合、例えば1月に1米ドルが100円だったのであれば、1月の米ドル買い付けは、100ドル分、となります。
対して、2月に1米ドルが125円だったのならば、2月の米ドル買い付けは、80ドル分のみ、となります。
3月になって一気に米ドル安が進み、1米ドルが80円となったのであれば、3月の米ドル買い付けは、125ドル分、となります。
このような買い付け方をするのが、「ドルコスト平均法」です。
物の値段は変化する、という事実を受け入れ、極端に割高な買い物をしてしまうことがないよう、リスクを時間軸で分散し、購入原価を出来得る限り平均化する、というのが、ドルコスト平均法の根本的な考え方です。
ドルコスト平均法のメリット
- 毎月定額の資金量で買い付けを行うため、(例えば、投資信託の基準価額が)安い時には、多量に買い付けを行うことが出来る。
- 買い付けコストを平均化することで、「高値掴み」をしてしまうリスクを軽減できる。
- 感情に左右されることなく積み立てることが出来るほか、投資家の投資スキル(買い付け・売却のタイミングの判断など)が求められない。
ドルコスト平均法のデメリット
- 毎月コンスタントに買い付けを行うため、買付手数料等が嵩む可能性がある。結果的に、一括で買い付けを行ったほうが、手数料も考慮すると利幅が大きいケースがある。
- あくまでも長期的な運用を前提としているため、短期で大きな利益を出したい投資家には不向き。
- 長期的に「上昇相場」が続かないと、利益が出ない(=平均的な買い付け費用と比較し、売却時の価格が向上していないと、利益は生じない)。
ドルコスト平均法による積立(自動積立)に対応しているソーシャルレンディング事業者はあるか
ソーシャルレンディング・ラボが調査した限りにおいて、現時点では、ドルコスト平均法を用いた自動積立に対応しているソーシャルレンディング事業者は、日本国内では見当たりませんでした。
そもそも、ソーシャルレンディング投資の場合、投資信託や外貨、株式等の買い付けと異なり、買い付け対象(投資1口)の値段(日本円ベース)は、変わらない(=最低投資額が1口1万円のソーシャルレンディング事業者ならば、投資価額はあくまでも1口1万円)、という特徴がありますので、ドルコスト平均法の考え方は、いまひとつ、馴染みません。
もっとも、ドルコスト平均法の考え方を度外視し、
- 毎月所定の金額(例:3万円)分、
- 同一のソーシャルレンディング事業者の同一ファンドシリーズに、積立出資する、
という事自体は、システム開発・法規対応さえ万全に為されれば、物理的には実現可能な機能でしょうから、ソーシャルレンディング事業者各社の対応が待たれます。
積立nisaとは
年間40万円までの投資額にかかる「運用益」が、非課税となる制度が、「積立nisa」です。
年間40万円まで、という上限額がある関係で、毎月の投資額は小さめとなりますが、非課税期間が40年と長いので、
- 月々、大きな額を投資に割くことはしたくないが、
- 末永く買い付けを(ドルコスト平均法で)行う予定である、
という場合に、適した投資制度となります。
制度としては2018年1月から始まったもので、金融庁の調査によると、2018年9月末時点で、既に87万口座以上の積立nisa口座開設が為されている、とのこと。
※情報出所:https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20181214-1/01.pdf
積立NISAのメリットは
- 運用益、及び、分配金が、最長20年間、非課税となる。
- 毎月数千円~数万円程度の少額から、投資をスタートできる。
- 買い付けは毎月自動的に行われるため、投資家側では、買付タイミングの判断を行う必要がない。
- ドルコスト平均法(上述)を活用し、買付費用の平均化(時間リスクの軽減)を図ることが出来る。
- 投資家の都合に応じて、いつでも、自由に換金を行うことが出来る。
- IDECO(イデコ)と異なり、年齢上限が無い。
積立NISAのデメリットは
- 選択できる投資商品が限定されている(個別株式や、REITは投資対象と出来ない)
- 損失を利用した節税を図ることが出来ない(損益通算・繰越控除が利用不可)
- 売却時に、元本割れが生じている可能性がある
- 相場下落時を狙った、スポット的な買い付けが出来ない
- 一般NISAと併用できない(積立NISAか一般NISAか、選択が必要)
- 年間の非課税投資枠が小さい(40万円)
積立nisaの適用対象となるソーシャルレンディング事業者はあるか。
積立nisaは、かねてより存在していたnisa制度と比べ、さらに「投資家保護」が重視された投資制度です。
このため、積立nisaの場合、主な投資対象は、投資信託とされており、nisaで投資可能な「株式」への投資も出来ません。
ソーシャルレンディング・ラボが調査・検証した限りにおいては、本日現在、積立nisaを通して投資可能なソーシャルレンディングファンドは、確認することが出来ませんでした。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
少しでも、読者様のご参考と為さって頂ける内容と出来たのであれば、幸甚です。
投資家、資金需要者、双方から、高い注目を集めている、ソーシャルレンディング。しかしながら、当ラボの私的見解と致しましては、業界にまだ未成熟の部分も多く、いくつかの「危険会社」の存在も気にかかります。ソーシャルレンディング投資開始にあたっては、こちらの過去記事も、是非、ご参照下さい。
↓
【ソーシャルレンディング危険会社ランキング】はこちら|ソーシャルレンディング・ラボ
それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会いいたしましょう。
※なお、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。
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