ロボアドバイザーの投資対象は|資産クラス別の銘柄確認、投資対象選定のポイントまで解説|ソーシャルレンディングとの比較も
全世界が投資対象?ロボアドバイザーとは
投資家が、ロボアドバイザーの発する10点前後の質問に対して回答することで、ロボアドバイザーが、各投資家の「リスク許容度」を自動的に診断し、各々のリスク許容度に応じた、「最適ポートフォリオ」の提案を行ってくれるのが、いわゆる「助言型・アドバイス型」ロボアドバイザーのサービスです。
これに対し、「投資一任型」と呼ばれるロボアドバイザーの場合、上記の「最適なポートフォリオ」の提案に留まらず、
- ポートフォリオを実際に構築するために必要な銘柄の取得(購入)や、
- その後の値上がり・値下がりに応じ、ポートフォリオ内容が理想的な物から乖離した際の、「リバランス」まで、
投資に纏わる様々な実務・作業を、ロボアドバイザー側に一任することが可能です。
ロボアドバイザーの種類
国内のロボアドバイザーには、上記したように、
- 助言型(アドバイス型)ロボアドバイザーと、
- 投資一任型ロボアドバイザーの、
2種があります。
それぞれの特徴をまとめると、下記のようになります。
助言型ロボアドバイザー | 投資一任型ロボアドバイザー |
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(※)投資家から資金の預託を受ける(=投資口座の開設)ためには、第一種金融商品取引業の登録も必要となる。
基本的に、助言型ロボアドバイザーは、ある程度投資に慣れた投資家が、自身の年齢等に応じた最適ポートフォリオの構築を目的に利用するケースが多いようです。
反面、投資一任型ロボアドバイザーの場合、投資に纏わる様々な作業をロボアドバイザーに一任できる、とあって、
- 投資経験のない、投資初心者や、
- 本業が忙しく、なかなか、投資のために時間・労力を割くことが出来ない、という、兼業投資家が、
利用者・ユーザーとして想定されていることが一般的です。
ロボアドバイザー活用のメリット
投資家の目線から見ると、ロボアドバイザー活用には、主に下記のようなメリットがあります。
投資初心者でも、ETF等を活用した分散投資が容易に実現できる
ロボアドバイザーが主に投資対象とするのは、上場投資信託(ETF)であり、投資家自身が証券会社に口座を開設し、自力で売買することも可能です。
そして、幅広い銘柄に分散投資するETFをいくつか購入すれば、わざわざロボアドバイザーを利活用せずとも、投資家自身で、全世界の様々な資産クラスへと、資金を分散投資することが出来ます。
とはいえ、
- そもそも、各資産クラスごとの、分散投資の内訳は、どのようにしておけばよいのか(例:株式系の資産クラスと、債券系の資産クラスは、どちらのほうを多くすべきなのか)
- (投資信託、ETF、共に、非常に数が多いが、)実際の投資対象とする銘柄は、どのように選定すればよいのか
- 投資対象銘柄の選択が済んだとして、それでは、その銘柄を、一体何口分、購入すれば良いのか
- 分散投資の開始後、特定の銘柄の値上がり・値下がりによって、資産クラスごとの比率が(理想的なポートフォリオと比較して)崩れてきた場合、どのようにリバランスをすればよいのか
といった問題を、特に投資初心者が、自力で解決していくのは、困難です。
この点、ロボアドバイザーを活用すれば(一定の手数料はかかってしまうものの、)上記のような問題の解決を、ロボアドバイザーに一任することが出来るようになります。
※ロボアドバイザーによるポートフォリオ運用の詳細は、当サイトの別記事をご覧下さい。
積立投資機能が提供されており、ドルコスト平均法のメリットを享受できる
国内のロボアドバイザー・サービスの大半で、投資家の銀行口座から定期的に資金を引き落とし、新たにETF等投資信託の買い付けを自動的に行う「積立投資」機能が提供されています。
一括投資(投資に使える資金を、一度に投入する手法)と違い、資金の投入時期を分散できる「積立投資」の場合、難しい「買い時」の判断をしなくて済む、というメリットがあります。
また、「ドルコスト平均法」の効果により、
- 投資対象銘柄が、割安な時は、沢山買って、
- 逆に、銘柄が割高な時は、少しだけ買う、という、
「定期・同額」の買い付けを通して、投資対象銘柄の取得単価を平均化し、いわゆる「高値掴み」をしてしまうリスクを軽減できます。
また、ロボアドバイザーの多くが、積立投資に伴い、追加投資後のポートフォリオが最適ポートフォリオに近づく、「積立投資リバランス」を提供しています。
「毎月1度」等と、ごく頻繁に実施される積立投資を通じて、高頻度に、資産の買い足しによるリバランス(=課税関係が生じない)を行うことにより、ロボアドバイザーが定期的に行う、資産の売却を伴うリバランス(=値上がり資産の売却によって、課税関係が生じる可能性があります)を、最低限に留めることが出来る、というメリットもあります。
参考:
ロボアドバイザーと積立投資|積立投資のメリット・デメリットのほか、「一括投資」との比較も検証
分配金の自動再投資によって、複利効果を最大化できる
国内のロボアドバイザーの多くが、ETF(上場投資信託)からの分配金を、自動的に再投資(=新たなETF等を購入)する機能を搭載しています。
投資家自身が手動で再投資する必要がないため、投資家の手間が省けるほか、再投資のたびに、「どの資産クラス・銘柄を取得しようか」と悩む必要もありません。
分配金が(さほどの間を置かず)スムースに再投資される関係上、利回りによって投資元本を雪だるま式に増やしていく「複利効果」のメリットも、最大限享受することが出来る、というメリットがあります。
この反面、ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングなどといったクラウドファンディング投資の場合、基本的に、分配金の自動再投資機能は提供されていません。これは、投資家と一任型ロボアドバイザーとの間の契約が、「投資一任契約」であるのに対して、ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングにおいて主に活用されている契約形態が、(1つの事業ごとに、1つの契約締結を要する、)匿名組合契約を利用しているためです。
ポートフォリオのリバランスを自動化できる
各投資家のリスク許容度に見合った、最適なポートフォリオで、資産運用が開始されたとしても、その後、取得した銘柄が値上がり・値下がりすることによって、時間経過に伴い、自然に、ポートフォリオ内容は変化していきます。
本来の最適ポートフォリオ内容から乖離した状態で、資産ポートフォリオの運用を継続してしまうと、
- 人的資産が大きく(=年齢が若く、年収も高い、等)、株式系の資産クラスを中心に、「ハイリスク・ハイリターン」な資産運用を行うべき投資家が、債券系の資産クラス中心の、極めて保守的なポートフォリオを運用することになってしまったり、
- 逆に、「ローリスク・ローリターン」な資産運用を行うべき投資家が、株式系ETF中心の、ボラティリティの大きい資産運用をする結果となってしまったり、といった、
困った状態が生じることとなります。
このため、複数の資産クラスに資金を分散したポートフォリオ運用を行うためには、各銘柄の値上がり・値下がり等に応じた「リバランス」の実施が必要不可欠なのですが、問題は、この「リバランス」が、一筋縄ではいかない、ということです。
- 銘柄の買い付けによってリバランスを行う場合、どの銘柄を、どの程度の数量、購入するべきか、その都度、悩まなくてはなりませんし、
- 一部資産の売却によってリバランスを行う場合、含み益の生じている資産を売却するならば売却益金課税に、そして、含み損の生じている資産を売却するならば(その後、時間をかければ回復するかもしれないのに、)損失を確定させてしまう、という事情に、十分に配慮する必要があります。
このため、資産運用に慣れたベテラン投資家にとっても、適宜のリバランスは、それなりに負担の大きい作業なのですが、ロボアドバイザーの場合、このリバランス作業についても、一任・自動化することが可能です。
また、資産売却を伴うリバランスを実施する場合、含み益の実現に合わせて、必要な量の含み損をぶつけることによって、課税を繰り延べにする、「税金最適化機能」も搭載されていることが一般的です。
※ロボアドバイザーの行うリバランスについて詳しくは、当サイトの別記事をご覧下さい。
ロボアドバイザー投資のデメリット
上記したように、投資家にとって、様々なメリットのある、ロボアドバイザー投資ではありますが、同時に、下記するようなリスク・デメリットについても、留意が必要です。
少額投資非課税制度(NISA)が、基本的に、使えない
投資一任型ロボアドバイザーの場合、
- 一般NISA(年間の非課税枠は120万円。非課税期間は5年間)や、
- つみたてNISA(年間の非課税投資枠は40万円。非課税期間は20年)、
- ジュニアNISA、といった、
少額投資非課税制度の投資枠を利用することが、基本的に(※)、出来ません。
これは、リバランス等に伴い、「保有している資産の売却→再購入」等の動作を繰り返す、ロボアドバイザーの基本的な仕様が、
- 1年間で使える非課税投資枠に限度があり、
- かつ、一度利用してしまった非課税投資枠は、取得した資産を売却したとしても、復活しない、という、
NISAの仕組みと、相性が良くないため、と言われています。
(※)ただし、国内ロボアドバイザー業界大手と言われるウェルスナビでは、2021年2月から、ETFの買い付け等を、適宜NISA口座(一般NISA。つみたてNISA及びジュニアNISAは不可)で行う、「おまかせNISA」機能の提供をスタートしています。
投資成果がマイナスであったとしても、預かり資産残高に応じた手数料が発生する
国内のロボアドバイザーの多くが、預かり資産残高に応じた手数料体系を採用しています。
この場合、たとえ、ロボアドバイザーの行う資産運用の結果がマイナスであったとしても、「預けている資産の1パーセント相当額」等の手数料が、恒常的に発生し続けることとなります。
また、こうしたポイントに対する投資家の不満の受け皿となるべく、サステン(SUSTEN)ロボアドバイザーのように、完全成果報酬型の手数料体系を採用するロボアドバイザーも登場していますが、成果報酬特化型のロボアドバイザーの場合、投資成果部分に対する手数料が高い(=10パーセント前後)というデメリットがあります。
参考:
ロボアドバイザーと手数料|投資家にとって、ロボアドバイザーの手数料は、高いのか
プライベート・バンカー並みの顧客対応は、今のロボアドバイザーではまだ不可能
ロボアドバイザーが提供している、
- 投資家ごとのリスク許容度の診断
- リスク許容度に見合った、最適ポートフォリオの提案
- 最適ポートフォリオを構築するために必要な、具体的な銘柄の取得
- 銘柄取得後の値上がり・値下がりに応じた、適切なリバランスの執行
といった機能は、従来、プライベート・バンカーやファイナンシャル・アドバイザーと呼ばれる職業の人たちが、主に富裕層を対象として提供してきた、有人・対面型のサービスをモチーフにしたものです。
しかしながら、現行のロボアドバイザーでは、あくまでも、「投資家から預かった資産」の運用が出来るのみであり、従来型のプライベート・バンカーなどが提供してきた、
- 顧客の資産全体を把握したうえでの、投資・貯蓄等のバランシング
- 保険の見直しや、住宅ローンの最適化、といった処理
- 相続や、事業承継の最適化
といった分野にまで及ぶアドバイザリーは、提供することが出来ません。
参考:
ロボアドバイザーの問題点とは「下落相場で利益を出せない」「損失が生じても手数料がかかる」「投資家獲得競争が熾烈」等、投資家・運用会社が抱える問題点を分析
ロボアドバイザーの投資対象とは
投資経験のない、若年投資家・投資初心者であったとしても、機関投資家等が実践しているような、資産クラス別の全世界向け分散投資が、数万円~10万円程度の少額から実施出来る、として話題の、ロボアドバイザー。
ここからは、そんなロボアドバイザーが、果たしてどのような資産・銘柄を投資対象賭しているのか、その具体的な内容を見て参りましょう。
ロボアドバイザーが投資対象とする資産クラス
ロボアドバイザーが投資対象する資産クラスは、株式や債券、コモディティなど、多岐にわたります。
それぞれ、詳しく見て参りましょう。
米国株式
世界の経済成長の中心地、と言われる、アメリカ合衆国の主要企業株式を投資対象とします。
基本的には、米国株式市場インデックスに連動することを目的とした投資信託(ETF)を取得しますが、その主たる組み入れ銘柄には、
- iphone、ipad等といった機器の開発・販売等で知られるアップル社や、
- 人気OS「Windows」の開発元として知られるマイクロソフト、
- 検索サービス大手「Google」の親会社であるアルファベット社、
- 大手SNSサービス「フェイスブック」の運営会社など、
錚々たる大企業群が並びます。
米国を除く先進国株式
日本や、ドイツ、フランス、等といったヨーロッパ各国の企業群を投資対象とします。
基本的に米国株式と相関が強いのが難点(※資産クラス別の分散投資の最大の目的は、相関係数の低い資産クラスにまたがって投資することにより、ボラティリティを低下させることです)ですが、地理的な分散効果が期待されています。
日本からは、トヨタ等の大企業株式が、主要組み入れ銘柄のランクインすることが多くあります。
新興国株式
中国やブラジル、台湾等といった、経済先進国の企業の株式を投資対象とします。
組み入れ銘柄上位には、テンセントやアリババ集団、中国建設銀行、台湾セミコンダクターなどがランクインすることが一般的です。
時には、米国株式や(米国を除く)先進国株式よりも高いリターンをはじき出すこともあり、分散投資の対象として、看過することが出来ません。
先進国債券
主に米国財務省が発行する債券を投資対象とします。
期待利回りは低いのですが、ボラティリティが低く、かつ、株式系の資産クラスとの間で、相関係数が低い、という特質があります。
新興国債券
発展途上国の政府、並びに企業が発行する、国債や社債が、投資対象となります。
発行体の信用力が(先進国債券と単純比較すると)低いため、その分、利回りが高く設定されている、という特徴があります。
物価連動債
前述した債券は、
- リスク(ボラティリティ)が小さい
- (ポートフォリオのリターンのけん引役である)株式との間で、相関係数が低い
という特質がありますが、「物価高騰(インフレーション)に弱い」という、大きな弱点があります。
ロボアドバイザーを活用した、長期にわたる資産運用の場合、将来的なインフレーションへの対抗力を付ける(=資産の相対的な目減りを抑制する)、という点は、投資家にとって、重大なミッションの一つです。
そこで、「インフレに弱い」という、債券系資産クラスの弱点を克服すべく、特にリスク許容度の低い投資家のポートフォリオに組み入れられることの多い投資対象が、文字通り、物価に連動する債券、「物価連動債」です。
不動産
商業ビルやオフィス、大規模商業施設など、数億円~数十億円規模の不動産を主な投資対象とする、リート(REIT)もまた、ロボアドバイザーの投資対象となります。
不動産の主たる収益源は、
- 賃料収入(インカム・ゲイン)と
- 売却益(キャピタル・ゲイン)
ですが、いずれも、世間の需給のバランスに影響されやすい、ということで、インフレーションに対応しやすい、という特質があります。
コモディティ
金(きん)などに代表されるコモディティもまた、ロボアドバイザーの投資対象となる事があります。
世界各国で大規模な騒乱が発生するなど、いわゆる「有事」の際において、株式系の資産クラスが軒並み相場を下げている局面でも、逆に資金流入によって最高値を更新することもある、というのが、この「コモディティ」分野の魅力と言えます。
資産クラス別の、ロボアドバイザーの具体的な投資対象は
ロボアドバイザーが投資対象とする資産クラスは、上記の通りです。
それでは、ロボアドバイザーは、各資産クラス別に、どのような投資商品を、具体的な投資対象としているのでしょうか。
直接的な投資対象は、ロボアドバイザーによって様々ですが、大別すると、下記のように分かれています。
- (ロボアドバイザー事業者が運用する)投資信託を投資対象としているケース:
ロボアドバイザー事業者自身が、未上場の投資信託を運用しており、投資家のリスク許容度・ポートフォリオに合わせて、ロボアドバイザーが、その投資信託を数割ずつ、購入する、というパターンです。
完全成果報酬型の手数料体系を採用していることで知られるSUSTEN(サステン)のロボアドバイザーなどが、この手法を採用しています。 - 外部金融機関が運用・販売する投資信託(特にETF)を投資対象とするケース:
ロボアドバイザーが、外部の金融機関が運用・販売している上場投資信託(ETF)を取得したうえで、各銘柄の値上がり・値下がりに応じて、リバランスを実施する、というパターンです。
国内ロボアドバイザー業界大手「ウェルスナビ」などが採用している戦略は、こちらに該当します。
いずれのパターンにおいても、最終的な投資対象は、数千の銘柄へと分散投資するETF(上場投資信託)が採用されているケースが殆どです。
例えば、ウェルスナビの場合であれば、下記のようなETFが、資産クラス別の投資対象とされています。
投資対象銘柄 | 概要 |
VTI | 米国株式を投資対象とするETF。主要組み入れ銘柄には、マイクロソフトやアップル、アマゾン、アルファベット(グーグルの親会社)などがあります。 |
VEA | 日本とヨーロッパ各国、すなわち、アメリカを除く経済先進国の企業株式を投資対象とするETF。上述のVTIとの地理的な分散効果が期待されています。 |
VWO | 中国・台湾など、経済新興国の企業株式を投資対象とするETF。組み入れ銘柄には、アリババやテンセント、台湾セミコンダクター、中国建設銀行などがあります。 |
AGG | 米国財務省が発行する債券(国債)などが投資対象とされるETF。株式との相関係数が基本的に低いため、分散投資によってポートフォリオ全体のリスク(標準偏差)を下げる効果が期待されています。 |
TIP | 物価連動国債を投資対象とするETF。 上述のAGGが投資対象とする債券は、株式との分散効果などが期待できる一方で、インフレーションに弱い、という弱点があります。 この弱点を補うために投資対象とされることがあるのが、この銘柄です。 |
GLD | 「有事に強いコモディティ」として名高い、金(きん)を投資対象とするETFです。 |
IYR | 不動産(REIT)を投資対象とするETF。不動産の賃料や売却代金は基本的に物価と連動するため、インフレにも強い、という効能があります。 |
ロボアドバイザーが投資対象ETFを選ぶポイント
全世界では、ETF(上場投資信託)だけで、数千の投資対象候補があります。
国内の主要ロボアドバイザー各社は、それだけ多量にあるETFの中から、どのような基準で、投資対象ETFを選んでいるのでしょうか。
国内ロボアドバイザー業界大手「ウェルスナビ」の場合は、主に下記のような基準で、投資対象とするETFを選定している、と公表しています。
投資対象資産クラス全体を適切にカバーしているか、どうか
例えば「米国企業の株式を投資対象とする」とした場合、分散投資の効果を最大化する、最も効率的な投資方法は、「投資対象となり得る銘柄すべてを、時価総額加重にて取得する」ことだと言われています。
このため、投資対象ETFの選定においては、「そのETFが、どれだけ多量の銘柄を、投資対象としてカバーしているか」が、極めて重要なポイントとなります。
この観点から言えば、上述のVTIの場合、2021年7月31日時点での投資対象銘柄(Number of stocks)は3,935件に達しており、ベンチマークとしているCRSP US Total Market Indexのカバーしている銘柄数(3,859件)をも上回っています。
逆に、市場のカバー率が低い(=投資対象としている銘柄数が少ない)インデックス型ETFの場合、トラッキングの対象としていない銘柄の急騰・急落があると、ベンチマークとしている指数から大きく乖離してしまう「トラッキング・エラー」が頻発する恐れがあります。
純資産総額が十分に大きいかどうか
投資対象として検討するETFの「純資産総額」についても、選定上のポイントとして明記されています。
基本的に、ETFの運用会社の収入は、運用しているETFの純資産総額に連動します。
例えば、「純資産総額100億円・信託報酬1パーセント」という投資信託の場合、ETF運用会社の(その投資信託からの)直接的な収入は1億円です。
純資産総額が小さいETFの場合、運用会社の報酬料が小さく、結果的に、運用会社がETFの運用のためのコストを吸収しきれず、投資信託が早期償還とされてしまうリスクがあります。
ETFが早期償還となる場合、それまで蓄積されていた含み益が一気に実現し、各投資家において、課税関係が生じ、投資の長期的な収益力が(課税による収益の目減りで)減退してしまう可能性があります。
十分な取引ボリューム・流動性があるか
流動性が低く、投資家からの人気がいまひとつ、というETFの場合、
- 投資家の一部出金や解約に応じて、保有しているETFを売却しようにも、思うような価格で売却できなかったり、
- 逆に、ETFを取得しようにも、ロボアドバイザーが執行する買い付けが、そのETFの日頃の流通量に対して大きく、結果的に、ロボアドバイザーによる買い付け自体が、そのETFの価格を押し上げる要因となってしまう、
等の弊害が生じる恐れがあります。
このため、ロボアドバイザーの投資対象ETFの選定においては、そのETFの「流動性」についても、大切なポイントとなります。
信託報酬等のコストは割高でないか
投資対象ETFの経費率(信託報酬等)は、ポートフォリオ全体の長期的な運用成績を、大きく左右する要因となります。
このため、ロボアドバイザーによる投資対象ETF選定においては、そのETFの一般的な経費率についても、選考要因のひとつとされています。
ロボアドバイザーは、個人投資家の投資対象として「あり」なのか
近年、主に現役世代の、比較的若い投資家層から、大きな支持を集めつつある、ロボアドバイザー。
そんなロボアドバイザーは、個人投資家の現実的な投資対象として「あり」なのでしょうか。
この点については、投資家個々人の考え方・投資スタンスによって、判断の分かれるところになりそうです。
ロボアドバイザーを投資対象として「あり」と考える根拠
- ラップ口座等の投資一任サービスと比較すると、手数料が安い。
- 運営会社が破産し、かつ、同社の分別管理義務違反によって、投資家の資金がスムースに返還されない場合、日本投資者保護基金による補償を受けることが出来る(ただし、補償は上限1,000万円まで。また、ロボアドバイザー運用会社の中には、同基金の会員企業ではないケースもある)。
- 確定申告作業が不要な「特定口座(源泉徴収あり)」が提供されているため、申告関連の手間暇を削減できる。
- トレードが投資家の感情に左右されないため、短期的な下落に対して耐性があり、長期投資が実現しやすい。
- (資産形成期間中の)「積立」だけでなく、退職後の投資家向けに、資産「引き出し」にも対応しているロボアドバイザーがある。
- 大手証券会社が提供しており、窓口対面での相談サービスにも対応しているロボアドバイザーがある。
- 先物取引などにも取り組み、相場下落時でも利益を出すことを狙う「絶対収益型」のロボアドバイザーも存在する。
ロボアドバイザーを投資対象として「なし」と考える根拠
逆に、ロボアドバイザー投資に対してネガティブな見解を持つ投資家の多くが、下記のようなポイントを指摘しています。
- リターンの低い資産クラス(例:債券)を組み入れたポートフォリオは、ボラティリティ(標準偏差・リスク)を下げる効能を得るために、利回りを犠牲にしている(=リスク愛好型の投資家にとっては、そもそも、ポートフォリオ運用自体にメリットが無い)。
- 未上場で、財務基盤が盤石でないロボアドバイザー事業者も存在する。
- ideco(個人型確定拠出年金)と違い、掛金(ロボアドバイザーの場合は、毎月の投資額)が所得控除される、といった、明確な税務上のメリットが無い。
- 最低契約期間や、最長契約期間、最低投資額、といった制約が大きいロボアドバイザーもある。
- ロボアドバイザー運用会社と、投資家との間で、利益が完全には一致しない懸念がある。
- 投資家には、投資に関する知識・ノウハウが、一切、蓄積されない。
ロボアドバイザーと、「ソーシャルレンディング」及び「不動産クラウドファンディング」の投資対象の違いとは
ロボアドバイザーと同じく、特に若い世代の個人投資家に人気の高い投資手法として、
- ソーシャルレンディング
- 不動産クラウドファンディング
が挙げられます。
それぞれの投資対象は、ロボアドバイザーの場合とどのように相違しているのか、簡単に比較してみましょう。
「ソーシャルレンディング」の投資対象は
貸金業者の募集するファンドに対して出資し、その後、ソーシャルレンディング事業者からの分配金を待つ、という投資スタイルが、「ソーシャルレンディング」です。
ソーシャルレンディング投資の流れを簡単に表すと、下記のようになります。
- ソーシャルレンディング事業者の募集するファンド(匿名組合)に対して、オンラインで出資する。
- ソーシャルレンディング事業者は、ファンドに募った資金を、外部の借り手企業に対して融資する。
- 借り手企業は、ソーシャルレンディング事業者に対して、利息、並びに、元金の返済を行う。
- ソーシャルレンディング事業者は、借り手企業から回収した利息を元手に、投資家への利益分配を行う。
- ソーシャルレンディング事業者は、最終的に、借り手企業から元金を回収し、それを元手に、投資家への元本償還を行う。
すなわち、ソーシャルレンディング投資における、投資家の具体的な投資対象は、「ソーシャルレンディング事業者が営業者を務める匿名組合(ファンド)の、出資持分」となります。
そして、匿名組合の営業者たるソーシャルレンディング事業者は、ファンドに募った資金で、借り手企業に対する「貸付債権」を(実質的に)取得するわけですから、投資家の最終的な(本質的な)投資対象は、「ソーシャルレンディング事業者が外部に対して保有する貸付債権」とも換言することが出来ます。
※ただし、日本国においては、貸金業法の規制の関係で、貸金業の登録を受けていない個人・法人が、外部企業に対して「事業として」貸付債権を保有することが出来ません。
このため、ソーシャルレンディング投資においても、投資家が直接貸付債権を保有することは無く、
- 貸付債権を保有するのは、貸金業の登録を受けた貸金業者である「ソーシャルレンディング事業者」が営業者を務める匿名組合(実質的には、ソーシャルレンディング事業者本体)であり、
- 各個人投資家は、あくまでも、当該ファンドに対する「出資持分」を、匿名組合員として保有するだけ
という体裁が取られています。
「不動産クラウドファンディング」の投資対象は
ソーシャルレンディング業界で不祥事が相次いだことから、昨今では、同じクラウドファンディング投資類型にあたる、「不動産クラウドファンディング」にも、人気が少しずつ、シフトしつつあります。
一見すると、ソーシャルレンディングと混同されやすい、不動産クラウドファンディングではありますが、そのスキーム内容、及び根拠法は、ソーシャルレンディングとは明確に異なります。
不動産クラウドファンディング投資の流れ
国内の不動産クラウドファンディング業界で主流派である、「不動産特定共同事業法第1号事業許可+匿名組合型」のサービス・モデルでは、主に下記のようなステップが利用されています。
- 宅地建物取引業の登録事業者(=不動産事業者)が、新たに、不動産特定共同事業法に基づく許可を取得し、不動産特定共同事業者となる。また、電子取引業務の許可を追加取得し、不動産特定共同事業に纏わる諸契約をオンラインで締結する、「不動産クラウドファンディング事業者」となる。
- 不動産クラウドファンディング事業者は、自身のホームページ上に、投資対象不動産等に関する情報を明記した「ファンド情報」を掲載し、投資家からの出資を募る。
- 不動産クラウドファンディング事業者は、ファンド(=匿名組合)に募った資金を元手に、不動産の取得やリノベーション等を行う。
- 不動産クラウドファンディング事業者は、ファンドの運用期間中に生じた賃料収入(インカム・ゲイン)や、物件売却時に生じた売却益(キャピタル・ゲイン)を元手に、投資家に対する、持分に応じた利益分配を行う。
- 不動産クラウドファンディング事業者は、最終的には、不動産を売却し、その売却代金(本体)を原資に、投資家への元本償還を実施する。
不動産クラウドファンディングの投資対象=「不動産」
前述のソーシャルレンディング投資の場合と同様、不動産クラウドファンディング投資の場合も、投資家の実際の投資対象は、不動産クラウドファンディング事業者が営業者を務める匿名組合(ファンド)への、出資持分です。
ただし、不動産クラウドファンディング事業者は、ファンドに募った資金を原資に、不動産を取得するわけですから、投資家の「実質的な」投資対象は、「不動産である」と換言することも可能です。
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fill.mediaは、国内の融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)、及び、不動産クラウドファンディング業界情報の検証メディア。
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