【ソーシャルレンディングファンド分析】OwnersBook「墨田区レジ用地・草加市レジ第1号ファンド第1回」の場合。

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを題材に、各社の特徴や、ファンドごとのリスク・リターンのバランス等を検証する本企画。
今回は、OwnersBookが2018年10月下旬に資金募集を行ったソーシャルレンディングファンド、「墨田区レジ用地・草加市レジ第1号ファンド第1回」を題材に、読み解きを進めて参りましょう。

本ソーシャルレンディングファンドの概要

同社のホームページから確認した、本ファンドの概要としては、下記の通りです。
なお、案件1、及び案件2のうち、資金の大半を融資する「案件1」のほうに関してのみ、下記、詳説をさせて頂きます。

本ソーシャルレンディングファンドの詳細情報ページのURL

こちらです。

https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1124/

資金の借り手

東京都渋谷区に所在する、総合不動産会社AJ、とのこと。
同社の主たる事業としては、

  1. シェアハウス事業(開発・保有・運営)
  2. 不動産投資事業
  3. 不動産仲介事業(賃貸・売買)
  4. 不動産管理事業

とのこと。
過去3期にわたって安定して経常利益及び当期純利益を計上している、との情報も付与されています。

貸付資金の総額

6,000万円の貸付となります。

借り手の資金使途

総合不動産会社AJの事業資金である限り、資金使途についての定めは無い、とのこと。

貸付・運用の期間

13カ月間の貸付となります。

設定担保

不動産会社AJが所有する下記2物件に、共同担保が設定されます。

物件1

  • 建物状況:
    本土地はレジデンス用地であり、2018年10月24日現在、本土地上に建物は存在していない、とのこと。
  • 交通・接近条件:
    東京都墨田区八広に位置しており、京成電鉄押上線へのアクセスが可能な立地、とのこと。
  • 賃貸借の状況:
    本土地はレジデンス用地であり、2018年10月24日現在、本土地上に建物は存在していない、とのこと。
  • 物件評価額:
    OwnersBook評価額は、外部専門家による各物件の査定額を参考に、4,750万円と評価している、とのこと。

物件2

  • 建物状況:
    1984年9月に建築された地上4階建の建物1棟。維持・管理の状況は普通。
    本件建物は建築確認を取得しているが、検査済証は未取得とのこと。
    また、車庫部分の事務所転用等(1階)やプレハブ倉庫増築(屋上;未登記)により基準容積率を超過している、とのこと。
  • 交通・接近条件:
    埼玉県草加市松原に位置しており、東武鉄道伊勢崎線(スカイツリーライン)へのアクセスが良好な立地、とのこと。
  • 賃貸借の状況:
    1階及び2階(一部)を店舗、2階(一部)から4階を住居として賃貸しており、
    2018年10月24日現在、店舗部分の稼働率は100%、住居部分の稼働率は約83%であり、建物1棟としての稼働率は約91%、とのこと。
    現行月額賃料(共益費込み)の坪単価は4,300円程度(店舗部分)及び6,300円程度(住居部分)となっており、外部専門家により査定された新規月額賃料(共益費込み)の坪単価は3,600円程度(店舗部分)及び6,400円程度(住居部分)となっている、とのこと。
  • 物件評価額:
    OwnersBook評価額は、外部専門家による各物件の査定額を参考に、4,680万円と評価している、とのこと。
    なお、基準容積率を超過している部分の収入を不算入とした査定年間収入をベースに評価している、との情報も付記されています。

返済原資

総合不動産会社AJによると、返済原資として、他の金融機関等からの借入、物件売却等を想定している、とのこと。

本ソーシャルレンディングファンドの期待利回り

5.0パーセントの年利が想定されています。

本ソーシャルレンディングファンドの資金募集達成度は

(※OwnersBookの場合、もはや毎度のこと、という感もありますが)100%の資金募集を達成したファンドです。

運用・返済状況は

本ファンドは、投資実行日が2018/11/20、償還予定日は2019/12/20という構成です。
目下、鋭意運用中、というところでしょう。

本ソーシャルレンディングファンドのポイント

私が考える、本ソーシャルレンディングファンドのポイントは、下記の通りです。
なお、あくまでも、私の個人的な見解です。

シニアローン案件であり、かつ、LTVは保守的。

まず、第一順位抵当権が設定されること。
そして、貸付額6,000万円/担保物評価額(2点合計)9,430万円≒63.6パーセントほどです。
OwnersBookが、担保物に第一順位抵当権を設定し資金を貸し付ける場合、だいたい8割弱程度のLTV値としていることが多いので、
本ファンドについては、LTV値に限っては、至極控えめ(=安全性重視)な設計となっていることが分かります。

それでいながらにして、利回りはしっかりと5パーセント。
安全性重視のLTV値となっている割には、利回りは(他ファンドと比べ)さほど見劣りしません。

これらの点は、評価できるものと思います。

気になるポイントは…

担保物その2にあたるレジデンス1棟について、

  • 建築確認を取得しているが、検査済証は未取得であること。
  • 車庫部分の事務所転用等(1階)やプレハブ倉庫増築(屋上;未登記)により基準容積率を超過していること。

この点については、十分な留意を必要とします。
基準容積率をオーバーしてしまっている以上、違法建築物となりますから、
いざ、不動産会社AJが、本物件を売却して返済原資を確保しようとしたとき、購入希望者が現金で購入するならばまだ良いのでしょうが、金融機関からの融資金をあてにしている場合、些か厳しくなってくるものと思われます。
購入対象物である物件が違法建築物だと、金融機関からの融資審査が、極めて厳しくなる場合があるからです。

これは、抵当権者であるOwnersBookの場合でも同じです。
すなわち、万が一、不動産会社AJからOwnersBookへの返済が滞り、OwnersBookとして、担保権を行使し、本物件を売却・換価しようとしても、購入者は基本的に、現金によって購入資金を用意しなければならないでしょう(=上述の通り、違法建築物を購入する場合、金融機関からの審査が厳しくなる恐れがあるためです)。

ましてや、2018年のスルガ銀行問題以降、金融機関からの、不動産投資用の融資は、審査が極めて厳格になっています。
担保物件その2は、居住者・使用者が付いている物件ですので、基本的には実需物件(=購入者が自ら居住する物件)ではなく、仮需物件(=収益用・投資用物件)として扱われるものと思います。
すなわち、投資用不動産として、融資審査の対象となるわけです。

勿論、違法建築物の「違法」程度の大小によって、柔軟に検討してくれる金融機関もあるでしょうが、
いずれにせよ、一定のディスアドバンテージが付帯する担保物であることは、留意を要します。

OwnersBookとしても、その点を考慮し、低いLTV値でファンドを設計してきているのだと思います。

総論

安全性重視のLTV値の割に、利回りは、さほど低すぎず、
数値上のバランスとしては、良心的なファンド設計だとは思います。
ただし、私個人としては、どうしても、担保物の容積率オーバー(違法建築物)が、気になりますね。

やはり、OwnersBookの他ファンドのように、

  • LTVは8割弱くらい。
  • 先順位無の、第一順位抵当権。
  • 本物件のようなディスアドバンテージが付帯していない、ごくシンプルな担保物に、担保権を設定。

といったタイプこそが、OwnersBookにおいては、王道であろうと思料します。

もっとも、OwnersBookの運営会社たるロードスターキャピタル株式会社は、不動産業のプロであり、東証マザーズの上場企業であり、監査法人はかの有名なトーマツです。
本件担保物についても、きっと、OwnersBookとしては、勝算があるのだろうと、私は個人的には推察しています(=その分、低いLTV値とし、いざ、というときには、十分なディスカウントを実現できるよう、設定しているのでしょう)。

本ソーシャルレンディングファンド検証のまとめ

ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを検証し、各社の特徴や、ソーシャルレンディングファンドごとの特色、そして、ファンド概要の読み解きのヒントを探る本シリーズ。
今回は、OwnersBookのソーシャルレンディングファンド「墨田区レジ用地・草加市レジ第1号ファンド第1回」を題材に、検証をさせて頂きました。

しつこいようで申し訳ありませんが、
本記事文中の表現は、いずれも、私のごく個人的な意見に過ぎません。
その点は、くれぐれも、ご承知おきください。

しかし、あくまでも、その限りにおいて、
少しでも、「これからソーシャルレンディング投資を始めてみよう」とお考えの読者様にとり、
ファンド概要の読み込みの具体例として、ご参考になさって頂ける内容と出来たのであれば、嬉しい限りです。

なお、私は現在、国内23社のソーシャルレンディング事業者に、資金を分散投資しておりますが、
その中でも、OwnersBookは、他のソーシャルレンディング事業者と比べて、私が多くの資金を投資させて頂いている事業者のひとつです。


引用元:OwnersBook

  • 東証マザーズ上場企業、ロードスターキャピタル株式会社による運営。
  • 全案件(ファンド)に、不動産担保がセッティングされている。

等と言った特長のある事業者ですが、その分、個人投資家からの人気が高く、
ファンドによっては、資金募集開始から、あっという間に、資金枠が埋まってしまう、というケースが多く見られます。

「いざ」という時の投資機会を逃さぬためにも、
あらかじめ、投資口座開設だけでも、済ませておくことをお勧めします。

同社の投資口座開設は、こちらの公式ページから手続き可能です。

OwnersBook(公式)

なお、同社の投資口座開設手続きは、いたってシンプルですが、
「初めてで不安」という方は、あらかじめ、こちらの別記事もご参照下さい。

[blogcard url=”https://social-lending.online/sl-companies/ownersbook/ownersbook-kaisetsu/”]

それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会い致しましょう。

追伸:
国内複数の大手ソーシャルレンディング会社を、信頼性や、事業者としての規模、利回りや手数料、といった視座から、横断的に比較検討した、こちらの過去記事も、ぜひ、ご覧になってみてください。おすすめです。

【比較記事】ユーザー登録数・延べ投融資額・ファンドの利回り平均…。主要ソーシャルレンディング各社を、複数のアングルから比較してみた結果、見えてきた真実とは。


本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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