maneoにて、ソーシャルレンディングファンド「不動産担保付きローンファンド2001号」が公開されています。

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

本ソーシャルレンディングファンドの概要

同社のホームページから確認した、本ファンドの概要としては、下記の通りです。
なお、案件1、及び案件2のうち、資金の大半を融資する「案件1」のほうに関してのみ、下記、詳説をさせて頂きます。

本ソーシャルレンディングファンドの詳細情報ページのURL

こちらです。

https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=6715

本ソーシャルレンディングファンドのスキーム図

maneoのソーシャルレンディングファンド「不動産担保付きローンファンド2001号」スキーム図
引用元:https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=6715

資金の借り手

maneoにとっての直接的な債務者は、事業者Cですが、同社はmaneoの関連会社です。
本事業の実質的な債務者は、スキーム上の最終債務者たる、事業者DR、と見るのが妥当でしょう。
事業者DRについては、「個人投資家向けの収益不動産の企画、販売、仲介等を主たる事業とする、不動産事業者」である旨のみ、記載があります。

貸付資金の総額

本ファンドからの貸し付けは、3,300万円とのこと。
ただし、総額では、1億2,300万円を融資予定、とのこと。

借り手の資金使途

事業者DRは、今回の融資金を原資に、不動産の仕入れを行う、とのこと。

貸付・運用の期間

9カ月の貸し付けとなります。

設定担保

事業者DRが取得する土地に、担保権が設定される、とのこと。

返済原資

事業者DRとしては、本件不動産について、仕入れ後に、アパート用地として売却予定、とのこと。
この売却代金が、事業者DRから事業者Cへの返済原資に充てられるものと思料します。

本ソーシャルレンディングファンドの期待利回り

5.3パーセント、とのこと。

本ソーシャルレンディングファンドの検証ポイント

私が考える、本ファンドのポイントは、下記の通りです。
なお、いずれも、私の個人的な見解です。
実際の投資是非の判断においては、必ず、各投資家様それぞれ、皆様ご自身において、ご検討・ご判断を為さって頂きますよう、お願い致します。

LTVはやや高め。

担保物件の評価額(1億4,500万円)については、一旦鵜呑みにすると仮定します。
貸付予定総額1億2,300万円は、担保評価額(1億4,500万円)に対し、85パーセント弱に相当します。
LTVとして8割を超過していますから、第一順位抵当案件だとしても、比較的アグレッシブなLTV設計だと感じます。

一般的な金融機関(銀行等)の場合、LTVはだいたい7割、といわれます。
ソーシャルレンディングファンドですので、銀行よりは高めのLTVもやむなし、と思いますが、
例えば、上場企業運営で知られるOwnersBookの場合、第一順位抵当権案件(=シニアローン案件)で、LTVは8割弱(例:79パーセント、等)、というのが相場です。

これらの事情を勘案すると、本ファンドのLTV設計は些かアグレッシブであり、その分、高リスクであることは、留意を要するでしょう。

特に本件不動産の場合、

  • 借り手事業者DRが、主に個人投資家向けに事業を行っており、
  • 今回も、「仕入れ後にアパート用地として売却」することを予定している、という点が、

気になります。

スルガ銀行問題、及びその後に続いた、TATERUの改ざん問題等の影響により、
現在、金融機関から個人投資家向けの、不動産投資関連融資は、極めて細い状況になっています。
個人投資家が1億円を超える資金をキャッシュで用意することはあまり考えづらい中、融資も厳しい状況ですので、
果たして、事業者DRとして、構想通りのエグジットを実現できるのか、という点に、私は一抹の不安を覚えます。

担保評価額についても、妥当性の確認が難しい。

スキーム図をよく見てみると、
本件担保物の評価額(約1億4,500万円)については、「売却予定価格」との、謎めいた表記があります。

本来、不動産の評価手法としては、収益還元法なり、取引事例比較法なり、しっかりとした評価手法を記載しておくべきだと思いますが、
あくまでも、「売却予定価格」としての記載があるのみ、です。
要は、事業者DRとしては、既に売却予定の個人投資家(もしくは機関投資家)と、約1億4,500万円での売買について、話が付いているのかもしれません。
※それならば、9カ月間、という貸付期間の間、何をするのか、と、不思議ですが…。

とはいえ、売買契約成立済、等と言った記載もありませんし、
買い手側も、自身の買値が適当かどうか、当然、きちんとした精査を行うはずです。

ここで注意を要するのが、本件担保物の、1平方メートルあたりの土地評価額です。
本件土地については、「約220平方メートル」との記載がありますから、
1平方メートルあたりの評価額としては、約1億4,500万円÷約220平方メートル=65万円ほど、となります。

これを、東京都葛飾区の実際の公示価格と比較し、妥当性を検証してみます。
国交省の「標準地・基準地検索システム」を使って、東京都葛飾区の最新公示価格を確認してみると、

maneoのソーシャルレンディングファンドを分析すべく、公示価格を調査する。
引用元:国土交通省「標準地・基準地検索システム」

このように、本記事執筆本日現在、93件の公示価格データが閲覧できます。
私が、93件の公示価格全てを集計した結果、東京都葛飾の平均公示価格(1平方メートルあたり)は、本記事執筆本日現在、35万1,237円でした。
また、93件中、1平方メートルあたりの公示価格が60万円以上の物は、4件だけ、という状況でした。
※あくまでも、私の個人的な集計・計算です。実際の投資判断前には、必ず投資家皆様それぞれにて、改めて、確認・集計為さることをおすすめいたします。

1平方メートルあたり公示価格が60万円を超える物件については、新小岩駅や亀有駅、綾瀬駅、といった主要駅から、徒歩3分圏内、という、超一流立地の物件ばかりでした。

例えばこちらの物件の場合、綾瀬駅から90メートル(徒歩1分ちょっと)で、平方メートルあたり642,000円、という公示価格です。

maneoのソーシャルレンディングファンドを分析する。
引用元:国土交通省「標準地・基準地検索システム」

このレベルの超一流立地の物件であれば、1平方メートルあたり65万円、という評価額も、あり得るのかもしれませんが、
それならそれで、ファンド概要にも、「本件土地は、駅徒歩数分圏内の、Sクラス立地となっております」程度の記載は、あってもよさそうなものですが…。

総論。

  • 評価額を鵜呑みにしたとしても、少々高めのLTV設計であり、
  • 売却ターゲットが個人投資家であることを考えると、昨今の情勢下でスムースなエグジットが実現できるか、不安視されるうえに、
  • 東京都葛飾区の土地で、1平方メートルあたり約65万円の評価、というのは、よほどの好立地ならまだしも、平均的、とは、決して言えない、

というところです。
投資是非について、ポジティブな判断を行うのであれば、
上記のような要素について、ある程度の留意をする必要があるのではないか、と、個人的には思います。
なお、私個人としては、出資は見送らせて頂きます(=あくまでも、私の個人的な判断です)。

本記事執筆現在の資金応募状況は

maneoのソーシャルレンディングファンドの、資金の集まり状況。
引用元:https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=6715

上掲のような状況です。

まとめ

記事中には、私の個人的な見解が、多々、含まれておりますが、
あくまでも、その限りにおいて、
少しでも、「これからソーシャルレンディング投資を始めてみよう」とお考えの読者様にとり、ご参考になさって頂ける内容と出来たのであれば、嬉しい限りです。

国内の主要ソーシャルレンディング事業者を、利回りや、規模、担保設定や、投資のしやすさ、といった、複数の視座から比較した、こちらの過去記事も、おすすめです。是非、ご一読下さい。

【ソーシャルレンディング比較検証】事業者規模、年利平均、投資家登録数、初心者へのおすすめ度…。主要ソーシャルレンディング各社を、複数の視座から横断比較。

それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会い致しましょう。


本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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