ソーシャルレンディングのポイントを整理する(兼・勉強ノート&用語集)

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年半ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

ソーシャルレンディングの「おすすめ」ポイント

個人投資家を中心に、高い盛り上がりを見せている、ソーシャルレンディング投資。
そんなソーシャルレンディング投資には、いくつかの「おすすめポイント」があります。

ポイント1【利回り】

ソーシャルレンディング投資のおすすめポイントのひとつとして、ソーシャルレンディング投資の「期待利回り」の高さが挙げられます。
確かに、ソーシャルレンディング投資の場合、各ファンドにおいて提示されている期待利回りの値は、定期預金等と比較すると、各段に高いものがあります。
具体的な利回りは各ソーシャルレンディング事業者・ファンドによって千差万別ですが、私の個人的な相場観としては、

  • 国内不動産に、第一順位抵当権が設定され、担保掛目(※)がごく穏当な案件の場合で、年利換算5パーセント前後、
  • 対して、無担保・無保証型で、比較的リスクの高いファンド案件の場合で、10パーセント弱程度、

というのが、昨今の国内ソーシャルレンディング業界においては、一般的なところかな、と思います。

前者の具体例としては、



引用元:OwnersBook

↑こちら、不動産担保付の貸付型ファンドを多数組成しているソーシャルレンディング事業者「OwnersBook」のファンドとなりますが、東京都中野区に所在する不動産に、第一順位の抵当権を設定する案件(=シニアローン案件)なのですが、期待利回りは、年利換算で5パーセント、として提示されていることが分かります。


参考:
中野区商業ビル第2号ファンド第1回|OwnersBook


後者の例としては、



引用元:クラウドクレジット

↑こちら、国外向け案件を多数公開していることで知られる、「クラウドクレジット」のファンドなのですが、

  • 担保や、保証(人的担保)といった保全機能がセットされておらず、
  • かつ、貸付通貨が「ケニア シリング」建てということで、投資家としては、為替変動のリスクを許容する必要があるのですが、

表面利回りとしては、年率10パーセントを超える、高い期待利回りが提示されています。


参考:
【ケニアシリング建て】アフリカ未電化地域支援ファンド6号|クラウドクレジット


提示されているのは、あくまでも、期待利回りに過ぎない、ということ、及び、その他様々なリスク(※詳しくは後述します)はあれども、少なくとも、こうして高い期待利回りが提示されている、という点は、ソーシャルレンディング投資に、多くの投資家が魅力を感じているポイントのひとつ、とは言えるでしょう。

ポイント2【ほったらかし投資】

ソーシャルレンディング投資が至極スムースに成功した場合の流れを簡単に表すと、下記のようになります。

  1. 投資家登録を行うソーシャルレンディング「事業者」を選定する。
  2. ソーシャルレンディング事業者に投資家登録を行ったうえで、その事業者が公開しているファンドに、投資申込を行う。
  3. 運用期中の分配金を受け取る(※期中分配がある場合)。
  4. 満期の償還を受け取る。

このうち、「2」の、投資申込を済ませた後、「4」の、満期・最終分配を受け取るまでの間、投資家としては、特段、やることはありません。
よく言えば、「ほったらかし投資」が、物理的には、一応、可能と言えます。
(※逆に言えば、ファンドの行う事業に、投資家が積極的に関与することもまた、出来ません。この点については、後程、留意を要するポイントとして、詳説致します)

このため、日ごろ忙しい方等、「投資活動にさほど時間を割くことはできない」という人にとっても、比較的取り組みやすい投資手法であると言え、この点もまた、ソーシャルレンディング投資のおすすめポイントのひとつに挙げることが出来るものと思います。

ポイント3【小額から投資可】

ソーシャルレンディング事業者の公開している各ファンドには、「最低投資額」というものが定められています。
そして、この「最低投資額」は、ソーシャルレンディング事業者や、各ファンドごとに、差分がありますが、ごく一般的には、「1万円」程度の少額から、投資を行うことが出来るように設定されていることが多いです。

例えば、証券会社である、日本クラウド証券株式会社が運営しているソーシャルレンディング・サービス「クラウドバンク」の場合、



引用元:クラウドバンク

↑このように、各ファンドに、最低「1万円」からの少額投資が行える旨が、明記されています。

中には、後述の「Funds」(ファンズ)のように、「1円から」投資できる新サービスも登場しており、こうした「最低投資額」の小ささは、特に、資産形成途中の若年投資家層にとって、ソーシャルレンディング投資ならではの、魅力的なポイントと映ることでしょう。

ポイント4【手続きが簡単】

上述も致しましたように、ソーシャルレンディング投資を行う場合、

  1. ソーシャルレンディング事業者における、「投資口座」の開設(=投資家登録)と、
  2. 個別のファンドへの、「出資申込」という、

2つの手続きが必要です。

そして、ソーシャルレンディング投資の場合であれば、上記2つの手続きについて、いずれも、インターネットを通して、完結することが可能です。
窓口営業時間を気にしながら有人店舗を訪問して…というプロセスが不要である分、投資にまつわる諸手続きは簡単であると言え、この点もまた、ソーシャルレンディング投資のおすすめポイントのひとつに挙げられましょう。

ポイント5【分散投資が容易】

上記して参りましたように、ソーシャルレンディング投資の場合、

  • きわめて小額から、投資をスタートすることが出来、
  • かつ、各ソーシャルレンディング事業者への投資口座開設や、各ファンドへの出資申込も、比較的簡単に諸手続きを行うことが可能です。

これらの事情により、私たち個人投資家としては、(不動産投資等、最低投資額が大きく、かつ、投資の初期手続きも複雑な、投資手法と単純比較すれば、)ごく簡単に、分散投資を行うことが可能となります。

「卵をひとつの籠に盛るな」(=分散投資を徹底せよ)、というのは、投資の格言のひとつ。
そうした「分散投資」を、比較的容易に実現しやすい点もまた、ソーシャルレンディング投資のおすすめポイントのひとつと言えましょう。

※ただし、分散することばかりに夢中になって、信頼性の低いソーシャルレンディング事業者や、リスク・リターンのバランスが投資家にとって不利なファンド案件にまで、むやみに出資をしてしまうようでは、本末転倒となります。このあたりの、ソーシャルレンディング「事業者選び」及び「ファンド選び」のポイントについては、後述致します。

ソーシャルレンディングのおすすめポイントまとめ

まずは一度、ここまでの内容を整理しておきましょう。
ソーシャルレンディング投資のおすすめポイントとして挙げ得るのは、私が思うに、下記の5点です。

  1. 提示されている期待利回りが高い。
  2. 「ほったらかし投資」が可能。
  3. 小額から投資が出来る。
  4. 手続きが簡単。
  5. 分散投資が比較的容易。

続いては、ソーシャルレンディング投資の検討にあたって、特に留意・注意を要するポイント、リスク等について、詳説してまいります。

ソーシャルレンディングにおいて留意を要するポイント

上述して参りましたように、おすすめポイントも少なくない、ソーシャルレンディング投資ではありますが、同時に、注意・留意を要するポイントも、複数、存在します。

ポイント1【元本割れの恐れがある】

小難しい話となり、恐縮ですが、ソーシャルレンディング投資を行う場合、私たち個人投資家としては、各ソーシャルレンディング事業者との間で、「匿名組合契約」を締結することとなります。
ソーシャルレンディング事業者側が、匿名組合の「営業者」という立場となり、反面、私たち投資家は、「匿名組合員」となります。


※匿名組合の詳細に関しては、こちらの関連コンテンツをご覧ください。

ソーシャルレンディングと匿名組合|ソーシャルレンディング・ラボ


そして、この「匿名組合契約」において、営業者たるソーシャルレンディング事業者は、匿名組合員たる投資家に対し、投資家が出資する投資元本について、これの元本保証を行いません。
このため、私たち個人投資家としては、ソーシャルレンディング投資を行うにあたっては、必ず、「元本割れ」のリスクを許容する必要があります。

なお、各ソーシャルレンディング事業者が提供しているファンドの中には、時折、「保証付き」と謳われているファンドが、あります。
注意して頂きたいのは、この場合の「保証付き」というのは、

  • 「元本割れのリスクがない」ということを示しているわけでは、決して、無く、
  • あくまでも、「借り手の債務を、第三者が、(連帯)保証しますよ」ということを、意味しているだけである、

ということです。

ソーシャルレンディング事業者から資金を借りる、借り手企業が、ソーシャルレンディング事業者への元利金返済をストップしてしまった場合、連帯保証人は、当然、ソーシャルレンディング事業者に対し、借り手企業の代わりに、返済を行う義務を負うわけですが、その際、連帯保証人に十分な返済能力が無ければ、ソーシャルレンディング事業者による貸付金回収は、結局、失敗に終わる可能性があります。
すなわち、「(連帯)保証付きファンド」と言えども、元本割れのリスクは、必ず、存在する、ということです。

この「元本割れ」のリスクについては、ソーシャルレンディング投資を検討するにあたり、確実に、承知・留意を要するポイントですので、注意してください。

ポイント2【延滞が発生する可能性がある】

借り手企業が、ソーシャルレンディング事業者に、元利金の返済を行った場合、ソーシャルレンディング事業者としては、ファンドに生じた収益を、投資家に対し、分配・償還する義務を負っています。
しかし、逆に言えば、ソーシャルレンディング事業者から私たち個人投資家への分配・償還の原資は、あくまでも、ソーシャルレンディング事業者が、借り手企業から収受した、返済元利金に、限定される、とも、表現することが出来ます。

このため、万が一、借り手企業から、ソーシャルレンディング事業者への、元利金返済が、遅延した場合、ソーシャルレンディング事業者から私たち個人投資家への分配・償還にも、遅れが生じることとなるのです。

また、「匿名組合契約」の性質上、ファンドの事業に関する一切の執行権は、匿名組合の営業者たる、ソーシャルレンディング事業者が、占有しています。
このため、借り手企業からの元利金返済に延滞が生じた場合等において、私たち個人投資家としては、当然、「はやく(そして、出来るだけ多く)、自分の投資したお金を回収したい」と考えるわけですが、その執行(借り手企業からの債権回収等)は、あくまでも、ソーシャルレンディング事業者に対し、一任する必要がある、ということです。

こうした事情もまた、ソーシャルレンディング投資において、私たち個人投資家が、必ず留意・注意を要するポイントとなります。

ポイント3【ソーシャルレンディング事業者自体が破綻する危険性】

これもまた、上述の「匿名組合契約」というスキームの、特質によるものです。
匿名組合契約において、投資家(=匿名組合員)が出資・預託した資金については、以後、満期償還・払い戻しが行われるまでの間、ソーシャルレンディング事業者(=匿名組合契約における、営業者)の財産として、取り扱われることとなります。
※より厳密には、営業者の貸借対照表における、「預り金負債」勘定が適用されることとなります。

このため、万が一、ソーシャルレンディング事業者が、経営破綻し、破産手続き等へと移行することとなった場合、私たち個人投資家が預託等している資金についても、この破産手続きの中で処分され、大幅に毀損してしまう可能性が、否定できません。
(※一部のソーシャルレンディング事業者においては、信託保全スキームを採用する例も現出しつつありますが、あくまでも、少数派です)

この点もまた、留意を要するポイントとして、失念は許されません。

ポイント4【税制上の優遇がない】

現在の所得税法下において、私たち個人投資家が、ソーシャルレンディング投資を経て得る利益、すなわち、分配金収益は、所得の区分上、「雑所得」に該当するものと解されています。
また、その課税制度としては、「申告分離課税」を選択することは出来ず、あくまでも、「総合課税」一択、となります。

このため、給与等の所得が大きい人の場合、ソーシャルレンディング事業者から受け取る分配金に対しても、累進課税の影響で、高い税率が課されることとなる場合があります。
この点、申告分離課税の適用が許される、上場企業株式投資等と単純比較すれば、税制上、私たちソーシャルレンディング投資家は、些か、冷遇されていると言わざるを得ないでしょう。

この点もまた、ソーシャルレンディング投資検討にあたって、あらかじめ十分な注意を要するポイントとなります。

ポイント5【早期償還も少なくない】

ソーシャルレンディング事業者が、その借り手企業との間で締結する、金銭消費貸借契約においては、借り手企業からの申し出による、「繰り上げ返済」が許容されているケースがあります。
そして、実際に借り手企業が、「繰り上げ返済」を行った場合、ファンドの事業は当然、予定より早く終了することとなり、これが、「早期償還」という事態へと繋がることとなります。

まず、私の個人的な考えとしては、この「早期償還」ということは、投資家の立場からは、決して、極端に忌避すべき事柄ではない、と思っています。
ソーシャルレンディング投資において最も恐ろしいのは、投資したお金が(借り手の返済遅延等によって)「返ってこない」というケースです。
これに対し、早期償還というのは、逆に、「本来はお金が返ってこないはずの時点で、お金がさっさと返ってきてしまう」という事態を指します。
私たち個人投資家としては、むしろ(どちらかと言えば)歓迎すべき事態ではないか、というのが、私の個人的な考えです。

ただし、早期償還が発生すれば、当然のことながら、ファンドの運用「期間」が、従来の予定と比較して、短くなります。
このため、どうしても、ファンドからの分配金の「総額」が、従来の予定総額と比較して、小さくなってしまうのです。

例えば、期待利回り5パーセント、予定運用期間1年間のファンドに、10万円を投資する、とします。

  • ファンドが予定通りに運用されれば、分配金は、
    10万円×5パーセント×1年間=5,000円
    となります(※税金等は考慮外とします)。
  • これに対し、もしも、このファンドが、半年のみの運用で、早期償還された場合、たとえ、繰り上げ返済違約金等の関係で、多少、利回りが向上したとしても(例えば、5パーセントの期待利回りが、7パーセントへと向上したとしても)、分配金は、
    10万円×7パーセント×6ヶ月/1年間=3,500円
    となります(※同じく、税金等は考慮外)。

このように、早期償還が発生する場合、そもそも予定・計画していた分配金総額と比較し、少ない分配金しか受け取れない、という事態が生じることとなるため、投資家としては、その評価に、些か、個人差が生じる(=私のように、歓迎する投資家もいれば、逆に、嫌気する投資家もいる)、ということとなります。
この点も、ソーシャルレンディング投資を行うにあたっては、あらかじめ、留意しておきたいポイントとなります。


※早期償還については、こちらの別コンテンツもご参照ください。

ソーシャルレンディングと早期償還|ソーシャルレンディング・ラボ


ソーシャルレンディング投資において留意を要するポイントまとめ

ここまで見てきた、ソーシャルレンディングの「ネガティブな」ポイントとしては、下記の通りです。

  • 元本割れの可能性がある。
  • 延滞のリスクがある。
  • 事業者自体の破綻リスクがある。
  • 税制上の冷遇。
  • 早期償還が発生するケースがある。

次項からは、具体的なソーシャルレンディング「事業者選び」及び「ファンド選び」のポイントについて記述して参ります。

ソーシャルレンディング「事業者選び」のポイント

ソーシャルレンディング投資において、投資家登録を行う「ソーシャルレンディング事業者」の選定は、きわめて重要なプロセスとなります。
そんな「ソーシャルレンディング事業者選び」において、留意を要するポイントとしては、下記のようなものが挙げられるでしょう。

ポイント1【運営会社の上場/非上場】

国内ソーシャルレンディング事業者の多くは、「ベンチャー企業」程度の規模感の企業がほとんどであり、国内証券市場にその株式を上場しているソーシャルレンディング事業者は、ほんの一握り(※)に限られます。

反面、投資家としては、ソーシャルレンディン事業者に、「虎の子の投資資金を管理してもらう」という重大な作業を任せるわけですから、その管理能力・企業統治等において、充分な物、すなわち、上場企業並みの水準を求める心情は、ごく当然のことと言えましょう。

こうした見地から言えば、ソーシャルレンディン「事業者選び」において、当該事業者の、「上場/非上場」というポイントに着眼する、というのは、至極穏当な考え方と言えます。


(※)例:
東証マザーズ上場企業「ロードスターキャピタル株式会社」の運営によるソーシャルレンディング・サービス「OwnersBook」等。


ポイント2【ソーシャルレンディング事業者としての実績】

ソーシャルレンディング事業者選びにおいて、

  • 累計融資金額や、
  • 投資家登録数、等といった、

ソーシャルレンディング事業者としての「実績」に、ポイントを絞る、というのも、ひとつの見識と言えるでしょう。
これに加えて、「監督官庁から行政処分を受けていない事業者」というフィルタリングも加えるとすれば、

  • 累計融資1,000億円強
  • 投資家登録数(退会済除く)3万7千名強

等と言った実績値を有する、「SBIソーシャルレンディング」等が、有力な候補となってくることでしょう。

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