インデックス投資の運用方法は?独自の運用スタイルのメリット&デメリットまで検証
インデックス・ファンドの運用方法とは
投資家がインデックス投資に用いる、インデックス・ファンド(パッシブ・ファンド)。
その具体的な運用方法は、主に下記の通りです。
インデックス指数と同じ銘柄を、インデックス指数通りの加重(割合)で取得する
特定のインデックス(指数)に連動する投資成果の獲得を目指すインデックス・ファンド(パッシブ・ファンド)は、当然のことながら、自らが追随の対象とするインデックスと、全く同じ銘柄を、同じ比率で取得するところから、その運用が始まります。
例えば、日経平均に対して連動する投資成果の獲得を目指すインデックス・ファンドであれば、その運用方法としては、まず、日経平均がインデックスに組み入れている255銘柄と同じ銘柄を、同じ時価総額加重で、ポートフォリオに組み入れることとなります。
各銘柄ごとの値上がり・値下がりに応じてリバランスを実施
インデックス指数の多くは、時価総額加重でポートフォリオを構成しています。
このため、インデックス指数に連動するパッシブ・ファンドの場合も、ポートフォリオに組み入れられている銘柄の値上がり・値下がりに応じて、ポートフォリオ内の各銘柄の比率を、追加調整していく必要があります。
株高等によって時価総額が膨らんだ場合は、当然のことながら、再調整を行うほか、株価の下落によって時価総額が減少した場合も、必要に応じてポートフォリオの微調整を行います。
指数組み入れ銘柄の入れ替えがある場合、インデックス・ファンドも、自身のポートフォリオを同様に入れ替える
インデックス指数が組み入れ対象とする銘柄は、そのインデックス指数の誕生以降、各銘柄の栄枯盛衰に応じて、少しずつ組み換えがなされています。
そして、インデックス指数が、組み入れ銘柄の変更を行う場合、当然のことながら、そのインデックス指数に連動した投資成果の獲得を目指すパッシブ・ファンドも、ポートフォリオの組み入れ銘柄の変更を行う必要があります。
具体的には、
- ポートフォリオから、インデックス指数から除外される銘柄を除去し、
- 逆に、インデックス指数に新たに組み入れられることとなる銘柄を、追加取得することとなります。
なお、インデックス指数に連動するパッシブ・ファンドの上記の挙動を狙い、一部のアクティブ投資家が、
- インデックス指数の組み入れ銘柄変更に伴い、追加で組み入れられる銘柄の事前取得や、
- インデックス指数から除外される銘柄への空売りを、
を仕掛けることがあります。
この場合、インデックスファンドに投資している投資家が、実質的な不利益を被ることになるリスクも指摘されています。
参考:
インデックス投資のメリット・デメリットとは|分散投資によるリスク低減、信託報酬の安い投資信託の活用メリット等を検証
「インデックス・ファンド運用は手間いらず」は本当か
「インデックス・ファンドは、アクティブ・ファンドほどには、運用会社も手間暇がかからないため、信託報酬が安い」等と言われることがよくありますが、必ずしも、そうとは言い切れないのが実情です。
上記した通り、インデックス・ファンドの運用会社は、インデックス指数に組み入れられている銘柄ごとの値動きに応じて、ポートフォリオの再調整を行う必要があるほか、インデックス指数の組み入れ対象銘柄変更が行われる場合は、これまで組み入れていた銘柄の除去(売却)や、新たに指数に組み入れる銘柄の追加取得などの作業を行う必要があります。
これらの一連の作業をタイムリーにこなしていくためには、それなりの労力(人的コスト)が必要となります。
いかにパッシブ・ファンドといえども、ファミリーファンド方式によって運用されているものでない限り、純資産額があまりにも小さいと、純資産額に応じた信託報酬の額が小さく、結果的に、ファンドの運用にかかるコストを吸収しきれず、投資信託が償還となってしまうリスクなども危惧されることとなります。
インデックス投資の運用方法の基本は「バイ&ホールド」
投資家がインデックス運用に取り組む場合、短期での売買は想定せず、基本的には、一旦取得したら、あとは保有を続ける、いわゆる「バイ&ホールド」戦略をとることとなります(実際には、その後、毎月の積立投資によって、少しずつリスク資産を買い足していくことが一般的です)。
この運用方法には、下記のようなメリット&デメリットがある、とされています。
インデックス運用のメリット
つみたてNISAやiDeCoといった投資支援制度を活用できる
インデックス投資の場合、つみたてニーサや、iDeCo (個人型確定拠出年金制度)などといった、政府の投資支援制度・資産形成支援制度を、最大限に活用することができる、と言うメリットがあります。
つみたてニーサの場合、専用口座内で取得した銘柄の分配金や値上がり益に関して、最長で20年間にわたり、非課税で運用できると言うメリットがあります。
また、iDeCoの場合は、毎月の拠出金が全額所得控除となるほか、投資信託の分配金に関しても非課税で再投資できたり、最終的な受け取り時においても、退職金控除、ないしは公的年金等控除を活用できる、などといった利点があります。
参考:
「月10万」から始めるインデックス投資の魅力とは|iDeCo&つみたてNISAフル活用で、まずは月10万円の予算消化を目指す
個別の株式銘柄選びの手間暇から解放される
個別の株式銘柄投資の場合、投資家は、取得する株式銘柄を、国内、国外の上場企業の中から、目を皿のようにして選び抜く必要があるほか、投資を検討する企業の業績やファンダメンタルズ、などといった情報に関して、隈なく情報収集をした上で、独自の分析を行う必要があります。
さらに、株式を保有している間に関しても、
- 自分だけが、その銘柄に関する悪材料を取得するのが遅れ、結果的に売り逃げるのが遅れてしまったり、
- 逆に、好材料の発表をタイムリーにつかむことができずに、せっかくの上場相場にエントリーするのが遅れてしまったり、
などといった懸念を、常に抱え続けながら、投資生活に勤しむこととなります。
その点、インデックス投資の場合は、あくまでも、市場平均、すなわち、市場全体に対して投資することができるため、個別の株式銘柄選びに伴う手間暇から、投資家が解放されるほか、基本的には、長期のバイ&ホールドを前提とするため、短期の値動きに応じて頻繁に売買を繰り返す必要がない、というメリットもあります。
多量の銘柄への分散投資により、個別銘柄のリスクを無効化できる
投資信託を用いたインデックス投資の場合、投資信託を介して、数百から数千もの株式銘柄等に対して、資産を分散投資することとなります。
これだけの規模の分散投資を行うと、各個別銘柄ごとの非システマティック・リスクについては無効化され、市場のシステマティック・リスクそのもののみが、残存することとなります。
個別の株式銘柄と比較して、リスク資産全体のボラティリティーを、ある程度低く保つ効果が期待できるというのが、インデックス投資に伴う分散投資のメリットとされています。
資産クラスをまたいだ運用も容易に実現できる
インデックス投資の場合、
- 異なる資産クラスごとに投資信託を取得するか、
- そもそも、複数の資産クラスにまたがって分散投資を行う、「バランス型ファンド」を利用することにより、
一般個人投資家でも、機関投資家並みの、複数の資産クラスを横断したマルチアセット・ポートフォリオを、簡単に構築・運用することができます。
異なる資産クラスへと、資金を分散投資することにより、資産クラス同士の相関係数が十分に小さければ、互いの資産クラス同士の値動きの逆行によって、ポートフォリオ全体のリスクを小さく保つ効果が期待できるとされています。
無分配型投信の活用により、複利効果を最大化できる
インデックス投資に用いられるパッシブ・ファンドの中には、投資家に対する株式配当からの分配を行わない、いわゆる無分配型のファンドが数多く存在します。
こうした無分配型の投資信託を利用すれば、ポートフォリオに組み入れられている株式からの配当金は、投資家へと分配されることなく、そのまま再投資されますので、分配金への課税によって、複利効果が低減してしまうことがない、という、大きなメリットがあります。
アクティブ・ファンドと比較し、信託報酬等のコストが割安
インデックス運用に用いられる投資信託の場合、アクティブ運用を志向する、いわゆるアクティブ型ファンドと比較して、信託報酬等のコストが極めて低廉である、というメリットが指摘されています。
また、買い付け手数料がかからない、いわゆる「ノーロード型」ファンドや、解約時の信託財産留保額が0%に設定されているファンドなどが多い、と言うのも、パッシブ・ファンド運用のメリットといえます。
インデックス運用のデメリット
「買うべきでない銘柄」がインデックスに含まれている可能性がある
インデックス投資に取り組んでいる投資家の中で、自分が取得している投資信託の組み入れ銘柄全てに関して、その細かな業績やファンダメンタルズについて、タイムリーに把握している投資家は、少数派でしょう。
実際問題としては、そうした個別の銘柄に関する情報収集・把握のための時間コストを節約したいから、と言われるう理由で、インデックス投資に取り組んでいる投資家が、大多数を占めています。
すなわち、インデックス指数に含まれている株式の中には、個別の業績やファンダメンタルズを見られず、ただ単に、「インデックス指数に含まれているから」と言うだけの理由で、株が買われている銘柄もある、と言うことです。
こうした銘柄の中には、業績が不良であったり、将来的な事業の拡大が見込めないような企業や、ファンダメンタルズが他の競合他社と比較して劣っているような企業、すなわち、株を買うべきではないような銘柄・企業が含まれている恐れもあり、インデックス運用において、一定の注意が必要とされています。
参考:
インデックス投資は「危ない」のか|投資初心者必見、インデックス投資の危険性とは
インデックス投資成功のためには、世界経済の成長継続が前提条件となる
投資家の、インデックス投資による資産運用が長期的に成功するためには、インデックス指数が、今後とも成長を続けてくれること、すなわち、世界経済が、今後数十年から数百年もの長期間にわたって、着実に成長を続けてくれること、が、必要条件となります。
しかしながら、本格的な人口減少社会の到来を目前に控え、世界経済が今後とも、これまでの数十年間に経験したような高度成長を継続できるのかどうかに関しては、経済学者の間でも、意見が分かれています。
資産クラス分散によるリスク低減効果については、疑問視する声もある
インデックス投資を行っている投資家の運用方法としては、様々な資産クラスに投資信託を用いて資金を分散投資し、ポートフォリオ全体のリスクを低く保つ、と言う戦略が含まれていることが一般的です。
しかしながら昨今、経済のグローバル化や、複数の資産クラスにまたがったマルチアセット・ポートフォリオ運用の一般化などにより、様々な資産クラスの間の相関係数は、昔と比べて高まりつつあります。
このため、複数の資産クラスが、結局似たような動きをするような状況も、よく見られるようになり、かつてのようには、資産クラス分散によるリスク低減効果は期待できなくなりつつある、との指摘もなされています。
元本割れのリスク、及び、その影響が長期化するリスクがある
インデックス・ファンドの投資運用により
- 各銘柄固有の、非システマティック・リスクは排除できますが、
- 市場自体の、非システマティック・リスクそのものは、排除することができません。
仮に、市場に上場している多数の銘柄が影響を受けるような、大規模な経済変動が生じた場合、インデックス投資家の現在の運用方法では、多数の投資家が、運用資産の評価額を減衰させてしまう恐れがある、と指摘されています。
短期間で大きな利回りを期待することはできない
インデックス投資の運用方法は、基本的にバイ&ホールドであり、長期的な各指数の値上がりに期待した、放置色の強い運用が主流です。
ショート・ポジションをとって取引に入ることも一般的ではありませんし、投資信託の取得にあたってレバレッジをかけるようなことも、決して推奨されてはいません。
このため、FX投資や仮想通貨投資とは違って、短期で大きな利益を上げることを目的としたトレードには、そもそも、インデックス投資の運用方法は向いていない、というのが実情です。
インデックス投資運用のスタートには、それなりの手間暇・ノウハウが必要となる
投資家がインデックス投資・運用をスタートするためには、
- 投資家が、自分自身のリスク許容度を客観的に把握・診断したうえで、
- リスク許容度の範囲内で、期待利回りを最大化し得る、最適な「アセット・アロケーション」を自ら構築し、
- アセット(資産クラス)ごとに、利用するインデックス指数を決め、
- かつ、インデックス指数ごとに、活用する(=買い付ける)投資信託を決定し、
- 初期の買い付け、及び、定期的な自動積立投資の設定を済ませる、
必要があります。
ある程度投資に慣れた人であれば、様々なシミュレーションを重ねたうえでアセット・アロケーションを構築するのもお手の物、でしょうし、投資信託選びはむしろ、ひとつの「趣味」と言える人も多いでしょう。
しかしながら、「これまで、個別株式投資はもとより、ロボアドバイザー投資すら未経験」といった、完全な「投資初心者」の方にとっては、上記したようなプロセスは、些か荷が重い、というのも実情です。
また、上記したような作業については、実質、そのすべてを、投資一任型のロボアドバイザーに任せてしまうことも出来ますが、その場合、(買い付ける投資信託の経費率に加えて、)利用するロボアドバイザーに対して、年率換算で1パーセント程度(主要なインデックス・ファンドの経費率が、概ね0.5パーセント未満程度であることを考えると、ロボアドバイザーの手数料がいかに高率か、が分かります)の手数料を支払う必要が生じてしまいます。
参考:
「インデックス投資は負けない」は本当なのか|インデックス投資が「負ける」のはこんな時
インデックス投資の運用方法は投資信託だけとは限らない?
インデックス投資の運用方法=投資信託保有、と考えられがちですが、実はそうとも言い切れません。
投資家自身が手間隙を惜しまなければ、投資信託保有以外にも、インデックス投資の運用方法は存在します。
そもそも、インデックス・ファンドは、分散投資のし過ぎ?
インデックス・ファンドは、数百から数千もの銘柄に対して資金を分散投資しますが、一部の研究では、各銘柄の非システマティック・リスクを排除したい、という目的で分散投資をするのであれば、それほど多量の分散投資は実際は必要なく、50銘柄から60銘柄程度に対して資金を分散投資しておけば、むしろ、それ以上の銘柄数に対して資金を分散したとしても、分散投資効果、すなわに、リスク低減効果は向上しなくなる、と言われています。
投資家が自力でインデックス運用を行う方法と、そのメリット&デメリット
投資家が、投資信託を利用せずに、自力でインデックス運用を行いたい場合、基本的には、下記のような運用方法を取ることとなります。
- インデックス指数の、組み入れ上位銘柄に絞って、銘柄を取得する。
- 組み入れ銘柄の時価総額の変更により、上位組み入れ銘柄が変更となった場合は、応じて組み入れ銘柄変更を行う。
このようにすることで、インデックス指数に組み入れられている全ての銘柄を取得・保有するのではなく、上位の組み入れ銘柄に絞ることによって、買い付け手数料や手間暇、といったコスト等を節約することができると言われています。
このようにして、投資家自身でインデックス運用を行う場合、その最大のメリットは、投資信託にこれまで支払っていた、信託報酬等のコストを節約できる、と言う点です。
一方で、この運用方法でインデックス投資を行う場合のデメリットとしては、
- 各株式銘柄の買い付けにあたって、買い付け手数料が生じる場合がある
- インデックス・ポートフォリオの構成に当たって手間暇がかかる
- 各銘柄の最低取得株数や株価によっては、かなりの資金の初期投資が必要となる
等といった点が挙げられます。
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