インデックス投資でセミリタイアは可能なのか-理想の早期退職のために、インデックス投資で出来ること・出来ないこと

インデックス投資でセミリタイアを目指すメリット

iDeCoやNISAといった仕組みを利用しつつ、セミリタイアに必要な資産の蓄積を進めることが出来る

セミリタイアに向けた資産づくりを進めていくにあたっては、所得税や住民税等といった、いわゆる「税金コスト」を、いかに節約・削減していくか、が、重要なポイントとなります。

この点、インデックス投資ならば、イデコや、つみたてNISAなどといった、政府の投資支援制度のメリットを最大限に活用することで、税コストを縮小することができる、という利点があります。

iDeCoの場合であれば、毎月の拠出金が、全額所得控除となることにより、確定申告等を通じて、所得税や住民税の軽減を図ることができます。

また、つみたてNISAの場合は、最長で20年間と言う長い期間にわたって、つみたてNISA口座内で運用した投資信託の、分配金や値上がり金に対して、課税がなされない、と言う利点があります。

特につみたてNISAの場合は、つみたてNISA口座で取得することのできる銘柄が、金融庁によって指定されていますが、この、金融庁の認定銘柄の大半を、インデックス投資向けの投資信託、すなわち、パッシブ・ファンドが占めています。


参考:
インデックス投資の運用方法は?独自の運用スタイルのメリット&デメリットまで検証

インデックス投資を活用すれば、単に貯金する場合よりも、セミリタイアに必要な資金を、より早く貯められる可能性がある

インデックス投資を活用すれば、単に貯金する場合よりも、セミリタイアに必要な資金を、より早く貯められる可能性がある
低金利が定着した日本では、銀行に預金しているだけでは、セミリタイアに必要な資金量は、なかなか蓄積できません。そこで、インデックス投資等、比較的少額からスタートできる投資手法に、人気が集まりつつあります。
※画像はイメージです。

昨今の、低金利の環境下においては、銀行に資金を預けているだけでは、その利息は微々たるものであり、セミリタイアや、近年話題のFIREに必要な資金元本を蓄積することは、容易ではありません。

できるだけ早期に、セミリタイヤに必要な資金元本の蓄積を終えるためには、在職中も、お金に働いてもらうこと、すなわち、資産を何らかの投資に回していくことが必要となります。

インデックス投資の場合、投資初心者においても、比較的手軽に始めることのできる投資スタイルとして人気を集めており、また、投資信託からの分配金を再投資に回すことによって、セミリタイアに向けた長期の資産形成において重要なポイントとなる、複利効果を最大化しやすくなる、と言う利点も指摘されています。

個別の株式銘柄投資よりは、ある程度リスクを限定しながら、セミリタイアに向けた資産作りが出来る

セミリタイヤに向けた資産づくりにおいては、リターン(利回り)も重要ですが、利回りの標準偏差、すなわち、リスクに対する配慮も、欠かすことができません。

この点、インデックス投資の場合は、個別の株式銘柄へと投資するのではなく、数百から数千もの株式銘柄等に対して資産を分散投資する「投資信託」を利用することで、分散投資によるリスク低減効果を期待することができます。

具体的には、十分な銘柄数の株式等へと資産を分散投資することで、個別の株式銘柄ごとの、非システマティック・リスクを排除することにより、ポートフォリオ全体のボラティリティー(リスク)を、ある程度低位に保つことができる、と言うメリットがあります。

手間暇がかからないため、在職中に本業への取り組みを圧迫しない

インデックス投資の場合、個別の株式銘柄投資とは違い、日々の銘柄の値動きに対しては、さほど神経質になる必要がありません。
短期的な売買を繰り返すと言うよりは、できるだけ早めに投資信託の買い付けを始めて、長期のバイ&ホールドによって、数十年単位に及ぶ値上がり益に期待する、と言う投資スタイルとなりますので、デイトレーダーのように、日中、トレード用のパソコンにしがみついているような必要もありません。

特に、セミリタイヤによる早期退職を目指す場合、少なくとも本業に従事している間においては、その本業で、最大限の成果を出し、その成果に応じて、できる限り多くの給与所得を積み上げていくことが、重要な施策の1つとなります。

個別の株式銘柄の選択が不要であり、かつ、定期的な買い付けについても、自動の積み立て投資設定をしておけば、後は手間いらずであると言う、インデックス投資の持ち味は、セミリタイアを目指す過程で、本業にかける時間・気力を最優先したい、と考える投資家層にとっては、大きなメリットといえます。


参考:
「月10万」から始めるインデックス投資の魅力とは|iDeCo&つみたてNISAフル活用で、まずは月10万円の予算消化を目指す

低予算から、世界全体に分散投資するポートフォリオを構築できる

セミリタイアに向けた取り組みは、若年の段階から計画的に進めることが肝要です。
しかしながら、若い年代は、投資元本が無い、という難点があります。
いくら分散投資しようとしても、株式銘柄ごとの取得単位・コストを考えると、十分に分散の為されたポートフォリオを構築するためにな、多額の投資資金が必要となります。

その点、インデックス投資ならば、100円程度から投資信託の積み立て投資をスタートすることができるほか、様々な資産クラスへと投資する、複数のインデックス・ファンドを、ポートフォリオに組み入れることによって、

  • 単一の資産クラスのみ、集中的に投資をするのではなく、
  • 複数の資産クラス(マルチ・アセット)にまたがった、プロの機関投資家レベルの分散投資を、

初期投資額の小さい個人投資家であっても、気軽に実現することができるという利点があります。

なお、現代ポートフォリオ理論においては、互いの相関係数の小さい、複数の資産クラスに対して分散投資することで、それぞれの銘柄の値動きの逆行によって、ポートフォリオ全体の値動きを、さらに低位に保つ効果が期待できる、とされています。

アクティブ・ファンドやヘッジファンドよりも、低コストで資産運用が行える

セミリタイアに向けた資産形成においては、冒頭に述べたように、税コストの削減が極めて重要なポイントとなりますが、同じように、証券会社などに対して支払う手数料に関しても、でき得る限りの節約に努める必要があります。

個人投資家からの資産を預かって運用する、ヘッジファンドの場合、預かり資産残高に対して年率で数%程度、そして、生じた運用益に対して、20%前後程度の成果報酬と言う、極めて高い手数料が設定されています。

また、少数の株式銘柄等に対して集中的に投資する、いわゆるアクティブ・ファンドの場合は、預かり資産残高に対して、年率で2%前後の手数料が生じます。

この点、インデックス投資に用いられるパッシブ・ファンドの場合は、年間の信託報酬の料率が、預かり資産残高の0.5%以下程度であることが一般的であり、さらに、市場に上場している上場投資信託(ETF)の場合は、年間のコストが、預かり資産残高の0.03%前後程度に収まるケースなども散見されます。

加えて、インデックス投資に用いられるパッシブ・ファンドの場合は、そもそもの買い付けにあたっての手数料がかからない、ノーロード型の投資信託や、解約時の信託財産留保額が0%に設定されているファンド等も、数多くラインアップされています。


参考:
インデックス投資とアクティブ投資の違いとは|運用方針・信託報酬・投資方法の違いを検証

資産の貯まり具合や、自分の年齢の変化に応じて、リスク許容度を調整できる

セミリタイアを目指す過程において、投資家は、少しずつ年をとっていきますし、その間、資産の蓄積によって、少しずつではありますが、金融資産の量も増えていくこととなります。

そして、投資家の年齢や、金融資産の量によって、その投資家の「リスク許容度」は、微妙に変化していくこととなります。

リスク許容度が変化すれば、当然、それに応じて、自身のポートフォリオの利回りの標準偏差(ボラティリティ)も、再調整していく必要があります。

インデックス投資であれば、投資家自身で、自分のリスク許容度の変化に応じて、

  • ポートフォリオ全体に占める、株式の比率を増やしたり、
  • 逆に、株式の比率を下げて、債券(=証券化された債権)の比率を高める、

などの施策によって、ポートフォリオ全体のリスクを、自由に調整することができます。

※なお、自身のリスク許容度について把握の仕方が分からない、という人は、助言型のロボアドバイザー等を活用することで、リスク許容度把握に役立てることが出来る場合があります。

セミリタイアを目的にインデックス投資に取り組む場合の注意点

インデックス投資は、セミリタイア後の生活に必要な「キャッシュ・フロー」を生み出してくれるわけではない

インデックス投資は、セミリタイア後の生活に必要な「キャッシュ・フロー」を生み出してくれるわけではない
早期のセミリタイアを目指す投資家にも人気の高い、インデックス投資ではありますが、あくまでも、値上がり益(キャピタル・ゲイン)の獲得に重きが置かれた投資手法であり、インカム・ゲインの獲得には不向きであることを、忘れてはなりません。
※画像はイメージです。

セミリタイアを目的に投資に取り組む場合、その投資の主目的は、セミリタイア前と、セミリタイアした後で、大きく異なります。

セミリタイア前の、給与所得と言う定期収入がある時期においては、キャピタル・ゲインを狙い、資産全体のボリューム向上を主な目的として、投資に取り組むこととなります。

その一方で、給与収入と言う定期所得の途絶えてしまった、セミリタイア後においては、毎月の生活支出を補うために、投資から、キャッシュ・フローというインカム・ゲインを得ていく必要があります。

そして、インデックス投資は、「値上がり益」と言う、キャピタル・ゲインを、長期的に獲得していくための投資手法であり、不労所得と言うキャッシュ・フロー(インカム・ゲイン)を生み出していくための投資スタイルではありません。

このため、セミリタイアを目的に、インデックス投資に取り組む場合、

  • セミリタイアによる早期退職に、実際に踏み切るまでの間の、キャピタル・ゲインを蓄積するためには、インデックス投資は適していますが、
  • セミリタイア後の生活を支えるための、キャッシュ・フロー目的の投資には、必ずしも、インデックス投資は適していない、

と言う点に、十分な注意が必要です。


参考:
インデックス投資は、やめた方がいい?「インデックス投資はやめとけ」と言われる理由とは

これまで同様の値上がり益が、今後も生じ続ける保証はない

インデックス投資において、キャピタル・ゲイン(値上がり益)を得ていくためには、インデックス指数に含まれている様々な株式銘柄が、今後とも、高値を更新し続けていく必要があります。

確かに、直近の数十年間においては、米国株を中心とした株高によって、インデックス投資家の多くが、大きな利益を上げることができました。

しかしながら、本格的な人口減少社会の到来を目前に控え、世界経済、ひいては、株式市場が、今後とも、従来通りの高成長を続けていくことができるのか、どうかに関しては、経済学者の間でも、議論が大きく分かれています。

セミリタイアに必要な資金元本を貯めるために、インデックス投資に取り組んだとしても、その後、世界経済が停滞してしまえば、大きな値上がり益を得ることができず、結果として、セミリタイアを早めるような効果は得られない、などと言う結末に終わるケースも、十分に想定されます。

どれだけ分散投資を徹底しようとも、元本割れのリスクはゼロに出来ない

インデックス投資の場合、多数の銘柄に対して分散投資することにより、ポートフォリオ全体のリスクを低く保つ効果がある事は、前述の通りです。

しかしながら、どれだけ多数の銘柄に分散投資しようとも、市場のシステマティック・リスクそのものは、完全には排除することができません。

また、複数の資産クラスに対して資金を分散投資したとしても、互いの相関係数が完全な逆相関(相関係数がマイナス1)でない限り、ポートフォリオ全体のボラティリティー(リスク)をゼロにすることはできません。

そして、昨今のリーマンショックやコロナショックのような、大規模な経済変動が生じた場合、分散投資の程度の差こそあれ、どれだけ分散投資を徹底していたとしても、少なくとも一時的には、ポートフォリオの大幅な評価減は、免れることができません。

また、こうした暴落時に、焦って狼狽売りをしてしまうと、損失が確定し、セミリタイアに向けた資産づくりを目的としていたはずが、却って、資産の元本額を減らしてしまうような結果となることも、十分にあり得ます。

セミリタイア後にバブルが崩壊すると、老後生活が破綻する恐れがある

セミリタイアを目的にインデックス投資に取り組む投資家の多くが、最も恐れているのは、セミリタイア、すなわち早期退職を済ませた後に、バブルが崩壊してしまうことです。

インデックス投資の値上がり益を得て、資産の全体額が、セミリタイアに必要な資金量にようやく達したと思い、早期退職に踏み切ったとしても、その後、バブルが崩壊してしまえば、資産の評価額は、場合によっては、3分の2、ないしは半額程度まで、一気に落ち込んでしまうことがありえます。

また、一旦バブルが崩壊すると、その後、市況が、バブル崩壊前の水準を取り戻すためには、場合によっては、10年以上もの歳月を要することがあります。

特に、セミリタイアにより、会社からの定期的な収入が途絶えている状況下においては、株価が下落しても、それを、安値で株式を買い足すためのチャンス、と捉えることはできません。

逆に、生活のために、一定額の取り崩しを行っている場合、株価が下落してしまうと、より多くの投資信託銘柄を現金化しないと、生活に必要なキャッシュ・フローを補充することができません。

このように、セミリタイア後のバブル崩壊には、重大なリスクがつきものであると言うことを、決して放念してはなりません。


参考:
インデックス投資は「危ない」のか|投資初心者必見、インデックス投資の危険性とは

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