インデックス投資は、やめた方がいい?「インデックス投資はやめとけ」と言われる理由とは

やめた方がいいって本当?インデックス投資とは

単一、ないしは、少数の株式銘柄に資産を集中投資するのではなく、数百から数千もの銘柄に資産を分散投資する「投資信託」(非上場投資信託、及び、上場投資信託=ETF)を活用することによって、各市場のインデックス(指数)と連動した投資成果の獲得を目指す投資スタイルを、「インデックス投資」と呼びます。

インデックス投資の流れ

投資家がインデックス投信取り組む場合、基本的に、下記のようなステップを辿ることとなります。

  1. ロボアドバイザーなどの外部サービスを活用し、自分自身のリスク許容度を客観的に診断する。
  2. 同じく、ロボアドバイザー等のサービスを活用して、自身のリスク許容度に見合った、ポートフォリオ(複数の資産クラスの組み合わせ)を作成する。
  3. 各資産クラスごとに、どのようなインデックス(指数)を追随するのかを検討する。
  4. インデックスごとに、どの投資信託を活用するのかを決定する。この際、コストの低い投資信託を探すにあたっては、インデックス投資家のブログ等も参考になる。
  5. ネット証券会社などを利用し、投資信託を買い付け、同時に、毎月の積み立て投資等を設定する。
  6. 各資産クラス別の銘柄(投資信託)の値上がり・値下がりに応じて、ポートフォリオの内容が当初設定したものと乖離してきた場合、適宜、リバランスを実施する。

やめとくのは勿体ない?インデックス投資のメリットとは

幅広い銘柄への分散投資により、ポートフォリオ全体のリスクを低く保つ効果が期待できる

インデックス投資なら、幅広い銘柄への分散投資により、ポートフォリオ全体のリスクを低く保つ効果が期待できる
「卵を一つの籠に盛るな」は、有名な投資格言のひとつ。インデックス投資なら、数百~数千もの銘柄への分散投資により、個別銘柄投資と比較し、リスクを限定的なものとする効果が期待できます。
※画像はイメージです。

インデックス投資においては、投資家は、投資信託を活用し、数百から数千もの銘柄に対して、資産を分散投資することとなります。
この場合、少数の株式銘柄に資産を集中投資する場合と比較して、各銘柄の非システマティック・リスクを排除することができ、ポートフォリオ全体のリスクを低く保つ効果が期待できます。

様々な国と地域へ投資することで、成長の果実を取り損ねるリスクを最小化できる

インデックス投資においては、複数の投資信託を活用することによって、全世界の、様々な国と地域の株式市場に上場している企業に対し、間接的に、投資を行うことができます。
このため、特定の国や地域の株式市場に対してのみ投資する場合と比較し、他国の経済成長を取り逃すというリスクを、最小限にとどめる効果が期待できます。

インデックス・ファンドは、アクティブ・ファンドと比較すると、諸々のコストが安い

投資家が、投資信託を取得・保有する場合、「信託報酬」と呼ばれるコストが生じます。
信託報酬コスト自体は、インデックス投資に用いられるパッシブ・ファンドでも、アクティブ・ファンドでも、同様に発生しますが、その具体的な料率は、インデックス・ファンドの方が、圧倒的に安い、と言う特徴があります。

毎月10万円程度から、「市場全体」へと投資することが出来るため、個別の銘柄選びの手間暇から解放される

インデックス投資においては、投資家は、投資信託を通じて、株式市場「全体」に対して、幅広く資産を投資することができます。
このため、個別の株式銘柄を、投資家自身が取捨選択する必要がなくなり、日々の銘柄選びの手間暇から解放される、というメリットが期待できます。

また、インデックス投資に取り組む投資家の大半は、「iDeCo口座」や「つみたてNISA口座」を利用し、概ね、毎月10万円程度からインデックス投資に取り組むことが一般的とされています。
数百万円にも満たない少額から、これだけの規模の分散投資をスタート出来る、という点は、インデックス投資の大きなメリットと言えます。

長期的な成長へと投資する「バイ&ホールド」戦略が主体となるため、デイトレード等のように労力を要さない

インデックス投資は、基本的に、投資信託を長期間に渡って保有しつつ、定期的な(原則、毎月)積み立て投資によって、資金を追加投入する、と言う投資モデルになります。
バイ&ホールド戦略がメインとなるため、一部の投資家のイメージにある、トレード用のディスプレイと終始睨みあいを続けるような、デイトレード、スキャルピング等といった短期売買、及びその良力とは、無縁となります。

つみたてNISAやiDeCoのメリットを最大限活用することができる

インデックス投資のような、数十年単位を見越した長期投資では、信託報酬等の、いわゆる「手数料」コストを節約するのと同じように、所得税や住民税といった「税金」コストも、最適化していく必要があります。

この点、インデックス投資の場合、

  • つみたてNISA
  • iDeCo(個人型確定拠出年金制度)

という、政府の長期投資支援の2本柱のメリットを、最大限に活用できる、という利点があります。

「つみたてNISA口座」でインデックス投資に取り組むメリット

通常、一般口座で投資を行い、何らかの利益を得た場合、

  • キャピタル・ゲイン(投資信託等の値上がり益)
  • インカム・ゲイン(投資信託からの分配金や、株式からの配当金)

に対して、約20パーセント程度の税金がかかることとなります。

これに対して、つみたてNISA専用口座で投資信託を取得・保有する場合、最長で20年間にわたり、キャピタル・ゲイン、及びインカム・ゲイン、双方、非課税にて運用することが可能。
本来は税金として差し引かれてしまう分も、そのまま非課税で再投資に充てることが出来るため、複利効果も最大化しやすくなります。

なお、つみたてNISAの場合、一般NISAとは異なり、専用口座で取得できる銘柄が、あらかじめ金融庁によって指定されています。
2021年10月時点では、201本の投資信託、及びETFが、つみたてNISAの対象銘柄として認定されていますが、その大部分は、株式型、ないしは、資産複合型(株式を含め、複数の資産クラスへと分散投資する)の、インデックス・ファンドが占めています。

iDeCo口座でインデックス投資に取り組むメリット

老後資金の形成を後押しする狙いで運用されている、iDeCo制度の場合、毎月の拠出金が、全額所得控除となる、という、大きな節税メリット(所得税、及び住民税が軽減される)があります。
また、積み立ててきた老後資金を実際に受け取る時点においても、その受け取り方法に応じて、

  • 退職所得控除
  • 公的年金等控除

を活用することが出来、税負担が軽減されています。

iDeCo口座で積立投資が出来る具体的な銘柄は、証券会社によって異なりますが、例えば、国内ネット証券業界大手「SBI証券」の場合、下記のような低コストなインデックス・ファンドを、ラインアップの対象としています(一部)。

運用会社 商品名 信託報酬
三菱UFJ国際投信 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 0.0968%以内
ニッセイアセットマネジメント ニッセイJリートインデックスファンド 0.2750%以内
SBIアセットマネジメント SBI・全世界株式インデックス・ファンド 0.1102%程度
セゾン投信 セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド 0.57%±0.02%程度
大和アセットマネジメント iFree NYダウ・インデックス 0.2475%

参考:
インデックス投資のメリット・デメリットとは|分散投資によるリスク低減、信託報酬の安い投資信託の活用メリット等を検証

インデックス投資は「やめとけ」と言われる理由

上記のような、様々なメリットがあっても尚、一部の投資家からは、「これからインデックス投資に取り組むのは、得策ではないため、やめた方がいい」との声もあります。
中には、「インデックス投資は危ないから、やめとけ」と主張する向きもあります。

そうした主張の背景には、下記のような事情があります。

投資家が、投資信託を活用せず、自力でポートフォリオを構築するのは、極めて高コストとなる

投資家が自力で(=投資信託を利用せず)、インデックス指数に連動した投資成績を獲得したい場合、自分自身で、インデックスに含まれる全ての銘柄を、インデックスの保有割合通りに、取得し、かつ、定期的に組み替えていく必要があります。
しかしながら、各株式銘柄の最低投資価格などを考えると、一(いち)個人投資家が、数百から数千もの株式銘柄に対して、インデックス・ファンドと同じように資産を投資する事は、現実的ではありません。

投資信託の保有には、信託報酬コストがかかる

インデックス投資で用いる投資信託の保有には、信託報酬コストがかかる
インデックス投資では投資信託を用いることが一般的ですが、投資信託の保有には、「信託報酬」と呼ばれるコストがかかります。数十年間という長期運用を考えると、このコストは、最終的な投資収益に、大きなインパクトを与えることとなります。
※画像はイメージです。

上記したように、個人投資家がインデックス投資を行う場合は、資金量の関係で、どうしても、投資信託を活用することとなります。
しかしながら、投資信託を取得し保有する場合、投資信託の運用会社に対して、定期的に、「信託報酬」と呼ばれる運用手数料を支払う必要があります。
この信託報酬は、たとえ、投資信託の運用成績がマイナスの場合においても、変わらず定期的に生じ続けることとなります。

また、投資信託が株式を取得する際の売買手数料等のコストについても、間接的に、投資家が負担する必要があります。

インデックス投資の場合、実務上「買うべきでない株」も保有資産に含まれることに

投資家がインデックス・ファンドに投資する場合、そのインデックス・ファンドが組み入れている銘柄のひとつひとつについて、個別株式銘柄投資と同じように吟味することは、難しいのが現実です(インデックス・ファンドの場合、保有銘柄が数千件にも及ぶことが一般的であるため)。
このため、業績が振るわななかったり、社会的に問題のあるビジネスを営んでいる会社の場合でも、インデックスに組み入れられている限りは、株式が買われる、ということとなります。
この場合、一部の株式銘柄に関しては、本来の調整済株価よりも、需給バランスに基づく取引上の株価が上昇してしまう、すなわち、バブルにも等しいような状態が生じてしまうこととなります。

今後も世界経済が成長継続し、インデックスが向上し続けるかは、未知数

インデックス投資の場合、基本的には、世界経済が、今後とも、右肩上がりの成長を継続することを前提としています。

確かに、直近の数十年程度を考えれば、アメリカ経済の牽引されるような形で、世界経済は長期的な発展を続けてきており、その経済成長を代表する、アメリカ市場の株式インデックスは、特に近年、大きな値上がりを記録しました。

しかしながら、本格的な人口減少社会への突入を直前に控え、今後とも、先進国経済が、これまでと同様の成長を記録できるのかどうかは、目下、未知数であるというのが実情です。

世界経済が成長を減速させた場合、これからインデックス投資に取り組む投資家が、これまで長らくインデックス投信取り組んできた先輩投資家と同様の投資成果を得ることができるかどうかは、不明瞭です。

資産クラス分散によるリスク低減効果は限定的

これまで、インデックス投資の世界においては、株式系の資産クラス、債券系の資産クラス、もしくは、地理的に分散した株式市場インデックスを保有することによって、ポートフォリオ全体のリスク(利回りのボラティリティ)を低く保つ運用が、基本とされてきました。
しかしながら、昨今、経済のグローバル化、および、マルチアセット・ポートフォリオ運用の一般化により、各資産クラス間の相関関係は、かつてないほどに強まっています。
この結果、複数の資産クラスに資産を分散投資したとしても、これまでのようなリスク低減効果を得られなくなる可能性が指摘されています。

また、株式系の資産クラスは、実体経済との連動性が極めて強いことでも知られています。
株式インデックスを大量に保有する投資家が、株式市場の暴落によって大幅な評価減を被った場合、実体経済においても、失職や、給与の減少など、経済的なデメリットを被っている可能性も高くあります。
すなわち、投資ポートフォリオの弱体化と合わせて、投資家の実生活においても、収入減少等のダブルパンチを被るリスクがある、といえます。

インデックス・ファンドの元本割れは、長期間に及ぶことも

不況に伴う大幅な評価減は、数ヶ月程度の短期にとどまることもあれば、場合によっては、数年以上の長期間にわたるケースもあります。
現に、アメリカ株式市場のインデックスである、S&P500は、2000年代初頭のドットコム・バブル崩壊から、リーマン・ショックを経て、バブル崩壊前の水準を取り戻すまでに、十数年程度の期間を要しました。
このように、インデックス投資に取り組む場合、資産評価額が、10年間以上もの長期にわたり、元本割れとなるリスクもあると言う点に、注意が必要です。

インデックス投資では、短期で大きく稼ぐことは難しい

インデックス投資は、基本的に、数十年単位の長期投資を前提としており、バイ&ホールドを基本戦略としています。
ショート・ポジションを取り、「売り」からトレードに入る事は基本的になく、あくまでも、「ロング」からの長期保有を続けることを前提とした投資モデルであるため、FX投資や仮想通貨投資のように、短期間で大きな利益を上げることには適していません。


参考:
インデックス投資の利回りは|資産クラスごとに利回りが異なる仕組み、平均利回りの計算方法まで解説

株主優待も直接受け取れない

インデックス投資に取り組む場合、各株式を保有するのは、投資信託の所有者個人ではありません。
このため、通常の個別株式銘柄投資と違い、投資家が直接企業から株主優待を受け取ることはできません。
このため、株主優待の享受目的に、投資に取り組む場合、インデックス投資は現実的な投資方法ではありません。

売却を伴うリバランスには、課税関係が生じる

長期にわたりインデックス投資を行っていると、各資産銘柄の値上がり、ないしは値下がりによって、当初設定したポートフォリオのバランスが、崩れてきてしまうことがままあります。
この場合、ロボアドバイザーのようなインデックス投資支援サービスを活用している場合、値上がりした資産を一部売却することによって、ポートフォリオのバランスを適正なものに保とうとすることがあります。
ただしこの際、値上がり資産の含み益を実現してしまうことによって、課税関係が生じてしまうことがあります。

分配金ありの投資信託を選んでしまうと、分配金が都度課税され、複利効果が薄れる

投資信託には、定期的に分配金を出す「分配金あり」の投資信託と、分配を行わない、無分配型の投資信託が存在します。
このうち、「分配金あり」の投資信託の場合、分配金を再投資しようとしても、あくまでも、課税後の分配金を再投資することとなるため、無分配型の投資信託の再投資と比較すると、複利効果が出づらくなると言う、デメリットがあります。

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インデックス投資検証チーム
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