不動産クラウドファンディングによる資金調達のメリットは|他のクラウドファンディング類型との違いも
個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からクラウドファンディング投資(主に融資型)を始め、約3年が経過。
合計20社以上のクラウドファンディング投資事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。
目次
不動産クラウドファンディングとは
不動産事業者(宅地建物取引業者)が、新たに不動産特定共同事業法に基づく許可・登録を取得し、不動産取得のための資金をクラウドファンディング形式で調達、その後、取得した不動産から生じた賃料収入(インカムゲイン)や売却益(キャピタルゲイン)を原資に、投資家への利益分配を行うスキームを、「不動産クラウドファンディング」と呼びます。
不動産クラウドファンディングによる資金調達の仕組み
不動産クラウドファンディングにおける資金等の流れを、簡単に時系列で表すと、下記のようになります。
- 宅地建物取引業者(不動産業者)が、国土交通省、ないしは、都道府県知事から、不動産特定共同事業法に基づく許可を取得し、「不動産クラウドファンディング事業者」となる。
- 不動産クラウドファンディング事業者が、自身のホームページ上で、ファンド情報を掲載し、投資家からの出資を募集する。
- 投資家は、不動産クラウドファンディング事業者のサイトを閲覧し、気に入ったファンドに対し、出資の申し込みを行う。
- 出資が成立すると、不動産クラウドファンディング事業者と、投資家との間で、「匿名組合契約」が電磁的に締結される(不動産クラウドファンディング事業者は、匿名組合の「営業者」となり、投資家は、「匿名組合員」となる)。
- 不動産クラウドファンディング事業者は、ファンドに募った資金を利用して、不動産の取得・リノベーション等を実施する。
- ファンドの運用期間中に、投資対象不動産から生じた賃料収入(インカムゲイン)、及び、物件の最終的な売却時に生じた売却益(キャピタルゲイン)を原資にして、投資家に対する利益分配を実施する。
- 不動産クラウドファンディング事業者は、最終的に、投資対象不動産を売却し、その売却代金を原資に、投資家に対する元本償還を実施する。
参考:
【2021年7月更新】不動産クラウドファンディングとは?|不動産クラウドファンディングのメリット・デメリット・リスクから徹底解説。上場企業運営サービスも
不動産クラウドファンディング投資のメリット
投資家が、不動産クラウドファンディング事業者の募集するファンドに対して投資する場合、下記のようなメリットがあります。
実物不動産投資と比較し、投資の手間がかからない
実物不動産投資(アパート経営や、マンション投資)をする場合、不動産投資に纏わる、様々な手間暇がかかります。
- 不動産投資会社との面談や、
- 投資対象とする不動産の選定(エリアや物件種別等々)
- 不動産の取得手続き(売主との諸交渉等)や、
- 取得した物件のリフォーム・リノベーション、
- 賃料決めや、入居者募集、毎月の賃料収納状況の管理、
- 物件の修繕や管理、
- 最終的な物件売却のための諸手続き、等々、
不動産投資家としてやるべき作業は、山ほどあります。
これに対して、不動産クラウドファンディングへの持分出資であれば、上記のような不動産投資に関する諸作業は、全て、匿名組合の営業者にあたる、不動産クラウドファンディング事業者が行います。
このように、実質的に「ほったらかし」投資が可能である、という点は、本業が忙しいサラリーマン・会社員や、主夫・主婦、といった投資家層にとって、大きなメリットとなります。
情報の透明性が高い
不動産クラウドファンディングの場合、ファンドが投資対象とするのは「不動産」(土地や、建物)であり、投資対象不動産に関する下記のような情報も、不動産クラウドファンディング事業者のホームページに掲載されています。
- 投資対象不動産の物件名(アパートや、マンションの場合)
- 物件の住所・所在地
- 築年数
- 構造・階層
- (物件が賃貸物件である場合)賃貸借契約の有無・月額賃料等
投資対象となる資産の詳細が、詳しく記されていて、投資家個々人が、自分自身の判断で、投資の是非を主体的に判断できる、という点は、同じクラウドファンディング投資分野であるソーシャルレンディングなどと比較しても、不動産クラウドファンディングのメリットの一つと言えます。
提示されている期待利回りが高い
不動産クラウドファンディング事業者各社は、各ファンドごとに、ファンドの期待利回り(年率換算・税引き前)を提示しています。
実際に提示されている期待利回りは、ファンド・事業者によって様々ですが、
- 期待利回りが低いファンドでも、年率換算で2パーセント前後、
- 期待利回りが高いファンドの場合、年率換算で10パーセント前後、という、
極めて高い期待利回りが提示されています。
勿論、あくまでも「期待」「想定」利回りに過ぎず、実現が確約されたものではありませんし、
- ファンド運用期間中の賃料収入(インカムゲイン)や、
- ファンド運用満期の売却益(キャピタルゲイン)が、
事前想定通りに生じなければ、提示された期待利回りは実現しないわけですが、それでも尚、これだけ高い期待利回りが提示されている投資分野は、昨今、稀である、と言えます。
上場企業が直接運営にあたっているサービスもある
昨今、不動産クラウドファンディング業界では、新規事業者の参入が相次いでおり、参入済企業の中には、
- トーセイ株式会社(TREC Funding運営)や、
- プロパティエージェント(Rimple運営)、
- 穴吹興産株式会社(ジョイントアルファ運営)など、
国内証券市場の上場企業も少なくありません。
上場企業が運営している不動産クラウドファンディング・サービスであったとしても、非上場企業運営の場合と同様、元本割れのリスクもありますし、税務上の優遇もありませんが、
「投資のパートナーとするならば、やはり、上場審査を通過し、定期的に監査を受けている、上場企業が好ましい」
と考える投資家層にとっては、この点は、不動産クラウドファンディング投資のメリットと言えそうです。
「優先劣後スキーム」の存在
国内の不動産クラウドファンディング事業者の多くが、
- 運営会社の、共同・劣後出資によって、
- 投資家の優先出資元本を(一定程度まで)保護する、
「優先劣後スキーム」を採用しています。
ファンドが想定通りの賃料収入を確保できなかったり、不動産売却時に赤字が生じるなどして、ファンドに損失が生じてしまったとしても、その損失額が、運営会社による劣後出資幅を超過しなければ、投資家の優先出資元本が毀損を免れる、というメリットがあります。
不動産クラウドファンディング投資のリスク・デメリット
上記したように、投資家サイドにとって、様々なメリットがある、不動産クラウドファンディング投資ですが、その反面、看過してはならない、リスクやデメリットも存在します。
元本割れのリスクがある
不動産クラウドファンディング事業者は、ファンドの運用期間中に、投資対象不動産を売却することによって、投資家への元本償還原資を確保します。
不動産市況の急激な冷え込みや、不動産クラウドファンディング事業者の目利き力の不足等によって、
- 最終的な、不動産の売却価額が、
- ファンド運用開始時点の、不動産取得価額と比較して、
大幅に低減してしまった場合、ファンドに巨額の損失が生じ、その損失が、サービス運営会社による劣後出資幅を超過してしまった場合、投資家の優先出資元本についても、毀損が生じる(=元本割れが生じる)こととなります。
出資の中途解約が出来ない
不動産クラウドファンディング事業者の多くが、出資の中途解約を「原則として不可」としています。
仮に、出資の中途解約を「可」とすると、昨今のリーマン・ショックや、コロナ・ショックのような、大規模な経済・社会変動が生じた際、多量の投資家から、一斉に、中途解約・返金申請が寄せられ、これに応じていると、不動産クラウドファンディング事業者自体のキャッシュフローがショートしかねないため、です。
不動産クラウドファンディング事業者の判断で、ファンドの運用期間が変更される可能性がある
上記した通り、不動産クラウドファンディング事業者は、ファンドが取得した不動産を最終的に売却することによって、投資家向けの元本償還原資を確保します。
逆に言えば、ファンドの運用期間中に、投資対象不動産が、第三者に対して売却できなければ、不動産クラウドファンディング事業者としては、投資家に対する元本償還の原資が確保できません。
このため、ファンドの運用期間中、投資対象不動産の売却交渉が不調である場合、不動産クラウドファンディング事業者の判断で、ファンドの運用期間が「延長」となるケースがあります。
また逆に、ファンドの運用期間に入ってごく早期のうちに、外部の買い手から魅力的な買取り提案があった場合、不動産クラウドファンディング事業者の判断で、不動産を早期売却し、ファンドを「早期償還」とするケースもあります。
この場合、ファンドの運用期間が従前よりも短縮される関係で、分配金の総額が(従前予定よりも)小さくなるケースが多々あります。
融資などを利用した、レバレッジ投資が行えない
実物不動産投資では、銀行のアパートローンなどを活用し、自己資金以上に投資資金を拡大する「レバレッジ」を用いた投資が一般的です。
また、FX投資の場合も、FX業者に預託する証拠金の数倍(日本では、証拠金の25倍まで)の通貨量をトレードする「レバレッジ取引」が主流とされています。
しかしながら、不動産クラウドファンディング投資の場合は、上述のような「レバレッジ」の活用は出来ません。
短期的に大きな利益を上げることは出来ない
不動産クラウドファンディングは、運営会社から送金されてくる分配金利益を、コツコツと、積み上げていくことに主眼が置かれた投資モデルです。
上場企業株式投資や、FX投資のように、「投資家の手腕次第で、短期間に、大きな利益を上げることが出来る」投資分野とは、根本的に利益モデルが異なる、という点を理解しておく必要があります。
税務上のメリットがないほか、確定申告義務が生じるケースがある
不動産クラウドファンディングの場合、運営会社から受け取る分配金は、所得税法の定める「所得の分類」上、雑所得に該当します。
申告分離課税の利用は認められておらず、給与所得等と合算での「総合課税」の対象とされている他、実物不動産投資では一般的な、「損益通算」「繰越控除」といった仕組みも、不動産クラウドファンディングに関しては、認められていません。
さらに、不動産クラウドファンディングで収受する分配金の額によっては、「これまで、会社の年末調整に任せきりで、自分では、確定申告をしたことがない」という、会社員・サラリーマン投資家の場合でも、所得税の確定申告義務が生じるケースあります。
運営会社の倒産・不正リスクがある
不動産クラウドファンディング・サービスの運営会社が、ファンドの運用期間中に経営破綻する等したい場合、ファンドの運用が頓挫する他、投資家の出資元本や預託金(ファンドに投資する前に、不動産クラウドファンディング事業者側に預けてある未投資資金)についても、大きく毀損してしまうリスクがあります。
不動産クラウドファンディング事業を展開している事業者の中には、上掲の通り、東証一部上場企業などの大企業もありますが、未上場の中小・零細企業の参入事例も少なくありません。
不動産クラウドファンディングへの投資にあたっては、運営会社の財務状況・経営破綻リスクの大小についても、注意する必要があります。
また、不動産クラウドファンディングの場合、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)等と異なり、投資対象が見えやすい、という特徴がありますが、それでも尚、
- ファンドの資金の一部が、投資対象不動産の取得以外の用途に充てられていた
- 既存ファンドの分配・償還のための資金に、新ファンドの出資金が充当されていた
など、いわゆる、「運営会社の不正リスク」を、根本的に排除する(ゼロにする)ことは至難の業です。
【不動産クラウドファンディング参入のメリット】不動産クラウドファンディングによる資金調達が活性化している理由
今般、不動産事業者が不動産クラウドファンディング(不動産特定共同事業)に新規参入するケースが増えています。
中小・ベンチャークラスの不動産事業者のみならず、トーセイやプロパティエージェント、穴吹興産など、東証一部上場クラスの不動産企業が参入するケースも増加しており、個人投資家の出資需要も旺盛です。
なぜ、不動産事業者の間で、不動産クラウドファンディングによる資金調達が、ここまで活性化しているのでしょうか。
不動産クラウドファンディング参入には、不動産事業者にとって、どのようなメリットがあるのか。
- 不動産事業者が、リスクを出来るだけ軽減して、新案件に取り組むため
- 不動産クラウドファンディングを活用すれば、融資よりも容易に資金調達が出来るため
- 新たな投資家層の獲得につながるため
- ファンドから手数料収入を徴収することが出来る
- 自社保有物件や、自社開発物件を、ファンドに買い取らせることが出来る
上記数点を軸に、詳しく見て参りましょう。
クラウドファンディングによる資金調達を通して、リスクを軽減し、新規プロジェクトに取り組みたい
不動産事業者としては、不動産クラウドファンディングを活用し、投資家の出資金を組み入れた形で不動産プロジェクトをスタートすれば、100パーセント自己資金で不動産プロジェクトを開始するよりも、遥かに低リスクで、不動産取得などを行うことが可能です。
実際、不動産クラウドファンディングを実施するにあたり、不動産事業者としては、投資家に対して、元本保証を行う必要はありません。
投資家は、元本割れのリスクを(少なくとも形式上は)許容したうえで、出資を行ってくれるわけですから、不動産事業者としては、借り入れ等とは違い、ある程度心理的な余裕をもって、資金調達を行うことが可能です。
結果的に、不動産クラウドファンディング事業者としては、
- 自己資金での投資、と考えると、二の足を踏むような、高リスク案件や、
- (後述する通り、)銀行に融資を申し込んだとしても、銀行が謝絶するような、リスキーな案件にも、
比較的積極的に取組みやすくなり、奏功すれば、業容を一気に拡大出来る場合があります。
不動産クラウドファンディングを活用すれば、融資がつきづらい案件でも、資金調達が可能
不動産クラウドファンディング事業者が公開している案件情報を見ると、
- 築年数が経過しており、建物の減価償却が完了済で、担保価値が出にくい物件や、
- 建築法上の不適合事由があり、その改善を計画している案件、
- 建築関係の書類が揃っていない案件(完了検査を受けていない建物等も含む)などが、
投資対象物となっているケースが、複数、存在していることが分かります。
一般的に言って、こうした物件を取得するための資金は、銀行からの融資では、調達しづらいのが現実です。
ただし、「ビジネス」としての観点から見れば、
- 税務上はもはや「無価値」となっている上物(建物)も、リノベーションを施せば、バリューアップが可能だし、
- 建築法上の不適合事由も、建築士等を交えて、適切なステップを踏めば、クリアすることが可能、
- 完了検査を受けていない場合も、建築士の知見を活用し、書類作成等の業務を忌避しなければ、対処可能、
等というケースは、たくさんあります。
不動産クラウドファンディングによる資金調達が真骨頂を発揮するのは、まさに、このようなケースです。
空き家の再生プロジェクトや、古民家のリノベーション案件など、「銀行からの資金調達は難しいが、クラウドファンディングを活用すれば、資金調達が実現できる」というケースが、多数、日の目を浴びています。
クラウドファンディング実施を通して、知名度向上・新規顧客開拓が期待できる
不動産クラウドファンディング事業を展開している不動産業者の、ホームページ(会社概要等)を確認すると、不動産クラウドファンディングとは別に、
- 賃貸管理業や、
- 不動産売買、
- 不動産投資コンサルティングなど、
様々な、不動産関連ビジネスを展開していることが分かります。
そして、多くの不動産事業者が力を入れているのが、個人投資家を相手にした、不動産投資サポート・ビジネスです。
具体的には、自社で開発したマンション物件などを、個人投資家に対し、区分所有物件として販売したり、自社ブランドの1棟アパート(新築)を、投資家に対して販売する、といった事業です。
こうした、個人投資家向けの、不動産開発・販売事業は、不動産事業者にとって、極めて利益率の高いビジネスであり、各事業者は、優良な個人投資家(=銀行融資を受けやすく、自己資金の用意も出来る投資家)の獲得に必死です。
不動産事業者としては、少額から投資できる不動産クラウドファンディングをきっかけにして、様々な個人投資家との間に接点を持ち、ゆくゆくは、自身が運営している、より利益率の高い不動産開発・販売事業の優良顧客として、投資家を教育していきたい、という思惑もあるでしょう。
ファンドから、手数料を徴収できる
不動産クラウドファンディング事業者が、各ファンドについて開示している、損益目論を確認してみると、
- ファンドが、投資対象不動産を取得(購入)するとき、及び、
- ファンドが、最終的に、投資対象不動産を、第三者に売却するときに、
不動産クラウドファンディング事業者が、「手数料」を徴収することを予定しているケースがあります。
不動産クラウドファンディング事業者の多くは、元来が宅地建物取引業者ですから、上述のように、「売買の仲介手数料」を徴求する場合があります。
投資対象不動産の売手、そして、買い手を、自ら見つけてくることが出来れば、(手数料を、売主・買主の双方から受け取る、)「両手取引」と出来るケースもあり得ます。
自社保有物件や、自社開発物件を、ファンドに売却出来る
上述の通り、不動産クラウドファンディング事業者の中には、本業で、「投資用マンションの開発・販売」「投資用アパートの開発・販売」などを手掛けている事業者があります。
そして、そうした不動産クラウドファンディング事業者の募集ファンドを見ると、ファンドの投資対象不動産が、自社で開発した投資用不動産、と設定されているケースが散見されます。
すなわち、
- 投資用不動産販売業者(不動産事業者)が、不動産特定共同事業法の許可・登録を取得し、
- 自身が開発した、投資用不動産を、ファンドに買い取らせる、
という仕組みが成立していることとなります。
不動産事業者としては、従来型の不動産投資家に対する販売が不調な投資用不動産を、ファンドに買い取らせることが出来るようになるほか、自社保有物件をファンドに譲渡することで、自身の資産流動性を高めたり(固定資産→流動資産)、有利子負債を圧縮したり、といった、一種の「財テク」を講じることが出来るようになる場合があります。
不動産クラウドファンディング事業者による資金調達事例
昨今、個人投資家からの、不動産クラウドファンディングへの関心は、高まる一方で、それに比例するようにして、国内の各不動産クラウドファンディング事業者の資金調達実績も、積み上がりつつあります。
クリアル(creal)の資金調達状況
画像引用元:クリアル(creal)
プレスリリースによれば、国内不動産投資クラウドファンディング大手「creal」の場合、サービス開始以来の、累積での資金調達額は、既に70億円を突破しています。
ファンド件数ベースでは、2021年1月の時点で、既に累計36ファンドを募集、その全ファンドにて満額募集を達成しています。
2021年2月には、約15分間で、4億6,000万円の資金調達を完了した旨も、明らかにされています。
東証一部上場「穴吹興産」の資金調達事例
穴吹興産株式会社は、自身が運営する不動産クラウドファンディング「ジョイントアルファ」にて、2月15日、3ファンドを同日募集開始し、いずれのファンドも、当日中に満額の募集を達成、合計で9,500万円強を、1日以内に資金調達した旨を公表しています。
東証一部、「トーセイ」の資金調達事例
トーセイ株式会社(東京都港区虎ノ門4丁目2番3号)もまた、不動産クラウドファンディング(TREC Funding)を展開しています。
これまでに募集された2ファンドは、いずれも満額募集を達成しており、資金調達額は、2ファンド合計で、4億8,000万円強に達しています。
不動産事業者が不動産クラウドファンディングによる資金調達を実施するための必要事項
不動産事業者が、不動産クラウドファンディングを介して資金調達を行う(=不動産特定共同事業を営む)場合、行政への許可申請、ならびに、サービスを遂行するためのシステム開発が必要となります。
それぞれ、確認して参りましょう。
不動産クラウドファンディングの許可申請
不動産クラウドファンディングを行う場合、事前に、都道府県、もしくは、国土交通省に対して、許可申請を行い、許可を受ける必要があります。
許可申請自体は、行政書士や、行政書士法人、弁護士法人などに委託することが可能です。
勿論、手数料がかかりますし、申請が受理されるまでの期間も、半年以上かかるケースが多いようです。
不動産特定共同事業運営のためのシステム整備も必要
不動産クラウドファンディングを事業として行うためには、上述の許可取得は勿論のこと、事業を順調に遂行するためのシステム整備も必要となります。
自社でエンジニアを雇用し、ゼロからシステム開発を行うのはかなり大変ですが、不動産クラウドファンディングのシステム開発を受託する企業も数多く存在します。
また、既に不動産クラウドファンディングを自社展開している企業が、システム部分のOEM展開を請け負うケースもあります。
各種クラウドファンディングからの資金調達との違い
「クラウドファンディング」と言っても、その類型には、様々なものがあります。
不動産クラウドファンディング以外にも、
- 融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)や、
- 購入型クラウドファンディング、
- 株式投資型クラウドファンディングなどがありますが、
それぞれの資金調達スキームの違いを、確認しておきましょう。
融資型クラウドファンディングからの資金調達との違い
不動産事業者が、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)から資金融資を行う、という場合、
- ソーシャルレンディング事業者に、資金融資を申し込むか、
- 自身がソーシャルレンディング事業者となり、ファンド募集を行い、資金調達する、
上記2つのスキームがあり得ます。
ソーシャルレンディング事業者に資金融資を申し込む場合
ソーシャルレンディング事業者は、「預金業務は行わない、貸金業者」、すなわち、ノンバンクの金融機関です。
- 融資審査が柔軟であり、創業から間もない企業や、損益が思わしくない企業でも、融資を受けられる場合がある。
- 少額・短期間の借り入れも可能
- 繰り上げ返済も許容されているケースが多い
など、様々なメリットがある一方で、銀行等金融機関から融資を受ける場合と比較して、金利が高い、というデメリットがあります。
参考:
ソーシャルレンディングから低金利で資金調達するためのポイントは? ソーシャルレンディングでの資金調達のメリット・注意点も徹底解説
自身がソーシャルレンディング事業者となる場合
- 事業者自身が、第二種金融商品取引業の登録を受け、
- 併せて、貸金業の登録を受け、
- 募った資金を、自身の子会社・関連会社などに融資する、
というスキームも、一応、存在します。
ただし、その場合、各種登録・認可を受ける手続きが煩雑であることに加えて、自身の子会社・関連会社に対して融資を行う、というスキームに対し、個人投資家からの視線が厳しくなる可能性があります。
なお、不動産事業者がソーシャルレンディング・サービスを展開しているケースとしては、東証マザーズ上場の不動産事業者「ロードスターキャピタル株式会社」が運営しているソーシャルレンディング・サービス「オーナーズブック」の事例があります。
購入型クラウドファンディングからの資金調達との違い
日本国内で人気の購入型クラウドファンディング・サービスとしては、CAMPFIREやMAKUAKEなどがありますが、こうした購入型クラウドファンディング・サービスを通じて、不動産事業者が、不動産取得資金を調達する、というのは、あまり一般的ではありません。
購入型クラウドファンディング活用の、一般例としては、
- ハードウェア開発会社が、新製品開発費用の調達を試み、資金調達に成功した場合、支援者に対し、返礼品として、開発したハードウェアを先行提供したり、
- 飲食店が、新規出店費用の調達を企画し、支援者に対して、優待券を提供したり、
等といったスタイルです。
不動産事業者が、賃料収入や将来の売却益を見込んで不動産を新規取得するため、というのは、趣意が異なり、かつ、購入型クラウドファンディングの場合、運営会社の手数料が高い(集まった支援金額の10パーセント~20パーセント)というデメリットもあります。
株式投資型クラウドファンディングからの資金調達との違い
株式投資型クラウドファンディングで資金調達と行っているのは、
- 将来的なIPO(株式公開)や、
- 事業の売却・株式譲渡(M&A)を目指している、
ベンチャー企業です。
出資している投資家においても、出資先企業が、上記したようなエグジットを果たさない限り、投資利益を得ることは出来ません。
不動産事業者が、新たな不動産取得のために資金調達を行う場としては、株式投資型クラウドファンディングは、不向きと言わざるを得ないでしょう。
不動産事業が不動産クラウドファンディングで資金調達を行うデメリット
不動産事業者が、不動産特定共同事業法上の許可・登録を得て、不動産クラウドファンディング事業に参入、資金調達を行う場合、主に、下記のようなデメリットがあります。
短期の資金調達しか奏功しない場合がある
国内の不動産クラウドファンディング事業者の多くが、投資家に対して、ファンドへの出資の中途解約を、「原則として不可」と規定しています。
これは、上述の通り、もしも、出資の中途解約を「可」とすると、大規模な経済変動が生じた際、投資家からの中途解約・返金申請が殺到するリスクがあるため、です。
しかしながら、この「(出資の)中途解約不可の原則」がある関係で、投資家が長期の資金拘束を嫌い、結果的に、長い運用期間を予定するファンドが不人気となり、短期運用ファンドにばかり、投資資金が集中しやすい、というデメリットがあります。
元来、不動産開発プロジェクトというものは、
- プランニングから、
- 必要な許認可の取得・行政との交渉、
- 土地の取得、造成、
- 建築物(マンション等)の建築
- (賃貸物件の場合)入居者の確保・契約
- 売却活動
と、様々なステップを踏む必要があり、最終的なエグジットまでは、数年単位の期間を要することも少なくありません。
特に「売却活動」のフェーズは重要で、不動産クラウドファンディングのように、
「ファンドの運用期間中に、売却・決済を完了させないと、投資家に対する元本償還原資が確保できない」
などといった、”締め切り・デッドライン”があると、買い手に足元を見られて、なかなか良値での売却が奏功しない、という難点があります。
このように、「投資家が理想と考える運用期間」と、「実際の不動産開発プロジェクトにおいて必要とされる期間」」との間に、長短のミスマッチがある、というのが実情です。
不動産クラウドファンディング参入の「イニシャルコスト」が高い
不動産事業者が、不動産クラウドファンディング事業に参入する場合、
- 不動産特定共同事業法に基づく許可・登録の取得、及び、
- 必要なシステム開発・サービスサイト構築、
等といった、「初期工程」が必要となり、イニシャルコストがかかります。
不動産特定共同事業法の許可・登録申請については、行政書士事務所などが代行してくれますが、当然、代行報酬がかかり、報酬料金は100万円~数百万円程度に及ぶケースもあります。
システム開発に関しては、現在、OEM販売を行っている事業者なども存在しますが、ゼロベースで開発する場合、相応の費用が生じることとなります。
「投資家保護」への配慮が必要となる
不動産事業が、自己のリスクのもとに、投資用不動産の取得・売却などを行っている限りにおいては、不動産事業者は、自身の損得のみを考慮して事業活動に専念することが出来ます。
しかし、不動産クラウドファンディングに参入し、不動産小口化・証券化にチャレンジする以上は、それまで考慮する機会の無かった「投資家保護」についても、十分に徹底する必要があります。
不動産事業者と投資家の利益が相反するような事態は、招いてはならず、万が一、そうした事態が生じた場合は、当然、投資家の保護を優先しなくてはなりません。
こうした制約・拘束は、不動産事業者の自由な事業活動に、一定の影響を及ぶ可能性があります。
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