「ソーシャルレンディングの損失は、繰越できますか」|雑損控除対象となるかも検証
「ソーシャルレンディングの場合、元本割れのリスクがあると聞いています。
すなわち、年度によっては、純損失が発生する可能性があるものと思います。
株式投資の場合、純損失の繰越が出来ますが、ソーシャルレンディングの場合でも、そのような損失繰越は可能なのでしょうか。」
(30代・男性・ソーシャルレンディング投資歴:なし)
目次
損失の繰越とは
質問者様のおっしゃる通り、上場株式投資等の場合、発生した損失を、翌年以降に繰越し、翌年以降に利益が生じた場合、そこから控除を行うことが可能な場合があります。
株式投資の損失繰越
株式投資の場合であれば、「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の特例の対象となる場合があります。
上場株式等を金融商品取引業者等を通じて売却したこと等により生じた損失(以下「上場株式等に係る譲渡損失」といいます。)の金額がある場合は、確定申告により、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額(上場株式等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。以下「上場株式等に係る配当所得等の金額」といいます。)と損益通算ができます。また、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告により上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除することができます(注)。
引用元:国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm
FXの損失繰越
意外に思われるかもしれませんが、FXの場合も、損失が発生した場合、所与の条件を満たせば、その損失を繰越することが可能な場合があります。
先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除とは、「先物取引に係る雑所得等の金額」の計算上生じた損失がある場合に、その損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等の金額」を限度として、一定の方法により、「先物取引に係る雑所得等の金額」の計算上その損失の金額を差し引くことです。
引用元:国税庁「No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1523.htm
ソーシャルレンディングの場合、損失の繰越は、原則不可。
上掲したように、上場株式等投資や、FXの場合、所定の条件を満たせば、損失の繰越が認められるケースがある一方で、ソーシャルレンディング投資の場合、そのような損失繰越に係る特例は、定められていません。
このため、ソーシャルレンディング投資を通して、損失が発生したとしても、当該損失を、確定申告(※白色申告)を通し、雑所得(損失)として申告する場合、翌年以降にそれを繰越することは、出来ません。
ソーシャルレンディングでどうしても損失の繰越をしたい場合は…
上掲致しました通り、原則として、損失の繰越が認められていない、ソーシャルレンディングではありますが、下記のような方法をとれば、物理的に、損失繰越が可能となる場合があります。
ソーシャルレンディング投資収益を、事業収益であるとして、青色申告する。
ソーシャルレンディング投資収益は、基本的には、雑所得にあたりますので、青色申告の対象ではありません。
しかし、納税者が、確定申告時に、
「ソーシャルレンディング投資は、あくまでも、”事業”として執り行っているものだ」
との立場を取ることにより、ソーシャルレンディング投資収益について、
- 雑所得(=青色申告の対象ではない)ではなく、
- 事業所得(=青色申告の対象となり得る)
として申告することが、物理的には、可能です。
白色申告と比し、複数の特典のある、青色申告ですが、そのうちの1つが、「純損失の繰越しと繰戻し」が可能となる、という点です。
(4) 純損失の繰越しと繰戻し
事業所得などに損失(赤字)の金額がある場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除します。
また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越しに代えて、その損失額を生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。
引用元:国税庁「No.2070 青色申告制度」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
このため、ソーシャルレンディング投資を「事業」として行っているものであるとし、その損失について、「事業上の損失である」として、青色申告する場合、当該損失を、翌年以降に繰越出来る場合があります。
なお、この手法を採る場合、課税権者が、当該ソーシャルレンディング投資を、真に納税者の執り行う「事業」であるものと認めてくれるか、どうか、という点が、大きなリスクとなります。
後日、税務当局による税務調査によって、当該ソーシャルレンディング投資が、「事業というほどの規模ではない」等と、課税権者によって判断され、青色申告制度を用いた申告について否認されてしまった場合、修正申告等を求められる場合があります。
また、その余の申告・納税等状況によっては、追加納税をを行う必要が生じる可能性もあり、リスク要素となります。
法人格によってソーシャルレンディング投資を行う
- ソーシャルレンディング投資を、個人名義ではなく、法人名義(例:資産管理会社)で行い、
- かつ、その法人名義で、青色申告を行うことにより、
ソーシャルレンディング投資による損失の、繰越を出来る場合があります。
上掲した、「個人名義でソーシャルレンディング投資を行い、その損失を、事業上の損失であるとして、青色申告する」という手法と比べれば、幾分、穏当な手法といい得るかも知れませんが、この場合、
- 法人の設立費用や、
- 維持・管理費用、
- 決算関連業務を委託する税務専門家への支払報酬料
といったコストが、別途、発生してくることとなります。
総合的な損益について、慎重に判断する必要がありましょう。
ソーシャルレンディングで雑損控除は使えるのか
災害や盗難によって、生活に必要な資産が損害を受けてしまった場合に、所得控除を受けることによって、税負担を軽減する仕組みが「雑損控除」です。
雑損控除の対象資産
雑損控除による所得控除が認められるためには、災害や盗難により、下記の2つの要件を満たす資産がダメージを受けた、という事実が必要です。
- その資産の所有者が、納税者であるか、ないしは、納税者と生計を一にする配偶者や親族であること(別途総所得金額要件あり)
- ダメージを受けてしまった資産が、「棚卸資産」「事業用固定資産」「生活に通常必要でない資産」のいずれにも該当しない資産であること
雑損控除の対象となる損害の原因
雑損控除の対象となるためには、そもそもの損害の原因が、下記いずれかである必要があります。
- 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
- 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
- 害虫などの生物による異常な災害
- 盗難
- 横領
なお、詐欺や恐喝による損害の場合は、雑損控除の対象とはなりません。
雑損控除の具体的な金額
下記の2つの金額のうち、いずれか大きいほうが、雑損控除の金額となります。
- (差引損失額)-(総所得金額等)×10%
- (差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
ソーシャルレンディング投資で損害が生じた場合、雑損控除の対象となるか
ソーシャルレンディング投資で何らかの損害が出たとして、その原因が、地震や台風等の損害であったとしても、基本的に、雑損控除の対象とはならないものと思料されます。
これは、ソーシャルレンディング投資における出資持分が、投資家にとって「生活に通常必要でない資産」と見做されてしまう可能性があるためです。
※ただし、正確には、税理士・会計士・税務署等、税の専門家へとご確認下さい。
参考:
No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁
まとめ
本記事をご覧頂くにあたっては、下記の点に、ご留意をお願い致します。
- 本記事は、質問者様への回答、及び、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ソーシャルレンディングファンド等)への投資勧誘等を目的としたものでは、ありません。
- 個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設等、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。
- 税法関連事項につきましては、本記事内容の正誤等について、あらかじめ、読者様ご自身にて、税務署や、税務専門家へと御確認下さいますよう、お願い致します。
- 行き過ぎた節税には、リスクがあります。実際の税務に関しては、必ず、税務署や、税理士等税務専門家へとご相談くださいますよう、お願い致します。
投資家からも、資金需要事業者からも、高い注目を集める、ソーシャルレンディング。
しかしながら、業界の成熟は道半ばであり、いくつかの「危険会社」の存在も気にかかります。
ソーシャルレンディング投資検討にあたっては、あらかじめ、こちらの過去記事も、ご参照下さい。
↓
ソーシャルレンディング【おすすめ会社&危険会社ランキング】最新版
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