「ロボアドバイザーで退職金運用」は、ありなのか
退職金をロボアドバイザーで運用するメリット
昨今話題のインデックス投資に活用できる
昨今、個人投資家の間で話題にのぼることの多いインデックス投資とは、
- 少数の株式銘柄に対して資金を集中投資するのではなく、
- 市場のインデックス指数に対して連動する投資成果の獲得を目指し、
- 数百から数千もの株式銘柄に対して資金を分散投資する「投資信託」へと投資することにより、
いわば「市場平均通り」のリターンを確実に得ていこう、と言う投資スタイルです。
投資家は、個別の株式銘柄選びに関する手間暇から解放されるほか、少数の株式銘柄に集中的に投資する場合と比較して、ポートフォリオ全体のリスクを低く保つ効果が期待できるとして、若年投資家から、退職金を運用するベテラン投資家まで、様々な投資家層から、幅広い支持を得ています。
一方、ロボアドバイザーは、基本的に、インデックス指数に対する連動する傾向の強い、パッシブ型の投資信託を主な投資対象としています。
このため、ロボアドバイザーを利用する投資家の多くが、アクティブ投資ではなく、あくまでも、インデックス投資のためのツールとして、ロボアドバイザーを利用しています。
特に、「投資一任型」と呼ばれるロボアドバイザーの場合、機能面も充実していますから、こうしたロボアドバイザーを利用すれば、これまでインデックス投資に取り組んだことのない投資家でも、比較的気軽に、退職金を用いたインデックス投資に取り組むことができる、というメリットがあります。
リスク許容度診断で、退職金運用に向いたポートフォリオ提案をしてもらえる
ロボアドバイザーの実施するリスク許容度診断とは
ロボアドバイザーは、投資家に対して、最初に、主に下記のような事項に関する質問を投げかけます。
- 投資家の年齢
- 投資を予定している資金の性格(給与所得をもとにした余裕資金なのか、退職金の運用を目的としているのかなど)
- 予定している運用期間
- 仮に相場が急落したとしたときに、どのような対応をとる予定であるか(追加投資をするのか、資金を即座に引き上げるのか
こうした質問に対する、投資家からの回答内容を見て、ロボアドバイザーは、各投資家のリスク許容度を、自動的に診断しています。
退職金の運用を目的としている投資家の場合、一般的には、
- 年齢は比較的高く、
- 投資資金の性格は当然「退職金」、
- そして予定している運用期間に関しては、数十年間にも及ぶ長期、と言うよりは、今少し短期なものとなりましょう。
こうした回答を行えば、ロボアドバイザーは自然と、複数段階あるリスク許容度の中から、最も低いリスク許容度か、その1段階、ないしは2段階上程度のリスク許容度を、診断結果として提示してくることが想定されます。
参考:
ロボアドバイザーの診断する「リスク許容度」とは|リスク許容度診断の仕組み、プログラムによる自動診断の限界まで徹底検証
ロボアドバイザーの行うポートフォリオ提案
ロボアドバイザーは、事前に算出した各投資家のリスク許容度に応じて、最適なポートフォリオの内容を、同じく自動的に算出し、提案してくれます。
国内で提供されているロボアドバイザーの多くは、基本的に、下記のような資産クラスにまたがった、マルチアセット・ポートフォリオ(アセットアロケーション)を、投資家に対して提案します。
- 米国株式
- 米国以外の先進国株式
- 新興国株式
- 先進国の債券(国債、ないしは社債)
- 新興国の債券
- コモディティー
- 不動産
「投資」と言うと、株式投資を思い浮かべる人が多いですが、特に退職金運用など、リスクをある程度抑えた資産運用を行う場合、株式のみで資産運用を行うのではなく、上記したような様々な資産クラスを組み合わせることによって、ポートフォリオ全体のリスクを、できるだけ低く抑える運用を行うことが一般的です。
前段のリスク許容度診断で、ロボアドバイザーは、退職金の運用を目的としている投資家に対し、かなり低めのリスク許容度診断をしていますから、こうした投資家に対しては、株式よりも、債券の占める比率の方が大きい、保守的なポートフォリオが提案されることでしょう。
退職金運用を目的とする投資家においては、資産を増やす事は、基本的に、二の次とされ、資産運用によって却って資産を減らしてしまうリスクを出来るだけ低く抑えて、インフレーション率程度の利回りを上げていく(=インフレ控除後の購買力を維持する)ことこそが、最重要課題とされるからです。
なお、こうしたリスク許容度の診断や、リスク許容度に見合ったポートフォリオの構築を、投資家自身が自分で行おうとする場合、事前にある程度、投資に関する基礎的な勉強や、情報収集が欠かせないこととなります。
上記のような作業を簡略化し、投資の初心者でも、自身のリスク許容度に見合ったポートフォリオを構築を行える、と言う点は、退職金運用目的としている投資家にとっても、ロボアドバイザーならではの、大きなメリットといえます。
参考:
ロボアドバイザーのポートフォリオ運用の仕組み・メリット&デメリットを考える
退職金を、一括投資・分散投資、どちらでも運用できる
ロボアドバイザーの場合、
- 最初に投資用資金の全額を入金して投資を始める「一括投資」と
- 毎月の自動引き落としによって資産を逐次的に買い足していく「分散投資」の、
双方に対応していますので、投資家の予定に応じて、どちらを選んでも良い、という利点があります。
退職金を一括で受け取る予定の人は、受け取った資金を寝かせておく期間を短縮するべく、ロボアドバイザーに一括投資することも出来ます。
一方、退職金を、分割し、定期的に年金として受け取る予定の人は、ロボアドバイザーの自動引き落とし・積立サービス等を利用して、分散投資を行うことも可能です。
なお、後者とする場合、毎月の積立投資額は、1万円程度の少額から設定できます。
退職金運用の相談に応対すべく、電話問い合わせや、窓口対応を行っているロボアドバイザーもある
国内でロボアドバイザー・サービスを提供している企業の中には、
- 大手の証券会社や、
- 店頭での有人サポート・サービスを提供している事業者もあります。
また、ロボアドバイザーの開発・運用会社から、ロボアドバイザーの機能を提供してもらいつつ、実際のロボアドバイザーの口座開設や出資手続きについては、窓口で受け付け・対応してくれる、地方銀行等の金融機関も存在します。
特に、国内ロボアドバイザー業界で大手と言われる、ウェルスナビやテオなどといったサービスの場合は、地方銀行との提携を積極的に進めており、そうした地方銀行に口座を持っている投資家の場合は、窓口で、「ロボアドバイザーを用いて退職金運用を行いたい」との旨を告げれば、担当者が、ロボアドバイザーへの投資家登録等の手続きも含めて、サポートをしてくれる場合があります。
相場急落に備え、下落ショック軽減機能を提供しているロボアドバイザーもある
ロボアドバイザーで退職金を運用する場合、懸念される最大のリスクは、退職金の運用期間中に、相場の急落などの事態に遭遇してしまうことです。
株式市場や債券市場が揃って暴落するような、大規模な経済変動に見舞われたときは、ロボアドバイザーによって緻密な分散投資を行っていようとも、少なくとも一時的には、大幅な資産評価減を免れる事は、難しいのが実情です。
しかし、一部のロボアドバイザー事業者においては、相場下落に伴う資産評価の目減りを少しでも抑えるべく、「下落ショック軽減機能」などのサービスを提供しているケースもあります。
この場合、相場の下落兆候を感知すると、ロボアドバイザーが自動的に、ポートフォリオに占める株式の比率を下げ、債券など、相場下落時に対してある程度耐性があると言われる資産クラスを主体としたものに、顧客のポートフォリオを組み変えてくれます。
ポートフォリオのバランスが変化したとき、リバランスを自動的に執行してくれる
例えば、ロボアドバイザーを用いた退職金運用の開始直後に、株高となった場合、自然と、ポートフォリオ全体に占める株式の比率があがることとなります。
アセットアロケーションに占める、株式系資産の割合が増えると、
- ポートフォリオの期待利回りが高くなる代わりに、
- 同時に、ボラティリティ(リスク)も高くなり、
リスクを抑えることが最優先される退職金運用では、決して好ましくない事態が生じることとなります。
こういう場合、ロボアドバイザーは自動的に、
- 値上がりしている、株式系の資産クラスを売却したり、
- 相対的に値下がりしている、債券系の資産クラスを買い足す、などのトレードを執行することで、
ポートフォリオの再調整、すなわち、リバランスを執行してくれます。
こうしたリバランス作業を、投資家が自分で行う場合、当然、手間がかかりますし、含み益の生じている資産クラスの売却に伴い、課税の懸念も生じます。
ロボアドバイザーによっては、こうした課税関係に対しても、(含み損の生じている資産の売却などにより)「税金最適化機能」を提供しているケースがあります。
参考:
ロボアドバイザーの行うリバランスとは|リバランスの仕組み、メリット・デメリット、課税関係まで検証
資金は原則として即座に出金できる
ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングといった、いわゆる「匿名組合出資型」の投資契約とは異なり、ロボアドバイザーの場合、資金が手元に必要になったときに、すぐに出金できる、という、大きなメリットがあります。
特に、退職金を運用している期間においては、急な病気や怪我などで、まとまった資金が即座に必要になることもありましょう。
この場合、すぐに投資・運用を取りやめ、資産を現金化できる、という点は、ロボアドバイザーならではのメリットといえます。
退職後のインフレ対策に活用できる
退職すると、物価と連動しやすい「給与」という所得が無くなります。
主に退職後に受け取ることとなる「年金」は、一応物価と連動するように設定されて(マクロ経済スライド)いますが、「インフレに強い」、とまでは言いづらいのが実情です。
そのため、退職金運用をしている投資家においては、
- 高い利回りを追求していく、と言うよりは、
- ボラティリティを抑え、ある程度安定的に資産を運用しながら、
- インフレーションにできるだけ負けないような資産運用を行い、
- 実質的な「購買力」を維持することこそが、
資産運用の最大の目的となります。
ロボアドバイザーの中には、インフレ対策を重視した退職金運用者のために、不動産や物価連動債、等といった資産を、積極的にをポートフォリオに組み入れてくれるケースもあります。
証券会社提供のファンドラップ・サービスよりは、退職金運用にかかる手数料が安い
ロボアドバイザーの提供しているサービスは、金融サービス分野で言えば、「投資一任サービス」に該当するものです。
そして、ロボアドバイザー以外に、幅広く投資一任サービスを提供している例としては、金融機関や証券会社などが提供している、ファンドラップ・サービスが挙げられます。
しかし、ファンドラップ・サービスの場合、必要な最低投資額が数百万円程度に設定されていたり、年率換算で、預かり資産残高の2パーセント前後程度の手数料が生じるなど、投資家サイドにとって、様々な弊害が指摘されています。
この点、ロボアドバイザーならば、数万円程度の少額から、ある種のお試し感覚で、資産運用を任せてみることもできますし、手数料に関しても、預かり資産残高の1パーセント程度に設定されていることが多いので、少なくともファンドラップ・サービスと比較すれば、ある程度気軽に、退職金運用などにも利用しやすい、というメリットがあります。
参考:
ロボアドバイザーと手数料|投資家にとって、ロボアドバイザーの手数料は、高いのか
ロボアドバイザーによる退職金運用のリスク・注意点
為替の値動きの影響を受けることがある
特に、海外市場に上場しているETFへと投資するロボアドバイザーの場合、投資家の資産評価額が、為替の値動きの影響を受けることとなります。
仮に、ロボアドバイザーによる退職金運用を開始した当初と比較して、実際に資金を引き出す頃の為替が、円安・ドル高方向へと推移してくれていれば、投資家の円建てでの資産評価額は、プラスの影響を受けることとなります。
これに対して、為替が逆行してしまえば、仮に、ドル建てでの資産運用そのものはうまくいっていたとしても、円ベースに戻したときに、資産評価額がマイナスとなってしまうリスクも否定できません。
退職金という、長い老後生活に欠かせない資金を、為替リスクの影響にさらすことについては、議論もあるところですので、留意が必要です。
短期的には、大幅な下落を記録することがあり、また、影響が長期化するリスクもある
前述したように、ロボアドバイザーは、複数の資産クラスに対して資金を分散投資します。
また、退職金運用を前提としている投資家向けのポートフォリオは、株式よりも債券を多く配置した、かなり保守的なものとなります。
しかしながら、昨今のリーマン・ショックのような大規模な経済変動が生じた場合、どれだけ資産を分散投資していようとも、また、債券をメインとしたポートフォリオを運用していたとしても、資金をリスク市場に置いている以上、少なくとも一時的には、大幅な下落を記録することがあります。
また、バブル崩壊の影響が長期化する場合、運用中の資産の評価額が、かなりの長期間にわたって、累計出資元本を割り込んでしまうような事態も、十分にあり得ます。
退職前で、会社から給与を受け取っている人の場合は、仮に、リスク資産の評価額が一時大きく目減りしたとしても、むしろ、「割安にリスク資産を取得するチャンス」と考えることもできますが、退職金を運用している人の場合、そもそも追加投資のための原資がないことが一般的(=すでに退職済であるため)ですから、相場の下落には、基本的にデメリットしかありません。
参考:
ロボアドバイザーは「やめとけ」?ベテラン投資家が警鐘を鳴らす、ロボアドバイザーの決定的な弱点とは
自分で退職金運用をするよりも、コストが割高となる
投資家が、ロボアドバイザーを用いて退職金を運用する場合、投資対象となる投資信託の信託報酬等のコストに加えて、ロバアドバイザーの運用会社に対し、年率換算で1パーセント程度の、利用手数料を支払う必要があります。
仮に、投資家が、自分自身で退職金を運用する場合、投資信託運用会社への信託報酬はかかるでしょうが、少なくとも、ロボアドバイザー会社に対して費用を支払う必要はありません。
このように、退職金運用にロボアドバイザーを用いる場合、どうしても、その分、多少なりとも割高なコストを支払う必要がある、という点には、注意が必要です。
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