不動産クラウドファンディングの利回りとは|インカムゲイン&キャピタルゲイン、実物不動産投資との比較も
不動産クラウドファンディングとは
不動産特定共同事業法上の許可を得た、不動産事業者が、新たな不動産を取得するための資金を、クラウドファンディング形式で調達することを、「不動産クラウドファンディング」と言います。
投資家は、不動産事業者(不動産特定共同事業者)が募集するファンドに出資することで、1万円程度の少額から、期待利回りの高い不動産投資を行うことが出来ます。
不動産クラウドファンディングの仕組み
- 不動産事業者(宅地建物取引業者)が、国土交通省、ないしは、都道府県知事から、不動産特定共同事業法上の許可(小規模不動産特定共同事業の場合は、登録)を取得する。
- 不動産特定共同事業者は、自身のサービスサイト上で、ファンドの公開・募集を行う。ファンド概要には、投資対象物件情報や、期待利回り等を提示する。
- 投資家は、不動産クラウドファンディング事業者のサービスサイトを通じて、ファンドに、出資申込を行う。出資が成立すると、投資家と不動産クラウドファンディング事業者との間で、匿名組合契約がオンライン締結される。
- 不動産クラウドファンディング事業者は、ファンドに集まった資金を元手にして、不動産を取得したり、リノベーションを施すなどのプロジェクトを遂行する。
- 不動産クラウドファンディング事業者は、ファンドの運用期間中に、投資対象不動産から収受した、賃料(インカムゲイン)を原資に、出資者に対し、分配を行う。
- 最終的には、対象不動産を売却し、その売却代金を原資に、出資者に対し、元本の償還を実施する。
- 元本償還が完了次第、ファンドは運用終了となる。
不動産クラウドファンディングのメリット
不動産事業者側のメリット
- 担保価値の見込めない物件等、銀行融資を受けることが難しい案件の場合でも、クラウドファンディング形式で、資金調達を実現出来る場合がある。
- 自己資金ではなく、クラウドファンディングで調達した資金を元手に不動産投資を行うことにより、自社のリスクを限定できる。
- 「不動産投資に興味を持っているが、即座に実物不動産投資を行う考えはない」という、潜在的な投資家層に対し、アプローチすることが出来る。
投資家側のメリット
- 提示されている期待利回りが高い(年率換算数パーセント~10パーセント弱程度)
- 上場企業が運営している不動産クラウドファンディング・サービスも存在する。
- 優先劣後方式によって、出資者の元本が毀損してしまうリスクが、軽減されている場合がある。
- 1万円程度の少額から、不動産投資を行うことが出来る。
- 運用期間中の不動産関連実務は、不動産特定共同事業者側に一任できる。
不動産クラウドファンディング投資のデメリット・リスク
- 元本割れリスク:
ファンドが、予定通りの賃料収入を得ることが出来なかった場合や、不動産の売却が、良好な価格で行われなかった場合、ファンドの損益に、マイナス(赤字)が生じる可能性があります。
その際、ファンドに優先劣後方式が採用されていれば、運営会社による劣後出資幅までは、投資家の出資元本が保護されることとなりますが、損失が、運営会社劣後出資幅を超過した場合、投資家の出資元本についても、毀損してしまうこととなります。 - ファンドの運用期間延長リスク:
不動産クラウドファンディング事業者は、投資対象不動産を、最終的に売却することに拠って、出資者への元本償還のための資金を確保します。
このため、不動産が予定通りに売却できなければ、出資者への元本償還原資を確保することが出来ません。
不動産市況が急激に悪化する等した場合、不動産クラウドファンディング事業者は、自身の判断で、ファンドの運用期間を延長するケースがあります。 - 事業者の破綻リスク:
不動産クラウドファンディング事業者の中には、東証一部上場企業等が複数存在しますが、未上場のベンチャー企業も多数、市場に参入しています。
もしも、出資しているファンドの運用会社が経営破綻する等した場合、ファンドからの分配や償還に、大きなトラブルが生じるリスクがあります。 - 税務上の優遇措置が無い:
不動産クラウドファンディングで得る利益(分配金)は、所得の分類上、「雑所得」に該当します。
申告分離課税は利用できず、総合課税の対象となるため、給与所得等の大きい投資家においては、税負担が大きくなり、結果的に、利回りに悪影響が及ぶ可能性があります。
また、実物不動産投資と異なり、他の所得分野との間での損益通算は認められていないほか、単年で生じた損失の、翌年以降への繰越も、認められていません。
参考:
不動産クラウドファンディングのリスクとは|元本割れリスク・流動性リスク・事業者リスク等を徹底検証
不動産クラウドファンディングの利回りについて
不動産クラウドファンディングへの投資を検討している投資家の多くは、その期待利回りの高さに注目していることでしょう。
ここからは、不動産クラウドファンディング事業者各社が提示する、「利回り」の内容等について、検討していきます。
不動産クラウドファンディングの利回りの構成
不動産クラウドファンディングの利回りは、大きく分けて、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2つに拠って構成されています。
インカムゲイン(賃料収入)とは
不動産クラウドファンディングでは、不動産特定共同事業者は、ファンドに募った資金を原資に、不動産を取得します。
そして、取得した不動産を、第三者に対し、賃貸するケースが多く見られます(既に賃貸中の物件を取得するケースもあります)。
その際、ファンドの運用期間中に、投資対象不動産から得られる「賃料」収入のことを、インカムゲインと呼びます。
インカムゲインの場合、そもそも、具体的な賃料については、不動産クラウドファンディング事業者と賃借人との間で、賃貸借契約にて約定するため、ある程度安定した収入を見込めるメリットがあります。
その反面、
- 賃借人が、運用開始後、間もなく、退去してしまったり、
- その後、次の賃借人を確保するまでの間、賃料収入が得られなかったり、等といった、
リーシングリスクにも、配慮する必要があります(実際に賃料収入が想定より目減りした場合、ファンドの利回りにも、当然、悪影響が及びます)。
不動産クラウドファンディング事業者の中には、上述のリーシングリスクを軽減すべく、自身、ないしは、関連会社、第三者企業等によって、投資対象不動産に「マスターリース契約」を付与し、賃料収入の安定化を図っているケースもあります。
キャピタルゲイン(売却益)とは
不動産クラウドファンディングの場合、基本的に、不動産事業者は、取得した不動産を、ファンドの運用期間終了までの間に、第三者に対して売却します(その売却代金が、出資者への元本償還の原資となります)。
この売却の際に生じる「売却益」が、キャピタルゲインと呼ばれるものです。
- 不動産の取得時と比較し、不動産売却時に、不動産マーケットが活況である場合や、
- そもそもの不動産取得価格が廉価である場合、
- 更地からのマンション開発など、元来利益幅の大きいプロジェクトである場合等においては、
売却益(キャピタルゲイン)が大きく計上されるケースもあります。
反面、ファンドの運用終了直前期に、不動産市況が冷え込んでいる場合等においては、想定通りのキャピタルゲインが得られず、ファンドの利回りに悪影響を与えるリスクもあります。
特に、昨今のコロナ禍においては、不動産市況も大きな変動期を迎えていますので、数年単位の長期間運用を前提とするファンドの場合、留意が必要です。
不動産クラウドファンディングの一般的な利回りは
CREAL(クリアル)の場合
国内不動産クラウドファンディング業界において大手と言われることも多いCREAL(クリアル)の場合、各ファンドの想定利回りは、年率換算で3パーセント~8パーセント程度で提示されています。
一部例としては、下記のようなものがあります。
- (仮称)Rakuten STAY 富士河口湖駅:想定利回り8.0パーセント
- アルカーデンシティリンクス新宿:想定利回り3.0パーセント
- ちくらつなぐホテル:想定利回り5.0パーセント
ジョイントアルファの場合
東証一部上場の穴吹興産が運営する不動産クラウドファンディング「ジョイントアルファ」の募集ファンド、及び利回り例としては、下記のようなものがあります。
- アルファアセットファンド高松駅前:予定利回り5.0パーセント
- アルファアセットファンド豊洲タワー:予定利回り3.4パーセント
- アルファアセットファンド谷町六丁目:予定利回り3.3パーセント
FANTAS fundingの場合
FANTAS technology社運営の不動産クラウドファンディング「FANTAS funding」のファンド・利回り例としては、下記のような物があります。
- FANTAS check PJ 第101号:予定利回り3.0パーセント
- FANTAS check (リノベーション) PJ 第98号:予定利回り3.2パーセント
- FANTAS repro PJ 第29号(※先着方式,出資額上限30口):予定利回り8.0パーセント
不動産クラウドファンディングの利回りを実物不動産投資と比較
不動産クラウドファンディングでは、投資対象が「不動産」に原則限定されています。
このため、「小口から投資が出来る不動産投資」として、実物不動産投資(アパート経営や、マンション投資等)の代わり、不動産クラウドファンディング投資を検討しているユーザーも少なくありません。
実物不動産投資のほうが、利回りはやや高い
不動産投資情報サイト「健美家(けんびや)」が公開しているデータによれば、2021年1月~3月期の区分所有マンションの利回り平均は、7.65パーセント。一棟アパートの利回り平均は、8.66パーセントだったとのこと。
同じく健美家が公開している別のデータによれば、政令指定都市別に、区分所有マンションの利回りをみると、
- 静岡市:16.27パーセント
- 新潟市:15.63パーセント
- 熊本市:15.57パーセント
等といった数値が並んでいます。
不動産クラウドファンディングの場合、提示されている期待利回り(想定分配率)は、高くても、10パーセント弱程度であり、その多くは、3パーセント~5パーセント程度で募集されていることを考えると、表面的な利回りについては、不動産クラウドファンディングよりも、実物不動産投資(アパート投資や、マンション投資)のほうが、比較的、高い、と言えましょう。
節税メリットが実質的な利回りを押し上げる
実物不動産投資の場合、不動産クラウドファンディングと違い、下記のような、様々な税務上のメリットを享受することが出来ます。
- 損益通算:
不動産投資は、一般的に、土地、及び、建物を購入することで始まります。
そして、建物は、築年数に応じて、減価償却を行い、この「減価償却費」を、損金として計上することが可能です。
主に減価償却費によって、不動産投資の損益を赤字(マイナス)としたうえで、その損失を、給与所得等の、他分野所得との間で、損益通算することが出来ます。 - 損失の繰越控除:
上記のように損益通算を行っても、なお、損失額が残る場合、その損失を、翌年以降に繰り越し、控除に活用することが出来ます。
上記のような税制上のメリットをうまく活用することで、表面的な利回りに合わせて、節税メリットを享受することにより、実質的なリターンをさらに向上出来ることが、実物不動産投資の大きなメリットのひとつです。
リスクが高い物件=利回りが高い傾向
実物不動産投資の場合、投資対象となる不動産の「立地」は、極めて重要なポイントとなります。
例えば、過疎地の不動産の場合、運用期間中の賃料や、売却益が、あまり多くは見込めず、かつ、流動性について低い事が予想されることから、必然的に、期待利回りは高くなります(=リスクが高いため)。
逆に、東京都内一等地に立地している不動産、という場合、将来的な売却時を想定しても、比較的高い流動性が期待できます。
その分、リスクは低い物と判断されるため、期待利回りは低くなります。
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