インデックス投資では、ETFと投資信託、どっちを利用すべきか
インデックス投資で非上場投資信託を利用するメリット&デメリット
非上場投資信託を利用したインデックス投資のメリット
非上場型の投資信託ならば、金額指定での買い付けが出来る
一般的な株式投資やETF投資と異なり、株数単位(例:1株)ではなく、あくまでも、金額指定(例:1,000円分)で買い付けができる事は、非上場投資信託を用いたインデックス投資の、大きなメリットとされています。
例えば、株式投資の場合、1株当たりの株価は、数万円程度から、高ければ数十万円程度に及ぶこともありますので、投資家が、少額投資を始めようにも、複数の株式を取り揃えるだけで、かなり高額な投資資金が必要となることが一般的です。
これに対して、投資信託の場合、場合によっては、数百円程度からの買い付けが可能ですので、特に、投資初心者にとっては、投資スタートのハードルが低く、「気軽に投資を始めやすい」というメリットがあります。
こうした投資信託(非上場型)の特性を生かして、楽天証券SBI証券、マネックス証券といったネット系の証券会社各社は、100円程度の少額からの、投資信託の自動積み立て投資サービスを提供しています。
購入時手数料無料(ノーロード)、信託財産留保額ゼロパーセント、という投資信託も多い
日本国内では、現在、数千本以上もの投資信託が販売されており、投資信託の運用会社、および販売会社の間での競争も、激しさを増しています。
こうした競争激化を背景に、投資家からの資金をより多く集めるべく、投資信託の運用会社や販売会社の中には、
- 買い付け手数料無料の投資信託(ノーロード型ファンド)や、
- 解約時の投資家支出をゼロに抑える、信託財産留保額0パーセントのファンドなど、
投資家にとって好条件を提示する投資信託を、昨今、多数提供しています。
こうした競争環境は、投資信託の運用会社等にとっては、時に大きな負担となりますが、純粋に投資家の立場から見ると、大きなメリットといえます。
つみたてNISA、及びiDeCo口座で取得できる投資信託が多い
長期的なインデックス投資に取り組む投資家にとって、投資対象銘柄の値上がり益や分配金に対する課税を、いかに抑えていくか、すなわち、「税金」というコストをどのようにして節約するか、は、重要なポイントといえます。
この点、非上場投資信託の場合、政府が提供している投資支援制度(資産形成支援制度)である、つみたてNISAや、iDeCo (個人型確定教室年金制度)といった制度のメリットを、最大限に生かすことができる、という利点があります。
例えば、つみたてNISAの場合、指定口座で取得できるのは、金融庁が認定した一部の銘柄のみ、と限定されていますが、その認定銘柄の大半は、非上場の投資信託(パッシブ型のファンド)が占めています。
仮に、つみたてNISAの投資枠で投資を行う場合、その投資信託の値上がり益や分配金に関して、最長で20年間、非課税で投資できる、という、インデックス投資家にとってはとても看過できない、極めて大きなメリットがあります
また、iDeCo口座で投資信託を取得する場合、その拠出金が、全額所得控除となり、大きな節制メリットを得ることができます。
参考:
「月10万」から始めるインデックス投資の魅力とは|iDeCo&つみたてNISAフル活用で、まずは月10万円の予算消化を目指す
無分配型の投資信託を活用すれば、分配金への課税を排して、複利効果を最大化できる
長期的なインデックス投資に取り組む場合、投資信託の分配金等に関しても、即座に再投資し、投資元本の組み入れていくことによって、ポートフォリオ全体の複利効果を、最大化していくことが求められます。
しかしながら、分配金を再投資する場合は、あくまでも、課税後の分配金を再投資することとなるため、税支払いによって、複利効果の一部が、否応なく、損われてしまうこととなります。
この点、非上場投資信託の中には、投資家に対する分配を行わない、いわゆる「無分配型」の投資信託が、多数提供されています。
こうした無分配型の投資信託をうまく活用すれば、課税によって、再投資の効率性が損われることが無いため、ポートフォリオの複利効果を、最大限生かすことが可能となります。
非上場投資信託を用いたインデックス投資のデメリット
投資信託の場合、売買の時点では、基準価額が判然としない
非上場型の投資信託の場合、投資信託の価格は、ポートフォリオに組み入れられた各株式銘柄の終値によって決められることとなりますので、投資信託を実際に買い付ける時点においては、具体的な購入価格が決定していません。
このため、投資信託の売買を行うにあたり、
- 思いもよらぬほどの高値での買い付けや、
- 予想外の安値での売却が生じてしまう可能性があり、
投資家にとっては、一定のリスクがある、とされています。
非上場投資信託は、ETFと比較すると、信託報酬等のコストが些か割高となる
非上場型の投資信託と同じく、インデックス投資によく用いられる投資信託として、上場投資信託(ETF)の存在が挙げられますが、非上場型の投資信託の場合、ETFと比較して、運用会社に対して支払う信託報酬等のコストが、いささか割高である、というデメリットがあります。
基本的に、投資信託の運用会社の収入にあたる、信託報酬は、その投資信託の純資産額に連動します。
このため、市場において活発に売買され、資産額が膨らみやすいETFと比較して、あくまでも証券会社を通じての売買が原則となる非上場投資信託の場合、多額の純資産によって運用手数料を賄うことが難しいため、信託報酬の料率が、やや高率となるためです。
こうした事情もあってか、インデックス投資に慣れた投資家からは、
「コストが割高な非上場投資信託ではなく、経費率の低いETFを利用したほうが得策である」
等という声が聞かれることが、多々あります。
非上場投資信託の場合、ETFと比較すると、純資産額が少なめ
非上場投資信託の場合、上場投資信託(ETF)と比較すると、前述の通り、ファンドの純資産額がやや小さい、ということがままあります。
このため、ともすれば、投資信託そのものの償還のリスクも、一定程度、懸念の対象となります。
※もっとも、インデックス投資に用いられる非上場投資信託(パッシブ・ファンド)の大半は、ファミリーファンド形式を採用しており、母体となるマザーファンドの純資産額がしっかりしていれば、そうそう、償還の憂き目にあうことは少ない、と言われています。
インデックス投資でETFを利用するメリット&デメリット
ETFを用いたインデックス投資のメリット
ETFの場合、非上場投資信託よりも信託報酬等のコストが安い
ETFを用いたインデックス投資の、大きなメリットとして、非上場型の投資信託を活用する場合と比べて、信託報酬等のコストが極めて安い、という点が挙げられます。
例えば、非上場型の投資信託の場合、信託報酬の安いパッシブ・ファンドの場合でも、概ね、年率換算で0.2パーセント程度の信託報酬支払いが必要となります。
これに対して、ETFの場合であれば、同じようなインデックス・ファンドの経費率は、年率で0.03パーセント程度と、低率に設定されていることも多くあります。
長期的なインデックス投資においては、課税関係のコストと同じく、投資信託の運用会社に支払う信託報酬を、いかに低率に留めて、低コストでの資産運用を継続するか、という点が、大きなポイントとなります。
こうした観点からは、非上場投資信託を用いず、ETFをメインに据えてインデックス投資を行う場合、主にコスト面で、大きなメリットがあることがわかります。
参考:
インデックス投資は儲かるのか|インデックス投資の儲けの仕組み、儲からない理由も徹底検証
ETFなら、市場が開いている時間内(立会時間中)であればいつでも売買が出来る
ETFは、市場に上場している投資信託ですから、一般的な上場株式銘柄と全く同じように、市場が開いている時間内(=立会時間中)であれば、いつでも、投資家同士で自由に売買することができます。
当然、売買が成立する時点での価格に関しては、売り手、買い手、双方、納得した上でトレードを行いますので、非上場投資信託のように、売買成立のタイミングで正確な価格がわからない、などと言う厄介なデメリットはありません。
国内市場、海外市場問わず、フリーETFも取り揃えられている
投資家の中には、上場投資信託(ETF)と非上場投資信託の違いとして、
- 非上場投資信託には、ノーロード型の投資信託が多いが、
- ETFに関しては、必ず、買い付け手数料が生じる
と考えている投資家が多くいます。
それは確かに、事実の一端を示してはいますが、目下、ETFを通じたインデックス投資の人気が高まっていること等を背景に、国内の主要ネット証券会社においては、「フリーETF」として、買い付け手数料無料のETFを、複数、取り揃えているところも多くあります。
例えば、SBI証券や楽天証券といったネット証券会社の場合、ウェルスナビ等のロボアドバイザーが投資対象としているような、国外市場上場のETFに関しても、「フリーETF」に指定し、買い付け手数料無料で投資家が売買できるように設定しているケースもあります。
ETFを用いたインデックス投資のデメリット
売買が不活発な、取引量の小さいETFの場合、思うような価格での売買が出来ない可能性がある
上場投資信託(ETF)の場合、上場株式銘柄へと投資する場合と全く同じように、銘柄の「流動性」が、大きなポイントとなります。
仮に、売買があまり活発ではない、出来高の小さいETFを投資対象とする場合、トレードがスリップしてしまうことによって、想定よりも高値で買い付けてしまったり、逆に売却時においては、予定よりも安い価格で売却してしまう、などといった事態が生じ得ます。
このため、ETFを主に活用してインデックス投資に取り組みたい、と考えている場合、あらかじめ、自身の目論んでいるインデックス投資に適したETFが、市場で特に支障なく売買できるかどうか、しっかりと確認しておく必要があります。
分配金は自動的には再投資されないため、投資家自身で手動で再投資する必要がある。また、分配時に課税が為される
複利効果を最大限に生かしてインデックス投資に取り組む場合、分配金への課税に対して、十分な注意が必要である事は、前述の通りです。
投資家が、非上場投資信託を用いてインデックス投資を行う場合においては、数ある投資信託の中から、無分配型の投資信託を選択することができます。
その反面、ETFに限って言えば、決算のたびに、必ず、投資家に対して、分配を行うことが大前提とされており、いわゆる、「無分配型のETF」というものは、原則として存在しません。
このため、ETFを用いてインデックス投資を行う場合、
- 投資家自身で、分配された資金を再投資に回す必要があるほか、
- 分配がなされた時点で、その分配金に対しては、所得税法等に基づく課税がなされてしまう、
といった点に注意が必要です。
非上場投資信託と比較すると、ETFの場合、ノーロード型のファンドが少ない
前述した通り、非上場型の投資信託の場合、買い付け手数料がかからない、ノーロード型のファンドが、昨今、多数取り揃えられています。
一方、ETFの場合は、買い付け手数料無料のファンドはある程度限られ、原則として、売買の際には、証券外車等に対して、売買手数料を支払う必要があります。
長期投資を原則とするインデックス投資家の場合、イニシャルの売買手数料に関しては、さほどの負担にならない、と言う意見もありますが、積み立てによって資産形成を行うことを考えている投資家においては、買い付けの都度に生じる買い付け手数料は、一定の負担となることが考えられます。
ETFには、株式と同様、上場廃止のリスクがある
上場投資信託(ETF)は株式と全く同じ扱いですので、所定の上場基準を満たすことができなくなった場合、上場廃止となる恐れがあります。
具体的には、上場投資信託は、インデックス指数に連動することを求められているわけですが、運用会社の能力不足等によって、十分にインデックスを追随する運用が出来なくなった場合等において、上場廃止の可能性が顕在化することとなります。
仮に上場廃止となった場合、当然、その後は市場での取引ができなくなりますから、投資家にとっては、大きな不利益を被る事となります。
ETFの場合、非上場投資信託と比較すると、マルチアセット型のファンドが少ない
非上場型の投資信託の場合、複数の資産クラスがポートフォリオに組み入れられた、バランス型の投資信託が、多数存在します。
投資家が、マルチアセット・ポートフォリオを運用したい場合、
- 複数の投資信託を組み合わせても良いし、
- さらに手間を省きたい投資家においては、多少割高な信託報酬を払うこととはなりますが、こうしたバランス型の投資信託を活用する、
という手があります。
これに対して、ETFの場合、基本的には、各ファンドは、単一のインデックスを追随するように設計されており、複数のインデックスを組み入れた、マルチアセット・タイプのETFというのは、基本的には存在しません。
このため、投資家が、複数の資産クラスに対して資産を分散投資したい場合、単一のETFでは基本的には事足りず、いくつかのETFを組み合わせて資産運用を行う必要があります。
上場証券としての「市場価格」(ETFへの需給のバランスで決まる)と、組み入れている株式銘柄で決まる「基準価額」とが、乖離することがある
ETFには、
- 市場で取引される「証券」としての側面と、
- ポートフォリオに組み入れられた株式銘柄の「総体」としてのファンド、という、
2つの側面があります。
このため、ETFそのものへの市場における需要と供給のバランスから決定される「市場価格」と、組み入れた株式銘柄の値動きに応じて変化する「基準価額」と言う2つの価格が、各ETFに対して存在します。
市場の効率性を背景に、基本的に、この2つの価格は一致するはずですが、時折、2つの価格の間に、ごくわずかながら、乖離が生じることがあり、投資家においては、注意が必要です。
非上場投資信託と違い、ETFは、金額指定での買い付けが出来ない
非上場投資信託の場合は、場合によっては100円程度の小額から、金額指定での買い付けができるのに対して、上場投資信託(ETF)の場合、あくまでも株数単位での売買となり、金額指定での買い付けはできません。
ETFの価格そのものは、ファンドによって千差万別ではありますが、基本的には、日本円で数万円程度以上となっていることが多く、このため、10万円未満程度の少額から、ポートフォリオ運用を開始したい、と考えている投資家においては、複数のETFを取り揃えようにも、十分な買い付け資金が確保できず、結果的に、十分な分散の効いたポートフォリオを保有できない、という事態に陥る可能性があります。
※もっとも、ウェルスナビの「ミリトレ」のように、ロボアドバイザーの提供する、ETF少額買い付けサービスを利用する、という選択肢もあります。
ETFには、「アクティブ運用型」というものが存在しない
非上場型の投資信託は、大きく分けて、
- インデックス指数に連動した投資成果の獲得を目指す、パッシブ型の投資信託と、
- アクティブ運用を志向する、絶対収益追求型の投資信託に、
二分することが出来ます。
インデックス投資家は、基本的に、パッシブ運用型の投資信託を利用することとなりますが、必ずしも、全世界の全ての投資家が、インデックス投資にのみ興味を持っているわけではありません。
評判の良いファンドマネージャーに資金を託し、より少数の銘柄に対して集中投資をすることで、市場平均を上回る利益を上げて欲しい、と考える投資家も数多く存在し、こうした投資家の需要の受け皿となっているのが、アクティブ運用型の投資信託である、と言えます。
しかしながら、ETF(上場投資信託)の場合は、基本的にすべてのファンドが「インデックス連動型」として設計されており、アクティブ運用を志向するETF、と言うものは、基本的に存在しません。
参考:
インデックス投資とアクティブ投資の違いとは|運用方針・信託報酬・投資方法の違いを検証
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