話題のFIREを「わかりやすく」徹底解説

FIREの「種類」をわかりやすく整理すると?

日本では、まだあまり知られていないことですが、実はFIREは、その具体的なスタイル、手法によって、いくつかの種類に分類されます。

「本業退職後の就労の有無」によって、2種類に分類される

まずFIREは、FIRE達成後の就労の有無によって、下記の2つに大別されます。

フルFIRE

FIRE達成後には、簡単なパートタイム・ジョブや、個人事業、といったものも含めて、全ての就労を一切行わない、とするFIREスタイル。
FIRE達成後の収入は、公的な年金か、自分自身の資産運用からの運用益、分配金等に限定されるため、

  • FIRE達成前にかなりの資金を貯蓄して投資元本とするか、
  • FIRE達成後の生活費をギリギリまで切り詰めるか、

と言う2択を強いられることとなります。

サイドFIRE

FIRE達成後にも、朝9時から夕方5時までのフルタイムの本業からはリタイヤしつつも、1日数時間程度の軽作業や、自分の得意分野を生かした個人事業等に関しては、引き続き積極的に取り組むことを前提としたFIREスタイル。
FIRE達成後も、少額ながら、一定の収入が確保できる関係上、FIRE達成前にさほど多額の資金を貯蓄する必要もありませんし、FIRE達成後の生活にも、多少のゆとりが感じられます。

主にFIRE後のライフスタイルによって、4つのFIREがある

主にFIRE後のライフスタイルによって、4つのFIREがある
「早期退職&悠々自適なセカンドライフ」というイメージの強いFIREですが、その人の経済状況等によって、合計4つもの種類がある、とされています。
※画像はイメージです。

さらに、FIRE後のライフスタイルなどに合わせて、合計4つまで分類されます。

ファットFIRE

「ファット」は、文字通り、「太っている(裕福な)」と言う意味。
FIRE達成後も、生活水準を一切落とすことなく、悠々自適のセカンドライフを楽しみたい、と考えるライフスタイルになります。
まさに理想的なFIREと言えますが、当然、FIRE達成後の月々の生活費は高額であり、それを、年金及び資産運用でカバーしていくためには、FIRE達成前に、かなりの額の貯蓄を確保する必要があります。
多くの人が夢見るFIREスタイルであるのは勿論ですが、実際にファットFIREを実現できるのは、一握りの高所得者のみ、とも言われています。

リーンFIRE

「リーン」(Lean)とは、「やせ細った、引き締まった」と言う意味。
FIRE達成後の生活にかかる支出を、限界まで切り詰めることによって、FIRE達成前に、FIREほどの貯蓄元本は必要とせず、早期リタイヤに踏み切ろう、と言うライフスタイルのことを指します。
さほどの経済的な蓄積が必要なく、若年会社員の場合でも比較的早期にFIREにに踏み切ることができますが、FIRE達成後の質素な倹約生活が、その後、数十年にも及ぶことを考えると、あらかじめ、家族間で十分な話し合いがFIREスタイルといえます。

バリスタFIRE

FIRE達成後も、パートタイム・ジョブなどによって、多少の収入を確保することにより、毎月の生活費の赤字を補填していこう、と言うFIREスタイル。
アメリカでは、パートタイム・ジョブの人に対しても社会保障(健康保険等)を提供している企業として、コーヒーチェーン「スターバックス」が有名でした。
このため、FIRE達成後もスターバックスで勤務をしながら(≒軽度のパートタイムジョブを継続しながら)、社会保障は確保しつつ、ある程度経済的に安定したセカンドライフを楽しもう、と言うムーブメントが、「バリスタFIRE」と呼ばれるようになったと言われています。

コーストFIRE

インデックス投資などを活用して、無理なく資産運用しつつ、完全なリタイヤのために必要な資産の蓄積を進めていくにあたっての、初期元本が溜まった状態のことを、「コーストFIRE」といいます。

例えば毎年5パーセントで複利運用することができれば、約15年程度で、資産は倍増します。
フルリタイアのために、老後資金として5,000万円が必要だ、という投資家が、フルリタイアを希望する年の、ちょうど15年ほど前の時点で、その半額に相当する、2,500万円程度の資金を貯めることができれば、その人は、コーストFIREを実現している状況と表現されます。


参考:
FIREは、実は全部で4種類?|ファットFIRE、リーンFIRE、バリスタFIRE、コーストFIRE|それぞれの特色・注意点を徹底解説

FIRE達成までのステップをわかりやすく読み解いてみる

まずは、自分がどのFIREスタイルを目指すのかを決める

FIRE達成に向けては、まずは、その人自身が、上記した4つのFIREスタイルの中から、具体的に、どのFIREを目指していくのかを、あらかじめ決定する必要があります。

4つのFIREスタイルは、FIRE達成後の就労の有無や、FIREを達成してからのセカンドライフの生活水準等によって、合計4つ程度に分類されることは、先に述べました。
それぞれのFIREスタイルには個性があり、向き・不向きも当然ありますから、特に家族がいる人の場合は、独断で決めてしまうのではなく、配偶者や子供なども含めて、しっかりとした協議を行うことが必要です。

FIRE達成に必要な資産額などをシミュレーションする

FIRE達成に必要な資産額などをシミュレーションする
少しでもスムーズにFIREを進めるためには、事前のシミュレーション・ディスカッションは欠かせません。
※画像はイメージです。

目指すべきFIREスタイルが決定したら、次は、そのFIRE達成のために、下記のような事項について、あらかじめしっかりとシミュレーションすることが必要です。

  • FIRE達成後の生活費は、毎月、どの程度となりそうなのか。
  • FIRE達成後の資産運用においては、年率換算で、何パーセント程度の利回りを期待するのか。
  • FIRE達成後、公的年金は、いつ頃から、どの程度の金額を受け取ることができそうなのか。
  • FIRE達成後の生活費を資産運用で賄っていく場合、その投資元本としては、どの程度の金額が必要なのか
  • FIRE達成のために貯めなければいけない資金を、毎月どの程度の貯金によって、いつ頃までに確保し得るのか
  • 自身は、今の勤め先から早期退職することで、何歳頃の時点では、どの程度の退職金を受け取ることができそうなのか

特に、FIRE達成後の支出(生活費)に関しては、ある程度余裕を持ったシミュレーションをしておくことが必要です。
急な病気や怪我など、思わぬ出費が生じた際に、ぎりぎりの予算設計をしているようでは、必要な資金拠出がままならない、などと言うこともあり得るからです。


参考:
FIRE(早期退職)実現のためには、結局、いくら必要なのか|毎月の貯金額も検討

まずは「しっかり稼ぐ」ことに集中する

「会社からの経済的な独立を確保して、ゆったりとしたセカンドライフを楽しもう」と言うFIREの基本理念とは、いささか矛盾するようではありますが、FIREを達成するためには、まずは、何はともあれ、現在の自分の勤務先において、「しっかりと稼ぐ」ということこそが、最初のスタート地点となります。

現在の勤務先に、昇給や昇格等に関する内部規定がある場合、その規定をよく読み込み、資格取得なども含めて、1日でも早く、十分な昇給・昇格を勝ち取れるよう、努力する必要があります。
また、現在の勤務先では、必要な昇給を得ることが難しい、と判断した場合は、別の会社への転職も含めて、積極的に検討し、自分自身の「1時間当たりの価値」(=時間給)を高めていく必要があります。

また、こうした本業での稼ぎのほかに、自分の特技などを生かした副業にも積極的に取り組み、資産蓄積のスピードを早めていくことが重要です。
今では、クラウドワークスやランサーズなどといった、クラウドソーシング・サービスも普及していますので、何か特技がある人は、それを生かして、本業から帰宅した後の時間を有効に活用し、副収入を高めていく必要があります。

稼いだお金を、出来るだけ高い貯蓄率で「貯める」

お金を稼ぐだけでは、FIRE達成のために必要な資金元本を、早期に蓄えることは、なかなか難しいのが実情です。
稼いだお金を、まるで湯水のように使ってしまっていては、いつまでたっても、年収の数倍に到達するような資金を貯める事は不可能だから、です。

FIRE達成を引き寄せるためには、しっかりと稼ぐ事はもとより、日々の生活のための支出をできるだけ切り詰めて、収入に占める貯蓄の割合、すなわち「貯蓄率」を、できるだけ早期に高めていくことが必要です。

中には、より安い生活費を求めて、地方移住・海外移住も積極的に検討するFIRE希望者も、少なくありません。


参考:
FIREのための海外移住は「あり」なのか|海外移住のメリット&デメリットから検証

貯めた資金を元手に、資産運用で「殖やす」

稼ぎ、そして貯めることによって蓄積した資産を、今度は資産運用に回すことによって、できるだけスピーディーに殖やしていくことも、FIRE達成のためには欠かせないステップとなります。

また、FIRE達成後の生活費に関しては、公的年金の受け取りを開始するまでは、それまでに蓄積した資産の運用による運用益、分配金、配当金等で賄っていくこととなりますので、FIRE達成に向けては、資産運用に関する勉強、ノウハウの蓄積が欠かせません。

FIRE達成を目指す投資家の多くが、インデックス投資や、高配当株投資などに取り組んでいることで知られています。

FIREのメリット&デメリットをわかりやすく解説

FIREを目指すメリットとは

  • 「会社への通勤」という制約から解放されるため、住む場所を自由に選ぶことが出来る。生活費を切り詰めるために地方移住をしても良いし、かねてから憧れていた海外移住にチャレンジしてみても良い。また、敢えて定住の地を持たず、キャンピングカーや居住用のボートに住む等、新しいライフスタイルを試みてみることも出来る。
  • 自分の時間を、自分の好きなように使うことが出来る。
  • 経済的な理由のため、すなわち「食べるため」に取り組む「ライスワーク」(Rice Work)から解放され、自分が心からやりがいを感じることのできる、ライフワークに専念することが出来るようになる。
  • FIRE達成に向けて取り組む過程で、節約に関するノウハウや、資産運用・投資に関する知見を高めることが出来る。また、公的年金制度や、健康保険・医療保険制度などについても、知識を深めることが出来る。

FIREにおいて留意したいデメリット・注意点

  • 事前のシミュレーションが不十分であったり、過度に甘い場合、FIRE達成後の生活において、経済的な困窮を経験することとなる。
  • 特にFIREによる早期退職を済ませた後になると、ライフプランの急な変更が難しい。例えば夫婦が、「やっぱり、子供が欲しい」と考えたとしても、FIRE後の経済事情によっては、実現が難しいケースもある。
  • 米国人著者によるFIRE指南書を直訳しただけの書籍を読んでも、「日本版FIRE」の要領を把握することが難しい(よく言われる、「年間生活費の25倍貯蓄・4パーセント運用」ルールは、日本の年金制度等を十分に織り込んだものではない)。
  • FIRE達成、及び、FIRE後の生活費の確保のためには、資産運用に関するノウハウが欠かせない。十分な知識がないままに、ハイリスクな資産運用に関わると、資金元本を大幅に失ってしまうリスクがある。
  • 配偶者がいたり、子供がいる場合、FIRE達成に向けては、家族の同意が不可欠となる。十分な同意形成がないままにFIREプロセスを進めると、その後の家族間の信頼関係に、支障をきたす可能性がある。
  • 「給与所得」という、物価に連動しやすい収入源が絶たれることによって、インフレーション(物価高騰)に対する耐性が著しく下がる。
  • 早期退職によって、厚生年金の支払い期間が短くなると、受け取り年金額もそれに応じて減額されてしまうこととなる。
  • 会社からアーリーリタイアする場合、退職金を満額受け取ることは難しくなる(=早期退職の程度によって、退職金が目減りしてしまう)。
  • FIREを済ませた後になってから、「資金量が足りないから、やっぱり再就職しよう」と考えたとしても、早期退職前と同程度の条件で雇用してくれる企業は少ない(=高齢での再就職は、条件面が厳しい)。
  • FIREを済ませたのちも、住民税や、国民健康保険料、国民年金保険料、(自宅が持ち家である場合)固定資産税、等と言った公租公課は、支払い続ける必要がある。
  • FIRE後は、会社の年末調整に頼ることが出来なくなるため、自分自身で確定申告を行う必要がある。
  • 年功序列意識の色濃く残る日本では、会社での給与も、役職手当などにより、加齢に応じて増加していく傾向がある。このため、早期退職をしてしまうと、会社員としての「本当の稼ぎ時」を、みすみす取り逃すこととなる恐れがある。
  • 早期退職すると、その後、対外的な社会的信用力が落ちる。このため、FIRE達成後においては、住宅ローン審査の通過や、クレジットカードの作成審査の通過が、難しくなる。

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FIRE(早期リタイア)検証チーム
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