インデックス投資は「ただのブーム」なのか|ベテラン投資家がインデックス投資をブームと言い切る6つの理由とは

実はブームに過ぎない?インデックス投資とは

少数の株式銘柄に対して、資金を集中的に投資するのではなく、数百から数千もの銘柄をポートフォリオに組み入れた、「投資信託」へと投資することにより、インデックス(指数)に連動した投資成果の獲得を目指す投資スタイルを、「インデックス投資」といいます。

昨今、幅広い年齢層の投資家に人気を博しつつあり、一種のブームのよう様相を呈してきつつあります。

今がブーム?旬のインデックス投資の始め方

投資家がインデックス投資を始めるの場合、基本的には、下記のようなステップを踏むこととなります。

①自分のリスク許容度を把握

まず投資家は、助言型のロボアドバイザー・サービスなどをうまく利用するなどして、自分自身のリスク許容度を把握する必要があります。
現在の年収が比較的高く、今後もそれが継続する見込みであり、かつ自身の年齢も若い場合は、今後数十年間にわたる資産形成期において、資産を最大限に増やしていくべく、比較的リスクの高い(=期待利回りの高い)ポートフォリオを組んでいくが一般的です。

逆に、退職金運用等を計画している投資家のリスク許容度は、上記のような投資家のリスク許容度と比較すると、極めて低いものとなります。

②リスク許容度に見合ったアセット・アロケーションを確認

インデックス投資においては、複数の資産を組み合わせたマルチ・アセット・ポートフォリオ、すなわちアセット・アロケーションを計画することが一般的です。
基本的には、前段のリスク許容度が高い投資家ほど、ポートフォリオに占める株式の比率が高いポートフォリオ組むこととなります。
逆に、リスク許容度の低い投資家においては、ポートフォリオに占める債券の割合が大きくなることが一般的です。

③アセットクラスごとに、インデックスを選択

例えば、「日本株式」という単一のアセットクラスに対しても、「日経平均」や「トピックス」など、複数のインデックスが提供されていることが一般的です。
投資家においては、投資対象とするアセットクラスごとに、どのインデックスを追随対象とするのかを決める必要があります。

④インデックスごとに、買い付ける投資信託を決定

ひとつのインデックスに対して連動する投資成果の獲得を目指している投資信託は、必ずしも、単一とは限りません。
知名度が高く人気のインデックスに対しては、場合によっては、数十社にも及ぶ運用会社や販売会社から、異なる投資信託が提供されていることもあります。

投資家においては、国内でおよそ数千本が販売されているといわれる投資信託の中から、自身の投資目的に見合った投資信託を選びぬいていく必要があります。

⑤投資信託の買い付け&自動積立投資の設定

買い付ける投資信託が決まったら、ネット証券会社等も有効に活用しながら、実際の買い付け、そして、自動積み立て投資の設定を行います。
国内のネット系の証券会社(楽天証券やSBI証券、マネックス証券等)の場合、毎月数百円程度の少額から、自動積み立て投資を設定することができるので、インデックス投資家にとり、強い味方となります。

⑥定期的なリバランス

インデックス投資を開始してしばらくすると、各資産クラスごとの銘柄の値動きに応じて、最新のポートフォリオの内容が、当初設定したアセット・アロケーションから、少しずつ、乖離していきます。
こうした乖離が生じた場合、適切なバランスに戻すべく、ポートフォリオを再調整する、「リバランス」を実施する必要があります。


参考:
「月10万」から始めるインデックス投資の魅力とは|iDeCo&つみたてNISAフル活用で、まずは月10万円の予算消化を目指す

インデックス投資が「ただのブーム」と言われる6つの理由

「世界経済の長期的な成長継続」は、ひとつの神話に過ぎない

インデックス投資が「ただのブーム」と言われる6つの理由
近年、大きな成長を遂げてきた世界経済。しかし、その成長が今後も長期的に継続し得るかどうか、については、議論の分かれるところです。
※画像はイメージです。

インデックス投資の仕組みを深く考えていくと、その根源には、「世界経済は今後とも長期的に右肩上がりの成長を継続していく」と言う、極めて楽観的な前提条件が組み込まれていることがわかります。

個別の株式銘柄は、不祥事や、競合他社の新製品開発などによって、大きく下落する、ダウンサイド・リスクがある。
また、特定の市場セクターに対して投資しているだけでは、他のマーケットの大きな成長を取り逃してしまうかもしれない。
それならば、市場全体、ひいては、”世界経済全体”に対して投資をしてみたらどうだろう。

これが、全世界の様々な資産クラスへと資金を分散投資する、インデックス投資の基本的な考え方です。

しかしながら昨今、世界経済の前提条件は、日々刻々と変わりつつあり、果たして今後とも、世界経済、ひいてはインデックス指数が、これまで通りの高成長を維持・継続できるのかどうかに関しては、経済学者の間でも、実は、意見が分かれています。

特に、世界経済にとって大きなリスク要素と言われているのは、本格的な人口減少社会の到来です。

そもそも、各国の市場インデックスの伸びは、その国のGDPの成長と、大きな相関関係があると言われています。
そして、歴史上、各国のGDPは、当該国の領土の拡張と、人口の伸び、そして、生産性の向上に、強く裏づけられてきました。

今後とも、技術革新の進行によって、生産性は向上し続けますが、そもそも、人口の伸びが止まってしまえば、消費が減退する事は目に見えており、GDPの成長には、極めてネガティブな環境が形作られていくこととなります。

こうした状況下においても、各国の経済は成長し続けることができるのか、そして、インデックス指数は今後とも伸び続けるのかどうかに関しては、経済学者の間でも見解がほぼ真っ二つに分かれています。


参考:
インデックス投資は「危ない」のか|投資初心者必見、インデックス投資の危険性とは

インデックス投資自体が、バブルを助長する性質を持っている

インデックス投資に用いられるパッシブ・ファンドは、数百~数千もの銘柄をポートフォリオに組み入れており、そのすべての銘柄ごとの業績を、投資家が逐一確認・把握することは、物理的に不可能です。
むしろ、「各銘柄の精査という手間を省きたいから、インデックス・ファンドに対して投資しているのだ」と考えている投資家が大半でしょう。

企業側から見れば、どれだけ業績が悪くとも、また、事業に将来性が無くとも、ひとまず、インデックスに含まれてさえいれば、インデックス投資家に(投資信託を通じて)株を買ってもらえる、ということとなります。

たとえばTOPIXは、東証一部に上場している全ての銘柄がポートフォリオに入っているため、企業としては、東証一部に上場さえしていれば、その後、業績が悪くとも、株を買ってもらえる、ということと同義です。
そしてこれは、「実質を伴わずに、適切な調整を経ることなく、株が買われてしまっている」という見方をすれば、一つの”バブル”とも換言出来ます。

インデックス投資のブームに乗って、単純に「インデックス指数に含まれているから」と言うだけで株が買われている企業に、何か不祥事やスキャンダルが発覚した場合、株価は大きく調整する可能性があります。
その調整をきっかけとして、その他のインデックスに含まれている企業株まで下落するようなことになれば、連鎖的にバブル崩壊が生じ、インデックス指数が大きく下落するようなきっかけともなりかねません。

現に、特に米国株式市場においては、インデックス指数に含まれている各株式銘柄のPER(株価収益率)は、歴史的な高水準にあるとも言われており、インデックス投資に詳しい投資家の中には、「インデックス投資ブームの終わりに伴うバブル崩壊は、決して遠くない」と考える向きもあります。

インデックス投資の標榜するリスク分散は、目下、砂上の楼閣となりつつある

インデックス投資では、複数の資産クラスに対して資金を分散投資することによって、ポートフォリオ全体のリスクを低く保つ、いわゆる「現代ポートフォリオ理論」に基づいた戦略が、ごく頻繁に採用されています。

資産クラス同士の間の相関係数は、マイナス1からプラス1の間で表現され、相関係数が小さければ小さいほど、互いの値動きは逆行することとなります。

かつては、「株式と債券」や、「米国株と日本株」のような要領で資産クラスをまたいだ運用をしておけば、違いの値動きが逆行し、ポートフォリオの全体としてのボラティリティーを、低く保つ効果が、実際に期待できました。

しかしながら昨今、経済のグローバル化と、複数の資産クラスにまたがったマルチアセットポートフォリオの運用が一般化してきたことにより、複数の資産クラスへの分散投資によるリスク低減効果は、かつてのようには顕著ではない、と言われています。

「一般個人投資家でも、プロ機関投資家並の分散投資を」という掛け声のもと、一大ブームを引き起こしたインデックス投資ではありますが、昨今、そのブームの牽引役となってきた、資産クラス分散によるリスク低減効果そのものが、疑問視されるような事態となりつつあります。


参考:
「インデックス投資は負けない」は本当なのか|インデックス投資が「負ける」のはこんな時

インデックス投資特有のコスト構造に、投資家が気付きつつある

インデックス投資特有のコスト構造に、投資家が気付きつつある
インデックス投資ブームの一方で、早くからインデックス投資に取り組んできた投資家の中には、インデックス投資特有のコスト構造に疑問を抱き始める人も出てきています。
※画像はイメージです。

インデックス投資を行う場合、投資信託の利用は、もはやデファクト・スタンダード(事実上の標準・前提条件)に近い状況です。

しかしながら、投資信託を利用する場合、投資家は、投資信託の運用会社に対して、「信託報酬」と呼ばれる、一種の運用手数料を支払う必要があります。
また、投資信託を保有している間、投資信託の決算・監査費用や、ファンドが株式を売買する時の手数料も、投資家が間接的に負担しています。

一方、分散投資によって、各株式銘柄の非システマティック・リスクを排除したいだけであれば、投資信託を用いて数百銘柄にまで分散投資せずとも、50~60銘柄程度に時価総額加重で分散投資していれば十分、との検証結果もあります。その場合、買い付け手数料はかかるものの、保有期間中のランニングコストは生じないし、株主優待を受け取ることも可能です。

これまでは、インデックス投資のブームに夢中になるあまり、インデックス投資ならではの細かなコスト構造について度外視してきた投資家たちも、時間の経過とともに冷静になり、インデックス投資に伴う投資信託へのコスト支払い、及び、上記のようなデメリットについて、敏感になりつつある、との指摘もあります。

インデックス投資に傾倒していると、不況時に、実体経済とのダブルパンチを食らう

インデックス投資において、ある程度の分散投資を行っていたとしても、昨今のリーマンショックやコロナショックのような、大規模な経済変動が直撃すると、インデックス投資中のポートフォリオについても、大きな下落を免れることはできません。

そして、株式を組み入れたインデックス投資の大きな弱点と言われているのか、実体経済との間の連動性の強さです。

株式を中心としたインデックス・ポートフォリオが落ち込んでいる時期においては、その投資家自身の実体経済においても、不景気に伴い、失職や給与減などといったダメージを受けていることが多く、実質的に、投資家がダブルパンチを受けるような事態が頻発しています。

インデックス投資家は、アクティブ投資家の「カモ」にされている

インデックスが、そのポートフォリオに組み込む銘柄を変更するときは、(インデックスにもよりますが)ある程度事前にその旨を、市場に対して情報公開することが一般的です。

この時、こうした情報に触れたアクティブ投資家が、

  • 新たにインデックスに組み入れられることが明言された銘柄を事前に購入したり、
  • 逆に、インデックスから除外されることが分かった銘柄に対して、空売りを仕掛けるなどすると、

インデックス投資家が、実質的に損害を被るようなケースが想定されます。

例えば、A社の株式が、翌月からインデックスに組み入れることが発表された場合、アクティブ投資家の間では、事前にA社の株式を買い占める動きが見られます。
実際に、インデックス指数に連動したポートフォリオを構築する投資信託が、A社の株式を購入し、ポートフォリオに組み入れる頃には、A社の株式は、インデックス指数への組み入れが発表された当初よりも、数段値上がりしていることが一般的です。

そして、インデックス指数に連動する投資信託がA社の株式を購入しようとする動きに呼応するようにして、事前にA社株式を取得していたアクティブ投資家は、A社の株式について、利益確定売りを進めます。

このため、A社の株式は、インデックスに組み入れられた直後から、値下がりを始めることとなり、これによって直接的な不利益を被るのは、そのインデックスに連動する投資信託に対して投資をしている一般個人投資家です。

特に昨今、インデックス投資のブームの高まりに応じて、インデックス・ファンドが株式市場に対して及ぼす影響力は大きくなっています。
この影響力の大きさを利用して利益を得ようと考えるアクティブ投資家は少なくなく、この点は、インデックスに組み入れられる銘柄が変更となるタイミングにおいて、極めて大きな留意事項となります。


参考:
インデックス投資とアクティブ投資の違いとは|運用方針・信託報酬・投資方法の違いを検証

Author Info

インデックス投資検証チーム
fill.mediaは、国内の融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)や、不動産クラウドファンディング、更には、ロボアドバイザー業界等の最新情報を提供する、投資・金融情報総合メディア。
インデックス投資専門の検証チームでは、様々な資産クラス・銘柄に対して資産を長期・積立・分散投資するパッシブ型ファンド情報を中心に、業界の市場調査、各社の新サービスの検証などを実施する。

メディア掲載歴(一部・順不同)
・朝日新聞デジタル&m
・財経新聞
・SankeiBiz
・RBBTODAY
・楽天Infoseekニュース
・excite.ニュース
・BIGLOBEニュース
・@nifty ビジネス
・Mapionニュース
・NewsPicks
・ビズハック
・MONEY ZONE
・Resemom
・SANSPO.COM
・Trend Times
・zakzak
・とれまがニュース
・徳島新聞

コメントを残す

コメントは当ラボによる承認作業後に自動掲載されます。