FIREによるアーリーリタイアは、本当におすすめなのか|FIREをおすすめする人、おすすめしない人

FIREとは

FIRE(ファイア)は、”Financial Independence, Retire Early”(経済的な独立を果たして、早期リタイアをすること)の略。
会社勤めをしながらも、出来るだけ早く、必要な貯蓄額を貯めて、その後、早期退職を果たし、資産運用で生活の糧を得ながら、自分の好きなように暮らそう、というライフスタイルの事を指します。

FIRE達成までの流れ

一般的な会社員がFIREを達成するためには、基本的に、以下のような流れを辿ることとなります。

  1. FIRE後の生活に、果たしていくら程度の予算が必要なのか、を計算する。
  2. FIRE後の年間生活費の25倍相当額程度(例えば、年間の生活費が300万円、という人の場合は、7,500万円)を、まずは貯蓄することを目指す。
  3. 貯蓄の速度を上げるために、本業での収入増(昇進・昇格等)を目指すとともに、副業も積極的に活用し、所得を増やす。
  4. 年間の「貯蓄率」を底上げするために、可能な限りの節約生活に勤しむ。
  5. 併せて、インデックス投資や高配当株投資などを活用し、資産運用で元本を増やすことも試みる。
  6. FIREに必要な貯蓄額が貯まったら、会社から早期退職する。その後は、節約生活を継続しながら、資産運用からのリターン(高配当株式からの配当金や、インデックス投資などの値上がり益で、概ね、年率換算で4パーセント前後の運用益確保を目指す)の範囲内+年金受給額の範疇で、生活費を抑えることにより、資産元本の取り崩しを出来るだけ防ぎながら生活する。

FIREのメリット

FIRE達成後の自由な時間は、FIREのメリット
FIRE達成によって得られる時間的な自由は、FIREの最大のメリットの一つです。好きな庭いじりをするもよし、農作業に精を出すもよし。会社員生活では得難かった時間的な猶予をどのように生かすかは、人それぞれです。(画像はイメージです)

  • FIREを達成すれば、その後は、「会社への通勤のために便利な場所に暮らす」必要もなくなる。住む場所を自由に選ぶことが出来るようになるため、海外移住なども自由に行えるようになる。
  • 会社からの経済的な独立を確保すれば、嫌な仕事、意味を見出せない仕事を「会社の命令だから」という理由だけで続ける必要が無くなる。「ライスワーク」から脱却し、「ライフワーク」に取り組むことが出来るようになる。
  • 限りある自分の人生の残り時間を、自分の好きなように使える様になる。
  • 「自分の人生を自分でコントロールする」ことによる、精神的な充足を味わえる。
  • FIREを目指す過程の中で、資産運用に関するノウハウや、節約に関する知見を身に着けることが出来る(両者ともに、FIRE達成後も継続することとなる)。
  • FIREに関して勉強を進める中で、公的年金制度等の社会保障制度について知見を深めることが出来る。
  • FIREによって早期退職すれば、その後、所得税・住民税等の負担は大きく減ることになるし、厚生年金保険料の支払いも不要となる。

FIREのデメリット

  • 相当慎重に資金計画を練らないと、リタイア後になってから、キャッシュフローがショートしてしまうリスクがある。
  • FIRE達成後も、FIRE達成前と同様、節約生活を継続する必要がある(=節約生活は、その後、人生の終焉を迎えるまで、数十年間に渡って継続する必要がある)。
  • 厚生年金保険料や社会保険料は、元来、会社が半額負担してくれている。早期退職してしまうことにより、こうした福利厚生面でのメリットを放棄することとなる。
  • FIRE後にライフプランを変更することが難しい(例:若い夫婦がFIREを達成し、その後、「事前に計画していなかったけど、子供が欲しい」と考えたところで、長期的な資金計画上、実現することが難しい場合がある)。
  • 確たる趣味や「為すべきこと」を持たないままに、ただ単純にFIREを果たしてしまうと、その後、「FIREをしたはいいけれど、やることがない」という状態に陥る可能性がある。
  • インフレーションに連動する傾向の強い「給与所得」を手放す以上、その後、急激なインフレが生じると、資産の相対的な価値が薄まることとなる。
  • FIRE達成までの長い倹約生活に、配偶者や子供、配偶者の親などの家族・親族から、同意・理解が得られないことがある。
  • 早期退職によって、厚生年金への加入期間が短くなると、受け取り年金も少なくなる。また、早期退職してしまうことで、退職金の受取額が減ったり、退職金の受取そのものが出来なくなる可能性がある(社内規定による)。
  • 米国のFIRE本などの影響を受けた「年収の25倍貯蓄・4パーセント運用」ルールを守るだけでは、市場の暴落時等に対処できない可能性がある。
  • FIREにより早期退職をしてしまうと、その後、社会的な信用が落ちることとなる。FIRE後にクレジットカード作成をしようとしても、審査は通らない可能性が高く、住宅ローン審査も難しくなる可能性が高い。

参考:
FIRE(経済的自立確保&早期退職)の意味とは|アーリーリタイア生活のメリット&デメリットから検証

FIREは本当に、誰にでもおすすめなのか

近年、若い会社員の間で特に関心が高まっている、FIRE(ファイア)。
確かに、その理想とするところは崇高ですが、果たして、万人におすすめ出来るライフプラン、とまで言えるのでしょうか。

FIREによる早期退職・リタイアをおすすめする人

FIREをおすすめ出来る人としては、下記のようなタイプの人が考えられます。

①「自由」の価値を、「お金」よりも優先できる人

FIREを達成して手にすることが出来る最大のものと言えば、様々な物事に関する「自由」です。

  • 住む場所に関する自由や、
  • 毎日の時間の使い方に関する自由、
  • どのような人と、どのような人間関係を築いていくのか、に関する自由、等々、

FIRE達成後には、これまでにない、様々な自由が手に入ります。

こうした「自由」に対して価値を見出す人、特に、「そうした自由が手に入るのであれば、経済的なデメリット・リスクに対しては、目をつむっても構わない」と考えるタイプの人においては、確かに、FIREをおすすめできます。

投資において、「ローリスク・ハイリターン」な投資商品が存在しないのと同様、ライフスタイルの選択においても、何かを優先すれば、その分、何かが犠牲となる「トレードオフ」の関係は生じ続けます。
問題は、「何を優先するのか」であり、その優先順位判定において、「自由」の持つ価値が相対的に高い、と考えられる人の場合は、積極的にFIREに取り組むことが、理想的な人生を歩む第一歩となりましょう。

②「ライスワークよりもライフワーク」と考える人

「ライスワークよりもライフワーク」と考える人には、FIREがおすすめできる
生活の糧を得るためだけの「ライスワーク」ではなく、やりがいを感じられる「ライフワーク」に集中したい、という人にとっては、FIREは魅力的選択肢となります。(画像はイメージです)

生活の糧を得るために、やりたくもない仕事に取り組むことを、「食事のための仕事」すなわち、「ライスワーク」(Rice Work)と呼びます。
これに対して、「自分の人生を通じて取り組みたい」と人が真に思える仕事のことを「ライフワーク」(Life Work)と呼びます。

この「ライスワーク」「ライフワーク」に関する考え方は、実は、人それぞれです。

  • 「ライスワーク」に時間を使うことは不合理である。一度きりの人生、しっかりと「ライフワーク」に専念して取り組みたい、と考える人もいれば、
  • 「ライフワーク」はあくまでも理想。現実的にこの人生を渡っていくためには、「ライスワーク」に真剣に取り組み、むしろそれを楽しむくらいの度量が必要だ、と考える人もいますし、
  • 「ライスワーク」も「ライフワーク」も、どちらも大切。投資におけるコア・サテライト運用と同様、まずはコア部分(生活の主軸)には「ライスワーク」を許容し、そのうえで、空き時間や休日などを活用して、好きな「ライフワーク」に取り組んでみてはどうだろう、と考える、中庸派の人も存在します。

そして、FIREをおすすめ出来る人は、このうち、何はともあれ、「ライフワーク」を最優先に考えるタイプの人、と言えましょう。
「ライスワーク」に対して時間・労力を割くことに耐えられない、という人は、出来るだけ早期にFIREを達成し、自分のやりたいこと、すなわち「ライフワーク」に集中できる環境を整えるほうが、精神衛生上、好ましい、と言えるでしょう。

③資産運用や副業に関するノウハウ・能力を既に持っている人

FIREを達成し、その後もつつがなくリタイア後生活を満喫するためには、

  • 投資による資産運用(=お金にも働いてもらうこと)、及び、
  • 早めに投資元本を確保するための、「節約」に関するノウハウが、

必要不可欠となります。

既に投資に長年取り組み、インデックス投資や高配当株投資を通じて、「FIRE後でも、ある程度、投資からのリターンで生計を立てていく目途が立っている」という人には、FIREをおすすめしやすい、と言えましょう。
また、日頃から節約に取り組むことが好きで、「FIREに向けての節約も、全く苦にならない。FIRE達成後の倹約生活も、むしろ、楽しみだ」というタイプの人にとっても、FIREは最良の選択肢のひとつとなりましょう。

FIREによるアーリーリタイアをおすすめしない人

FIREはかなり前衛的なライフスタイルであり、全ての人におすすめできる「万人受け」するものではありません。
特に、下記するようなタイプの人々にとって、FIREは現実的な選択肢ではないでしょう。

①資金計画の立案等を面倒だと感じる人

FIRE達成のためには、かなり綿密な資金計画の立案が必要です。

  • 自分は、果たして何歳くらいから、公的年金を受給できるようになるのだろうか。
  • 年金を受給開始するとしたら、果たして年額でどの程度の金額を受け取れるのだろうか(国民年金+厚生年金)。
  • 年金だけで、老後の生活費は賄えるのだろうか。賄えない、という場合、不足額はいくらになるのだろうか(国の試算に基づく「老後2千万円問題」などが話題となりましたが、実際に老後に不足する資金量は、各人のライフスタイルによって様々です)。
  • 老後の不足額を賄うためには、いくら程度の貯蓄を、どの程度の期待利回りで運用すればよいのか。また、その期待利回りを達成するための資産運用には、どのような投資手法が現実的なのだろうか(インデックス投資?高配当株投資?それとも、ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングなどの新興投資手法?)。
  • FIRE達成後、年金受給開始までの間は、毎月の生活費は、どの程度となるのか。資産運用からの配当金収入などを生活費に充てることが出来る場合、実際の不足額はどの程度となりそうなのか。
  • FIRE達成後、年金受給開始までの期間をやりくりするためには、どの程度の貯蓄が必要なのか。その貯蓄額を達成するためには、毎月どの程度の資金を貯蓄に回し、かつ、どの程度の利回りで複利運用すれば良いのか。
  • 自分自身は、FIREによる早期退職後、退職金を受け取れるのだろうか。受け取れる場合、どの程度の退職金を受け取れそうなのか。

簡単に列記するだけでも、少なくとも上記のような項目について、FIREを達成する以上は、すらすらと答えられるくらいの財務的な計画力が必要です。
上記のような項目を見て、「それだけの資金計画を立案するのは面倒だし、そのような事に時間を割くくらいなら、今の仕事を継続したほうが楽しい」と感じる人の場合は、そもそも、FIREに向いていない、と言えます。

②長期の節約生活に耐えられない人

「FIREを達成するためには、節約生活に勤しむ必要がある」ということを理解している人は多くいますが、「FIRE達成後も、それまで同様の(ないしは、それ以上の)倹約生活を継続することが必要である」と言われると、FIRE達成に向けたやる気が減衰してしてしまう、という人もいるでしょう。

FIREを達成するまでの間は、「FIREを達成する」という大きなモチベーションがあるため、日々の節約生活も、苦にならないかもしれません。
しかし、FIREを果たしてからの節約生活は、「今後の数十年間を、この資金を食いつぶさないように、少しずつ、使っていかなければならない」という、どちらかというと消極的な動機付けが必要となります。

「FIREしたら、あとはゆっくりと、悠々自適に暮らすのだ」
と思い描いてしまっている人の場合、その後の生活のつつましさについて、意識を向けるべきである、と言えましょう。

③FIREの「あと」に関する計画が無い人

FIREの提唱する「自由な毎日」は、全ての人々にとって、少なくとも表面的には、極めて魅力的に響きます。
誰だって、「不自由な毎日」よりは、「自分の好きなように生きられる、自由な日々」を選びたいでしょう。
しかし、誰からもルールで規制されない「自由」とは、すなわち、「責任」の裏返しでもあります。

特に、これまでの人生(学生時代、及び、会社員人生)において、主体的に判断をしてきた経験があまりなく、ある程度「敷設されたレールの上」を歩く人生に慣れてきた人にとっては、FIRE達成後に「さあ、好きなことをして下さい」と言われても、

  • 何をしたらいいのか、分からない。
  • そもそも、特にやりたいことも無い。

という、なんとも不完全燃焼気味な日々が訪れる危険性があります。

「FIREを達成した暁には、このような日々を送りたい」という確たるビジョンの無い人にとって、FIREに伴って訪れる「自由」は、むしろ、ネガティブなものとなってしまう可能性もあります。

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