FIREを目指すポートフォリオ運用とは|米国株、債券、現金等、FIRE後のおすすめポートフォリオについても検証
ポートフォリオ運用で早期実現?若年会社員に話題のFIREとは
FIRE(ファイア)は、「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった造語。
会社からの経済的な独立を果たし、早期退職によって、長いセカンドライフを自分のペースで楽しもう、というライフスタイル・ムーブメントのことを示します。
1種とは限らない?FIREの種類とは
「FIRE」とひとことに言っても、今では、下記のような4つのタイプに分類されることが一般的です。
①ファットFIRE
4種類あるFIREのうち、最も実現のハードルが高いのが、ファットFIRE(Fat FIRE)と呼ばれるFIREスタイルです。
FIRE達成後も、従来通りの生活水準を下げることなく、悠々自適のリタイヤ生活を満喫することを目指すライフスタイル。
定期的な給与収入が途絶えた後も、毎月の支出はかなりの高額に上りますので、それだけの支出をカバーするための収入を、FIRE後の資産運用(及び、一定の年齢から受け取り開始する年金収入)から稼ぎ出す必要があります。
自然、投資運用に回すための元本も、大きなものが必要となります。
②リーンFIRE
リーン(Lean)とは、引き締まった、無駄がない、という意味。
FIRE後の生活費を極限にまで切り詰める代わりに、ファットFIREほどには資産を蓄積することなく、できる限り早めにFIREに踏み切ることを目指すライフスタイルです。
さほどの資産家でなくとも、比較的早期にフルFIRE(=FIRE後の就労を前提としないFIRE)に踏み切ることができる、というメリットがある一方で、FIRE後の生活は、ファットFIREや、FIRE前の現役時代と比較すると、かなり慎ましく、相当の節約・倹約生活を強いられることとなります。
③バリスタFIRE
FIRE達成後も、パートタイムなどの副業に従事するのことを前提としたFIREスタイル。
ファットFIREやリーンFIREと異なり、「サイドFIRE」として、FIRE後も一定量の収入が期待できる分、FIREに踏み切るための資産量は少なめでも済む、というメリットがあります。
なお、FIRE達成後の就労スタイルとしては、パートタイマーのほかに、「クラウドワークス」や「ランサーズ」などに代表されるクラウドソーシングの活用や、自営業への取り組みなどが考えられます。
④コーストFIRE
日本の投資家にはとって、今のところ最も馴染みの薄いのが、コーストFIRE(Coast FIRE)でしょう。
これは、穏当な利回りで資産が増えていった場合、目標年齢時点までにリタイア必要金額に到達すると思われる投資【元本】が、十分に貯まった状態を示します。
例えば、年利5パーセントで確実に複利運用ができれば、14年程度で資産は倍増します。
50歳で(リタイア資金として)5,000万円を貯めることを目標にしている投資家が、35歳時点で2,500万円を貯めることができれば、定義上、その人は、35歳の時点で、コーストFIREを達成している、と見做されるわけです。
参考:
FIREは、実は全部で4種類?|ファットFIRE、リーンFIRE、バリスタFIRE、コーストFIRE|それぞれの特色・注意点を徹底解説
FIRE達成までの具体的なステップは
①自分が目指すFIREを決める
まずは、上記した4つのタイプのFIREの中から、自分がどのFIREスタイルを目指していくのか、しっかりと検討し決断する必要があります。
極めて重要なライフスタイル上の決断となるため、配偶者や子供、その他親族など、様々な人たちと相談を重ね、互いに納得できる形での取り組みを最優先とする必要があります。
②FIRE達成に必要な資金を、しっかり稼ぐ
FIRE達成に向けて、次のステップは、まず、自分の現在置かれた状況下で、出来る限り多くの所得を稼ぐ、というところから始まります。
現在の勤務先に、昇給・昇格に関する社内規定がある場合は、その規定をよく読み込み、できるだけ早く昇給、ないしは昇進を勝ち取れるように、努力します。
もしも、今の勤務先では十分な昇給を得ることが難しい場合は、転職も含めて積極的に検討します。
FIREを1日でも早く達成するためには、経済的な部分についてはある程度ドライに判断し、自分の1時間当たりの価値を上げていくことが、何よりも大切だからです。
また、本業だけではなく、就労が終わった後の副業・アルバイトなども積極的に行い、一日に稼ぐことができる所得を最大化することを目指すのも重要です。
この場合の副業には、簡単なアルバイト作業なども含まれますが、今では、クラウドソーシングなどのスキルシェア・サービスを活用して、自分の本業で培ったスキルを生かし、副収入を稼ぐ、と言う人も多くいます。
参考:
FIRE(早期退職)実現のためには、結局、いくら必要なのか|毎月の貯金額も検討
③貯める(収入に占める貯蓄率を上げる)
転職や昇給、そして副業も含めて、どれだけ多くの所得を稼いだとしても、湯水のようにそのお金を使ってしまっていては、ファイア達成に必要な元本は、一向に貯まりません。
FIRE達成を近づけるためには、最大限お金を稼ぐ事と合わせて、稼いだお金をできるだけ多く、貯蓄に回していく必要があります。
そのためには、日頃の生活に必要なコストを、出来る限り切り詰め、収入量に占める貯蓄の割合、すなわち「貯蓄率」を、できるだけ早期に高めていく必要があります。
具体的には、日々の生活における節約、倹約こそが、何よりも大切なプロセスとなります。
④殖やす(=お金にも、働いてもらう)
FIRE達成のためには、お金を稼ぎ、出来るだけたくさんの割合を貯蓄に回したうえで、貯蓄した資金に関して、「お金にも働いてもらう」という考え方の下、資産運用へと回していく必要があります。
FIRE希望者が資産運用を行う場合、あまりにもリスクの高い投資分野に資金を配分してしまうと、FIREのためにせっかく貯めた資金が、元本割れ等によって毀損してしまう危険性が生じます。
このため、多くのFIRE希望者は、FXや仮想通貨投資など、リスクの高い投資分野に資産を配分する事はせず、インデックス投資など、比較的手堅いと言われる投資分野に、資産を配分することが多いようです。
※ただし、インデックス投資と言えども、元本割れのリスクは当然伴いますので、注意が必要です。
FIREのための資産ポートフォリオとは
そもそも、ポートフォリオとは
単一の銘柄・資産クラスではなく、複数の銘柄、並びに資産クラスを組み合わせて資産運用を行うことを、ポートフォリオ(運用)といいます。
なお、単一の資産クラスのみ(例:株式のみ)でポートフォリオを構成することもありますが、最近では、投資信託等を活用し、複数の資産クラスを組み合わせることで、「マルチアセット・ポートフォリオ」を構築することが一般化しつつあります。
FIREを目指す投資家の、資産運用ポートフォリオに組み入れることの多い資産クラスには、下記のようなものがあります。
- 米国株を中心とした、先進国株式
- 日本株やヨーロッパ株など、米国株を除く先進国株式
- 中国やロシア、台湾、ブラジルなど、「経済新興国」と呼ばれる国の株式
- 米国財務省が発行するTボンドなどを中心とする、先進国債券
- その他新興国が発行する債券
- 金(きん)などを中心とするコモディティー
- 主にリートへの投資を中心とする不動産
FIRE前の資産形成期は、米国株を中心としたポートフォリオが一般的
FIREを達成する前、すなわち、会社に勤務し、定期的な収入がある状態(=資産形成期)においては、米国株を中心とした、先進国株式をメインに据えたポートフォリオを運用することが一般的です。
特に米国株式の場合、将来的な期待利回りが、様々な資産クラスの中で最も高く、長期にわたる資産運用でポートフォリオ全体を拡大したいと考える投資家にとっては、最も有力な選択肢となります。
また、日本株やヨーロッパ株を中心とした、米国以外の先進国株式についても、米国との間の地理的な分散を図ることを目的に、ポートフォリオに組み入れることがままあります。
逆に、資産形成過程の投資家においては、ポートフォリオに債券、ないしは現金を組み込む事は、あまり一般的ではありません。
現預金としての保有は、最低限の生活防衛資金に留め、残りの資産は、出来るだけ多くの割合を、資産運用に回す、というのが、FIREを目指す投資家の間では、一種の鉄則されている節もあります。
資産活用期(FIRE達成後)においては、債券&現金メインのポートフォリオが〇
資産形成期の投資家のポートフォリオが、米国株を中心とした「株式メイン」の物となるのに対して、FIRE後、すなわち、資産「活用期」の投資家においては、ポートフォリオの大半を占めるのは、債券、並びに現預金となります。
株式型の資産クラスを中心としたポートフォリオと比較すれば、当然のことながら、ポートフォリオ全体の期待利回りは著しく低下することとなりますが、その分、ポートフォリオ全体のボラティリティー、すなわちリスクを、大幅に低減することができます。
FIREを達成し資産活用期に入った投資家は、既に早期退職(アーリーリタイア)を済ませていることが一般的ですから、給与からの定期的な収入がありません。
このため、仮に株式市場が大幅に下落するなどし、株式型の資産クラスが大規模な評価損を記録した場合、これを定期的な収入で回復するための、経済的な余裕がありません。
結果的に、資産活用期の投資家においては、期待利回りを高く保つことよりも、むしろ、リターンを犠牲にしてでも、ポートフォリオ全体のリスクを、でき得る限り低位に保つことこそが、大切となります。
なお、実際に債券を投資対象とする場合、米国債を投資対象とするETFを取得したり、日本の財務省が発行する国債を購入する、等といった方策が考えられます。
実際のポートフォリオ構成は、ETFを含む投資信託がおすすめ
例えば、株式中心のポートフォリオを運用する時期において、単一の株式に資金を集中的に投資するのは、危険です。
分散投資によって、少なくとも各銘柄の非システマティックなリスク(=分散投資によって合理的に排除することの出来るリスク)については、排除しておく必要があります。
その場合、投資家が自分で多数の銘柄を取得しても良いわけが、株式の最低購入単位等を考慮すると、相応の資産量が無い限り、現実的ではありません。
そこで、FIREを目指す投資家のポートフォリオ運用においては、ETF等の上場投資信託を含む「投資信託」を活用することが一般的とされています。
投資信託を利用すれば。数百~数千もの銘柄に対し、数百円程度の少額から分散投資することが出来る、というメリットがある一方で、投資信託の運用会社に対し、信託報酬等のコストを支払う必要が生じます。
こうしたランニングコストを更に節約したい場合、非上場投資信託だけではなく、上場投資信託(ETF)を活用する、という手もあります。
ETFの場合、非上場投資信託と比較すると、信託報酬を含めた経費率が低い(安い)、という特徴があるためです。
FIREを目指すポートフォリオ運用の注意点
FIRE達成を目指す投資家の多くは、上記のようなポートフォリオを用いた資産運用を行うことが一般的ですが、複数の資産クラスに資金を分散投資するポートフォリオ運用には、下記するような様々な注意点、リスクもあることを、忘れてはなりません。
短期的には大幅な下落を記録する可能性があり、不調が長引けば、元本割れの状態が長期間継続する可能性がある
特に資産形成期においては、ポートフォリオの大半を、米国株を中心とする先進国株式が占めることとなりますが、こうした株式系の資産クラスは、期待利回りが高い、というメリットの裏返しとして、極めて高い変動リスクをも内包していることを、放念すべきではありません。
一般的に、株式系資産クラスを多めに取り入れたポートフォリオの期待利回りは、年率換算で5パーセント程度となる、と言われていますが、そのリスク、すなわち利回りのボラティリティーは、概ね、15パーセントから20パーセントに及ぶとされています。
仮に、ボラティリティーを20パーセントと仮定するとポートフォリオ全体のリターンは、およそ65パーセントの確率で、プラス25パーセントからマイナス15パーセントの間に収まることとなります(標準偏差の1倍)。
また、約95パーセントの確率で、プラス45パーセントから、マイナス35パーセントの範囲内に収まることとなります(標準偏差の2倍)。
参考:
標準偏差|Wikipedia
また、不況が長期化した場合、資産評価額が、下落前の水準を取り戻すために、場合によっては10年以上も歳月を要することがあります。
現に、米国株式市場の主要企業500社の株式を組み入れたインデックス「S&P500」は、2000年代初頭のドットコム・バブル崩壊以降、リーマン・ショックを経て、最終的にバブル崩壊前の水準を取り戻すまでに、十数年もの期間を必要としました。
資産形成期のポートフォリオに債券を組み入れるべきかどうか、については、様々な議論がある
資産形成期のポートフォリオにおいて、株式系の資産クラスのほかに、債券系(主に米国財務省発行のTボンド)の資産をポートフォリオに組む入れるべきかどうかについては、投資家の間で様々な議論があります。
投資家の中には、ポートフォリオ全体のリスクをある程度コントロールするために、株式系の資産クラスだけではなく、債券もまた、ポートフォリオに組み入れるべきだ、と考える人も多くおり、ウェルスナビやテオなどに代表される、投資一任型のロボアドバイザー・サービスも、基本的には、この考え方に立っています(現に、ウェルスナビの場合は、投資家のポートフォリオにおいて、米国株のETFのほかに、米国財務省発行の債券に対して投資するETFを、ある程度、組み入れています)。
一方で、投資家の中には、「債券は利回りが低い上に、各国の為替変動のリスクや、カントリーリスクを負うことになるので、ポートフォリオに組み入れるのは、不適当である」とし、リスク資産として債券をポートフォリオに組み入れるのではなく、リスク資産ポートフォリオの外側に、一定量の現預金等を保有しておくことで、相場の急落に備えれば充分だ、と考える人も多くいます。
ポートフォリオ運用に投資信託利用は欠かせないが、コストがかかる
複数の資産クラスにまたがったポートフォリオ運用を行うにあたっては、多量の銘柄に対して分散投資する投資信託、ないしはETFの活用が不可欠となります。
しかしながら、投資信託を活用する場合、投資家が自分で株式銘柄を保有する場合と比べて、様々な追加コストが生じることとなります。
まず、投資信託の代表的なコストとして知られるのが、投資信託の運用会社に対して支払う、「信託報酬」です。
また、投資信託によっては、投資信託の購入時に、買い付け手数料が生じることもあるほか、投資信託の解約時に、「信託財産留保額」と呼ばれる、一種の解約コストが生じるケースもあります。
投資家が自分で株式を購入し保有する場合は、株式購入時の手数料はかかりますが、株式を保管している間の手数料は特段生じません。
特に長期投資を前提とする場合、投資信託において生じる信託報酬コストは、最終的な投資家の運用成績を、大きく左右する一因ともなりかねないため、十分な注意が必要です。
また、ポートフォリオ運用に、投資一任型のロボアドバイザーを活用する場合、投資信託運用会社への信託報酬に加えて、ロボアドバイザー運用会社へと、アドバイザー・サービス利用料の支払い(預かり資産残高に連動した手数料体系を採用しているロボアドバイザー事業者が大半です)も必要となります。
Author Info
-
fill.mediaは、国内の融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)や、不動産クラウドファンディング、ロボアドバイザー、インデックス投資業界等の最新情報を提供する、投資・金融情報総合メディア。
FIRE(早期リタイア)専門の検証チームでは、昨今、主に若年投資家の間で大きな関心を集めつつあるFIRE(Financial Independence, Retire Early)に関する最新情報を専門的に扱います。
メディア掲載歴(一部・順不同)
・朝日新聞デジタル&m
・財経新聞
・SankeiBiz
・RBBTODAY
・楽天Infoseekニュース
・excite.ニュース
・BIGLOBEニュース
・@nifty ビジネス
・Mapionニュース
・NewsPicks
・ビズハック
・MONEY ZONE
・Resemom
・SANSPO.COM
・Trend Times
・zakzak
・とれまがニュース
・徳島新聞