【ソーシャルレンディングファンド分析】OwnersBook「杉並区新築マンション第3号ファンド第4回」の場合。

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを題材に、各社の特徴や、ファンドごとのリスク・リターンのバランス等を検証する本企画。
今回は、OwnersBook(オーナーズブック)が2018年に資金募集を行ったソーシャルレンディングファンド、「杉並区新築マンション第3号ファンド第4回」を題材に、読み解きを進めて参りましょう。

本ファンドの概要

同社のホームページから確認した、本ファンドの概要としては、下記の通りです。
なお、案件1、及び案件2のうち、資金の大半を融資する「案件1」のほうに関してのみ、下記、詳説をさせて頂きます。

本ファンドの詳細情報ページのURL

こちらです。

https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1121/

資金の借り手

東京都渋谷区に所在する、設立後3年以上が経過した、総合不動産会社Bが、借り手となる、とのこと。
B社の主たる事業としては、下記。

  1. 不動産開発事業
  2. 不動産投資事業
  3. 不動産コンサルティング事業
  4. その他投資事業

3期前・2期前は共に経常赤字で、保有する不動産の売却益により当期純利益を計上。
直近期は、経常利益・当期純利益を計上して着地、とのこと。

貸付資金の総額

本ファンドによる貸付は、4,000万円です。

借り手の資金使途

総合不動産会社Bの事業資金である限り、資金使途についての定めはない、とのこと。

貸付・運用の期間

24ヶ月の貸付・運用となります。

設定担保

B社が所有する下記の不動産に対して、極度額2億円の根抵当権が既に設定されており、かつ、既に1億6,000万円分の貸付は実行済。
本ファンドから4,000万円を貸し付けることによって、貸付の総額は、極度額たる2億円に達します。

  • 建物状況
    2018年4月に建築された地下2階付 3階建のマンション1棟。
    なお、不動産登記簿での記載は「地下2階付3階建」となるが、地盤面との関係で、実質的に「地下1階及び地上4階」となり、部屋番号も地下1階から4階の別で表記されている、とのこと。
  • 交通・接近条件
    東京都杉並区下井草に位置しており、西武鉄道新宿線へのアクセスが至便、とのこと。
  • 賃貸借の状況
    本建物は、地下1階及び1階が店舗、2階から4階までが住居。
    2018年9月21日現在、店舗部分の稼働率100%、住居部分の稼働率は約85%であり、建物一棟としての稼働率は約92%。
    現行月額賃料(共益費込)の平均坪単価は、2018年9月21日現在、店舗部分については20,500円程度、住居部分については10,200円程度。
    外部専門家により査定された新規月額賃料(共益費込)の坪単価は、店舗部分については20,500円程度、住居部分については10,500円程度。
    住居は全6戸。ユニット構成は、1K(30㎡台)・1戸、1LDK(30㎡台)・2戸、1LDK(40㎡台)・1戸、1LDK(50㎡台)・1戸、1LDK(70㎡台)・1戸、とのこと。

返済原資

B社は、返済原資として、事業活動によって稼得されるキャッシュを想定している、とのこと。

わたしたち個人投資家の期待利回り

4.2パーセント、とのこと。

本ソーシャルレンディングファンドの資金募集達成度は

投資家から高い人気を誇る、オーナーズブックのファンド。
本ファンドについても、当然のごとく、満額の資金募集を達成しています。

運用・返済状況は

匿名組合の償還予定日は、2020/10/20と定められています。
本記事執筆本日現在、鋭意運用中、というところでしょう。

本ファンドのポイント

私が考える、本ファンドのポイントは、下記の通りです。
なお、いずれも、私の個人的な見解です。

金利は低い。貸付期間は長い。

4.2パーセントという想定利回りは、正直、低いなあ、と感じます。
貸付期間は約2年に及びますので、その間資金が固定される、と考えると、いささか、長いなあ、と感じます。

LTVはまあまあだが、メザニンであることを忘れてはならない。

4. 物件評価額
OwnersBook評価額は、外部専門家による査定額を参考に44,200万円(4億4,200万円)と査定しております。今回の物件①に対する募集金額4,000万円は、そのうちの約9.0%となります。

引用元:https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1121/

↑上記の記載があります。
勿論、純然たる事実なのでしょうが、その受け取り方には、少しだけ、注意が必要です。
確かに、本ファンドによる貸付額たる、4,000万円は、担保物件の評価額たる、4億4,200万円に対して、9パーセントほどに過ぎません。
しかし、本ファンドを、LTV(Loan to Value)9パーセントの、超安全ファンド、と解釈するのは、考え物です。

しっかりとファンド情報を読み込む必要がありますが、
B社は、本担保物件を担保に供し、既に、OwnersBook以外の金融機関(銀行)から、1億5千万円を借り入れています。
抵当権の構成で言えば、上記、銀行に関し設定されている担保権こそが、シニア、第一順位の抵当権、となります。
更に、B社は、OwnersBookから、本ファンドを含めれば合計額として、2億円を借り入れます。

すなわち、評価額4億4,200万円の担保物件に、総額3億5千万円(銀行からのシニアローン1億5千万円+OwnersBookからのメザニンローン2億円)分の抵当権が、設定されるわけです。
このため、正確なLTVとしては、3億5千万円/4億4,200万円=79パーセントほど、となります。

そのうえで申し上げますと、LTV79パーセント、というのは、まだ十分、控えめなLTV、と言えます。
OwnersBook以外の、他のソーシャルレンディング事業者が組成している、不動産担保型のファンドの場合、冷静に計算すると、LTVが9割以上に達しているケースも、ざらです。

ただし、本ファンドの場合、更に1点、考慮に入れる必要があるのが、
OwnersBookの持つ抵当権(正確には、根抵当権)は、あくまでも、第二順位抵当権である、という事です。
B社に万が一のことがあった場合、債権回収の優先順位は、銀行の有する第一順位抵当権に対して、完全に劣後します。

この点をどう判断するか、は、投資是非の検討において、大きなポイントとなります。

  • LTV79パーセントは、まあまあ。
  • ただし、メザニン(第二順位抵当権)。
    「第一順位抵当権でLTV79パーセント」というケースと比べ、万が一の債権回収局面において、一定の難度が生じ得るのではないか。
  • そのうえで、利回り4.2パーセント、貸付期間2年、というのを、どう考えるか。リスクに見合ったリターンである、と解釈するか。

このあたりを、一(いち)個人投資家として、真剣かつ慎重に、見極めていく姿勢が問われます。

本ソーシャルレンディングファンド検証のまとめ

ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを検証し、各社の特徴や、ソーシャルレンディングファンドごとの特色、そして、ファンド概要の読み解きのヒントを探る本シリーズ。
今回は、オーナーズブックのソーシャルレンディングファンド「杉並区新築マンション第3号ファンド第4回」を題材に、検証をさせて頂きました。

しつこいようで申し訳ありませんが、
本記事文中の表現は、いずれも、私のごく個人的な意見に過ぎません。
その点は、くれぐれも、ご承知おきください。

しかし、あくまでも、その限りにおいて、
少しでも、「これからソーシャルレンディング投資を始めてみよう」とお考えの読者様にとり、
ファンド概要の読み込みの具体例として、ご参考になさって頂ける内容と出来たのであれば、嬉しい限りです。

なお、私は現在、国内23社のソーシャルレンディング事業者に、資金を分散投資しておりますが、
その中でも、OwnersBookは、他のソーシャルレンディング事業者と比べて、私が多くの資金を投資させて頂いている事業者のひとつです。


引用元:OwnersBook

  • 東証マザーズ上場企業、ロードスターキャピタル株式会社による運営。
  • 全案件(ファンド)に、不動産担保がセッティングされている。

等と言った特長のある事業者ですが、その分、個人投資家からの人気が高く、
ファンドによっては、資金募集開始から、あっという間に、資金枠が埋まってしまう、というケースが多く見られます。

本記事にて取り上げた新ファンドの場合も、

  • やや低利。
  • 貸付期間(資金が固定される期間)がやや長期。
  • LTVは79パーセントほどだが、
  • メザニン。

ということで、いささか、敬遠されるのでは、と予想していたのですが、
前述も致しました通り、あっという間に、資金枠が埋まってしまっています。

今後、「いざ」という時の投資機会を逃さぬためにも、
あらかじめ、投資口座開設だけでも、済ませておくことをお勧めします。

同社の投資口座開設は、こちらの公式ページから手続き可能です。

OwnersBook(公式)

なお、同社の投資口座開設手続きは、いたってシンプルですが、
「初めてで不安」という方は、あらかじめ、こちらの別記事もご参照下さい。

[blogcard url=”https://social-lending.online/sl-companies/ownersbook/ownersbook-kaisetsu/”]

それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会い致しましょう。

追伸:
ソーシャルレンディング各社をランキング形式で分析したこちらの過去記事もおすすめです。是非、ご覧になってみてください。

【ソーシャルレンディング事業者ランキング保存版】案件利回り・投資対象国分散・不動産担保設定状況・出資時利便性。異なる複数の視座から、国内人気ソーシャルレンディング事業者を徹底ランキング。


本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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