SBIソーシャルレンディング問題で話題の「テクノシステム」とは
ソーシャルレンディングとは
ノンバンク型の貸金業者(ソーシャルレンディング事業者)の募集するファンドに出資し、分配利回りの収受を狙う投資手法が、「ソーシャルレンディング投資」です。
ソーシャルレンディング投資の流れ
- ソーシャルレンディング事業者(貸金業者であると同時に、金融商品取引業者でもある)の募集するファンドに、ホームページを経由して、出資申込を行う。
- 出資が成立すると(※)、ソーシャルレンディング事業者と投資家との間では、匿名組合契約が締結される。
- ソーシャルレンディング事業者は、投資家からの募った資金を、資金需要者(借り手企業)に対して融資する。
- 借り手企業は、ソーシャルレンディング事業者に対し、利息、並びに、元金の返済を行う。
- ソーシャルレンディング事業者は、借り手企業から回収した利息、及び元金を元手にして、投資家に対し、出資持分に応じた分配、及び、元本償還を行う。
(※)ソーシャルレンディング事業者の多くは、先着方式、ないしは、抽選方式によって、投資募集を行っています。
先着方式の場合、投資応募額が、投資募集額に達すると、募集は終了となります。
また、抽選方式の場合、ソーシャルレンディング事業者側が実施する抽選に外れると、ファンドに出資することは出来ません。
ソーシャルレンディング投資のメリット・デメリット
メリット
- 小額投資:
国内でサービス展開しているソーシャルレンディング事業者の多くが、最低投資額を、1万円程度と、少額に設定しています。
※ただし、J.Lendingのように、最低投資額を50万円、と高額に設定しているケースもあり、かつ、Funds(ファンズ)のように、「1円から投資可」としているケースもあります。 - 高い期待利回り:
具体的な期待利回りは、案件・ファンドによって様々ですが、一般的には、年率換算数パーセント~10パーセント弱程度の、高い期待利回りが提示されています。 - 貸金業プロジェクトへの出資:
日本では、貸金業の登録を受けていない個人や法人が、「事業」として、第三者への融資を行うことが、禁じられています。
投資家は、ソーシャルレンディング事業者のファンドへと出資すれば、貸金業の資格を得ずとも、金融事業者の融資事業に、相乗り投資を行うことが出来ます。 - ほったらかし投資:
融資期間中(ファンド運用期間中)の様々な実務については、ソーシャルレンディング事業者が執り行う関係上、投資家としては、「ほったらかし投資」が可能となります。
デメリット
- 流動性上のリスク:
ソーシャルレンディングの場合、一旦、ファンドへと出資すると、その出資の中途解約(ファンド運用期間中の解約)は、原則として、認められません。
出資持分を取引するためのセカンダリ・マーケットも整備されていないため、流動性は、(上場企業株式投資や、REIT投資などと比較すると)低いと言わざるを得ません。 - 情報透明性の問題:
国内ソーシャルレンディング業界では、貸金業法への配慮から、長きに渡り、融資先の具体的な情報(商号や住所)については、投資家に対して「非開示」とされていました。
その後、2019年3月に、金融庁から、投資家への融資先情報開示を是認する公式見解が発表されて以降も、一部のソーシャルレンディング事業者においては、融資先の匿名化が継続されています。 - 税制上の冷遇:
ソーシャルレンディング事業者から送金される「分配金」は、現在の所得税法下では、所得の分類として「雑所得」に該当します。
また、課税制度としては、(上場企業株式投資などで利用されている)申告分離課税は利用できず、総合課税の一択のみ、とされています。
その他、損益通算や繰越控除、等といった税務上のメリットも、ソーシャルレンディングについては、適用されていません。 - 延滞に巻き込まれるリスク:
ソーシャルレンディング事業者は、融資先から回収してきた利息や元金を元手にして、投資家に対する分配・元本償還を実施します。
このため、借り手企業からの元利金が回収にトラブルが生じると、ソーシャルレンディング事業者から出資者への分配・元本償還にも、必然的に、遅延が生じてしまうこととなります。 - 元本割れのリスク:
ソーシャルレンディング事業者が、融資先から、貸付債権の一部しか、回収できなかった場合、当然、ソーシャルレンディング事業者から出資者への元本償還資金は、不十分なものとなります。
その結果、出資者の出資元本については、毀損してしまう(元本割れが生じる)こととなります。 - 事業者の不正リスク:
ソーシャルレンディング業界では、これまで、複数の事業者が、不正行為によって、監督官庁からの行政処分を受けています。
行政処分を受けたソーシャルレンディング事業者では、その後、ファンドの延滞が頻発した事例などがあるので、注意が必要です。
このように、ソーシャルレンディングで資産運用を行うにあたっては、様々なリスクがあり、注意が必要です。
なぜ企業は、ソーシャルレンディング事業者から資金調達するのか
日本では、経済新興国とは異なり、銀行サービスが津々浦々まで浸透しており、低金利で資金を借り入れることが可能です。
また、上場企業であれば、市場から直接、資金調達を行うことが出来ます。
こうした状況下において、なぜ、ソーシャルレンディング事業者にとって「借り手企業」は、わざわざ、ソーシャルレンディング事業者から、資金調達を行うのでしょうか。
ソーシャルレンディング事業者の場合、銀行と比較して、融資審査が緩やか
預金者から預かっている「預金」を元手に資金融資を行う銀行と比較し、投資家からクラウドファンディング形式で調達した「投資資金」を元手に融資を行うソーシャルレンディング事業者の貸出審査は、自然、緩やかなものとなります。
※これは、ソーシャルレンディング事業者に限らず、いわゆる「ノンバンク型の貸金業者」(=預金業務を取り扱わず、貸金業務のみを行う金融事業者)全てにおいて、共通していえることです。
銀行が融資を渋るような、創業から間もない企業や、直近数期において赤字決算が継続してしまっているような企業の場合でも、貸付条件(金利や、担保内容等)によっては、ソーシャルレンディング事業者からは、資金融資を受けることが出来る場合があります。
また、既に銀行からシニアローン(第一順位抵当権付きの融資)を借りている企業の場合でも、同じ担保物(不動産等)を担保にして、ソーシャルレンディング事業者から、メザニンローン(第二順位抵当権融資)を受けることが出来る場合も有ります。
この場合、借り手企業としては、単一の不動産で、より多くの融資を受けることが出来る、というメリットが生じることとなります。
貸付条件(返済条件を含む)も、柔軟に設定されている
さらに、ソーシャルレンディング事業者の場合、銀行と比較すると、その貸出条件も、やや柔軟に設定されています。
担保物については、物上保証(=担保物の所有者が、借り手企業ではない、という保証形態)も可、とされることがありますし、銀行が「審査コストを回収できない」として忌避することの多い、「短期ローン」(=返済期限が数か月程度のローン。期間が短い分、利息総額が少額となる)についても、ソーシャルレンディング事業者ならば、積極的に取り組んでくれることがあります(むしろ、ソーシャルレンディング事業者のファンドに出資する投資家は、長期ローンよりも、資金拘束期間の短い短期ローンのほうに、魅力を感じる傾向があります)。
また、借入期間中の、元本の分割返済を求められない(=借入期間中は、利息のみ、返済を行う)ことがある、という点も、ソーシャルレンディング事業者から資金調達する借り手企業にとっては、大きなメリットとなります(例えば、既に売却先が決まっている不動産を、投資目的で取得する場合、最終的な転売先から代金を受け取るまでは、借り手企業の手元には、資金が無い、ということもあり得ます)。
そのほかにも、
- 資金使途自由
- (借り手企業の)代表者連帯保証不要
- 繰上返済可
など、借り手企業にとって一定のメリットがある貸付条件を提示するソーシャルレンディング事業者も存在します。
ソーシャルレンディング事業者のファンド募集を通じて、自社のブランディングを図ることが出来る
ソーシャルレンディング・プラットフォーム「ファンズ」(Funds)では、上場企業が借り手となるファンドが組成・募集されているケースが多々あります。
未上場企業と比較し、資金調達手法も多岐にわたるはずの上場企業が、わざわざソーシャルレンディングを通じて資金調達を行う理由としては、
「ソーシャルレンディング事業者のファンド募集を通じて、全国の個人投資家に対し、自社サービスのブランディング・知名度向上を図ることができる」
という点が挙げられます。
SBIソーシャルレンディング問題とは
SBIソーシャルレンディング概要
SBIソーシャルレンディングは、東証一部上場の大手金融グループ「SBIホールディングス株式会社」(東京都港区六本木一丁目6番1号)の傘下企業、SBIソーシャルレンディング(東京都港区六本木1-6-1 泉ガーデンタワー14F)が運営にあたっている、ソーシャルレンディング・サービス。
サービスインは、2011年3月。
以降、原則としていつでも出資できる、「常時募集型ファンド」と、不定期に募集される「随時募集型ファンド」を中心に、募集実績を積み上げてきました。
2021年2月末の時点で、累積融資総額は1,693億円を突破。退会済を除いた、本人確認済の投資家登録数は、6万1千人強。いずれの数値においても、国内ソーシャルレンディング業界のリーディング・カンパニーと呼ぶにふさわしい実績値を有しています。
第三者委員会の設置、未償還元本償還の知らせ
順風満帆に規模拡大を続けていくかに見えた、SBIソーシャルレンディングですが、2021年2月、突如、「融資先の事業運営に、重大な懸案事項が生じている可能性がある」として、第三者委員会の設置を公表。数日後には、代表取締役人事の異動等を発表しました。
その後、2021年3月には、一部ファンドにおける、利払い(分配)、及び元本償還の遅延を発表。
翌月(4月)には、問題が生じているファンドに関し、未償還元本の償還を発表するなど、混乱が続いています。
そうしたさなか、ビジネスジャーナルやデイリー新潮が、問題のファンドの実質的な融資先として、太陽光発電事業等を手掛ける株式会社テクノシステムについて言及。テクノシステム側がこれらに対して否定する立場を表明など、事態の混迷が深まりつつあります。
テクノシステムとは
株式会社テクノシステム概要
商号 | 株式会社テクノシステム |
代表者 | 代表取締役 生田尚之 氏 |
本社所在地 | 神奈川県横浜市西区みなとみらい二丁目2番1号 横浜ランドマークタワー19階 |
会社設立 | 平成21年12月16日 |
資本金 | 14億6,030万円 |
上場/非上場 | 非上場 |
情報引用元:株式会社テクノシステムHP
テクノシステム社の事業内容
再生可能エネルギー事業
- 太陽光発電事業:
国内メーカーであるネクストエナジー・アンド・リソース株式会社(長野県駒ヶ根市赤穂11465-6)の製作する太陽光パネルを活用し、分譲型の太陽光発電設備・事業を展開。
山間地や農村地での大規模発電事業を複数展開。 - バイオマス発電事業:
間伐材を燃料源として発電。新潟県にて1.2メガワットの発電所開発実績がある。
ウォーターシステム事業
海水や河川水を淡水化し、飲用できるレベルまで浄化し提供する。
- 災害発生時に活躍が期待される、自走式の造水給水車や、
- 1日あたり20トン~40トンの飲料水を供給できる、ソーラーパネル付きのコンテナ型浄水システム、
- 1日あたり4.8立方メートルの海水を淡水化できる、海水用淡水化装置、
- 1日最大1.5トンの飲料水を供給できる、河川水用の淡水化装置
などを手掛ける。
フードシステム事業
- ワンタッチで、カレーやスープ、パスタなどの食品を提供できるフードサーバー「デリシャスサーバー」の提供や、
- レストラン事業、
- フードサーバーを活用した、移動販売車事業等
(※上掲情報引用元:https://techno-sys.jp/)
一部メディアでは、小泉親子との関係も報道
件の株式会社テクノシステムについては、下記するような一部メディアにおいて、元首相である小泉純一郎氏や、その長男にあたる小泉孝太郎氏との関係に関して報じられています。
- 太陽光発電の闇と小泉純一郎氏|産経新聞
- テクノシステム<上>小泉元首相が広告塔 小池知事とも親密|日刊ゲンダイ
- 小泉純一郎が広告塔の太陽光発電会社のグレーな経営実態 息子・孝太郎もCMに出演|デイリー新潮
- 小泉進次郎さんに伝えたい再生エネルギー周辺の雑感|文春オンライン
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