※延滞発生【ソーシャルレンディングファンド分析】クラウドリース「短期特別キャンペーンローンファンド【第2弾】1号」の場合

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを題材に、各社の特徴や、ファンドごとのリスク・リターンのバランス等を検証する本企画。
今回は、クラウドリースが2018年10月~11月に資金募集を行ったソーシャルレンディングファンド、「短期特別キャンペーンローンファンド【第2弾】1号」を題材に、読み解きを進めて参りましょう。

本ソーシャルレンディングファンドの概要

同社のホームページから確認した、本ソーシャルレンディングファンドの概要としては、下記の通りです。
※なお、案件1及び案件2のうち、資金の大半を融資する「案件1」のほうに関してのみ、下記、検証をさせて頂きます。

本ソーシャルレンディングファンドの情報URL

こちらです。

https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=3034

本ソーシャルレンディングファンドのスキーム図


引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=3034

ファンドからの資金の借り手

クラウドリースにとっての直接的な債務者は、事業者Mです。
ただし、事業者Mはクラウドリースの関連会社である旨が明記されていますから、本事業の実質的な債務者としては、最終債務者たる事業者MCである、と読むのが素直です。

貸付資金の総額

本ファンドからの貸付は2,000万円です。
ただし、複数号のファンドを経由し、総額では1億円を融資する計画である、とのこと。

借り手の資金使途

事業者Mは、クラウドリースからの融資金を原資に、事業者MCへの融資を行います。
事業者MCは、事業者Mからの融資金を、リサイクル事業の仕入れ資金及び運転資金に充てる、とのこと。

本ソーシャルレンディングファンドの貸付・運用期間

1カ月の貸付・運用が予定されていました。

設定担保

不動産、及び鉄スクラップ在庫に関し、担保権が設定される、との表記がありました。

返済原資

事業者MCから事業者Mへの返済の原資については、特段の明記が見当たりませんでした。
事業者Mからクラウドリースへの返済原資は、事業者Mが事業者MCから受け取る返済金となります。

わたしたち個人投資家の期待利回り

年率12パーセント、とのこと。

本ソーシャルレンディングファンドの資金募集達成度は


引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=3034

満額の資金募集を達成したファンドです。

運用・返済状況は

2019/01/10 にクラウドリースから発表された情報によると、本ファンドについて、延滞が発生しています。

クラウドリースのソーシャルレンディングファンドに関する延滞の知らせ
引用元:https://www.crowdlease.jp/information/news?id=3095

1億円の貸付額のうち、貸付残高はまるまる1億円、残ってしまっている、という状態です。

本ソーシャルレンディングファンドのポイント

私が考える、本ファンドのポイントは、下記の通りです。
なお、いずれも、私の個人的な見解です。

利回りはかなりの高利設定。

単純な年率想定利回りは、12パーセント、とのことで、極めて高利と言えます。
貸付期間も、「1カ月」と、かなり短めの期間設定となっています。

本ソーシャルレンディングファンドの失敗リスク・危険性について

今更、という感はございますが、後学のために敢えて述べれば、いくつかの点には、危険の萌芽が見え隠れしていたように感じます。

根抵当権の極度額の記載無。


引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=3034

上記の通り記載されておりますので、不動産に対し設定されるのは、抵当権ではなく、根抵当権であるものと思われますが、根抵当権の極度額が記載されておりません。

担保物となる不動産の評価額算定基準が曖昧。

鑑定評価額は1億6,100万円とのことですが、評価手法(例:収益還元法や、周辺類似物件の取引事例参考、等)が明記されておりません。
かつ、評価に携わった関係者について記載がないため、

  • 公平な視点の第三者は、評価算定プロセスにきちんと関与したのか。
  • 不動産鑑定士等、不動産評価のプロフェショナルは、評価算定プロセスに関与したのか。

といった情報が判然としません。
建物の延床面積が記載されているわけでもありませんし、木造か、鉄筋コンクリート造りか、といった基本的な情報も、記載されておりません。
築年数も記載されておりませんので、税務上の耐用年数から勘案した残存価値等、基本的な建物価値を把握するための検討・計算が、一切、出来ない状況です。

鉄スクラップ在庫については、トン数の明記無。


引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=3034

時価余力8,690万円分の鉄スクラップ、とのことですが、トン数が明記されていないため、時価の算出が適正かどうか、判然としません。
なお、鉄スクラップの1トンあたりの料金相場については、


引用元:https://www.japanmetal.com/memberwel/marketprice/soba_h2

株式会社産業新聞社のWEBメディアなど、様々な媒体において、情報収集をすることが可能です。
しかし、いずれの情報ソースにおいても、収集できる情報は、あくまでも、トンあたりの代金、ですので、その肝心の「トン数」の表記が無い以上、本事業において担保権が設定される鉄スクラップ在庫が、真に、8,690万円もの価値を持ちうるのかどうか、判然としません。

総論。

利回りは高いですし、貸付期間は短いので、募集当時、かなりの人気を集めた点は、理解できます。
しかし、保全に関する情報については、記載不足の感を否めぬ部分が多く、掲出されている情報だけをもってして、「保全の効いているファンドだ」と納得することは、至極難しい状況だったのではなかろうか、と思料します。
※勿論、私の個人的な所見です。

1日も早く、債権回収が進捗し、1円でも多くの資金が、出資した投資家の手元に戻るよう、陰ながら、祈念致しております。

本ソーシャルレンディングファンド検証のまとめ

ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを検証し、各社の特徴や、ソーシャルレンディングファンドごとの特色、そして、ファンド概要の読み解きのヒントを探る本シリーズ。
今回は、クラウドリースのソーシャルレンディングファンド「短期特別キャンペーンローンファンド【第2弾】1号」を題材に、検証をさせて頂きました。

しつこいようで申し訳ありませんが、
本記事文中の表現は、いずれも、私のごく個人的な意見に過ぎません。
その点は、くれぐれも、ご承知おきください。

しかし、あくまでも、その限りにおいて、
少しでも、「これからソーシャルレンディング投資を始めてみよう」とお考えの読者様にとり、
ファンド概要の読み込みの具体例として、ご参考になさって頂ける内容と出来たのであれば、嬉しい限りです。
特に本ファンドに関しては、延滞発生、という憂き目に遭ってしまったファンドとなりますので、
しっかりと目をお通しいただくと、よろしいものと思料します。

なお、私は現在、国内23社のソーシャルレンディング事業者に、資金を分散投資中です。
そんな私が、国内23社中、厳選した3社のみ、「おすすめ事業者」としてご紹介しておりますのが、下記の別記事となります。
お時間ございましたら、ぜひご覧ください。

【ソーシャルレンディングのおすすめ会社はどこですか?】23社分散投資中の筆者が、ソーシャルレンディング投資初心者の読者様におすすめする、厳選3社がこちら。

ソーシャルレンディング各社をランキング形式で分析したこちらの過去記事もおすすめです。

【ソーシャルレンディングランキング決定版】利回り・投資対象国・担保設定状況・投資のしさすさ。異なる4つの視座から人気ソーシャルレンディング事業者を徹底ランキング。

主要なソーシャルレンディング事業者を、投資家登録数や累計投融資額も含めた様々なポイントから比較した分析記事はこちらです。

【ソーシャルレンディング各社徹底比較】投資家登録数・累計投融資額・年利平均…。主要ソーシャルレンディング各社を7つの視座から横断比較してみた結果、見えてきた真実とは。

それぞれ、是非、ご一読下さい。

それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会い致しましょう。


本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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