ソーシャルレンディングと、楽天証券提供のロボアドバイザー「楽ラップ」の違いを検証

ソーシャルレンディングとは

ソーシャルレンディングは、

  • 資金融資を受けたい、と考える企業(個人事業主の場合も有り)と、
  • 資金を投資し、分配金を得たい、と考える投資家とを、

マッチングする、投資プラットフォームです。

国外(アメリカ・ヨーロッパなど金融先進諸国)では、P2Pレンディング(ピアツーピア・レンディング)として知られ、主に個人が借り手となっていますが、
日本版ソーシャルレンディングの場合は、あくまでも事業者(企業)が融資先となっている点に、特徴があります。

尚、融資、といっても、個人投資家が直接企業に対して資金融資を行うと、貸金業法に抵触してしまうこととなります。
このため、投資家はあくまでも、ソーシャルレンディングが組成するファンドに対して、出資を行う、という立場をとったうえで、
そうして集めた資金(※ソーシャルレンディング事業者は、第一種・第二種金融商品取引業の登録事業者でもあります)を、貸金業の免許を持つソーシャルレンディング事業者が、借り手に対して、融資する、という形態がとられています。

日本国内で営業している、主なソーシャルレンディング事業者としては、

  • SBIソーシャルレンディング(累計融資1,600億円以上。ただし、2021年5月に廃業を発表)や、
  • クラウドバンク(応募総額1,200億円以上)、
  • クラウドクレジット(主に国外向け案件に対して融資)

などがあります。

ソーシャルレンディングの仕組み

ソーシャルレンディングの仕組みを理解するにあたっては、

  • ソーシャルレンディング事業者
  • 借り手企業
  • 投資家

という、3者のステークホルダーの役割・構成を把握する必要があります。

ソーシャルレンディング事業者

貸金業法に基づく許可・登録を取得した、「貸金業者」が、金融商品取引業(主に、第二種金融商品取引業)の登録を追加取得することにより、「ソーシャルレンディング事業者」となります。
ソーシャルレンディング事業者は、自身のホームページを通して、投資家の募集、及び、出資の募集を行います。
そして、特定のファンドに集まった資金を、外部の第三者企業(ただし、グループ企業に対して融資される場合もある)に対して、融資。
その後、融資先企業から、利息と元金を回収し、それぞれを原資にして、投資家に対する分配・償還を実施します。

下記する「投資家」と「借り手企業」とを繋げる役割を果たすのが「ソーシャルレンディング事業者」であり、ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)というスキームの中核を担う存在です。

借り手企業

ソーシャルレンディング事業者から融資を受け、その後、ソーシャルレンディング事業者に対し、利息・元金の返済を行うのが、「借り手企業」です。
なお、ソーシャルレンディング事業者から融資を受ける「借り手」の大半が、企業(法人)ですが、中には、個人事業主に対して融資を行うファンドもあります。
借り手企業の事業内容としては、

  • 不動産事業者
  • 貸金業者(=ソーシャルレンディング事業者から借りた資金を、さらに別の企業等に対して融資する)
  • 債権買取業者

など、様々です。

なお、後述もする通り、ソーシャルレンディング事業者は、あくまでも、借り手企業から回収した利息、そして元金を元手にして、投資家に対する分配・償還を実施します。
逆に言えば、借り手企業の経営が悪化し、ソーシャルレンディング事業者に対する元利金返済を滞らせてしまった場合、ソーシャルレンディング事業者としては、投資家に対する分配原資、そして元本償還原資を確保することが出来ません。

ソーシャルレンディング事業者から融資を受ける「借り手企業」の業績や経営状態は、「ソーシャルレンディング投資」というスキーム全体において、極めて重要な意味を持ちます。

投資家

ソーシャルレンディング事業者のファンドに出資し、ソーシャルレンディング事業者との間で、「匿名組合契約」を締結、当該匿名組合における「匿名組合員」という立場となるのが、投資家です(一方、ソーシャルレンディング事業者は、匿名組合契約の「営業者」という立場となります)。
ソーシャルレンディングに投資する投資家の多くが、一般個人投資家ですが、国内で営業しているソーシャルレンディング事業者の中には、法人名義での口座開設を受け付けているケースもあります。
ソーシャルレンディング投資家の中には、主に税務上のメリット等を目的に、個人名義ではなく、法人名義での投資を行っているケースもあります。

ソーシャルレンディングのメリット

ソーシャルレンディングには、「ソーシャルレンディング事業者」「借り手企業」「投資家」それぞれにとって、下記のようなメリットがあります。

ソーシャルレンディング事業者にとってのメリット

  • 自身の融資プロジェクトのための資金を、自己資金や、間接金融資金(=銀行からの融資)、直接金融資金(=上場企業が、株式市場から調達する資金)から、ではなく、クラウドファンディング経由で調達することが出来る。
  • 自身のリスクを限定的なものにしたうえで、ある程度高リスクな融資先にも、積極的に融資をすることが出来る。
  • 「貸金業」「金融業」というと、古典的だが、そこに「クラウドファンディング(による資金調達)」というエッセンスを加えることで、上場時バリュエーション等において有利な「テック感」を付与することが出来る。

借り手企業にとってのメリット

  • 銀行等の一般的金融機関と比較し、融資審査が柔軟で、創業から間もない企業や、赤字が続いている企業であったとしても、(担保内容等によっては)融資を受けることが出来る場合がある。
  • 借入期間中の、元本分割返済が不要(=借入期間満期の一括返済で可)、とされるケースもあり、不動産事業者など、「融資金を原資にして取得した不動産を、第三者に売却するまで、返済原資は確保できない」というキャッシュフロー構成を持つ事業者にとっては、利便性が高い。
  • 銀行融資等と異なり、(借入金の)資金使途が、「自由」とされているケースがある。
  • ソーシャルレンディング事業者のファンド募集を通じて、自社(借り手企業)のサービス内容やブランドについて、知名度向上を図ることが出来る。

投資家にとってのメリット

  • 1万円~数万円程度の少額から投資を行えるため、まとまった投資用資金を用意することが難しい、若年投資家や、投資初心者でも、比較的気軽に取り組むことが出来る。
  • 年率換算で数パーセント~10パーセント前後程度の、高い期待利回りが提示されている。
  • ファンドの運用期間中の実務(融資先への送金や、貸付債権の管理、融資先のモニタリング、貸付金の回収、担保権の執行等)については、ファンドの営業者(=ソーシャルレンディング事業者)に一任できるため、本業が忙しい会社員や、主夫・主婦の場合でも、投資に取り組みやすい(時間効率が高い)。
  • 投資家登録から、実際の出資に至るまで、ほぼすべての手続きを、インターネットを通じて完結できる。
  • 不動産担保付きのファンドや、上場企業に対して融資を行うファンドもある。
  • 公益性・社会的インパクトに重きを置いたファンドが組成・募集されているケースもある(=投資家の目的に応じて、ファンド選びを行うことが出来る)。

ソーシャルレンディングの問題点

ソーシャルレンディング事業者から資金融資を受ける借り手企業、そして、ソーシャルレンディング事業者の募集するファンドに投資する投資家にとっては、ソーシャルレンディングには、下記のような問題点・リスクもあります。
また、ソーシャルレンディング事業者本人も、下記するように、制度上の困難さなどを抱えています。

ソーシャルレンディング事業者の立場から見た問題点

  • 貸金業の登録や、金融商品取引業の登録、及び、サービスローンチにあたって必要なサイト構築・システム構築費用等のイニシャルコストがかかる。
  • 100パーセント自己資金で融資に取り組む場合と単純比較すると、利益率が低い。
  • 貸金業法が要請する「借り手保護」と、金融商品取引法が要請する「投資家保護」の両立が難しい。例えば、投資家保護の観点からは、融資先情報を開示し、定期的に厳正な融資先モニタリングを実施する必要があるが、借り手保護の観点等から、融資先情報の開示に二の足を踏む事業者も少なくない。

借り手企業から見た、ソーシャルレンディングのデメリット

  • ソーシャルレンディング事業者の課す、貸付金利が高い(ソーシャルレンディング事業者の運営報酬と、投資家への分配利回りの合計。年率換算で10パーセントを超えることも少なくない)。
  • ソーシャルレンディング事業者(いわゆる、ノンバンクの貸金業者)からの借り入れ履歴の存在が、今後の与信において、一定の影響を及ぼす可能性がある。

投資家にとっての、ソーシャルレンディングのリスク

  • 情報透明性:
    国内ソーシャルレンディング業界では、長きに渡り、貸金業法への抵触の懸念から、融資先情報が、「匿名化・複数化」されてきました。
    2019年3月に、金融庁が、「ソーシャルレンディング事業者は、融資先情報を投資家に開示して良い」とする、公的見解を発表して以降は、情報開示に積極的な事業者を中心に、融資先情報公開が相次ぎましたが、2021年に入っても尚、借り手匿名化を継続しているソーシャルレンディング事業者もあります。
  • 中途解約不可:
    国内のソーシャルレンディング事業者の多くが、出資の(ファンド運用期間中の)中途解約を、原則として不可、としています。
    ファンドが運用期間終了を迎えるまでに、社会変動・経済変動などを原因にして、大勢の投資家が、一斉に、出資の中途解約・返金を要請してきた場合、ソーシャルレンディング事業者のキャッシュフローがショートしてしまう恐れがあるため、です。
    なお、ソーシャルレンディングと同じく、クラウドファンディング投資の一種である、不動産クラウドファンディングの場合は、一部の事業者が、出資の中途解約を、敢えて「可」としている事例もありますが、ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)の場合は、そのような事業者は見当たりません。
  • 延滞リスク:
    上述も致しましたように、ソーシャルレンディング事業者は、あくまでも、借り手企業から回収した利息、及び元金を原資にして、投資家に対する利益分配・元本償還を実施します。
    もしも借り手企業が、ソーシャルレンディング事業者に対する元利金返済を延滞した場合、ソーシャルレンディング事業者としては、投資家への分配・償還原資を確保できず、結果として、ファンドの運用期間は(ずるずると)延長し続けてしまうこととなります。
  • 貸し倒れ(デフォルト)に伴う、元本割れのリスク:
    借り手企業の経営破綻・破産手続き等に拠り、ソーシャルレンディング事業者が、これ以上の貸し付け元本回収を「不可能」と判断した場合、ソーシャルレンディング事業者の貸し付け債権は「貸し倒れ(デフォルト)」処理されることとなります。
    この場合、投資家向けの元本償還は、一部しか行われない(=元本割れ)か、最悪の場合は、一切行われない(元本全額が毀損)、ということとなります。
  • 運営会社の不正リスク・行政処分リスク:
    国内ソーシャルレンディング業界の歴史は、かれこれ10数年程度ですが、この間、複数のソーシャルレンディング事業者が、業務運営の不備などを原因として、行政処分を受けています。
    こうした「事業者リスク」の存在は、ソーシャルレンディングならではのリスク・デメリットとして、留意を要します。
  • 投資家間の競争(=クリック合戦):
    一部の人気のソーシャルレンディング事業者が、新たなファンド募集を行う際、投資家からの注目・関心が集まり、同サイトに、投資家からのアクセス・投資申込が殺到するケースがあります(=投資家同士の、クリック合戦の発生)。
  • 税務上の不利益:
    ソーシャルレンディングの場合、あくまでも新種の投資手法であるため、税制上の優遇措置が講じられていません。
    具体的には、投資家が受け取る分配金は、所得分類上、「雑所得」に該当し、かつ、課税制度としては、総合課税の一択、とされています。
    上場株式投資のような申告分離課税が認められていないほか、不動産投資のような損益通算が不可である、という点は、
    ソーシャルレンディング投資家にとって、留意を要するポイントと言えます。

参考:
【2021年6月最新版】ソーシャルレンディングおすすめ10社&危ない3社比較ランキング【投資初心者必見】

楽ラップとは



引用元:楽ラップ

楽ラップは、楽天証券株式会社が運営している、ロボアドバイザーサービスです。
複数の質問に回答するだけで、各投資家別に最適化された運用コースが提案されるほか、毎月の積立にも対応済。
さらに、株式市場の値動きが大きい局面に備えた「下落ショック軽減機能」が提供されている、などの特徴があります。

楽ラップの投資対象

楽ラップでは、複数の投資対象ファンドを通して、

  • 国内株式や、
  • 先進国株式、新興国株式などの外国株式、
  • その他、国内外債券や、REITなど、

幅広い投資対象物へと、分散投資を図ることができるとされています。

楽ラップの運用コース

楽ラップでは、各個人投資家のリスク性向に応じて、下記9つの運用コースが提供されています。

  • 保守型
  • やや保守型
  • やや積極型
  • 積極型
  • かなり積極型

保守的な傾向が強い運用コースほど、ポートフォリオにおける債券の比率が高く、
反面、積極的な運用コースの場合は、株式の占める割合が大きくなる仕組みです。

楽ラップの手数料体系

楽ラップの初期手数料はゼロ円。
運営・管理手数料としては、下記2通りの体系が用意されています。

  • 固定報酬型:0.715パーセント
  • 成功報酬併用型:固定報酬0.605パーセント+運用益の5.5パーセント

楽ラップとソーシャルレンディングの違い・比較

ここからは、ソーシャルレンディングと、ロボアドバイザーサービス「楽ラップ」との相違点などを比較していきましょう。

投資対象

ソーシャルレンディングの場合、投資対象となるのは、融資先への貸付債権です。
投資家への分配の原資は、ソーシャルレンディング事業者(貸金業者)が、自身の融資先から回収した、貸付元利金です。
このようにして、融資債権に投資する以上、融資先からの返済が遅延するなどした場合、投資家への分配にも、当然、支障が生じることとなります。
また、融資先が早期繰り上げ返済を実施した場合、ファンドも早期償還となるケースがあります(=早期償還となった場合、運用期間が従来想定よりも短くなるため、運用益の総額が、当初目論見よりも小さくなる場合があります)。

反面、楽ラップの場合、投資対象となるのは、上掲の通り、国内外の株式や、債権、REITなど。
株式市場の上下動に応じて、運用成績に差が出ることとなります。
ソーシャルレンディングのような貸し倒れリスク(融資先が資金返済を滞らせる等した場合)はありませんが、
市況の急激な悪化などが生じた場合、運用成績が著しく不良となることがあります。

手数料体系

ソーシャルレンディング投資の場合、運用期間中の運用手数料が生じますが、実際の料率は、ソーシャルレンディング事業者によって異なります。
また、各ファンドに掲示されている想定利回りは、ソーシャルレンディング事業者の運用手数料を控除済の料率が記されていることが一般的です。

反面、楽ラップのロボアドバイザーサービスの場合、運用額の多寡に応じて、一定料率の固定報酬、ないしは、運用成果に応じた成功報酬手数料が生じることとなります。


参考:
楽ラップ|公式サイト

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