ソーシャルレンディング投資のビジネスモデルをわかりやすく解説

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約3年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

2019年3月の、金融庁の公的見解公表以来、各ソーシャルレンディング事業者において、借り手情報の開示が進み、透明性向上が加速している(※)、国内ソーシャルレンディング業界。
各個人投資家からの注目も、日に日に高まっているようです。
本寄稿においては、そんなソーシャルレンディング投資の「ビジネスモデル」について、改めて、出来るだけわかりやすく、解説をしてみたいと思います。

(※)一部、依然として、借り手情報開示について進捗の見られない事業者も、存在します。

ソーシャルレンディング投資のビジネスモデル概要を分かりやすく整理すると…

ソーシャルレンディング投資のビジネスモデル概要

※写真はイメージです

”ソーシャルレンディング投資”のビジネスモデルを、あえて簡略化し、そのフローをわかりやすく表現するとすれば、概ね、下記のようになります。

  1. 「資金を借りたい」と考えている、”資金需要者”が、ソーシャルレンディング事業者の元へ、相談に訪れる。
  2. ソーシャルレンディング事業者と資金需要者が話し合い、貸付金利や、期間、担保設定等について、大まかな妥結を得る。
  3. 協議結果に応じて、ソーシャルレンディング事業者が、ファンドを組成し、ホームページ上に公開。投資家からの投資を募集する。
  4. 投資家は、ソーシャルレンディング事業者のウェブサイトを経由し、ファンドに投資申込。出資金を送金し、ソーシャルレンディング事業者との間で、「匿名組合契約」をオンライン締結する。
  5. ファンドに募った資金を、ソーシャルレンディング事業者が、借り手企業(=上掲の、資金需要者)へと、融資する。
  6. 借り手企業は、事前約定に従い、ソーシャルレンディング事業者へと、利息や、元金の返済を行う。
  7. ソーシャルレンディング事業者は、借り手企業から受け取った返済金を原資にして、投資家へと、分配や、償還を行う。

参考:
【2021年9月最新版】ソーシャルレンディングおすすめ10社&危ない3社比較ランキング【投資初心者必見】

ソーシャルレンディングのビジネスモデルのポイント1:お金を貸すのは「投資家」ではない

まず、注意して頂きたいのは、ソーシャルレンディングというビジネスモデルにおいて、「投資家が、借り手企業に対して、直接、お金を貸すわけでは、無い」という点です。
※一般投資家は、貸金業の登録を受けていないので、借り手企業に対し直接的に資金融資をしてしまえば、それは、貸金業法違反に問われる恐れがあります。

投資家は、借り手企業に資金を貸すのではなく、ソーシャルレンディング事業者が組成する、ファンドに対し、投資をする、という立場となります。
そして、借り手企業に対して資金を融資するのは、投資家ではなく、ソーシャルレンディング事業者(=小難しい言い方をしますと、匿名組合の、”営業者”)の仕事です。

ソーシャルレンディングのビジネスモデルのポイント2:投資家とSL事業者との間では「匿名組合契約」を利用する

また、「匿名組合」という言葉も、いささか、耳慣れない単語かもしれません。
ソーシャルレンディングにおいては広く用いられているスキームであり、

  • パススルー課税や、有限責任である点等に、投資家として、メリットはありますが、
  • その反面、営業者の破綻リスク等、看過しがたいデメリットもあります。

こちらについては、下記コンテンツにて、わかりやすく詳説が為されているので、ご覧になってみてください。


参考:
ソーシャルレンディングと匿名組合|ソーシャルレンディング・ラボ


前述した通り、仮に、投資家が、借り手企業に対して、直接、資金融資を行ってしまえば、それは、貸金業法違反に問われる可能性がある行為です。
また、第二種金融商品取引業者が、多数の投資家から資金を集める場合、その契約形態としては、「匿名組合」のほかに「任意組合」もあり得ます。

ではなぜ、一般的な組合契約(任意組合)ではなく、匿名組合契約が用いられるか、というと、もしも、任意組合が借り手企業へと貸付を行う場合、任意組合の財産は、各組合員の共有財産となるため、
「貸金業の登録を受けていない個人投資家が、借り手企業に対して、貸付債権(という財産)を区分所有してしまう」
こととなるため、です。

現に、冒頭にて述べた、金融庁の「ソーシャルレンディング事業者は、投資家に対して、借り手企業の詳細を開示してよろしい」との公的見解においても、その前提条件として、「投資家とソーシャルレンディング事業者の間の契約体系は、匿名組合によるもの」とされています。

ソーシャルレンディングのビジネスモデルのポイント3:SL事業者の分配・償還原資は、借り手からの返済金

また、「(ソーシャルレンディング事業者は)借り手企業から受け取った返済金を原資にして、投資家へと、分配や、償還を行う。」という点についても、気になった方は多いのではないでしょうか。
この点は、ソーシャルレンディング投資というビジネスモデルの弱点のひとつとなりますので、後程詳しく、ご説明いたします。

「ソーシャルレンディング」というビジネスモデルの利点を分かりやすく

「ソーシャルレンディング」というビジネスモデルの利点

※写真はイメージです

まずは、ソーシャルレンディングというビジネスモデルのメリット・アドバンテージの部分から、確認をして参りましょう。
同じく、出来得る限りわかりやすく、詳説して参ります。

投資家目線

ソーシャルレンディング事業者の提示する期待利回りが高い

まず、投資家の立場から見れば、ソーシャルレンディング事業者が各ファンドにて提示している、高い期待利回りは、大きな誘因となります。
無担保・無保証型の、高リスクファンドならば、いざ知らず、国内不動産担保の設定された、比較的保全効能が重視された(より正確には、保全効能が重視されているように”見える”)ファンドの場合でも、年率換算で、3パーセント~5パーセント前後の、高い期待利回りが提示されています。
銀行定期預金等と比較すれば、その利回りは圧倒的であり、多くの個人投資家が、この点に、大きなメリット・アドバンテージを見出していると言えます。
(※なお、銀行の定期預金は、預金保証制度の対象となっており、元本の保証が付与されていることが一般的です。反面、ソーシャルレンディング投資においては、元本保証が付与されることはありません。このように、銀行預金とソーシャルレンディング投資では、その安全性においては、雲泥の差があります。そうした背景事情を考慮せずに、単純な期待利回りのみで、投資を判断するのは、極めて危険な行為です。くれぐれも、ご注意ください)

最低投資額も低く、かつ、オンラインで簡単に投資が行える

また、各ファンドが、1万円程度の少額から、投資できるように設計されている点も、投資家にとっては、ソーシャルレンディング投資のメリットのひとつと言えます。
パソコンやスマートフォンを通して、至極簡単に、投資口座開設や、出資手続きを行える、という点も、然り。
このあたりは、インターネット技術を活用した投資商品として、ソーシャルレンディング投資は、強い利便性を有していると言えます。

借り手企業目線

「ノンバンクの貸金業者」ならではの柔軟さ

借り手企業から見れば、ソーシャルレンディング事業者というのは、端的に、わかりやすく言えば、「ノンバンク」の貸金業者です。
銀行等の伝統的金融機関と単純比較すれば、貸出金利は高いが、その分、融資審査には柔軟性が期待でき、担保掛け目(=担保物の評価額に対する、貸付総額の比率)も、大きなものが交渉され得るでしょう。

貸付条件もフレキシブルに調整してもらえる

また、銀行からの借入とは違い、ソーシャルレンディング事業者からの借入の場合、借り入れ元本部分については、融資期間中の分割返済を求められず、契約満了時の一括返済を認められるケースも散見されます。
この点もまた、企業等の資金需要者から、ソーシャルレンディングが、新たな資金調達手法として関心・注目を寄せられている、大きな要因となります。

ソーシャルレンディング事業者目線での利点とは

ソーシャルレンディング事業者側から見たときに、ソーシャルレンディングというビジネスモデルの最大のうまみは、
「自己資金や、自分が借り手となって銀行から調達した資金ではなく、投資家からクラウドファンディング形式で集めた資金を元手に、融資を実行出来ること」
と言えます。

通常、貸金業者は、自己資金等を元手に、自身のクライアント(借り手)への融資を行いますが、この場合、借り手がきちんと返済してくれない場合、当然、貸金業者自身が、大きなダメージを受けることとなります。
この点、ソーシャルレンディングのビジネスモデルを活用し、投資家から募った投資用資金を元手に融資をすれば、万が一、貸付債権がデフォルト(貸し倒れ)となった場合でも、投資家が損失を被るだけで、ソーシャルレンディング事業者自身の財布は痛みません(もっとも、融資審査やその後のモニタリングに不備があった場合、投資家、及び監督官庁から、ソーシャルレンディング事業者が責められることもあり得ます)。

このため、ソーシャルレンディング事業者としては、従来型の金融機関(銀行や、自己資金で貸付を行っている競合他社)がなかなか手を出せないような、ハイリスク・ハイリターンな融資案件に対しても、積極的に取り組むことが出来るようになります。

ソーシャルレンディングというビジネスモデルの「弱点」

ソーシャルレンディングというビジネスモデルの「弱点」

※写真はイメージです

うまく設計されたビジネスモデルを具備しているように見えるソーシャルレンディングではありますが、いくつか、欠点・弱点があります。
特に、投資家の立場から見たディスアドバンテージについては、投資リスクとして、看過しがたい物がありますので、あらかじめ、十分な留意を要します。

投資家目線から見る、ソーシャルレンディングの難点

まず、投資家の目線から見た、ソーシャルレンディングの、そのビジネスモデル上の、最大の難点は、ファンドの「延滞リスク」と言えましょう。
わかりやすく換言すれば、「投資したお金が、(予定されていた償還日になっても)返ってこない」というケースです。

ソーシャルレンディング・モデルの最大の敵「延滞リスク」とは

上述も致しました通り、ソーシャルレンディング事業者は、投資家と締結した匿名組合契約の定めに則り、各期限までに、投資家に対し、分配や、償還を行うわけですが、その原資は、あくまでも、借り手企業から収受した、返済元利金が充てられることとなります。
このため、もしも、借り手企業が経営難に陥り、借り手企業からソーシャルレンディング事業者への、利息、及び、元金の返済に、遅延が生じた場合、ただちに、ソーシャルレンディング事業者から投資家への分配・償還にも、遅れが発生してしまうこととなります。

この「延滞リスク」について、”可能性論”と侮ることは、絶対に、禁物です。
国内ソーシャルレンディング業界における、ファンドの延滞発生例は、簡単に思い浮かべるだけでも、枚挙にいとまがありません。

上掲した以外にも、複数のソーシャルレンディング事業者・ファンドにおいて、「延滞」というトラブルは実際に発生しており、多くのソーシャルレンディング投資家を悩ませています。

匿名組合の性質上、ソーシャルレンディング事業者の倒産リスクからの隔離(倒産隔離)も難しい

また、ソーシャルレンディング事業者と投資家との間で締結される「匿名組合契約」という契約スキームの性質上、投資家がソーシャルレンディング事業者へと預けた資金については、投資家の財産ではなく、あくまでも、ソーシャルレンディング事業者(=匿名組合の、営業者)の財産として取り扱われることとなります。
このため、万が一、投資資金を預けているソーシャルレンディング事業者が、突如、経営破綻し、破産手続きへと移行してしまった場合、投資家の預託している資金についても、大きく毀損してしまう可能性があります。

中途解約不可、など、流動性上の欠点も見逃せない

そのほかにも、

  • ファンドの途中解約が出来ない(≒出資した資金は、ファンドが最終的な償還を迎えるまで、戻ってこない)
  • 匿名組合の業務執行権は、営業者(=ソーシャルレンディング事業者)が占有しているため、延滞発生時も、債権回収プロセスに投資家が関与することが出来ず、ソーシャルレンディング事業者の対応如何によっては、想定以上の大幅な元本毀損を受忍しなければならない可能性がある

等々、複数の、看過しがたい難点があります。

このように、特に投資家の立場から見た際に、ソーシャルレンディング投資というビジネスモデルには、大きな弱点・留意点、換言すれば、「リスク」があります。
投資家としてソーシャルレンディングに資金を投じる場合、こうした危険性については、十分な留意を行う必要があります。

ソーシャルレンディングというビジネスモデルの利点、難点を理解した上で、適度な投資・付き合いを

本寄稿にて述べて参りました通り、ソーシャルレンディングというビジネスモデルには、固有のメリット・素晴らしさがあります。
その反面、主に「投資リスク」という点において、そのビジネスモデルには、複数の弱点、もろさがあることも、お分かり頂けたものと思います。

もしも、投資家として、ソーシャルレンディングに取り組んで行かれるのであれば、その他、ソーシャルレンディング投資の内包する様々なリスク・デメリットについて、十分に、情報収集・勉強を積まれたうえで、純粋な余剰資金の、ほんの、ごく一部から、少しずつ、投資を進めてみることがよろしいものと思います。
くれぐれも、提示されている高い期待利回りのみに、過度に誘惑されてしまうことなく、あくまでも慎重さを崩さず、まずは勉強がてら、「失っても構わない」と思える程度の少額から、スタートしてみられることを、お薦め致します。

以上、わかりやすさを重視した分、いささか浅薄な(そして、リスクを強調した分、全体的に、暗い…)寄稿文となってしまい、恐縮ではございますが、少しでも、ご参考と為さって頂ける内容と出来たのであれば、うれしいです。

それでは、本寄稿は、ここまで。
拙文に最後までお目通しを頂き、ありがとうございました。

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