インデックス投資は、一括と分割、どっちがいい?
目次
【一括or分割が迷いどころ】インデックス投資とは
資金を、単一の、ないしは、少数の株式銘柄に対し集中投資するのではなく、数百から、場合によっては数千もの銘柄に対して分散投資する「投資信託」を活用することによって、市場の平均値、いわゆる「インデックス」(指数)に対して投資するスタイルを、「インデックス投資」といいます。
インデックス投資のメリット
- 少数の株式銘柄に対してのみ資金を投資する場合と比較し、投資ポートフォリオ全体のリスク(利回りのボラティリティ)を低く抑える、「分散投資効果」が期待できる。
- インデックス投資向けの「パッシブ・ファンド」は、アクティブ・ファンドと比較し、信託報酬等のコストが低廉である場合が多い。また、買い付け手数料無料(ノーロード)、信託財産留保額ゼロパーセント、等、投資家向けに有利な条件を提示する投資信託も多い。
- iDeCo(個人型確定拠出年金制度)や、つみたてNISA、といった、政府の投資支援制度のメリットを、最大限に活用することが出来る(現に、つみたてNISAの対象銘柄の大半は、インデックス・ファンドが占めている)。
- 「日本の株式市場全体」「北米の上場企業全て」等と言った括りで投資を行うことが出来るようになるため、個別の株式銘柄選びの手間暇から解放される。
- 毎月の自動積立投資の設定により、ドルコスト平均法のメリットを活かし、投資信託の取得コストを平均化することが出来る。
インデックス投資のデメリット
- インデックス投資において、投資信託(ETFを含む)の利用はほぼ不可欠だが、投資信託を利用する場合、投資信託の運用会社に対して、「信託報酬」と呼ばれる運用手数料を支払う必要が生じる。また、投資信託が株式を売買する際の売買手数料等についても、間接的に、投資家が負担することとなる。
- インデックス・ファンドを通じ、多数の銘柄へと分散投資することで、確かに、利回りのボラティリティ(リスク)は下げることが出来るが、当然、利回りが大きく上揺れする機会も、放棄することとなる。結果的に、短期で大きく稼ぐことは、不可能となる。
- 個別銘柄投資と違い、投資家自身が、株式の発行会社から、直接、株主優待を受け取ることが出来ない。
- 一部の銘柄の値上がり・値下がりに応じて、資産ポートフォリオ全体のバランスを再調整する「リバランス」を、定期的に実施する必要がある(もっとも、ロボアドバイザー等のサービスを活用すれば、リバランス処理について自動化することが出来る)。
- 投資信託を選ぶ手間暇が生じる(=全く同じインデックスを追随する投資信託でも、運用会社や販売会社によって、信託報酬の料率や、トラッキングエラーの大小が異なるため)。
参考:
インデックス投資は、やめた方がいい?「インデックス投資はやめとけ」と言われる理由とは
インデックス投資は、時間軸で考えた際、一括投資と分割投資、どちらが適しているのか
インデックス投資を始めるにあたって、投資家は、まず、時間軸の観点から見たときに、
- 一括投資を行うのと、
- 分割投資を行うのと、
どちらが適しているのでしょうか。
インデックス投資における「時間軸上の一括投資」とは
インデックス投資において、時間軸上で一括投資を行う、とする場合、投資家は、資金を、分割で逐次的に投入するのではなく、インデックス投資スタートの時点で、投資可能な資金全額を、一括で投入することとなります。
その後、投資信託の分配金等が生じた場合、複利効果を最大化すべく、分配金に関しても漏れなく、投資元本へと組み入れることになりますが、何はともあれ、投資家の初期投資元本ついては、逐次的な分割投資ではなく、一括投資することを想定します。
時間軸上の一括投資のメリット
時間的な分割投資をせずに、投資家の資金を一挙に一括投資することの最大のメリットは、その後、インデックス指数が上昇した場合、獲得しうる値上がり益を最大化できる、と言う点にあります。
仮に、資金を分割投資する場合、その後、インデックス指数が上昇したとしても、初期の最も割安な時期にまとめて投資信託を取得することができず、徐々に投資信託の取得価格が上がっていってしまうこととなります。
これに対して、初期の、投資信託が最も割安なタイミングで、必要な投資信託を一挙に一括で取得することができれば、その後の値上がり益を最大限に享受することが可能となります。
時間軸上の一括投資のデメリット
資金を分割投資せずに一括投資する場合の最大のデメリットと言えるのは、資産の分割投資に伴う、投資信託の取得価格の平均化、と言うメリットを享受できないことです。
資金を一括投資するのではなく、投資信託に対して分割投資する場合、極度に割安な値段で投資信託を獲得するチャンスをみすみす逃すのと同時に、投資信託等の投資資産を割高で取得してしまう、いわゆる高値づかみのリスクを、減らすことが期待できます。
これに対して、資金を一括投資する場合、その後、投資信託が値下がりし、不況が長く継続した場合、高値づかみのデメリットが最大化することとなり、資産評価額が投資した資金元本を上回るまでに、場合によっては数年から数十年単位の、長い時間を要することとなるリスクがあります。
例えば、日経平均がバブル崩壊する直前に、日経平均と言うインデックスに対して連動する投資信託に対して資金を一括投資した投資家がいたとした場合、この投資家の資産評価額は、その後30年を経過した今でもなお、元本割れしている状態を継続していることとなります。
これがインデックス投資における一括投資の最大のデメリットです。
インデックス投資における「時間軸上の分割投資」とは
インデックス投資において、資金を一括投資するのではなくて、投資可能な金額を、毎月月数万円程度ずつに分けて、分割投資していくのが、いわゆる分割投資のスタイルとなります。
実際に、国内のインデックス投資家の大半は、この分割投資のスタイルをとっています。
初期のインデックス投資額は数万円から数十万円程度にとどめ、その後、毎月の給与から、数万円程度の積み立て投資を設定している、と言う投資家が、日本の国内インデックス投資家の大半を占めます。
参考:
「月10万」から始めるインデックス投資の魅力とは|iDeCo&つみたてNISAフル活用で、まずは月10万円の予算消化を目指す
時間軸上の分割投資のメリット
インデックス投資において資金を一括投資することなく、時間軸上で分割投資することの最大のメリットは、ドルコスト平均法のメリットを生かし、投資信託の取得価格を平均化することができる、と言う点にあります。
ドルコスト平均法によって、投資信託の値段が安い時にはたくさんの投資信託を仕入れ、逆に投資信託が値上がりしているときには、少数の投資信託を取得することによって、長期的に見た際に、投資信託の取得単価そのものを、平均化する効果が期待できます。
これによって、資産を一度に安く取得することができなくなりますが、その反面、極端な高値で資産を取得してしまう、いわゆる「高値づかみ」のリスクを最小限にとどめることができます。
時間軸上の分割投資のデメリット
インデックス投資において、資産を時間軸上で分散投資していく場合の最大のデメリットは、投資可能資産の全額が運用に回るまでの間に、場合によっては数10年以上の長い期間を要することとなる、と言う点です。
例えば、1,000万円の投資可能資金を持っている投資家が、毎月5万円ずつ、資金を積み立て分割投資していく場合、年間の投資額は60万円となり、最終的に1,000万円全額を投入し終わるまでには、15年以上もの長い年月がかかることとなります。
資産運用に回していない資金に関しては、当然、資産運用で増える事はありませんから、その分、機会損失が生じていることとなります。
また、相場の高値安値を見抜く能力を持っている投資家においては、投資信託が安値である時期に、まとめてリスク資産を仕入れることができない、と言う点は、大きなデメリットとして感じられるでしょう。
インデックス投資は、「投資対象」を考えた際、一括投資と分割投資、どちらが適しているのか
インデックス投資において、一括投資と分割投資の、それぞれのメリットデメリットを考える場合、上記したような時間軸上の分散とは別に、投資対象としての一括投資、分割投資に関しても、ごく頻繁に議論の対象となります。
例えば、インデックス投資において、米国株式市場のインデックスに対してのみ、全資産を集中的に投資する、と言う考え方は、いわゆる一括投資の考え方になります。
これに対して、
- 米国株式インデックスのほかに、
- 米国を除く先進国の株式インデックスや、
- 先進国の債券インデックス、
- 新興国の債券インデックス、
- コモディティー関係のインデックス、
- 不動産リート関係のインデックスなどに対して、
資産を分散して投資する考えは、分割投資と呼ばれます。
投資対象一括投資の利点
インデックス投資において、投資対象に対する一括投資をする場合、基本的には、米国の株式に対して、一括投資を行う、とする人が多いでしょう。
この場合、米国株式インデックスは、数あるインデックスの中で、最も期待利回りの高いインデックスの1つと言われていますから、その他の資産クラスに対して資産を分割投資することなく、あくまで最も利回りの高い子インデックスに対し資産を一括投資することにより、ポートフォリオの期待利回りを最大化することができる、と言うメリットがあります。
また、様々なアセットクラスに対し資産を分割投資する場合と比較して、自分が投資しているアセットクラスが1つのみである場合、その情報・状況の把握等が容易である、というメリットもあります。
投資対象一括投資の注意点
このように、様々な資産クラスに対して資金を分割投資するのではなく、単一の資産クラスに対して一括投資する場合の、最大のデメリットは、その分、ポートフォリオのボラティリティー(リスク)が極めて大きくなる、と言う点です。
そもそも、インデックス投資において、資産を複数の資産クラスに対して分割投資する最大の未来は、それぞれの資産クラスの値動きが逆行することによって、ポートフォリオの値動きが平均化されることです。
資産を単一の資産クラスに対して一括投資する場合、この動きが失われますから、当然、ポートフォリオ全体の値動きは、上下に大きくなります。
また、単一の資産クラスに対して資金を一括投資する場合、その資産クラスの評価額が、長期にわたって低迷した場合、ポートフォリオ自体が、場合によっては数十年も長きにわたり、元本割れした状態となることが懸念されます。
また、一括投資の対象としている資産クラスが、その他の資産クラスと比較して、高成長を記録することができなかった場合、世界経済全体を大きく成長しているにもかかわらず、その投資家の投資ポートフォリオだけが、「1人負け」しているような状態となることも考えられます。
これは、バブル崩壊後の現代に至るまで、日本株のみに対して投資している投資家全般に関して言えることでもあります。
投資対象分割投資の利点
上記のようにして、投資対象を分散せずに、資産を一括投資する場合と比較して、投資対象資産を複数化し、分割投資する場合のメリットとしては、様々な資産クラスに対して、資金を分割投資することによって、ポートフォリオ全体のリスクを、標準化する効果が指摘できます。
特に、互いの相関係数が小さい資産クラスに対して、資産を分割統治することによって、互いの値動きの逆行により、ボラティリティーがある程度低く保たれる効果が期待できます。
また、様々な資産クラスに対し資金をしっかりと分割投資しておくことによって、単一の資産に対して一括投資する場合と比較し、様々な国と地域の経済成長を取り逃しづらいと言うメリットもあります。
投資対象分割投資の留意点
資金を複数の資産クラスに対して分割投資する場合のデメリットとしては、昨今、経済のグローバル化と、マルチアセットポートフォリオ運用の一般化によって、以前のようには、各資産クラスの相関係数が小さくなく、仮に資金を複数の資産クラスに分割投資したとしても、昔のような分散投資効果が得づらくなってきている、と言う点が挙げられましょう。
例えば、数十年前の時点では、日本株と米国株とは、強い逆相関の関係にありましたが、今では、米国株が上がれば日本株が上がる、逆に米国株が下がれば日本株も下がる、といった具合に、違いの相関係数が極めて高いのが実情です。
また、株式と債券の間柄に関しても、かつては逆相関と呼ばれる時期が長くありましたが、昨今では、逆相関の時期と正相関の時期とが交互して現れるような傾向があり、昔のように分散投資効果を得にくくなっていると言われています。
資金を一括投資する場合と比べて、様々な資産クラスに分割投資する場合、それを投資家自身の手で行えば、多少の手間暇がかかりますし、バランス型の投資ファンドを利用すれば、その分、多少の投資信託信託報酬を上乗せ負担する必要があります、こうした追加コストにもかかわらず、分散投資によるリスク手順効果を得られない、と言うことであれば、資金の分割投資のメリットは、大きく揺らぐ事となります。
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