インデックス投資は、最強なのか|「インデックス投資最強説」支持者&懐疑派、それぞれの論点を整理する
インデックス投資が「最強」と言われる理由とは
多数銘柄分散投資によるリスク低減効果
インデックス投資の場合、単一の、ないしは、少数の株式銘柄へと資産を集中的に投資するのではなく、数百から、場合によっては数千もの銘柄に対して分散投資する「投資信託」を活用することにより、幅広い銘柄への分散投資を実現します。
仮に、個人投資家が、自力で、同じレベルの分散投資を行おうとする場合、それぞれの株式の最低取得価格等を考慮に入れると、莫大な投資コストがかかることとなり、現実的ではありません。
その点、インデックス・ファンドを利用すれば、一般的な個人投資家でも、プロの機関投資家並みの分散投資が実現できる、と言う点は、投資信託を用いたインデックス投資の、大きなメリットといえます。
また、数百から数千もの銘柄へと、資産を分散投資することによって、それぞれの個別の株式銘柄が抱える、非システマティック・リスクについては、十分に、これを排除することができます。
例えば、単一の株式銘柄に対して投資している場合、不祥事やスキャンダル、同業他社の新製品開発などによって、保有している株式銘柄の価値が、紙屑同然となってしまうこともあり得ますが、十分な数の分散投資を行っていれば、こうした、個別株式銘柄特有のリスクに関しては、一定程度排除する効果が期待できます。
※しかしながら、市場全の独自リスク、すなわち、市場のシステマティック・リスクそのものに関しては、完全に排除することはできない。と言う点に注意が必要です。
複数の資産クラスへの分散投資も簡単
インデックス投資の場合、複数のインデックス・ファンドに対して投資する、ないしは、バランス型の投資信託を活用することによって、複数の資産クラスに対して、資産を分散投資することが容易に可能となります。
投資信託の活用によって、各銘柄の非システマティック・リスクを無効化できる点は、上述した通りですが、さらに、異なる資産クラスに資金を分散投資することによって、各資産クラスごとのシステマティック・リスクについては許容しつつも、それぞれの資産クラスごとの値動きの逆行によって、ポートフォリオ全体のリスクをできるだけ低く保つ効果が期待できるとされています。
また、様々な国と地域の資産クラスに対して、資金を分散投資することによって、特定の国と地域の経済が急激に発展した場合も、その果実を取り残してしまうリスクを、最小化する効果が期待できます。
参考:
インデックス投資における「アセットアロケーション」とは
積立投資設定によって時間リスクも分散
インデックス投資の場合、楽天証券やSBI証券、マネックス証券等といった、ネット系の証券会社を活用して、投資信託を取得することが一般的です。
また、これらのネット系の証券会社の場合、毎月100円から数百円程度の小額から、自動の積み立て投資を設定することが可能です。
定期的な自動積み立て投資によって、実質的に、資金を一括で投入するのではなく、時間軸上に分散して少しずつ投下することにより、ドルコスト平均法のメリットを生かして、投資信託の取得単価を平均化する効果が期待できるとされています。
例えば、毎月同額の積み立て投資を行う場合、
- 投資対象とする投資信託の価格が安いときには、投資信託を多く買い、
- 逆に、投資信託が値上がりしているときには、少なく買う、
というトレードが自動的に執行されます。
こうした取引を積み重ねていくことによって、投資信託の取得単価を平均化し、ひいては、極端な高値で投資信託を取得してしまうリスクを軽減する効果が期待されています。
複利効果の最大化
インデックス投資に用いられる、パッシブ型ファンドの中には、投資家への利益分配を行わない、無分配型の投資信託が、複数提供されています。
こうした無分配型の投資信託を利用すれば、分配金への課税によって、複利効果が制限されるリスクが最小限に留まるため、複利メリットを最大限活用することが可能となります。
なお、分配を行う投資信託の場合は、ネット証券会社やロボアドバイザーによっては、分配金の自動的な再投資を行うサービスを提供しているケースもあります。
この場合、一定の複利効果が期待できますが、再投資されるのは、あくまでも、課税後の分配金であるため、無分配型の投資信託と比較すると、複利効果は限定的なものとなります。
iDeCoやつみたてNISAが最大限活用できる
インデックス投資の場合、イデコ、すなわち、個人型確定拠出年金制度や、つみたてニーサといった、政府の投資支援制度・資産形成制度を、最大限に活用して投資することが可能です。
例えば、積み立てニーサの場合、投資対象とできるのは、金融庁が認定した投資信託のみ、とされていますが、その大半は、インデックス指数に連動する、パッシブ型のファンドが占めています。
また、iDeCoの場合でも、投資家がイデコ口座で取得できるのは、各証券会社が取り揃えた、少数の投資信託に限定されますが、同じく、その投資信託の大半は、インデックス・ファンドが占めています。
IDeCo口座を利用して投資を行えば、毎月の拠出金が所得控除されるという節税メリットがあり、仮に、投資運用の成績が一時的に悪くとも、節税によって、十分なトータルメリットが狙える、という利点があります。
また、積み立てた資産の受け取り時にも、公的年金等控除、ないしは、退職金所得控除が利用できるため、同じく、税制面での優遇を受けることができます。
さらに、積み立てニーサの場合であれば、最長で20年間にわたり、積み立てニーサ口座内で購入した投資信託の値上がり益や、分配金に関して、非課税で運用することが可能となります。
世界経済の長期的な成長に期待して投資を行うインデックス投資家にとっては、積み立てニーサを活用しないという選択肢は、現実的ではありません。
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コスト面でも、インデックス投資は優遇されている
インデックス投資を行う場合、投資信託を利用する事は基本的に不可欠であり、投資信託を利用する場合は、信託報酬や、購入時手数料、信託財産留保額、などといったコストが生じることとなります。
しかしながら、インデックス投資に活用されるパッシブ型ファンドの場合、アクティブ型の運用を施行するファンドと比較すると、信託報酬、すなわち運用手数料の両立が、圧倒的に安いと言うメリットがあります。
また、インデックス投資への人気の高まりに応じて、投資信託の運用会社、並びに、販売会社の間での競争が激化しており、これに伴い、買い付け手数料を無料とするノーロード型の投資信託や、解約時の支出が不要となる、信託財産留保額0%ファンドなどが増えてきており、投資家にとっては有利な環境が整いつつあります。
※なお、投資信託を利用する場合、上記のようなコストのほかに、投資信託の運用会社が株式を売買する際の手数料や、投資信託の監査、決算費用などについても、投資家が間接的に負担する必要がありますが、これらのコストに関しても、アクティブ型ファンドと比較すれば、インデックス投資に用いられるパッシブ型ファンドは、比較的割安であると言われています。
インデックス投資=最強説への懐疑論
投資信託へのコスト負担
インデックス投資を執行する場合、投資家自身が、数百もの銘柄を個人で取得・保有することは困難であるため、投資信託を利用することが一般的です。
しかしながらその場合、投資信託を保有するための信託報酬コストの問題は、避けて通ることができません。
一説によれば、多数の銘柄を保有することによる分散投資効果そのものは、保有銘柄が50銘柄から60銘柄に達した時点で、頭打ちになる、と言われています。
投資信託の多くは、数百から数千もの銘柄に対して、資金を分散投資しますが、銘柄ごとの非システマティック・リスクの排除、と言う観点からは、それほど多数の銘柄を保留せずとも、50銘柄から60銘柄程度を保有しておけば充分である、とする言説もあるわけです。
仮に、投資家自身が50銘柄から60銘柄程度の株式を保有する場合、確かに、その取得時には、それなりの初期費用が必要とありますが、その反面、株式を長期的に保有している限りにおいては、特段のランニングコストは発生しません。
それどころか、保有期間中は、保有している銘柄からの株主優待を受け取ることができるなど、様々なメリットが期待できます。
こうした点から、ベテラン投資家の中には、わざわざ投資信託を保有して信託報酬コスト支払うくらいなら、自分で数十銘柄を保有し運用した方が得策である、と主張する投資家も少なくありません。
参考:
インデックス投資は、やめた方がいい?「インデックス投資はやめとけ」と言われる理由とは
世界経済の長期成長説には、疑問の声も
インデックス投資は、基本的に、世界経済が、今後とも、長期的に、右肩上がりの成長を続けていく、という前提に基づいた投資手法といえます。
確かに、直近の数十年に関しては、世界経済は、目覚ましい発展を遂げました。
しかしながら、今後数十年、ないしは数百年を考える際に、世界経済が同じように長期的な成長を記録し続けていけるか、どうかに関しては、疑問視する向きもあります。
特に重大なリスク要因と見られているのは、人口減少です。
世界経済の成長は、基本的に、各国のGDPの伸びと連動しており、そしてGDPの成長は、各国の領土、および人口の伸びと、強い相関関係があります。
しかしながら、先進国を中心に、今後数年から数十年の間に、本格的な人口減少社会へと突入することがわかっています。
人口が減少すれば、当然消費は減退することとなり、技術革新によってどれだけ生産性が上がっていったとしても、GDPの伸びは限定的なものとなることが予想されています。
こうした中、インデックス投資家が投資対象とするような様々な指数(S&P500指数やダウ工業平均株価、日経平均、トピックスなど)が、今後、最高値更新を続けていくことができるのかどうかは、疑問視されています。
インデックス投資はバブルを助長する、との声も
インデックス・ファンドに対して投資する投資家の多くは、そのインデックス・ファンドがポートフォリオに組み入れている個別企業銘柄ごとのファンダメンタルズ等について、詳しい分析をしないことが一般的です。
そもそもインデックス・ファンドの場合、数百以上もの銘柄に資産を分散投資することが一般的ですから、上位保有銘柄だけに絞ったとしても、各企業の業績やファンダメンタルズを正確に把握する事は、一般的な個人投資家にとっては、原理的に不可能といいます。
すなわち、インデックス・ファンドに対して投資している投資家の多くは、そのインデックスに含まれる企業群の業績には全く無関係に、間接的にではありますが、その企業の株式を取得、保有している、と換言することができます。
業績やファンダメンタルズに無関係に株が買われる状態というのは、株式市場の効率性の観点からは、決して好ましいことではありません。
インデックスに含まれているから、と言うだけの理由で、業績を伴わずに企業の株式が買われ、その株価が高値を更新するなどした場合、それは一種のバブルともいえます。
何らかの要因で、不当に高い株価が調整局面を迎えた場合、影響が連鎖すれば、一気にバブルが崩壊するリスクも秘められていると言えます。
インデックス投資の場合、リバランスの実施の手間がかかる
インデックス投資を行う場合、投資家が当初設定したアセット・アロケーションが、その後の各銘柄の値動きによって、少しずつ、崩れてきてしまうことがよくあります。
このバランスの崩れを、そのまま放置すると、
- リスクをさほど取るべきでは無いはずの投資家が、過大なリスクを取った資産運用をしてしまったり、
- 逆に、積極的にリスクをとっていくべき投資家が、不必要なほどに慎重な資産運用してしまう、
などという結果を生む可能性が生じます。
こうしたリスクを回避するために、インデックス投資においては、定期的に(頻度は投資家によって様々ですが、1年に1度、などとする投資家が多いようです)ポートフォリオの再調整、すなわち、リバランスを実施する必要があります。
リバランスは基本的に、
- 値下がりしてしまっている資産クラスの買い足しか、
- 値上がりしている資産クラスの売却によって実施することとなりますが、
値下がりしている資産クラスを買い足す場合、いつ、どの程度のボリュームを買い足すか、投資家にとって難しい判断を迫られることとなる他、逆に、値上がりしている資産クラスを売却する場合、含み益の実現によって、課税関係が生じてしまうケースもあります。
こうした点に留意しながら、リバランスを実施する事は、特にインデックス投資初心者にとっては、ある程度ハードルの高いことと言わざるを得ません。
このため、インデックス投資家の中には、リバランス処理を自動化すべく、ロボアドバイザー・サービスを活用して投資に取り組む人も多くいますが、その場合、インデックス・ファンドへの信託報酬のほかに、ロボアドバイザー運用会社に対する運用手数料支払いが生じることとなります。
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