SBIソーシャルレンディングが出資金償還及び分配の遅延を発表|3月15日支払い予定分の一部
ソーシャルレンディング・サービス「SBIソーシャルレンディング」を運営する、SBIソーシャルレンディング株式会社(東京都港区六本木1-6-1 泉ガーデンタワー14F。以下、SBIソーシャルレンディング社)は8日、自身のホームページを通じて、3月15日に予定していた、投資家向けの元本償還、並びに利益分配金のうち、一部について、支払い遅延が生じることが確定した旨を明らかにした。
今回支払い遅延が生じるファンドは、SBIソーシャルレンディングが先月、「貸付先に重大な懸案事項が生じている可能性が認められた」とした、複数のファンドに含まれる。
SBIソーシャルレンディングとしては、「投資家の皆様の保護を最大限に行うため、対象ファンドの未償還元本の償還等を含めた対応について引き続き鋭意検討を進めて」いるという。
参考:
SBIソーシャルレンディングが第三者委員会設置|貸付先の事業運営に重大な懸案事項発生か
SBIソーシャルレンディングとは
引用元:SBIソーシャルレンディング
SBIグループ傘下、SBIソーシャルレンディング株式会社が運営。
2021年2月末時点での累計融資実績は、1,693億円強。融資残高は420億円以上。投資家登録完了数は6万1千人強。いずれの数値においても、国内のソーシャルレンディング業界を代表する事業者のひとつといえる。
2019年7月には、富士キメラ総研「決済関連市場調査」のクラウドファンディングマーケットシェア2018年実績で、トップシェアとなった旨を明らかにした。
投資家が、原則としていつでも、1万円という少額から投資申込を行うことができる、常時募集型ファンドなど、複数の人気案件・ファンドシリーズを擁する。
2019年8月下旬には、東証マザーズ上場の霞ヶ関キャピタル株式会社などと、アパートメントホテル開発における業務提携を行った旨を明らかにした。
ソーシャルレンディングにおける支払い遅延とは
ソーシャルレンディングの仕組みをフローで表すと、下記のようになる。
- 資金需要者が、ソーシャルレンディング事業者に対し、融資の申し込みを行う。
- ソーシャルレンディング事業者が、上記資金需要者に対する貸付を行う資金を募るため、ファンドを組成・募集する(金融商品取引業)。
- 投資家が、ソーシャルレンディング事業者のHPを通して、上記ファンドに、出資申込を行う。
- ソーシャルレンディング事業者は、募った資金を原資にして、資金需要者(借り手)に対し、融資を行う(貸金業)。
- 借り手は、ソーシャルレンディング事業者に対し、元金・利息の返済を行う。
- ソーシャルレンディング事業者は、借り手から回収した、元金、並びに、利息を、原資にして、出資者に対して、元本の償還や、分配金の支払いを行う。
上記フローにもある通り、ソーシャルレンディング事業者から出資者への分配・償還の原資は、いずれも、ソーシャルレンディング事業者が融資先から回収した元利金。
このため、借り手からソーシャルレンディング事業者への元利金返済が遅延した場合、必然的に、ソーシャルレンディング事業者から出資者への元本償還・利益分配にも、遅れが生じてしまうこととなる。
なお、投資家がソーシャルレンディング事業者との間で締結している、匿名組合契約は、ファンドの運用期間中、投資家側からの中途解約が出来ない。
このため、ファンドの元本償還が遅延すると、ファンドの運用期間もそれに応じて伸長し、その間、投資家の出資元本については、ファンドに拘束され続けることとなる。
ソーシャルレンディングにおけるデフォルト(貸し倒れ)とは
融資先からの返済に遅延が生じると、ソーシャルレンディング事業者(資金の貸し手)は、当該借り手に対する融資残高の一括回収に乗り出す(=借り手側が、期限の利益を喪失する)。
場合によっては、担保権を執行し、担保権が設定された不動産の換価等のプロセスを進めるが、いずれの手法を講じても、貸付金残高の回収が見込めない場合、ファンドの貸付債権は、デフォルト(貸し倒れ)処理されることとなる。この結果、投資家の出資元本について、毀損(元本割れ)が生じる。
デフォルト処理が確定した場合、投資家は、毀損した元本額について、当該年度のソーシャルレンディング投資において生じた、損失として処理できる(=他のソーシャルレンディング事業者や、ソーシャルレンディング・ファンドから受け取った分配金利益と、損益通算できる)。
反面、デフォルト処理が為されず、「延滞中」の状況が維持されると、上記の損金処理も出来ないこととなる。
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