オーナーズブック(OwnersBook)の利回りを、過去のソーシャルレンディングファンド100件から徹底調査致しました。

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

まず、オーナーズブック(OwnersBook)の投資利回りはどの程度なのか

オーナーズブック(OwnersBook)の利回りって、どのくらいなんでしょう?

下記の要領にて、オーナーズブック(OwnersBook)の不動産担保付きファンドからデータを収集のうえ、計算を行いました。

  • 計算対象:
    2018年5月7日時点までに組成・公開された、オーナーズブック(OwnersBook)の、不動産担保付きファンド100件分の投資利回り情報を、収集・計算致しました。
  • 利回り数値の収取:
    満期償還や、期限前償還が完了しているファンドについては、予定利回りではなく、確定利回りを、投資利回り計算上の元データとしました。
  • 利回りの計算方法:
    貸付・運用の期間はファンドにより様々ですが、利回りは一律、年換算にて表記されており、本記事における計算も、これに倣っております。

オーナーズブック(OwnersBook)の不動産担保付きファンドの投資利回りの【平均値】

今回計算対象となった、オーナーズブック(OwnersBook)の全100ファンドの利回り(1年換算)の平均は、5.78パーセントでした。

オーナーズブック(OwnersBook)の不動産担保付きファンドの投資利回りの【最大値】

今回計算対象となった、全100ファンドのうち、最も1年換算利回りが高かったのは、

  • 品川区オフィス第2号ファンド第1回
    https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1036/
  • 品川区オフィス第2号ファンド第2回
    https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1037/

上記の2ファンドでした。
いずれのオーナーズブック(OwnersBook)ファンドも、1年換算で、14.6パーセントという、素晴らしい利回りでした。

オーナーズブック(OwnersBook)の不動産担保付きファンドの投資利回りの【最低値】

今回計算対象となった、全100ファンドのうち、最も1年換算利回りが低かったのは、

  • 千代田区オフィス第1号ファンド第1回
    https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1095/
  • 新宿区オフィス第2号ファンド第1回
    https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1066/
  • 新宿区オフィス第2号ファンド第2回
    https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1070/
  • 新宿区オフィス第2号ファンド第3回
    https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1080/

上記の4ファンドです。
いずれのオーナーズブック(OwnersBook)ファンドも、1年換算で、4.0パーセントという利回りでした。

オーナーズブック(OwnersBook)の不動産担保付きファンドの投資利回りの【分布】

今回計算対象となった、全100ファンドを、利回りで分けてみると、

  • 4.0パーセント以上、5.0パーセント未満→32ファンド
  • 5.0パーセント以上、6.0パーセント未満→47ファンド
  • 6.0パーセント以上、7.0パーセント未満→9ファンド
  • 7.0パーセント以上、8.0パーセント未満→1ファンド
  • 8.0パーセント以上、9.0パーセント未満→1ファンド
  • 9.0パーセント以上、10.0パーセント未満→4ファンド
  • 10.0パーセント以上→6ファンド

上記のようになりました。

100件中、79件のオーナーズブック(OwnersBook)ファンドが、利回り4パーセント~6パーセントの範囲におさまっていることが分かります。

オーナーズブック(OwnersBook)の利回りは、他のソーシャルレンディング事業者のファンドの利回りと比べて、高いのか

オーナーズブック(OwnersBook)の利回りは、決して高いわけではありません。

上記のように確認してきました、オーナーズブック(OwnersBook)ファンドの利回りは、他のソーシャルレンディング事業者と比べて、正直、決して高いとは言えません。
わたしは、本記事執筆本日現在、23社のソーシャルレンディング事業者に分散投資をしており、70件以上のファンドに投資をして参りましたが、これまで投資をしてきた全ファンドの利回り(年換算)の平均は、7パーセントを超えています。
オーナーズブック(OwnersBook)ファンドの利回り平均は、先ほど確認しました通り、5.78パーセントでしたので、他のソーシャルレンディング事業者と比べると、少々、利回りが低いことが分かります。

オーナーズブック(OwnersBook)の利回りが、他のソーシャルレンディング事業者と比べて、保守的な理由

ややコンサーバティブな利回りの根拠は、オーナーズブック(OwnersBook)ならではの担保設定にありそうです。
オーナーズブック(OwnersBook)の場合、他のソーシャルレンディング事業者と比べて、資金貸付時の担保設定に、大きな特徴があります。

ファンドが設定する担保権の内容は、ソーシャルレンディング事業者によって、そして、同じソーシャルレンディング事業者の提供するファンドでも、委細は各ファンドによって、実に様々です。
資金の借り手企業が保有する、何らかの債権(例えば、工事代金債権)に対して、質権を設定するファンドもあります。
関連会社が連帯保証を行う、というファンドもあります。
中には、無担保・無保証タイプのファンド、というのも、確かに存在します。

そうしたなか、オーナーズブック(OwnersBook)の場合は、必ず、借り手企業が保有する不動産に対して、抵当権を設定します。

日本の場合、伝統的に、金融機関による融資、といえば、その見返りに、不動産を担保に入れる、というのが、通例でした。
また、オーナーズブック(OwnersBook)を運営する、ロードスターキャピタル株式会社(東証マザーズ上場)は、元来、不動産領域に非常に強い事業者です。

債権に質権を設定するタイプのファンドや、関連会社が連帯保証するタイプのファンドと比べて、コンサーバティブ(保守的)な担保設定を実現しているソーシャルレンディング事業者だからこそ、その分、どうしても、オーナーズブック(OwnersBook)ファンドの投資妙味としての”利回り”は、低く抑えられがちです。

オーナーズブック(OwnersBook)の投資是非判断において、利回りばかり注目するのは不合理

オーナーズブック(OwnersBook)に投資するときは、利回り以外の情報にも注意を。

オーナーズブック(OwnersBook)の各ファンドへの投資是非の判断においては、利回りばかりに注目するのではなく、

  • 利回りと、
  • 保全(担保)の状況

の両方に注意を払い、バランスを見たうえで、他のファンドと比べ、相対的に有利性のあるファンドを選び抜いていくことがポイントとなります。
オーナーズブック(OwnersBook)での投資判断において、利回りばかりに注目するのは禁物です。
もっとも、これは、なにもオーナーズブック(OwnersBook)に限った話ではありません。
というより、ソーシャルレンディング投資に限った話ですら無く、投資活動全般において、常に求められるバランス感覚、といえます。

オーナーズブック(OwnersBook)投資では利回りよりも【ローンタイプ】に注意

担保権を設定する不動産に対して、オーナーズブック(OwnersBook)が、

  • 先順位なしの第一順位抵当権者(=この場合、ローンタイプとしては、シニアローン、となります)なのか、
  • 第一順位抵当権者に対して劣後する、第二順位以降の抵当権者なのか(=この場合、ローンタイプとしては、メザニンローン、となります)なのか、

という点には、大きな注意を払いましょう。
第一順位抵当権者は、第二順位以降抵当権者に対し優先して、自身の債権を回収することが出来ます。
「万が一」のときの保全効力に、「シニアローン」なのか、「メザニンローン」なのか、という点は、大きな違いをもたらしますので、注意して確認しましょう。

※実際の債権回収の現場では、いくら不動産に担保設定をしていても、自身よりも優先する債権者、すなわち、第一順位抵当権者が別途、存在する場合、
「第一順位抵当権者が自身の貸付債権を回収し終わった後の、おこぼれ程度しか、(第二順位以降の抵当権者は)回収できなかった…」などという話が、ざらにあります。
オーナーズブック(OwnersBook)投資の場合、表面的な利回りよりも、この「ローンタイプ」に注目することのほうが、よほど大切、と、私は考えています。
くれぐれも、留意しましょう。

オーナーズブック(OwnersBook)投資では利回りよりも【掛け目】に注目

続いて注目したいのが、「貸付額 / 担保評価」の割合です。
担保評価額1億円の不動産に対して、先順位なしの第一順位抵当権を、7,000万円分設定し、同額を貸し付ける場合、「貸付額 / 担保評価」の割合は、「7000万円 / 1億円」=70パーセント、となります。
この「掛け目」は、非常に重要です。
勿論、担保余力と比べて、貸付額が小さければ小さいほど、安全性の高い融資、といえます。
一般的には、例えば、銀行による融資の場合、抵当権を設定する不動産の担保評価額の7割までしか、貸し付けない、などと言われています。

なぜ、そのように、「担保評価額と比べて、低い貸し付け額」とすることが、重要なのでしょうか。
それはひとえに、「いざ」という時に担保権を実行し、担保物である不動産を売却・換価する際、どうしても、多少の(時として、大幅な)ディスカウントを強いられるケースが多いから、です。
担保権者としては、自身の債権を、出来るだけ早く、しっかりと回収したい、というモチベーションが働きます。
その実情を知っている買い手側が、(極言すれば、足元を見て)安く買い叩こうとしてくるため、必然的に、ディスカウントが発生するのです。

いざ、取り急ぎ、担保権が設定されている不動産を売却し、換価しなければならない、という事態に直面した際に、余裕をもってディスカウントに対応ができるよう、そもそもの「掛け目」を低めに制限し、担保不動産の評価額と比較し、少な目の金額の貸付、としているファンドを選ぶことで、比較的安心感の大きい投資判断を行う事ができるでしょう。
多少利回りは低くとも、この「掛け目」において有利性のあるオーナーズブック(OwnersBook)ファンドを選ぶことが、大切です。

オーナーズブック(OwnersBook)投資では利回りよりも【市場相場】を読み解く

オーナーズブック(OwnersBook)の優れた特徴として、担保不動産に関して、(他のソーシャルレンディング事業者と比較し)質・量ともに、かなり充実した情報を、ファンド詳細ページにて、掲載してくれています。
具体的には、下記のような情報が、比較的しっかりと、明記されているケースが多いです。

  • 担保不動産の所在地。
    交通利便性に関してコメントがある場合も。
  • 担保不動産の物件タイプ
    例:マンション、戸建て、オフィスビル、等。
  • (賃貸・収益物件の場合)
    担保不動産の賃貸借の状況
  • 担保不動産の評価額
  • その他付帯情報

これだけ情報が記載されていると、一般的な不動産情報サイトを使用して、オーナーズブックの物件評価額の妥当性について、ある程度の確認を行うことが可能です。

前述も致しましたように、わたしは現在、23社のソーシャルレンディング事業者に分散投資をしており、それらのソーシャルレンディング事業者の中には、オーナーズブック以外にも、不動産担保付きのファンドを提供している事業者が、複数、存在します。
ただし、オーナーズブック(OwnersBook)ほど、担保不動産に関して詳しい情報を、ファンド詳細ページに掲載している例は、稀です。
(※極端なケースでは、担保権を設定する不動産の、外部評価額すら、記載していないソーシャルレンディング事業者も、ありますから…)

そうしたなか、オーナーズブック(OwnersBook)の、担保不動産に係る情報の開示姿勢については、相対的に、高く評価できる、といってもいいでしょう。
オーナーズブック(OwnersBook)ファンドへの投資是非判断において、これを活用しない手は無く、時に、利回りよりも重視すべき、と、私は考えています。

利回りばかりにとらわれることなく、ハッピーなオーナーズブック投資ライフを。

オーナーズブック(OwnersBook)投資では、利回りばかりにとらわれるのはやめましょう。

前述して参りました通り、オーナーズブック(OwnersBook)の場合、ファンドの単純な利回りとしては、他のソーシャルレンディング事業者に劣る部分も少なくありません。
ただし、他のソーシャルレンディング事業者と違い、徹底して、借り手企業の不動産に対して担保権を設定する、というオーナーズブックのデファクトスタンダートを勘案に入れれば、リスク・リターンのバランスの観点からは、ある程度、わたしたち個人投資家として、受け入れることの出来る内容だろうと思います。

そして、あらゆる投資活動が、単純な利回り(=リターン)大小比較によるものではなく、あくまでも、リターンとリスク(ソーシャルレンディング投資の場合は、ひとえに、万が一に備えての保全効力の確認)のバランスによるもの(=リスクと比較して、相対的にリターンが優れている物を選び取っていく)である、と解釈する場合、オーナーズブックの情報開示姿勢(特に、担保不動産に関する情報の開示姿勢)は、わたしたち個人投資家にとって、大きなメリットの源泉となり得るものです。

「利回りは割と保守的だが、担保設定はしっかりしており、担保不動産に関する情報開示も積極的」

オーナーズブック(OwnersBook)のそんな個性をしっかりと把握したうえで、それを活かし、合理的なファンド選別を行っていくことが、オーナーズブックを通したソーシャルレンディング投資の肝といえるでしょう。

それでは、本記事はここまで。
文中の内容は、いずれも、わたしのごく個人的な見解にすぎませんが、あくまでも、その限りにおいて、本記事の内容が、少しでも、読者の皆様のお力となれたのであれば、嬉しい限りです。

また次回の記事にて、お会い致しましょう。

追伸:
大手ソーシャルレンディング会社を、ファンド平均利回りや、ソーシャルレンディング事業者としての規模、初心者へのおすすめ度、といった指標で比較した、こちらの過去記事も、是非、ご覧になってみてください。

【ソーシャルレンディング比較記事】ユーザー数・資本金額・累計投融資額・年利平均…。大手ソーシャルレンディング事業者を異なる視座から比較してみた結果、見えてきた真実とは。


本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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