「ロボアドバイザーは、いらない」ロボアドバイザー不要論の根拠とは
実際いらない?ロボアドバイザーとは結局何なのか
投資家が、ロボアドバイザーの発する複数の質問に対して回答することによって、ロボアドバイザーが、投資家ごとのリスク許容度を自動的に診断し、そのリスク許容度に見合った、最適なマルチアセット・ポートフォリオ提案。
投資家が、そのポートフォリオ内容に同意すれば、ロボアドバイザーが、必要な銘柄の買い付けや、リバランス、といった作業を、自動的に執行してくれるのが、昨今、若年投資家層の間で広がりを見せている、投資一任型のロボアドバイザー・サービスです。
ロボアドバイザー投資のメリット
ロボアドバイザーの提供会社等が示す、ロボアドバイザー投資の主たるメリットとしては、下記のようなものがあります。
- 投資初心者でも、複数の資産クラスを組み合わせたポートフォリオを簡単に構築することが出来、かつ、長期的に運用できる。
- 投資対象となる投資信託は、多数の銘柄へと資産を分散投資するため、投資家においても、容易に多数銘柄への分散投資が実現できる。また、十分な分散投資によって、ポートフォリオにおける非システマティック・リスクを排除することが出来る(ただし、市場のシステマティック・リスクそのものは残存する)。
- 初期投資は、数万円~10万円程度の少額から行うことが出来るうえ、毎月の積立投資についても、1万円程度の少額から設定・自動化することが出来る。
- 取得する投資信託からの分配金は自動的に再投資されるため、複利効果を活かしやすい。
- ロボアドバイザー運営会社の収入(=手数料)は、ロボアドバイザーの預かり資産残高に連動して上下する。このため、投資家とロボアドバイザー事業者との間で、利益相反が生じづらい。
- 長期的なインデックス投資において、最も手間のかかる作業の一つと言われる「リバランス」を、ロボアドバイザーに一任することが出来る。
- トレード(投資信託の売買)は、ロボアドバイザーに一任することとなるため、投資家の感情を排除し、インデックス投資における王道とされる「長期投資」を自然と実現しやすくなる。
- 証券会社が提供する、有人型の投資一任型サービス(ファンドラップ・サービス)と比較すると、手数料が安い。
なぜ「ロボアドバイザーは、いらない」のか
昨今、主に若年・投資初心者の間で裾野を広げつつあるロボアドバイザー・サービスではありますが、長らくインデックス投資に取り組んできた投資家からは、「ロボアドバイザー等利用せずとも、十分にインデックス投資を行うことが出来る」「手数料を無駄に支払うだけのロボアドバイザーは、いらない」等と、批判的な声が寄せられることもあります。
ロボアドバイザーに対して懐疑的・批判的な立場をとる投資家は、いったいどのような根拠にたって、「ロボアドバイザーは、いらない」と主張するのでしょうか。
ロボアドバイザーの投資対象は、投資家が自分で買うことが出来るから、ロボアドバイザーは、いらない
ロボアドバイザーが直接株式・債券の売買をすることは稀
一般的なイメージに反して、ロボアドバイザー投資の場合、ロボアドバイザー自身が、なんらかの株式を取得したり、売却したり、その他、先物取引を行ったりするわけではありません。
ロボアドバイザーは、複数の銘柄に資産を分散投資する「投資信託」を数点保有し、実際の資産運用そのものは、厳密には、その投資信託の運用会社が行っています。
このため、極論すれば、ロボアドバイザーは、単なる、投資信託の売買代行サービスである、とも換言できます。
ロボアドバイザーが取引する投資信託の多くは、投資家が自分で売買できるものばかり
そして、ロボアドバイザーが実際に売買する投資信託の中には、わざわざロバートバイザーを介さずとも、投資家自身が、楽天証券やSBI証券、マネックス証券等といった、ネット証券会社に口座を開設すれば、自分で売買ができるものが、数多くラインアップされています。
また、ロボアドバイザーの中には、ウェルスナビなど、海外の市場に上場している上場投資信託(ETF)を買い付けるものもありますが、こうしたETFの中には、ネット証券会社が、売買手数料無料の「フリーETF」として指定しているものも含まれます。
すなわち、投資家としては、わざわざロボアドバイザーを利用せずとも、ロボアドバイザーが行うのと同じような投資信託買い付けを行うことができ、実質、ロボアドバイザーと同様のマルチアセット・ポートフォリオの構築も、容易に実現できます。
このため、長くインデックス投資に携わっている投資家の中から、ロボアドバイザーはいらない、と言う声が上がるのも、一定の説得力があります。
参考:
ロボアドバイザーと投資信託、投資家にとってはどっちがいいのか|メリット&デメリット徹底比較
ロボアドバイザーは、手数料を上乗せするだけだから、いらない
上記したように、ロボアドバイザーが取得する投資信託の多くは、投資家自身がネット証券会社を介して売買できるものも多く、投資信託を買い付け、それを売却する、と言うプロセスだけを考えるのであれば、確かに、わざわざロボアドバイザーを利用する必要はありません。
ロボアドバイザー利用により、投資家の支払うコストは、二重構造となる
それにもかかわらず、ロボアドバイザーを利用する場合、投資信託の信託報酬に上乗せして、ロボアドバイザーの運営会社に対して、ロボアドバイザー利用料を支払う必要があります。
ロボアドバイザーの利用手数料は、基本的に、預かり資産残高に連動して計算されることが多く、その具体的な料率は、ロボアドバイザー会社によって異なりますが、概ね、年率で1パーセント程度に設定されていることが多くあります。
そして、このロボアドバイザー利用手数料は、ロボアドバイザーの運用成績が、仮にマイナスであったとしても、変わらず定期的に生じ続けるものとなります。
インデックス投資ならではの「低コスト」というメリットが薄れることとなる
ロボアドバイザーの取り組むインデックス投資は、その他のアクティブ投資と比較して、基本的には、投資信託にかかる信託報酬等のコストが極めて安いことこそが、最大のメリットとされています。
それにもかかわらず、ロボアドバイザーを介してしまうことによって、安い信託報酬コストと言う、インデックス投資の最大のメリットが失われてしまうこととなるため、古参のインデックス投資家からは、ロボアドバイザーはいらない、と言う声が上がることも多々あります。
参考:
ロボアドバイザーと手数料|投資家にとって、ロボアドバイザーの手数料は、高いのか
ロボアドバイザーの分散投資は無意味だから、いらない
国内で提供されているロボアドバイザーの多くは、米国株や、米国株以外の先進国株式、新興国株式や、債券、コモディティー、不動産など、様々な資産クラスに対して、投資家の資金を分散投資します。
そもそも、資産クラスとしての期待利回りは、米国株や新興国株式が最も高いわけであり、これに対して、債券やコモディティーなど、あまり期待リターンの高くない資産クラスを組み合わせる場合、ポートフォリオ全体の期待利回りは、米国株や新新興国株式等に対してのみ投資する場合と比較して、当然、低下します。
分散投資の目的=ポートフォリオのボラティリティを下げること
なぜ、期待利回りの低下と言う犠牲を支払ってまで、複数の資産クラスに対して資産を分散投資するか、と言うと、そのような分散投資によって、ポートフォリオのリスクを低く保つ効果が期待されているためです。
なお、資産クラスの分散による、ポートフォリオのリスク低減効果ら、それぞれの資産クラスの間の相関係数が、低い場合にこそ、最大限発揮されます。
極論すれば、期待利回りが同じで、値動きが完全に逆行する、すなわち相関係数が− 1である資産クラスの組み合わせがあれば、その資産クラスの組み合わせに対して投資をしていれば、利回りはそのままに保った上で、リスクをゼロにすることが、理論上は可能です。
実際には、そのような都合の良い資産クラスの組み合わせは存在しませんが、少なくとも相関係数が1ではない資産クラスを組み合わせることによって、ポートフォリオ全体の値動きを、多少なりとも抑制していきたい、というのが、ポートフォリオ理論の基本的な考え方です。
資産クラス分散によるリスク低減効果には、疑問視する向きもある
しかしながら、昨今、経済のグローバル化や、マルチアセットポートフォリオ運用の一般化によって、複数の資産クラス間の相関係数は、かつてのように低くない、というのが実情です。
このため、資産クラスを複数取り揃えたとしても、以前のようには、ポートフォリオのリスクを低く保つ効果が実現しにくくなっている、との指摘もあります。
こうした環境下において、ロボアドバイザーの行っている、複数の資産クラスへの資金分散投資は、単にポートフォリオ全体の期待利回りを押し下げるだけで、リスク低減効果を発揮できていない、との批判もあり、こうした論拠に伴い、ロボアドバイザーはいらない、と主張する投資家も少なくありません。
ロボアドバイザーのリバランスは、いらない
ロボアドバイザーの機能の大きな特徴として、ポートフォリオ運用開始後の値動きに応じて、投資家のアセットアロケーションが、本来の推奨ポートフォリオの内容から、乖離してきた場合、元来の最適ポートフォリオへと再調整する、リバランスと呼ばれる機能があります。
ロボアドバイザーの場合、主に、値上がりした資産クラスの売却と、値下がりしてしまっている資産クラスの買い足しによって、リバランスを実施することが一般的です。
しかしながら、このリバランスは、完璧なものではなく、投資家の中には、ロボアドバイザーの実施するリバランスに関して、無駄であり、いらない、と批判を寄せるユーザも少なくありません。
リバランスにより、無駄な課税が生じるリスクがある
ロボアドバイザーの実施するリバランスの最初の問題点としては、リバランスによる値上がり資産クラスの売却に伴う、課税関係が挙げられます。
含み益が生じている資産クラスを、リバランスにより売却してしまうことで、含み益が実現し、値上がり益に対する課税が生じることとなります。
なお、ロボアドバイザーの中には、税金最適化機能といって、含み益の実現に合わせて、含み損の生じている資産クラスを売却することにより、値上がり益を相殺する機能を提供しているケースもありますが、そもそも、含み益の実現さえ行わなければ、そうした機能すら、本来は不要なものです。
リバランスの結果、ポートフォリオの期待利回りが下がるケースも
また、ロバアドバイザーのリバランスによって、主に売却されるのは、ポートフォリオの期待利回り牽引役である、株式系の資産クラスであることが一般的です。
また、リバランスによって買い足されることが多いのは、ポートフォリオに占める相対的な割合が低下している、債券系の資産クラスとなることが一般的です。
世界経済の長期的な成長を信じてインデックス投資に取り組んでいる投資家にとっては、株式系、特に米国株を中心とした先進国の株式系資産クラスが売却されてしまう事は、ポートフォリオの期待利回りを高く保つ上で、できるだけ避けたい事態です。
また逆に、本来はリスクを低く保つことが目的であるはずの債券系の資産クラスを、リバランスによってより多く仕入れる事は、ポートフォリオ全体の期待利回りを低下させてしまうリスクがあり、同じく、どちらかと言えばリスク愛好家と言われる投資家にとっては、ネガティブな評価を受けることの多い施策となります。
こうした事情が相まって、ロボアドバイザーの行うリバランスに対して、批判的な目を向けるインデックス投資家も少なくなく、結果的に、ロボアドバイザーはいらない、という、些か極端な意見にもつながっています。
参考:
ロボアドバイザーの行うリバランスとは|リバランスの仕組み、メリット・デメリット、課税関係まで検証
ロボアドバイザーではつみたてNISAやidecoが使えないから、いらない
日本のインデックス投資家がインデックス投資に取り組む場合、まず第一優先とされるのは、確定拠出型年金制度、通称iDeCoの投資額を、最大限活用することとされています。
イデコ投資の枠は、その人の就業体系等によって大きく異なりますが、概ね、月額数万円程度の投資枠が利用できることがほとんどです。
イデコの投資額を最大限利用したあとは、積み立てニーサの月額投資可能額、すなわち30,000円程度の投資額を、最大限利用することが推奨されています。
積み立てニーサの場合、取得した投資信託からの分配金や値上がり益を、最長で20年間、非課税で運用することができますから、長期投資を志向するインデックス投資家にとっては、大きなメリットがあるためです。
このように、インデックス投資を行うユーザにとって、長く親しんできた、イデコ口座や、積立ニーサ、といった制度に関して、ロボアドバイザーのほとんどは、非対応となっています。
国内のロボアドバイザー業界では唯一、ウェルスナビは、ニーサ口座のうち、一般ニーサに関しては対応していますが、積み立てニーサに関しては、依然として非対応となっています。
また、国内のロボアドバイザー業界では、iDeCo口座を利用したトレードに対応しているロボアドバイザー事業者は存在しません。
参考:
ロボアドバイザーと、つみたてNISA|つみたてNISAのメリット&デメリット、ロボアドバイザーとの併用・比較について検証
ロボアドバイザーは、利益相反リスクがあるから、いらない
一部のインデックス投資家が、ロボアドバイザーを毛嫌いする原因の1つには、投資家とロボアドバイザー事業者との間の、利益相反リスクが挙げられます。
ロボアドバイザー運営会社の収入にあたる利用手数料は、基本的に、投資家からの預かり資産残高に比例して増減するように制度設計されていますから、一見すると、ロボアドバイザーと投資家との間の利害は、概ね一致しているように見えます。
しかしながら、ロボアドバイザーの運用会社の目線に立てば、既存の投資家からの預かり資産残高を運用によって増やすことよりも、マーケティングによって、新たな投資家を獲得した方が、預かり資産残高を容易に増やすことができる、といえます。
半面、既存のロボアドバイザー投資家にとっては、自身が投資しているロボアドバイザーが、新たなユーザを獲得したところで、直接的にはメリットが見込まれません。
このように、ロボアドバイザーの運営会社と、そのロボアドバイザーを既に利用している投資家とのあいだには、一定の利益相反リスクがあり、十分な注意を要します。
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