これからロボアドバイザーを始める投資初心者に伝えたいこと|法人口座開設など、これからのロボアドバイザー業界向け提言も

これからロボアドバイザーを始める人に伝えたい、ロボアドバイザーの注意点とは

国外市場に上場しているETFに投資する場合、最終損益が為替の影響を受ける

ウェルスナビなどに代表されるような、国内のロボアドバイザー・サービスの場合、基本的には、アメリカの市場に上場している、上場投資信託(ETF)に対して投資を行います。

そして、国外の市場に上場しているETFに投資するにあたっては、日本円が米ドルに、そして最終的には米ドルが日本へと転換されますから、この際に、為替の影響を受けることとなります。

日本の投資家が、アメリカの市場に上場しているETFへと投資する場合、当然のことながら、最終的な換金の際に、先に投資した頃と比較して、円安ドル高方向へと為替が推移していれば、受け取ることのできる日本円ベースの金額が、向上することとなります。

反面、為替が逆方向に動いてしまえば、投資家の円建てでの資産評価額は、むしろマイナスの評価を受けることとなる場合もあります。

これからロボアドバイザー投資を始めてみようと考えている投資家においては、自身のロボアドバイザー投資が、こうした為替の影響を受けるということについて、十分に注意しておく必要があります。

ロボアドバイザーでは、短期的に大きな利益を上げることは難しい

ロボアドバイザーでは、短期的に大きな利益を上げることは難しい
これからロボアドバイザー投資に取り組む人は、ロボアドバイザーは、短期投資向けのツールではない、ということを、よく理解しておく必要があります。
※画像はイメージです。

ロボアドバイザーは、基本的に、インデックス指数に連動する投資信託をバイ&ホールドする、という、極めてシンプルな投資戦略をとります。

要は、個人投資家に人気の高いインデックス投資を、ロボアドバイザーが代わりに行っているのと同じこと、とも言えます。

インデックス投資で、実際に利益を上げられるかどうかは、単純に、投資対象としているインデックスが、インデックス取得時と比較して、値上がりするか、どうか、にかかっています。
ロボアドバイザー投資の場合も、この事情は全く同じです。

またロボアドバイザー投資の場合も、一般的なインデックス投資の場合と同様、借り入れなどによってレバレッジを効かせて投資を行うことは、一般的ではありません。

トレードに対して「売り」から入る、ショートポジションを取るロボアドバイザーも限られるため、基本的に、ロボアドバイザー投資を使って、短期間に大きく利益を上げる事は、難しいというのが実情です。

また、ロボアドバイザーの場合、ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングと違い、利回りが事前に決まっているわけでもない、という点にも、一定の留意が必要です。

これからロボアドバイザー投資を始める場合は、このように、実際の投資利回りの予測がなかなか難しい、と言う点についても、十分に注意する必要があります。


参考:
ロボアドバイザーは儲かるのか|投資家、及び、ロボアドバイザー運営会社、双方の目線から検証

株式相場が下落するなどすると、元本割れする可能性がある

ロボアドバイザーが投資対象とするのは、インデックス指数に連動した投資成果の獲得を目指す投資信託であり、必然的に、インデックス指数と全く同じように、多数の銘柄をポートフォリオに組み入れています。

仮に、株式市場が急落するような事態が起きれば、インデックスに組み入れられている各銘柄の株価も、当然下落しますから、これに連動するようにして、ロボアドバイザーの運用成績も、マイナスとなる可能性があります。

さらに、不況が長期化すると、元本割れの状態が継続する恐れもあります。

現に、アメリカでは、2000年代初頭のドットコム・バブル崩壊から、リーマン・ショックを経て、最終的に相場がバブル崩壊前の水準を取り戻すまでには、10年以上もの歳月がかかりました。

現在、米国株などを中心とするインデックスは、歴史的な高値水準にある、と言われています。
これからロボアドバイザーを活用してインデックス投資に取り組む場合、もちろん、これまで同様にインデックス指数が最高値を更新していく可能性もありますが、その反面、株価の調整が起き、その結果、バブル崩壊に巻き込まれる可能性もある、と言う点に、十分な注意が必要です。

ロボアドバイザーに頼っていると、投資家自身に投資のスキル・ノウハウが蓄積されない

投資家が、ロボアドバイザーを活用せずにインデックス投資に取り組む場合、自分自身のリスク許容度の算出や、リスク許容度に見合ったアセット・アロケーションの設定、アセットクラス毎のインデックスの選定、インデックスごとの投資信託の選定など、様々な作業を、自分でこなしていくこととなります。

こうした作業は、当然、手間ではありますが、これらのプロセスを通すことによって、投資家自身が、投資にまつわる様々なノウハウを身に付けていくことができる、と言うメリットがあります。

一方で、ロボアドバイザーを用いてインデックス投資に取り組ん場合、上記したようなプロセスのほぼ全てが、ロボアドバイザーに一任される関係で、投資家自身には、投資に関連するスキルやノウハウが、一切蓄積されない、と言う難点もあります。

これからロボアドバイザー投資に取り組む投資家においては、ロボアドバイザー利用のこうした弊害について十分に意識した上で、ロボアドバイザーに資産運用を任せきりにするのではなく、自分自身でも投資スキルを高めていく工夫が必要となります。

リバランスによって課税が生じたり、長期的な期待利回りが低下する恐れがある

ロボアドバイザーの大きな特徴として、投資家の資産運用を開始してから、一定の期間が経過し、その間の値上がり・値下がりに伴って、投資家のポートフォリオが従来の最適ポートフォリオから乖離したときに、ポートフォリオの再調整を行う「リバランス」機能の存在が挙げられます。

このリバランス機能は、ロボアドバイザー独自のメリットとして、投資家から歓迎されることもある一方で、一部の投資家は、リバランスの弊害を指摘している、と言う事実も看過することはできません。

一部の投資家が指摘するロボアドバイザーのリバランスの弊害としては、まず、リバランスに伴って含み益が実現することによる、課税関係が挙げられます。

また、リバランスによって、主に株式型の資産クラスが売却されることにより、ポートフォリオ全体の期待利回りが、やや低くなる可能性もある、という点も、よく指摘されることです。

これからロボアドバイザー投資を始めるにあたっては、こうしたロボアドバイザーのリバランスの問題点に関しても、しっかりと意識しておく必要があります。


参考:
ロボアドバイザーの行うリバランスとは|リバランスの仕組み、メリット・デメリット、課税関係まで検証

ロボアドバイザー運営会社と投資家との間で、利益の方向性が一致しないケースがある

ロボアドバイザーの運用会社の収入にあたる手数料は、基本的に、投資家からの預かり資産残高に比例するように制度設計されています。
このため、一見する限りにおいては、ロボアドバイザーの運用会社と投資家とのあいだには、利益相反は発生しづらいように見えます。

しかしながら、ロボアドバイザーの運用会社から見れば、既存投資家の資産運用を行うことによって、預かり資産残高を年率で数パーセントずつ増やすよりも、大規模なマーケティングによって新たな投資家を獲得し、そうした投資家から新規で預かり資産を得る方が、全体で見て、預かり資産残高をよりスピーディーに増やしていくことができる、ともいえます。

このように、ロボアドバイザーの運用会社と、すでにロボアドバイザーを利用している投資家とのあいだには、必ずしも、利益の方向性が完全には一致しないケースも見受けられる、と言う点に、留意が必要です。

これから値下がりする見込みが強い債券をポートフォリオに組み入れることには、批判的な意見もある

かねてより、インデックス投資の世界では、株式や債券、不動産、コモディティなど、複数の資産クラスへと資金を分散投資して、ポートフォリオのリスクを低く抑える戦略が一般的とされてきました。

例えば、日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)でも、

  • 外国株式
  • 国内株式
  • 外国債券
  • 国内債券

という、互いの値動きが異なる4つの資産クラスに対し、資産を概ね公平に(25パーセントずつ、を目安に)分散投資する戦略を採用していることが知られています。

資産クラス分散によるリスク低減の根拠は「相関係数」

異なる資産クラス同士の間には、「相関係数」と呼ばれる指標があり、マイナス1からプラス1の間で算出・評価されています。

  • 相関係数が小さければ小さいほど、資産クラス同士の値動きは、互いに逆行する傾向が強く、
  • 逆に、相関係数がプラス1に近づけば近づくほど、2つの資産クラスは、同じような値動きをすることとなる、

とされています。

仮に、利回りが全く同じで、互いの相関係数がマイナス1、という、2つの資産クラスを発見することが出来れば、両者に半分ずつ資産を分散投資しておけば、期待利回りはそのままに、リスク(値動きのボラティリティ)だけを、ゼロにすることが可能です。

現実世界では、そのような都合の良い資産クラスの組み合わせは存在しませんが、ともあれ、相関係数が出来るだけ小さい資産クラス同士を組み合わせたポートフォリオを保有しておけば、(リスクをゼロにすることは出来なくとも)ボラティリティを一定程度減少させる効果が期待できる、というのが、現代ポートフォリオ理論等に基づいたインデックス投資の”原則”とされています。

こうした理由から、インデックス投資業界では、株式と債券など、異なる値動きをする資産クラスへと資金を分散投資することが常識であり、インデックス投資ツールのひとつであるロボアドバイザーも、基本的には同じ戦略を採用しています。

債券は、長らく「分散投資先の鉄板」とされてきたが…

そして、細かな内訳や、割合に、程度の差こそあれ、国内でサービス提供されているロボアドバイザーの多くが、基本的には、株式と債券に対し、資産を分散投資します。

一般的に、

  • 株式や、期待利回りが高い分、利回りの標準偏差(=リスク)が大きく(=ハイリスク・ハイリターン)、
  • これに対して、債券は、期待利回りは低いが、ボラティリティが小さい(=ローリスク・ローリターン)、という特質があり、
  • かつ、両者の間の相関係数は、伝統的には、限りなく低い状態が「当然」とされてきました。

すなわち、株式相場が不安定な時期においては、よりリスクの小さい、債券系の資産クラスが人気となり、その反面、金融緩和政策などによって株高が誘導されやすい時期においては、利回りが見劣りする債券系の資産クラスは不人気となる(値下がりする)、という構図が一般的、という時代が、長らく続いてきました。

これからは、債券組み入れによるリスク低減効果は期待できない?

しかしながら、昨今、経済のグローバル化の進展や、複数の資産クラスにまたがった「マルチ・アセット・ポートフォリオ」運用の一般化・大衆化等の影響により、株式系の資産クラスと、債券系の資産クラスとの間の相関関係は、「従前通り」とは言い切れないような状態が生じています。

現に、

  • 2008年~2009年頃にかけてのリーマン・ショック時や、
  • 最近の(2020年3月頃の)コロナ・ショックの際には、

株式系の資産クラスと同様、債券系の資産クラス(ETFなど)も、少なくとも短期的には、大幅な下落を記録しました。

こうした状況を鑑み、インデックス投資に長く取り組む投資家の中には、「ポートフォリオに債券系の資産クラスを組み込むことによるリスクの低減効果は、もはや限定的である」などとし、債券への投資に対して批判的な見解を取る人も少なくありません。

債券はこれから値下がりする?

また、ロボアドバイザーの行う債券投資に対しては、更に別の方面から、ネガティブな意見が寄せられることがあります。
それが、債券の値下がりリスクです。

目下、先進国を中心に、債券の利回りは、高格付け社債や国債を中心に、歴史的な低水準にあるため、今後、債券利回りがさらに下落していく余地は乏しく、基本的には、これから、インフレ抑制などの必要性から、債券利回りは上昇していくものと見込まれています。

仮に、今後新規発行される債券(=新発債)の利回りが上昇していけば、現在市場で取引されている(償還日前の)既発債券の利回りは、相対的に魅力薄となり、当然、既発債の取引価格は、値下がりしていくこととなります。

このため、ロボアドバイザーがポートフォリオに債券を組み入れることについては、ベテランインデックス投資家などを中心に、「みすみす値下がりすることが分かっている資産を買い入れるようなものだ」との批判的見解が寄せられることがあります。

ロボアドバイザー業界の「これから」に期待されていること

上記のように様々な注意点がありながらも、主に若年投資家を中心に、ロボアドバイザー人気は高まりつつあります。
そんなロボアドバイザー業界に対して、今後、期待されていることとしては、下記のような事項が挙げられます。

批判を受けることも多い、手数料問題の解決

批判を受けることも多い、手数料問題の解決が、ロボアドバイザー業界には必要
とかく批判を浴びることも多い、ロボアドバイザーの手数料問題。これからの業界発展を考えれば、解決は急務です。
※画像はイメージです。

一部では、誤解が見られることもありますが、日本のロボアドバイザーの場合、ロボアドバイザー自身が、個別の株式銘柄を売買したり、債券の取引を行うわけではありません。

ロボアドバイザーは、あくまでも、株式銘柄や債券銘柄に対して投資を行っている、「投資信託」の売買を行っているだけです。

また、ロボアドバイザーが投資対象としているような投資信託(ETFを含む)に関しては、わざわざロボアドバイザーを利用せずとも、投資家自身が、楽天証券やSBI証券、マネックス証券などといった証券会社を利用すれば、簡単に売買できるものも多く含まれます。

投資家が、ロボアドバイザーを利用せず、自分自身で投資信託を取得し保有するだけであれば、投資家は、投資信託の運用会社に対して、所定の信託報酬を支払うだけで事足ります。

これに対して、投資家がロボアドバイザーを利用する場合、投資家は、投資信託の運用会社に対して支払う信託報酬に、ロボアドバイザーの運用会社への手数料を上乗せして支払う必要があります。


参考:
ロボアドバイザーと手数料|投資家にとって、ロボアドバイザーの手数料は、高いのか


そして、ロボアドバイザー運用会社への手数料は、仮に、投資信託や、ロボアドバイザーの運用成績がマイナスの場合においても、無関係に、継続的に生じ続けるものです。

また、世間には、完全成果報酬型の手数料体系を謳うロボアドバイザー事業者も存在しますが、この場合、値上がり益に対する成果報酬は、一般的なロボアドバイザーと比較して、かなりの高率となります。

ロボアドバイザー投資が、さらに投資家の裾野を広げていくためには、こうした、旧来のロボアドバイザーが抱えてきた、手数料に関する問題をクリアにし、投資ノウハウを蓄積したベテラン投資家にも評価されるような手数料体系と、組み替えていく必要があります。

つみたてNISA、iDeCoへの対応

ロボアドバイザー投資は、インデックス投資の1つの体系に過ぎませんが、国内の投資家がインデックス投資に取り組む場合、基本的には、まず、個人型確定拠出年金制度(イデコ)の投資可能額を最大限活用した上で、さらに、つみたてニーサに毎月3万円程度の積立投資をする、というのが、基本的なルートとなっています。

まず、イデコに関しては、毎月の投資額(拠出金)が全額所得控除されると言う、大きな税制上のメリットがあります。

さらに、積み立ててきた資金を実際に受け取る際にも、退職所得控除や、公的年金控除等の制度が利用できるため、税制上優遇されています。

また、つみたてニーサに関しては、つみたてニーサ口座で運用してきた資金の分配金や値上がり益が、最長で20年間、非課税になるという、大きなメリットがあります。

このため、長期的なインデックス投資に取り組む投資家においては、iDeCo口座、および、つみたてニーサ口座の利用が「鉄板」とされていますが、目下、日本国内のロボアドバイザー事業者で、iDeCo口座や、つみたてニーサ口座を利用した取引に対応している事業者は、存在しません。

これからのロボアドバイザー業界においては、まずは、こうした、政府の投資支援制度を、投資家が最大限活用できるよう、サービス設計を見直していく必要があります。


参考:
ロボアドバイザーと、つみたてNISA|つみたてNISAのメリット&デメリット、ロボアドバイザーとの併用・比較について検証

法人名義での口座開設への対応

投資家自身が、事業会社のオーナー社長であったり、資産管理会社(プライベートカンパニー)を保有している場合、その法人の資産運用に、ロボアドバイザーを活用したい、と考えるケースが想定されます。

企業にとっては、保有している資金のすべてを事業活動に投資する事はなかなか難しく、フリーキャッシュフローのうちの一部を、何らかの資産運用に回したい、という希望は、企業の大小にかかわらず、一定程度存在するものです。

しかしながら、現在、国内のロボアドバイザー・サービスは、基本的に、個人投資家のみを対象として設計されており、法人口座の開設に対応しているロボアドバイザー事業者は、目下、存在しません。

これからロボアドバイザー業界がさらに発展していくためには、個人よりも場合によっては投資ニーズが高いこともある法人の需要を、いかにうまく制度として取り込んでいくか、と言う点が、問われてくることとなります。

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ロボアドバイザー検証チーム
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