ロボアドバイザーは情弱向きなのか|批判も受ける手数料構成など、「情弱」主張の根拠を探る

情弱向きって本当?投資初心者に話題の「ロボアドバイザー」とは

投資家に代わって、

  • 「米国株式」や「日本株式」、「先進国債券」など、複数の資産クラスの組み合わせからなる、資産ポートフォリオの構築や、
  • ポートフォリオを実際に構成するための、資産クラス別の銘柄(ETFを含む投資信託)の買い付け、
  • 運用開始後の値上がり・値下がりに応じた、ポートフォリオの再調整(リバランス)、といった処理を、

主に預かり資産残高に連動した手数料と引き換えに、自動的に執行してくれるサービス・プログラムが「ロボアドバイザー」です。

ロボアドバイザー投資の始め方

投資家が実際にロボアドバイザー投資を始める場合、基本的には、以下のような流れを辿ることとなります。

  1. ロボアドバイザーのサービスサイトにアクセスし、「無料診断」のようなページから、ロボアドバイザー側の発する複数の質問(年齢や年収、資産運用の目的等に関する質問)に対して、1つずつ、回答を行う。
  2. ロボアドバイザーは、投資家の回答内容から、各投資家の「リスク許容度」を自動的に診断する。また、各許容度に見合ったポートフォリオを、投資家に対してブラウザ経由で提示する。
  3. 投資家が、ロボアドバイザーの提示するポートフォリオ内容に同意し、その後、ロボアドバイザーの定める最低投資額を入金すれば、ロボアドバイザーは、ポートフォリオを実際に構築するために必要な銘柄購入を、自動的に執行する(運用開始)。
  4. 運用開始後、時間の経過とともに、取得した資産が値上がり・値下がりすることによって、ポートフォリオの内容が初期のものと乖離してきた場合、ロボアドバイザーは、値上がり資産の売却や、値下がり資産の買い足しによる「リバランス」を、自動的に執行する。

国内で提供されているロボアドバイザーの種類

国内でサービス展開しているロボアドバイザーは、大きく分けて、「助言型」と「投資一任型」とに分類できます。

助言型(アドバイス型)ロボアドバイザー

投資家のリスク許容度算定、及び、リスク許容度に見合ったポートフォリオ提案(及び、取得推奨銘柄の提示)、までをサービス内容とするロボアドバイザー。
実際の銘柄購入や、その後のリバランスについては、投資家自身が行う必要がありますが、原則として無料で利用できる、というメリットがあります。
投資信託の販売業務を行っている証券会社が、自社サービスの付帯ビジネスとして展開しているケースが大半を占めます。

投資一任型ロボアドバイザー

リスク許容度算定、ポートフォリオ提案のみならず、(投資家が同意すれば)銘柄購入やリバランス、といった処理も一任することが出来るロボアドバイザー。
日本国内では、ウェルスナビテオ等といったサービスが知られています。

サービスが充実している反面、預かり資産残高に応じて定期的に手数料を支払う必要がある、というデメリットがあります。
※なお、投資一任型ロボアドバイザーの中には、SUSTEN(サステン)のように、完全成果報酬型の手数料体系を採用しているケースもあります。

ロボアドバイザー活用のメリット・デメリットとは

投資家の人気の投資一任型ロボアドバイザーの活用には、主に、下記のようなメリット・デメリットがあると言われています。

メリット

トレードから感情を排除できるのは、ロボアドバイザーのメリット
「人間の脳は、投資(トレード)に向かない」とする言説もあります。そんな人間の感情を排除することが出来るのは、ロボアドバイザー投資のメリットの一つと言えます。
※画像はイメージです。

  • 資産クラス別の役割や、互いの相関係数等について知見を持たない、初心者投資家でも、リスク低減効果が期待できる(とされている)マルチアセット・ポートフォリオを、簡単に構築することが出来る。
  • 数万円~10万円程度の少額から、初期運用をスタートすることが出来る。また、毎月の積立投資サービスも提供されており、月額1万円程度の少額から、積立額を設定することが出来る。
  • 投資信託(ETF)を投資対象とすることにより、数百~数千もの銘柄への分散投資が容易に実現できる。また、各投資信託は、指数(インデックス)連動型のパッシブ・ファンドが主であるため、昨今話題のインデックス投資にも活用することが出来る。
  • 分配金の自動再投資により、複利効果を得られやすい(ただし、投資信託の内部で再投資される場合を除き、課税後の分配金が再投資されることとなる点に注意)。
  • 運用開始後の値動きに応じたリバランスを、ロボアドバイザーに一任することが出来る。
  • 投資信託の買い付け(及び、リバランス等に応じた売却)はロボアドバイザーが自動的に執行するため、トレードが、投資家自身の感情に左右されることが無い。このため、短期的な下落にも動揺しづらく、インデックス投資成功の王道、と言われる「長期投資」も、自然と実現しやすい。
  • 少なくとも、証券会社提供のファンドラップ・サービス等の投資一任サービスと比較すれば、利用料(手数料)は安いと言える。
  • 一部の投資一任型ロボアドバイザーでは、一般NISA枠を用いた投資が出来る。また、助言型ロボアドバイザーを利用する限りにおいては、つみたてNISA口座やiDeCo口座も自由に利用できる。

デメリット

  • 投資信託の信託報酬等コストとは別に、ロボアドバイザー事業者に対して、預かり資産残高等に応じた手数料を支払う必要がある。この手数料は、ロボアドバイザーの投資成績がマイナスの場合でも、継続的に生じることとなる。
  • 一般的なインデックス投資と同様、短期的に大きな利益を上げることは難しい。
  • 世界的に株式市場暴落などが生じると、資産評価額が累積投資元本額を下回る、いわゆる「元本割れ」が生じることとなる。不況が長期に及ぶと、元本割れ状態も長期間に渡り継続する恐れがある。
  • 大半の投資一任型ロボアドバイザーでは、NISA口座やiDeCo口座を用いたトレードが出来ない。

参考:
ロボアドバイザーと投資信託、投資家にとってはどっちがいいのか|メリット&デメリット徹底比較

ロボアドバイザーは情弱向き?

近年、投資初心者を中心に大きな人気を博しているロボアドバイザーではありますが、一部の先輩投資家(特に、長年インデックス投資に取り組んできた投資家)からは、「ロボアドバイザーは、情弱向きである」等といった批判が寄せられることも少なくありません。

”情弱”とは

「情弱」という言葉は、「情報弱者」の略語。
業界のインサイダーや、当該業界について一定程度の知識を持ったユーザーと比較し、その知識の質、及び量が劣るユーザーのことを指すことが多い言葉です。

本来は、「(事業者側と比較した際に)情報量の非対称性の観点から、投資家保護の対象とすべき弱者」という意味合いで使われるべき言葉でもあるのですが、実際には、知識量の豊富なユーザーがその他ユーザーを蔑視する際に使われてしまうケースの多い言葉でもあります。

ロボアドバイザーが「情弱向き」と言われる理由

ロボアドバイザー独自の手数料構成

ロボアドバイザーが「情弱向き」と言われる理由としては、まず、その手数料構成が挙げられます。
ごく冷静に考えると、少なくともインデックス投資に活用するだけ、であれば、ロボアドバイザーの手数料は、確かに「割高」と言えます。
※画像はイメージです。

ロボアドバイザーの投資対象となる投資信託は、個人投資家でもネット証券会社等を通じて購入できる、ごく身近なインデックスファンド(ETFを含む)であることが一般的です(海外ETFが投資対象となっている場合でも、ネット証券会社にて「フリーETF」に指定されてるケースも多々あります)。

そして、投資家が、自分自身で投資信託(ETF)を購入・保有するのであれば、投資家としては、その投資信託の運用会社へと支払う信託報酬等コストを負担すれば済みます。
しかしながら、ロボアドバイザーを利用して同じ投資信託を購入・保有する場合、別途、ロボアドバイザーの運用会社に対しても、所定の利用手数料を支払う必要が生じることとなります。

ロボアドバイザー・サービスの大半が、基本的な投資戦略としては「インデックス投資」に近しい内容を採用しており、かつ、インデックス投資に利用されるインデックスファンドの醍醐味は、(アクティブ・ファンドと比較すれば)信託報酬に代表される”コスト”が安いことである、と言われています。

それにも関わらず、インデックス・ファンドのコストに、ロボアドバイザーの手数料分が上乗せされてしまうと、「まるでアクティブファンド並み」とも言われかねないような、高率なトータルコストがかかることとなります。

リスク資産としての債券クラスの組み込み

国内のロボアドバイザーの多くが、投資家のポートフォリオの一部として、先進国債券を組み入れています。
投資リターンの最大化を目指すはずのロボアドバイザーが、「株式」と比較して期待リターンの低い「債券」をポートフォリオに組み入れる理由は、株式系の資産クラスとの間の逆相関に期待しているため、です。
元来、債券は、株式とは値動きが逆行する傾向が強かったため、株式単独のポートフォリオではなく、債券を一部組み入れたポートフォリオとすることで、ポートフォリオ全体の値動きを平均化したい、という狙いがあるわけです。
※株式系の資産クラスの中でも、最も期待リターンの高い米国株だけでなく、やや期待リターンの劣る日本株なども投資対象とされているのは、同じ理由です。

しかしながら、昨今、経済のグローバル化、および、マルチアセット運用の汎用化に伴う、各資産クラス間の相関係数の高まりにより、昔のような逆相関関係はあまり確保しづらくなっています。
それにも関わらず、やや時代遅れとすら言えるマルチアセット運用を継続しているロボアドバイザーは、見方によっては、確かに情弱向きとも見えます。

また、一部のインデックス投資家からは、「債券系の資産クラスは、為替変動の影響や、カントリーリスクの影響を受けやすいため、期待リターンの割にはリスクが高い。ポートフォリオ全体のリスクを低く保ちたいのであれば、わざわざロボアドバイザーに手数料を支払って債券を購入・保有するのではなく、単純に無リスク資産として、リスク資産ポートフォリオの外側に、現預金を保有しておけばいい」
とする声も上がっています。


参考:
ロボアドバイザーは儲かるのか|投資家、及び、ロボアドバイザー運営会社、双方の目線から検証

リバランスによる株式系ETFの売却→長期的な期待利回りの低下

ロボアドバイザーは資産運用開始後、各資産クラスの値上がり値下がりに応じて、銘柄別に売却や買い足しを行うことによって、ポートフォリオ全体を資産運用当初の内容に戻す、いわゆる、リバランスを実施します。

問題なのは、この時に、リバランスによって、値上がりしてきた株式系の資産クラスが、少なからず売却されてしまうケースがある、と言うことです。

ロボアドバイザーを活用したインデックス投資において、将来的な期待リターンを高める最も重要な資産クラスは、米国株を中心とした株式系の資産クラスです。
リバランスによって、そうした株式系の資産クラスが売却されてしまえば、必然的に、将来的な期待リターンも低下してしまうこととなります。

iDeCoやつみたてNISAが利用できない

インデックス投資の王道は、まず、iDeCo(個人型確定拠出年金制度)とつみたてNISAの投資枠を、フル活用することです。
特にiDeCo口座の場合、拠出した掛け金が全額所得控除となるメリットがあり、仮に資産運用によって利益を上げることができなくとも、拠出期間中の節税メリットによって、十分に元を取ることができる、という利点があります。
また、つみたてNISAの場合、最長で20年間にわたり、運用益や分配金に関して非課税で投資をすることができるという、長期投資を前提としたインデックス投資家にとっては看過できない、極めて大きなメリットがあります。

このため、投資初心者がインデックス投資を始める場合、

  • まずは自身の雇用形態等に応じて、最大限のiDeCo投資枠を活用し、
  • その後、つみたてNISA(年間40万円が上限)口座で、毎月月額約30,000円程度を投資する、

という形が一般的です(そして、特に投資初心者の場合は、上記の2口座だけで、毎月の積立投資予算は吸収されてしまう、ということが多々あります)。

しかしながら、ロボアドバイザーの場合、基本的には、iDeCo口座を用いた投資は行うことができません。
また、ウェルスナビ等一部のロボアドバイザー除けば、NISA口座を利用した投資も不可能です。
※なお、2021年現在、ウェルスナビでは、国内の投資一任型ロボアドバイザー業界では唯一、一般NISA口座を利用した投資を行うことができますが、つみたてNISAに関しては、依然として非対応となっています。

ロボアドバイザーは情弱向き、は本当か

上記してきたような、ロボアドバイザー独自のデメリットを考えると、確かに、「ロボアドバイザーは情弱向きのサービスだ」と主張する人々の考え方にも、頷ける部分が多くあります。
しかしながら、それらのデメリットの反面、ロボアドバイザーには、「ロボアドバイザーならではのメリット」と言えるものも数点あり、投資家の考え方によっては、「手数料負担を考慮しても尚、ロボアドバイザーには、十分に魅力がある」と見る人がいたとしても、不思議ではありません。

少額からETFを取得できるミリトレ機能

「金額」指定で売買できる、非上場の投資信託と違い、上場投資信託、すなわち、ETFの場合、「金額」指定での買い付けは出来ず、あくまでも、「口数」「株数」単位での購入が基本となります。
海外市場に上場しているETFの場合、1株当たりの単価が数百ドル、すなわち日本円で数万円以上であることが一般的ですから、個人投資家が自分でETF買い付けを行う場合、初期投資金額が小さいと、十分な種類のETFを買いそろえることが出来ず、理想的なポートフォリオ構築が困難となるケースが少なくありません。

この点、ウェルスナビなどのロボアドバイザーを利用すれば、ETFをより少額から買い付け出来る、「ミリトレ機能」等が提供されているため、たとえ投資額が小さくとも、ETFを1,000分の1株単位で買いそろえることが出来、理想とされるポートフォリオの構築が比較的容易となります。

投資家の感情の排除

長期投資を実現するにあたっては、買付や売却、といったプロセスから、いかに、投資家自身の感情を排除するか、が、重要なプロセスとなります。
確かに、積立投資機能による追加投資だけであれば、ネット証券で十分、と言えるでしょう。
しかしながら、ポートフォリオ全体のリスクを低位に保つための、リスク資産売却時にこそ、ロボアドバイザーの感情排除効果が生きる、とも言えます。

また、リバランスに伴う税金最適化処理機能も、ロボアドバイザーの見逃せない機能のひとつです。
これは、含み益の生じている銘柄を、リバランスのために売却する際に、同時に、含み損の生じている銘柄売却を執行することによって、含み益の実現を最小化し、税金支払いによる投資元本縮小を防止する、という仕組みです。

実際に個人投資家が、税効果まで見据えて効率的なリバランスを行うことは、やや困難(特に、投資初心者にとっては)であるため、この点は、ロボアドバイザーならではのメリットと言えます。

ショートポジションも取る、絶対収益追求型のロボアドバイザーも登場してきている

「ロボアドバイザーは情弱向きだ」との主張の前提条件として、「ロボアドバイザーが、単にインデックス投資を行うのであれば」という前置詞が入ります。
確かに、指数連動型のインデックス・ファンドをバイ&ホールドするだけのインデックス投資を行うのであれば、わざわざ手数料を支払ってロボアドバイザーを活用せずとも、投資家が自分でパッシブ・ファンドを買っておけば十分、というのも頷けます。

しかしながら昨今、インデックス投資型のロボアドバイザーだけではなく、先物取引等のショート・ポジション機能を搭載し、「絶対収益追求型」としてサービス提供するロボアドバイザーも、少しずつ、増えてきています。

また、株式相場の下落兆候を感じると、あらかじめ暴落予防として、株式系の資産クラスの一部を売却しておく、という挙動をするロボアドバイザーも登場しており、これらのロボアドバイザーが実際に堅実な運用成績を残していくことが出来れば、いつの日か、「ロボアドバイザーは情弱向き」との批判も、鳴りを潜める日が来るのかもしれません。

Author Info

ロボアドバイザー検証チーム
fill.mediaは、国内の融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)、及び、不動産クラウドファンディング業界情報の検証メディア。
ロボアドバイザー情報専門の検証チームでは、日本国内、並びにアメリカを中心とした海外国にて展開されているロボアドバイザー(RA)サービスに関する最新情報を提供するほか、ロボアドバイザー業界の市場調査、各社の新サービスの検証などを実施する。

メディア掲載歴(一部・順不同)
・朝日新聞デジタル&m
・財経新聞
・SankeiBiz
・RBBTODAY
・楽天Infoseekニュース
・excite.ニュース
・BIGLOBEニュース
・@nifty ビジネス
・Mapionニュース
・NewsPicks
・ビズハック
・MONEY ZONE
・Resemom
・SANSPO.COM
・Trend Times
・zakzak
・とれまがニュース
・徳島新聞