ロボアドバイザーは儲かるのか|投資家、及び、ロボアドバイザー運営会社、双方の目線から検証
ロボアドバイザーとは
投資家の資産運用の目的や、年収、資産残高、運用予定期間等に応じて、最適なリスク許容度を自動的に算定し、各投資家向けのポートフォリオの提案や、資産クラスごとの銘柄購入、適宜のリバランス、税金最適化処理等を行うのが、ロボアドバイザー・サービスです。
ロボアドバイザー投資の仕組み
国内で展開されているロボアドバイザー・サービスには、「助言型」と「一任型」、2つのタイプのロボアドバイザーがあります。
- 助言型ロボアドバイザー:
投資家のリスク許容度等に応じたポートフォリオ(資産クラス別の割合)の提示、及び、取得が推奨される銘柄(ETF等の投資信託が中心)の提案を行います。
実際の銘柄取得や、その後の値上がり・値下がりに応じたリバランスは、投資家自身が行います。
ロボアドバイザーの利用料は「無料」とされていることが一般的です。 - 一任型ロボアドバイザー:
ポートフォリオ、推奨銘柄の提示は勿論のこと、実際の銘柄購入、及び、その後のリバランスや税金最適化処理、といったプロセスまで、ロボアドバイザー側が自動的に執行します。
助言型ロボアドバイザーとは異なり、年率1パーセント程度の利用料が生じることが一般的です。
投資家が、ロボアドバイザー・サービス(ここでは、一任型のロボアドバイザー)を利用して投資を行う場合、概ね、下記のようなステップを踏むこととなります。
- ロボアドバイザーの発する質問(概ね、10個前後。年収や資産残高、投資目的、投資経験等を問う場合が一般的です)に対して、オンライン、ないしは、アプリ上で、回答する。
- 投資家の回答内容に応じて、ロボアドバイザーが、各投資家のリスク許容度を自動的に算出する。また、算出されたリスク許容度に応じて、リターンを最大化することが期待できる、有効フロンティア上の(※現代ポートフォリオ理論に基づいたロボアドバイザーの場合)資産ポートフォリオを、投資家に対して提示する。
- ロボアドバイザーが提示したポートフォリオに対して、投資家が同意する場合、ロボアドバイザーが、当該ポートフォリオを実現すべく、自動的に、銘柄購入(取得)を行う(※ただし、投資家が、ロボアドバイザー事業者の定める最低投資額を入金してから、銘柄購入が行われることが一般的)。
- 取得した銘柄が、値上がりしたり、値下がりすることによって、ポートフォリオのバランスが崩れると、ロボアドバイザーが、自動的にリバランス(値上がりしている銘柄の売却、及び、値下がりしている銘柄の追加取得)を行う。
- リバランス等(特に、値上がりしている銘柄を売却することによる、含み益の実現)に応じて、課税関係が生じる場合、含み損が生じている銘柄を敢えて売却(=含み損の実現)することによって、利益を相殺する、「税金最適化処理」が執行される場合もある。
ロボアドバイザー活用のメリット
投資家がロボアドバイザーを活用する場合、下記のようなメリットがあります。
有人型の運用一任サービスと比較すれば、手数料が安い
ロボアドバイザー(特に、一任型)の提供している、
- 投資家のリスク許容度の診断
- リスク許容度に応じた最適なポートフォリオの提案
- ポートフォリオの内容に準じた、銘柄の購入
- 運用期間中の値動きに応じた、リバランス
- 課税関係への配慮
といった機能は、元来、プライベート・バンカーや、ファイナンシャル・アドバイザーが、対面・有人にて提供してきたサービスをモチーフとしています。
こうしたサービスは、(担当者1人あたりの対応能力に限度がある関係で、)預けてくれる資産量の多い、富裕層に限定して提供されてきました。
また、やや類似したサービスとしては、国内証券会社各社が提供している、「ラップ口座」サービスがあります。
これは、最低投資額を数百万円に設定したうえで、現在のロボアドバイザー・サービスと同様、ポートフォリオの提案や、銘柄購入等を、証券会社の担当者が執行するサービスですが、手数料が高い(年率換算で2パーセント~3パーセント程度)という難点がありました。
この点、オンラインで提供されるロボアドバイザー・サービスの場合は、プログラムによって自動提供される関係上、運営会社の限界費用(顧客が1人増えることによって増加するコスト)が小さく、その分、割安な手数料(年率換算で1パーセント前後)で、一般個人投資家でも利用することが出来る、というメリットがあります。
投資の王道と言われる「長期・積立・分散・低コスト」投資が、手軽に実現できる
投資において成功を収めるためには、短期的な視座から投資をするのではなく、
- 長期間(=少なくとも10年以上。理想的には数十年単位。短期的な相場の悪化を乗り越えるために、長期間の運用期間が必要)、
- 定期的に資金を追加投入し(=積立投資。逐次に資金を投下することによって、いわうる”高値掴み”を回避する目的がある)、
- 資産を幅広く分散投資し(=投資対象エリアはもとより、資産クラス(株式or債券or先物or不動産orコモディティ、等)も幅広く分散する。互いに相関性の低い資産クラスに資産を分散投資することで、リスクを低くコントロールすることが目的となる)
- かつ、低コストを維持する(=手数料の高い非上場の投資信託を用いるよりも、経費率の低い、上場投資信託、いわゆるETFを活用したほうが、コストを低減出来る場合がある)
ことが、必要と言われています。
これら全ての条件を、人間が手動で満たすことは大変(特に人間の場合、感情に拠って投資判断を左右されやすい、という難点があります)ですが、ロボアドバイザーを活用すれば、いずれの条件も、至極容易に(=投資家自身が勉強に時間を投資する必要なく)執行することが可能となります。
分散投資において最も手間のかかる「リバランス」処理を、ロボアドバイザーに一任できる
投資における分散投資のメリットは上記した通りですが、各投資家ごとのリスク許容度に応じた、最適なポートフォリオ(=資産クラスごとの分散投資)を維持するためには、取得している銘柄の値上がり・値下がりに応じて、投資家自身が、リバランスを行う必要があります。
例えば、年金資産を運用することを目的に、(高いリターンを得ることではなく、)リスクと小さく抑える運用を目指す投資家がいた、と仮定します。
しかし、一時的な株価の値上がりによって、この投資家のポートフォリオのバランスが崩れ、株式の比率が、債券等の保守的な資産クラスよりも高くなってしまった、とすると、この投資家のポートフォリオは、(本来維持するべきポートフォリオと比較して)リスク資産の割合が高く、アグレッシブ(=高リスク)な内容となってしまいます。
こうした場合、
- 値上がりしている資産クラスの銘柄を適宜売却し(※ただしこの場合、課税関係への配慮が欠かせません)、
- 値下がりして縮小してしまっている資産クラスの銘柄を、追加取得することによって、
ポートフォリオのバランスを取り戻すことが必要です。
この作業を投資家自身が行う場合、複雑な計算、及び、取得すべき銘柄の再検討等が必要となりますが、ロボアドバイザーであれば、こうしたリバランス処理についても、自動的に執行してくれる、というメリットがあります。
ロボアドバイザー投資のデメリット
上記したように、様々なメリットがある、ロボアドバイザーではありますが、いくつか、留意を要するデメリットも存在します。
資産評価に損失が生じても、手数料は支払い続ける必要がある
国内の一任型ロボアドバイザーの大半が、預かり資産残高に対して、一定の料率で手数料を徴収します。
この場合、仮に、(市況の一時的な悪化等によって、)運用資産残高がマイナス(=投資してきた元本よりも、資産評価額が低い状態)であったとしても、そのロボアドバイザー・サービスに資産を預けている限り、ロボアドバイザー事業者への手数料支払いが生じ続けることとなります。
- 資産を増やすために、ロボアドバイザーを活用しているにも関わらず、
- 資産が減少したとしても、ロボアドバイザーに対して手数料を支払う必要がある、
という構図には、違和感を感じる投資家も少なくありません。
※ただし、ロボアドバイザー・サービスの中には、sustenのロボアドバイザーのように、完全成果報酬型の手数料体系を採用しているケースもあります。
投資家が自分でETFを購入したほうが、安上がりになる
国内のロボアドバイザーの中には、低コストの分散投資を目的に、ETF(上場投資信託)のみを投資対象としているケースがあります。
ある程度投資に詳しい投資家であれば、自分自身でネット専業の証券会社に口座を開設し、同じETFを購入してしまうことが可能です。
ロボアドバイザーを通してETFを購入する場合、
- ETFの経費(=信託報酬等)と、
- ロボアドバイザー会社への手数料(=年率換算で1パーセント程度が相場)の双方を、
投資家が負担することとなります。
これに対して、投資家が自分でETFを購入してポートフォリオを運用するのであれば、当然、ロボアドバイザー会社への手数料支払いは無用です。
運用会社との間で、利益相反が生じる恐れがある
預かり資産残高に対して一定の料率で手数料を徴収するタイプのロボアドバイザー事業者にとっては、
- 運用によって、投資家1人ずつの資産残高を増やすよりも、
- マーケティングによって、投資家登録数を増やし、これに比例して、全投資家からの預かり資産残高を増やすほうが、
簡単、ということがあり得ます。
例えば、1億円の投資用資金があったときに、この1億円で、より強固な投資アルゴリズムを作成したとしても、そのアルゴリズムが順調に動作するかどうか、保証はありません。
しかし、その1億円を広告宣伝に投下すれば、一定量の投資家を集めることが出来、自然、預かり資産残高は向上し、ロボアドバイザー事業者の報酬もそれに比例して大きくなります。
また、特に海外で展開されているロボアドバイザー・サービスの場合、ロボアドバイザーが、取得を推奨する銘柄として、自社が提携関係にある証券会社の投資信託を推奨し、その証券会社から、キックバック報酬(コミッション)を受け取っているケースも指摘されています。
このように、ロボアドバイザー・サービスの運用会社と、投資家との間で、利益相反(互いの利益が一致しない状況)が生じかねない、という点にも、注意する必要があります。
運用終了のタイミングによっては、元本割れとなる可能性もある
国内のロボアドバイザーの多くは、世界的な各種経済指標に連動する投資成果の獲得を目指す(=各種インデックスに連動するETFをメインに買い付ける)運用を行っています。
このため、仮に、株式市場等が急落している状況下で、ロボアドバイザーによる運用を終了する場合、ロボアドバイザーの取得・保有しているETFの評価額が低く、結果的に、投資資金が元本割れした状態で、資産運用を終了しなくてはならなくなる可能性があります。
投資家自身に投資スキルが蓄積されない
特に一任型ロボアドバイザーの場合、
- ポートフォリオの作成
- 取得する銘柄(主にETF)の選定
- 銘柄の取得数量の算定、及び買い付け
- その後のリバランス
上記のプロセス全てが、ロボアドバイザーによって自動的に執行されます。
投資家自身が情報収集をする必要もなければ、銘柄取得等の手続きを行う必要もありません。
投資家にとっては「手間いらず」な状況であることは確かですが、それは逆に、「どれだけ投資をしようとも、投資家自身には、投資のスキル・ノウハウが一切蓄積されない」ということを意味します。
- 自分が使用しているロボアドバイザーは、どのような銘柄を取得しているのか。もっとコストが低く、トラッキング・エラーの少ないETFが、あるのではないか。
- 目下、安定的に株安な状態が続いているので、ポートフォリオにおける株式の比率をさらに高めて、割安で仕入れておくべきではないか。
- 株式相場がバブルにある、と言われているので、機動的に、株式の売却を進めて、代わりに、ポートフォリオに占める債券の割合を、増やしていくべきではないか。
などといった判断を投資家が行う機会はなく、仮に将来、ロボアドバイザー事業者が手数料を値上げしてきたとしても、「自分で投資はできないので、仕方ない(=ロボアドバイザー事業者の言うなりに、高い手数料を受け入れるしかない)」という、極めて消極的な立場に置かれてしまう、というリスクが払しょくできません。
参考:
ロボアドバイザーのメリット・デメリットとは|投資一任型・助言型ロボアドバイザーのリスク・仕組みから徹底解説
ロボアドバイザーは、儲かるのか
少額から、投資家自身の手間暇をかけることなく、気軽に「長期・積立・分散・低コスト」な投資を実現しやすい手法として、近年、特に若年投資家層から、大きな関心を集めている、ロボアドバイザー。
そんなロボアドバイザーへの投資は、実際問題として、儲かるのでしょうか。
また、ロボアドバイザーを「ビジネス」として展開している証券会社は、ロボアドバイザー事業を通して、儲けることが出来る構造となっているのでしょうか。
投資家目線から見て、ロボアドバイザー投資は儲かるのか
まずは、ロボアドバイザーによって資産運用を行う、一般個人投資家の視座から、確認してみましょう。
(ラップ口座と比較すれば)手数料が安く、儲かる可能性はある
オンライン、ないしはモバイル向けアプリなどで提供されているロボアドバイザーの場合、資産クラス別の銘柄取得やリバランス、といったバックヤード処理は、人間ではなく、アルゴリズムに基づいて、プログラムが実行しています。
ロボアドバイザー・サービスを提供する会社としても、ユーザー数が増加したとしても、提供コストはそれに比例して増大しない(むしろ、ユーザー数が増えれば、ユーザー1人あたりのサービス提供コストは小さくなる)ため、比較的廉価にサービスを提供できる、というメリットがあります。
こうした事情があるため、ロボアドバイザーの場合、有人型で提供されている投資一任型サービス(証券会社のラップ口座など)と比較して手数料が安いことが一般的であり、その分、投資家が稼ぎやすい(=儲かりやすい)構造となっている、と言えます。
積立投資に「クレジットカード」を利用できるロボアドバイザーもあり、ポイント稼ぎに使える
楽天証券株式会社が提供しているロボアドバイザー・サービス「らくらく投資」の場合、
- 積立投資を行う際に、「楽天カード」を用いた支払いが利用でき、
- 楽天カードにて積立投資を行うと、積立額の1パーセントに相当する「楽天ポイント」が付与される
という特徴があります。
さらに、貯めた楽天ポイントを、そのまま、今度は投資の原資(投資資金)として利用することも可能です。
また、株式会社スマートプラスが運営にあたるロボアドバイザー・サービス「Wealth Wing」であれば、「運用スタートプログラム」として、運用開始後6ヶ月間は、投資額に応じて、ANAマイルが貯まるプログラムが提供されています。
このように、投資の副産物として、「ポイント」ないしは「マイル」を獲得できるロボアドバイザーもあるため、仮に、投資成績も好調であった、と仮定すると、投資の成果とポイントの「二重取り」が出来るケースもあります。
株価の上昇局面から資産運用を開始できれば、短期でも儲かる可能性がある
国内のロボアドバイザー・サービスの多くは、株式市場との連動性が高いETF等を、主たる投資対象としています。
このため、運よく、株式市場の上昇局面にて、ロボアドバイザーでの資産運用をスタートすることが出来れば、株式相場の上昇に比例して、(ある程度短期間の間に)資産評価額を大きく押し上げることが出来る場合があります。
分配金再投資によって、元本が増え、稼ぎやすい資産運用が出来る
ロボアドバイザーの多くは、ETF等からの分配金を投資家に対して送金することなく、そのまま、再投資(=ETF等の追加購入)に回すことが一般的です。
このため、特段投資家が意識せずとも、分配金の(半自動的な)再投資を行うことが出来、結果的に、「複利効果」を得やすい、というメリットがあります。
先物取引によってショート・ポジション(売り持ち)を取ることが出来るロボアドバイザーなら、下落相場でも儲かる可能性がある
ロボアドバイザー・サービスの大半は、ロング(買い)から市場に入り、「バイ&ホールド」(=資産クラスを取得したら、後は基本的に継続保有し、追加投資をしながら、値上がりを待つ)する、という戦略を採用しています。
ロボアドバイザーの多くが、「世界経済は、長期的に見れば、間に多少の下落局面があったとしても、少しずつ、上昇していく。世界経済全体に広く分散投資を行うことで、長期的に、世界経済全体の成長メリットを、リターンとして享受する」ことを、投資目的としているため、です。
しかし、国内で提供されているロボアドバイザーの中には、ごく少数派ながらも、先物取引によって、ショート・ポジション(売り)から市場に入る機能を有しているサービスも存在します。
そうした「絶対収益追求型」のロボアドバイザーを活用すれば、アクティブ投資をモットーとするヘッジファンド的な運用により、相場が中長期的な下落局面にあったとしても、ショート・ポジションにて利益を上げることが出来、結果的に、他のロボアドバイザーが利益を出しづらいような局面でも、投資家に利益を提供できる可能性があります。
ポイ活サイト(ポイントサイト)を経由して投資家登録すれば、ポイントが稼げることがある
国内のロボアドバイザー事業者の中には、広告宣伝を目的に、ポイ活サイト(ポイントサイト)に対して、
「ロボアドバイザー・サービスに口座開設をしてくれれば、○○ポイントプレゼント」
のような広告・案件を掲載しているケースがあります。
ロボアドバイザー投資を始めるにあたり、まずは、こうしたポイ活サイトを経由して口座開設を行うことによって、
- 投資のリターンとは別に、
- ポイ活サイトにて付与される「ポイント」
を受け取ることが出来る場合があります。
運営会社が破産すると、分別管理の状況、及び、運用資産残高によっては、大損となることも
ロボアドバイザーを展開している証券会社には、金融商品取引法によって、資産の分別管理(投資家の資産と、自身の資産とを、明確に分けて管理すること)を行う義務が定められています。
そして、日本投資者保護基金に加入している証券会社が提供しているロボアドバイザーを利用している限りにおいては、
- ロボアドバイザーの運営会社が破産し、
- かつ、同社が分別管理義務を適正に履行していなかったことで、資金がきちんと投資家に対して返還されない場合、
1,000万円を上限に、同基金が、投資家への資金返還を補償してくれます。
しかしながら、逆に言えば、たとえ、ロボアドバイザー・サービス提供会社に、分別管理義務違反があったとしても(そして、同社が、日本投資者保護基金の加入企業であったとしても)、1,000万円を超える投資資金については、補償の対象外となります。
また、ロボアドバイザー運営会社が分別管理を適正に為しておらず、かつ、同社が日本投資者保護基金に加入していない場合、同社が破産すると、その資産・債務の状況によっては、投資家が運用に出していた資金が、大幅に毀損されてしまうリスクがあります。
下落相場で儲けることは難しい
特に、資産ポートフォリオにおいて株式(株式系のETF)が占める割合が大きい場合、株式市場が下落局面にあると、利益を上げることが難しい、というのが実情です。
また、資産残高に応じて手数料が生じるロボアドバイザーの場合、たとえ、相場が下落局面にあり、ロボアドバイザーの運用成績がマイナス、という状態であったとしても、手数料そのものは、ずっと生じ続けることとなります。
相場の低迷が長期間に及ぶと、これまでの運用益が、通算の手数料によって帳消しとなってしまうリスクもあります。
ロボアドバイザーの場合、基本的に、短期間で大きく儲けることは難しい
ロボアドバイザー・サービスの大半が、
- 様々なエリアの、多様な資産クラス(株式のみならず、債券や、コモディティ、不動産など)に対して、資金を幅広く分散投資することによって、
- 世界経済の、長期的な成長(グロース)の恩恵を受けつつ、
- グロースを上回る、投資利益(リターン)を得ること
を目的として、システム設計が為されています。
このため、そもそも、短期(=1年以内、程度)で利益をあげることを目的にはプログラムが作成されておらず、むしろ短期的には、市況の悪化などによって、大幅なマイナスを計上することも少なくありません(短期的にそうしたマイナスが生じることは、不可避な要素であると受け止めているロボアドバイザー・サービスが大半です)。
このため、FX投資や仮想通貨(暗号資産)投資のように、「ハイレバレッジで、短期間に、大きな利益を上げたい」と考えている投資家にとっては、ロボアドバイザーの活用は、合理的ではありません。
ロボアドバイザー運営会社は儲かるのか
ここまでは、ロボアドバイザーに対して投資を行う投資家の立場から、「(ロボアドバイザー投資が)儲かるかどうか」を検証して参りました。
最後に、ロボアドバイザーを事業として展開する証券会社の立場から、「ロボアドバイザーは、事業として、儲かるのか、どうか」を確認してみましょう。
預かり資産残高が順調に増えれば、儲かる可能性はある
国内のロボアドバイザー事業者の大半は、投資家から預かっている「預かり資産残高」の金額に応じて、手数料収入が上下することとなります。
このため、
- 広告宣伝等によって、投資家登録者数が順調に増加し、
- 各投資家が、初期の投資額、及び、定期的な積立投資による投資額を、コンスタントに積み増してくれて、
- かつ、株式市場が好調である場合等、資産運用によって、預かった資金で購入したETF等の資産評価額が向上していけば、
これらの事情に比例して、ロボアドバイザー事業者の受け取る手数料も増加することとなります。
そうして増加した手数料が、ロボアドバイザー事業者の固定費や、広告宣伝費、初期投資額(イニシャルコスト)等を十分にペイすることが出来れば、ロボアドバイザー・サービスの運営会社にとっても、「儲かる」可能性が増えてくることとなります。
基本的に、ロボアドバイザー事業者の場合、投資家向けのサービス(ロボアドバイザー・サービス)そのものは、プログラムによって自動的に提供されており、限界費用(=投資家が1人増えることによって生じる追加コスト)は、限りなく小さい、というアドバンテージがあります。
成果報酬型の場合、運用がうまくいけば儲かる
国内のロボアドバイザー事業者の中には、SUSTEN(サステン)のように、完全成果報酬型の手数料体系を採用しているところもあります。
こうした事業者の場合、運用益部分に対する成果報酬料率は、(他の一般的なロボアドバイザーが、資産全体に対して課す手数料率よりも)高めに設定されている傾向がありますので、仮に、投資家の資産運用が順調に進み、投資家からごく頻繁に成果報酬を収受することが出来れば、早期に利益計上をすることができる場合もあります。
提携している証券会社の投資信託を販売することで、手数料収入を得ることが出来る場合がある
国外のロボアドバイザー・サービスの場合、(ロボアドバイザー・サービス自体は、無料、ないしは、極めて廉価に提供したうえで、)ロボアドバイザー運営会社が、他の証券会社と提携しており、その提携先証券会社が販売する投資信託を、「推奨銘柄」として投資家に提案し、実際に投資家がそうした投資信託を購入した場合、購入額に応じて、証券会社から、キックバック(コミッション収入)を得ているケースが指摘されています。
ただし、この場合、投資家との間で、利益相反が生じる恐れ(例えば、提携している証券会社の販売する投資信託の経費率が、他の一般的な投資信託よりも割高である場合、等)があるため、注意が必要です。
広告宣伝費がかさむと、儲かりづらくなる
昨今、ロボアドバイザー事業に新規参入する企業もあり、証券業界の大手企業が、新たにロボアドバイザー・サービスを投入してくる事例もあります(例:楽天証券による、「らくらく投資」の運用など)。
ロボアドバイザー運営会社の間での、投資家獲得競争は熾烈であり、それに比例するようにして、1人の投資家を獲得するために必要な広告宣伝費も、高額になりつつあります。
そうした事情につられるようにして、投資家獲得のために多額の広告宣伝費を投下していると、広告宣伝費控除後の利益を大きく圧縮してしまう可能性があり、運営会社にとっては「儲け」を出しづらい構造へと繋がりかねません。
若年層の、投資への関心が薄れてくると、新規登録者・預かり資産残高が伸び悩むこととなる
国内のロボアドバイザー・サービスの大半が、高齢の富裕層投資家、というよりも、資産形成過程・働き盛りの、若年投資家層を、主なターゲットとしています。
昨今のコロナ禍等により、こうした若年層の、投資に対する意欲・関心が薄れてくると、その影響で、ロボアドバイザー事業者各社の投資家登録数・新規預かり資産額も、必然的に、低減しやすくなります。
手数料を成果報酬型にすると、運用成績次第では、全く儲からないことも
手数料を完全成果報酬型とする場合、投資家に対して訴求しやすくなる(=成績がマイナスのときは手数料がかからない、と訴求できる)メリットがありますが、運用成績が不安定な場合、状況によっては、全く手数料を収受できない、などという事態も生じ得ます。
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fill.mediaは、国内の融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)、及び、不動産クラウドファンディング業界情報の検証メディア。
ロボアドバイザー情報専門の検証チームでは、日本国内、並びにアメリカを中心とした海外国にて展開されているロボアドバイザー(RA)サービスに関する最新情報を提供するほか、ロボアドバイザー業界の市場調査、各社の新サービスの検証などを実施する。
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