法改正にも要注目。ソーシャルレンディングとブロックチェーン

ソーシャルレンディングとは

3パーセント~10パーセント前後(年利換算)の高い利回りを期待できるとして、個人投資家を中心に、国内投資家から広く注目を集める、新たな投資手法、ソーシャルレンディング。
企業等の資金需要者の立場から見ても、従来型の金融機関(銀行等)と比し、スピード感と柔軟性のある審査態勢を期待できるとし、新種の資金調達法として、関心を集めています。

順調な市場規模拡大の反面、業界には未成熟性が大きく、法令による規制や環境整備も途上、課題は少なくありません。
最大の問題点とされているのが、貸金業法の規制の関係で、投資家に対して、ソーシャルレンディング事業者から資金融資を受ける借り手事業者の情報が、開示されない点。
情報非開示の結果、資金の出し手たる投資家によるチェック機能が働かず、

  • 資金を借り受ける企業が、実は、ソーシャルレンディング事業者の社長の親族が経営する法人だった、というケースや、
  • ファンド概要にて記載されていた、借り手事業者の事業が、実際には、行われていなかった、というケース、
  • ファンド目論見に記載されていたのとは、全く異なる用途に、資金が使用されていた、というケースなど、

一部のソーシャルレンディング事業者の不適切運営に起因するトラブルが、複数、発生しています。

監督官庁による行政処分や、行政処分を受けたソーシャルレンディング事業者の組成ファンドにおける延滞発生等も相次いでおり、投資家に動揺が広がっています。

ソーシャルレンディングとブロックチェーン01

参考:監督官庁による行政処分も相次いでいるソーシャルレンディング業界。2019年3月には、ソーシャルレンディングサービス「トラストレンディング」を運営する、エーアイトラスト株式会社に、「登録取り消し処分」という、厳しい行政処分が下されました。
引用元:関東財務局「エーアイトラスト株式会社に対する行政処分について」http://kantou.mof.go.jp/kinyuu/pagekthp032000813.html

ソーシャルレンディングの仕組み

ソーシャルレンディングの基本的なスキームとしては、下記の通りです。

  1. 「第二種金融商品取引業」登録事業者であるソーシャルレンディング事業者が、匿名組合(ファンド)を組成。
    ファンドの事業内容(=どのような借り手企業に対して資金融資をするのか。担保設定は行うのか。利回りはどの程度か、等)を記したファンド概要情報を、インターネット上に公開し、投資家からの出資を募る。
  2. 個人投資家は、ソーシャルレンディング事業者ホームページ上の情報をみて、当該事業者の組成しているファンドへの出資是非を検討する。ファンド内容に魅力を感じた投資家は、インターネット上の手続きにより、当該ファンドへと、匿名組合出資を行う。
  3. ソーシャルレンディング事業者は、ファンドに集まった資金を、借り手事業者に対して、金銭消費貸借契約により、融資する。
    担保設定を行うファンドの場合、担保権設定・登記等を行う。
  4. 借り手企業は、ソーシャルレンディング事業者に対し、定期的に利息を支払う。
    ただし、元本の返済は、満期の一括払いとされているケースが多い。
  5. 借り手企業から支払われた利息金を原資に、ソーシャルレンディング事業者は、投資家に対し、期中分配を行う。
    ※ソーシャルレンディング事業者の中には、毎月分配を謳っている事業者もある。
  6. 金銭消費貸借契約における元本返済期限が近づくと、借り手企業は、ソーシャルレンディング事業者に対して、融資金の元本返済を行う。
  7. 借り手企業から返済された元金を原資に、ソーシャルレンディング事業者は、投資家に対し、最終分配(投資元本の償還)を行う。

なお、融資金は、ファンドにおいて提示されている期待利回りに、ソーシャルレンディング事業者の収入(=営業者報酬)料率を加算した利率によって、ソーシャルレンディング事業者から借り手企業へと貸し付けられます。
ソーシャルレンディング事業者の営業者報酬料率は、事業者によって様々ですが、概ね、1パーセント台~5パーセント前後の料率とされていることが一般的です。

ソーシャルレンディングとブロックチェーン02

参考:ソーシャルレンディング大手「maneo(マネオ)」の場合も、金融商品取引業者である、maneoマーケット株式会社と、貸金業者である、maneo株式会社の、2社体制が採用されています。
引用元:maneo(マネオ)https://www.maneo.jp/

ソーシャルレンディングのメリット

投資家から見た、ソーシャルレンディング投資の最大のメリットは、その期待利回りの高さです。

  • 無担保・無保証型で、利回りが優先されたファンドの場合で、年利10パーセント前後、
  • 不動産担保付で、借り手事業者からの元利金返済が滞った場合の安全性に重点がおかれたファンドの場合で、年利5パーセント前後の期待利回りが呈示されていることが多く、

銀行が提供する定期預金商品などと比べ、はるかに高い利回りが期待できる、とされています。

資金需要者からすれば、ソーシャルレンディング事業者からの資金調達の場合、元本一括返済が認められるケースが多く、主に不動産事業等において、

  • 事業開始時(=物件取得時、等)に、多量の資金を要するが、
  • 事業終了時(=物件の、第三者への転売・イグジット)まで、手元流動性資金の量が少ない(=期中の元本分割返済原資の確保が難しい)、

というケースに対応できる、新たな資金調達法として、メリットがあります。

ソーシャル・グッドネスの観点においても、銀行等伝統的金融機関と異なり、窓口を設けず、インターネット技術によって投資家から広く資金を集め(=クラウドファンディング)、資金需要者に融資することにより、中間手数料の節約が期待でき、投資家・資金需要者の双方に利益をもたらしうる、という点において、一定のメリットが期待できる、とされています。

ソーシャルレンディングとブロックチェーン03

参考:ソーシャルレンディング大手「maneo(マネオ)」のファンド例。9パーセント前後の高い期待利回りが呈示されているファンドが複数あります。
引用元:maneo(マネオ)ローンファンド一覧(https://www.maneo.jp/apl/fund/list?page=1)

ソーシャルレンディングのデメリット

投資家サイドから見た、現行ソーシャルレンディングの最大のデメリットは、貸金業法の規制の関係により、借り手事業者に関する具体的情報(例:借り手法人の具体的な商号等)が、投資家に対し、非開示となっている、という点です。
投資家としては、借り手企業がどこなのか、正確な把握が出来ないため、

  • 借り手企業の返済能力(借り手企業→ソーシャルレンディング事業者への返済能力)や、
  • 借り手企業の資産状況等、

金銭消費貸借契約締結にあたり極めて重要な要素となるポイントについて、事前の情報把握が行えず、合理的な投資是非判断が難しい状況にあります。

また、現行の所得税法下において、ソーシャルレンディング投資からの収益は、雑所得に該当し、総合課税の対象となっています。
このため、既に高い給与所得等を得ている高所得者からすると、累進税率の関係で、ソーシャルレンディング投資の収益金に対しても、高い税率が課される場合があります。
これは、他の、申告分離課税対象となっている投資手法と比し、ソーシャルレンディング投資のデメリットのひとつとなっています。

逆に、借り手企業からすれば、ソーシャルレンディング事業者からの資金調達は、極めて高金利となるケースが多く、安易な資金繰り策としてソーシャルレンディングからの資金調達を行うと、却って、その高い利息支払いによって、損益が圧迫される恐れがあります。

ソーシャルレンディングとブロックチェーン04

参考:maneo(マネオ)のファンドのスキーム図。借り手企業については、商号がイニシャル表記されており、特定ができないようになっています。
引用元:maneo(マネオ)不動産担保付きローンファンド2069号(https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=6955)

ブロックチェーンとは

ビットコインに代表される、仮想通貨、取引履歴を記録する、「分散型台帳」の実現のために、確立・開発された技術が、ブロックチェーン技術です。
自ずから、仮想通貨とは密な関係性にあり、仮想通貨取引・流通を支える、根源的な技術プラットフォームとも換言できます。

※なお、時折混同されることがありますが、「ブロックチェーン」と、「ビットコイン」等の仮想通過とは、そもそも、別々の物です。
ビットコイン等仮想通貨の取引履歴の記録システム・データベースの様式が、「ブロックチェーン」である、という構成となります。
※ビットコイン等の仮想通貨の多くは、ブロックチェーン技術をベースにしていますが、仮想通貨の中には、ブロックチェーン技術を用いないタイプの物もあります。

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