※延滞発生【ソーシャルレンディングファンド分析】クラウドリース「決算!大感謝キャンペーン ローンファンド 1号 10ヶ月運用」の場合
個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。
ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを題材に、各社の特徴や、ファンドごとのリスク・リターンのバランス等を検証する本企画。
今回は、クラウドリースが2018年10月初旬に資金募集を行ったソーシャルレンディングファンド、「決算!大感謝キャンペーン ローンファンド 1号 10ヶ月運用」を題材に、読み解きを進めて参りましょう。
本ソーシャルレンディングファンドの概要
同社のホームページから確認した、本ソーシャルレンディングファンドの概要としては、下記の通りです。
※なお、案件1及び案件2のうち、資金の大半を融資する「案件1」のほうに関してのみ、下記、検証をさせて頂きます。
本ソーシャルレンディングファンドの詳細情報ページのURL
こちらです。
↓
https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=2916
本ソーシャルレンディングファンドのスキーム図
引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=2916
資金の借り手
クラウドリースにとっての直接的な債務者は、事業者Mです。
ただし、同社は、クラウドリースの関連会社であることが明記されていますから、実質的な債務者は、本事業の最終債務者たる、リサイクル事業者MC、と解釈するのが素直です。
貸付資金の総額
本ファンドによる貸付は、12,000,000円(1,200万円)とのこと。
ただし、複数の号数に分けて、合計では、総額1億1,999万円を融資する計画、とのこと。
借り手の資金使途
リサイクル事業者MCは、今回の資金を、仕入資金および運転資金に充てる、とのこと。
本ソーシャルレンディングファンドの貸付・運用の期間
10ヶ月間の貸付・運用が予定されていました。
設定担保
時価にして1億5,877万円分の鉄スクラップに係り、担保設定が為される、とのこと。
返済原資
特段の明記が見当たりませんでした。
わたしたち個人投資家の期待利回り
12パーセント、とのこと。
本ソーシャルレンディングファンドの資金募集達成度は
引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=2916
↑
満額を達成したファンドとなります。
運用・返済状況は
本ファンドについては、クラウドリースから2019年1月10日に公表された情報によると、延滞が発生してしまっています。
引用元:https://www.crowdlease.jp/information/news?id=3095
119,997,345円の融資金の全額が、残高として残ってしまっている状況です。
本ソーシャルレンディングファンドのポイント
私が考える、本ソーシャルレンディングファンドのポイントは、下記の通りです。
なお、あくまでも、私の個人的な見解です。
高利回り、及び1年弱の貸付期間は、投資家にとり魅力的と映ったはず。
12パーセントの想定利回りは、並み居るソーシャルレンディングファンドの中でも、極めて高利回り、と言えます。
貸付期間が1年に満たぬ、という点も、時間リスク軽減を志向する投資家から、好感を得たはずです。
本件動産担保については、情報不十分の感が強い。
単純に考えると、1億5,877万円分の担保がついて、貸付は1億1,999万円ですから、LTV(Loan to Value)は75パーセントほど(1億1,999万円/1億5,877万円≒0.755…)です。
一見すると、LTV8割以下の、比較的安全性が高いファンド(かつ、利回りは高い!)、と思われるかもしれませんが、本件については、そう簡単に楽観できぬ点が散見されます。
鉄スクラップの値動き
※ 鉄スクラップの評価額につきましては、時価変動により融資額を下回る場合がございますのでご了承下さい。
引用元:https://www.crowdlease.jp/fund/detail?fund_id=2916
本ファンド概要にも、上記の通り記載があるのですが、
実際に、鉄スクラップの取引価格チャートを探してみたところ、株式会社産業新聞社のWEBメディアにおいて、チャートが掲載されていました。
引用元:https://www.japanmetal.com/memberwel/marketprice/soba_h2
↑
こちら、1トンあたりの鉄スクラップの値段(東京地域・月初値)を、1974年1月からグラフ化したものです。
引用元:https://www.japanmetal.com/memberwel/marketprice/soba_h2
↑
2018年9月の月初値としては、1トンあたり、27.5千円。2万7,500円。
ただし、この鉄スクラップ相場。需給の状態によっては、大きく動きます。
たとえば、
引用元:https://www.japanmetal.com/memberwel/marketprice/soba_h2
↑
2008年7月には、1トンあたり6万2千円の値がついていたのに、
引用元:https://www.japanmetal.com/memberwel/marketprice/soba_h2
↑
わずか4か月後、2008年11月には、1トンあたり4,000円まで値下がりしています。
10分の1以下の価値にまで、暴落してしまったわけです。
※ちなみに、この時の暴落の契機は、2008年9月のリーマン・ショック以降の金融危機だった模様です。
さすがに、2008年の世界恐慌レベルの経済的事変は、そんなにしょっちゅう、起こるものでは、ないのでしょうが、
本ファンドにおいて、鉄スクラップ相場の変動は、大きなリスク要因のひとつとなっています。
果たして、鉄スクラップ何トン分なのか。
ファンド概要を読み込む限り、今回動産担保として供される鉄スクラップが、「何トン分」なのか、情報が供されておりません。
そもそも論、となりますが、具体的なトン数が明記されていない限り、果たして、今回ファンド概要に記載されている時価(1億5,877万円)が、実相場に基づいた適切な時価なのか、どうか、すら、分かりません。
実勢相場データは、ネットで探せばいくらでも出てきますが、あくまでも情報は、「1トンあたりいくら(もしくは、1キログラムあたりいくら)」という情報です。
このため、本事業にて担保として供される鉄スクラップが、果たして「何トン分」なのか、の情報が提供されない以上、時価評価(本件では、担保評価をも意味します)が適当かどうか、わからないのです。
本件動産に係る担保権について、対抗要件はしっかりと具備されるのか。先順位抵当権無、という理解でよいか。
この点についても、ファンド概要において、明記がありません。
※一般的な不動産担保の場合、不動産登記簿謄本にしっかりと抵当権を登記することが出来るわけですが、本件担保物のような「動産」の場合、正式な対抗要件具備のためには、ひと工夫が求められます。
そのあたりがしっかりと構成・具備されたのか、具体的な明記が見当たりません。
総論
総じて、担保物に関する情報が、不足しています。
延滞発生となって仕舞った今となっては、「今更」という感は、あるかと思いますが、
やはり、これだけしか情報提供がされていない中で、正確・合理的なリスク判断を行う、というのは、各投資家において、困難性が大きかったのではないか、と、個人的に思料しています。
クラウドリース(正確には、クラウドリース関連会社)においては、1日も早く、1円でも多い債権回収を行い、
投資家諸氏への還元に尽力してほしいと思います。
本ソーシャルレンディングファンド検証のまとめ
ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを検証し、各社の特徴や、ソーシャルレンディングファンドごとの特色、そして、ファンド概要の読み解きのヒントを探る本シリーズ。
今回は、クラウドリースのソーシャルレンディングファンド「決算!大感謝キャンペーン ローンファンド 1号 10ヶ月運用」を題材に、検証をさせて頂きました。
しつこいようで申し訳ありませんが、
本記事文中の表現は、いずれも、私のごく個人的な意見に過ぎません。
その点は、くれぐれも、ご承知おきください。
しかし、あくまでも、その限りにおいて、
少しでも、「これからソーシャルレンディング投資を始めてみよう」とお考えの読者様にとり、
ファンド概要の読み込みの具体例として、ご参考になさって頂ける内容と出来たのであれば、
小ブログの管理人として、嬉しい限りです。
特に、本件ファンドについては、延滞発生という憂き目に遭ってしまったファンドです。
しっかりと、内容を御確認頂くことが、良いものと存じます。
なお、私は現在、国内23社のソーシャルレンディング事業者に、資金を分散投資中であり、
本記事にて取り上げた業者のファンドにも、出資をしています。
そんな私が、国内23社中、厳選した3社のみ、「おすすめ事業者」としてご紹介しておりますのが、下記の別記事となります。
お時間ございましたら、ぜひご覧ください。
↓
【ソーシャルレンディングのおすすめ会社はどこですか?】23社分散投資中の筆者が、ソーシャルレンディング投資初心者の読者様におすすめする、厳選3社がこちら。
ファンドの平均利回りや、資本金額や投資家登録数といった「規模」、投資初心者へのおすすめ程度等々、いろいろな確度から、国内の有力ソーシャルレンディング事業者をランク付けした、こちらの過去記事も、是非ご参照下さい。
↓
ソーシャルレンディング大手業者をランキング。案件リターン&国際分散度&担保設定状況、ユーザー登録数等々、異なるアングルから国内ソーシャルレンディング業者をランキング。
それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会い致しましょう。
本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。
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