「ソーシャルレンディングで3ヶ月程度の運用は可能でしょうか?」

頂戴したご質問

「ソーシャルレンディング投資を考えています。
ただし、初めての試みですし、あまり長い間、投資した資金がソーシャルレンディング会社に留保されてしまうのも、困ります。
3ヶ月~半年程度の短い期間で運用したいと考えているのですが、そのようなファンドはありますでしょうか?」
(30代・女性・ソーシャルレンディング投資歴なし)

3か月程度の短期運用向き?ソーシャルレンディング投資とは

貸金業者が募集するファンドに対して出資し、その後、貸金業者が自身の借り手企業から回収した利息・元金を元手とした分配・償還を待つ、という投資スタイルを、「ソーシャルレンディング」と言います。

「貸金業者の実施する融資プロジェクトに対して、数万円程度の小口から、相乗り投資が出来る」
とあって、昨今、主に個人投資家から、大きな関心を集めつつあります。

ソーシャルレンディング・スキームのステークホルダーは

ソーシャルレンディングというビジネススキームにおいて登場するステークホルダーとしては、

  • 投資家
  • 借り手企業
  • 両者をつなぐ「ソーシャルレンディング事業者」

という3者があります。

ソーシャルレンディング・スキームにおける、投資家の役割

ソーシャルレンディング事業者の募集するファンドに対して出資し、当該匿名組合の「匿名組合員」となるのが、いわゆる投資家、すなわち、ソーシャルレンディング投資家の役割です。
基本的には「個人投資家」が想定されていますが、主に分配金への課税の節税を目的として、法人名義で、ソーシャルレンディング投資を行うユーザーも、一定数、存在するとみられています(このため、大多数のソーシャルレンディング事業者が、法人名義での投資家登録を受け付けています)。

なお、前述の「匿名組合」スキームの特質として、投資家は、ファンドの事業内容に関して、外部の第三者に対する責任・権利を負わない、いわゆる「有限責任性」が確保されています(=投資家の損失の最大額は、自身が出資した資金全てを失うこと。逆に言えば、それを上回る賠償義務を負うようなことはない)。
この点は、ソーシャルレンディング投資に取り組む投資家のメリットのひとつと言えますが、反面、匿名組合員という立場上、ファンドの営業者の行う運営内容に関して、一切、参与権を持たない(=ファンドの運営に直接関与できない)、というデメリットも含有しています。

なお、一般個人投資家がソーシャルレンディング投資を行う場合、あらかじめ、当該ソーシャルレンディング事業者に対して、オンラインでの投資家登録を済ませる必要がありますが、この際、本人確認書類として、

  • 運転免許証等の写真付き身分証明書や、
  • マイナンバーを把握できるもの(マイナンバーの通知カード、ないしは、マイナンバーカード本体)

の画像提出を求められることがあります。

ソーシャルレンディングで債務者となる「借り手企業」の存在

ソーシャルレンディング事業者から資金を借り受け、利息、及び元金をソーシャルレンディング事業者に返済することとなるのが、いわゆる「借り手企業」です。
尚、現在の日本国内のソーシャルレンディングでは、借り手となるのは、

  • 基本的に、「事業者」であり(=消費者向け金融ではない)、
  • かつ、「法人」であること(=個人事業主は、基本的に融資先とならない)、

が一般的です。

借り手企業の営む事業内容は様々ですが、

  • 不動産仕入れ資金をソーシャルレンディング事業者から借り受ける、不動産開発・販売事業者や、
  • 自身のクライアントに対する貸付原資を、ソーシャルレンディング事業者から調達する、貸金業者(金融事業者)、
  • ソーシャルレンディング事業者から借り入れた資金で、顧客が保有する債権を買い取る、債権回収業者(ファクタリング業者)など、

様々なビジネスモデルを持つ企業群が、ソーシャルレンディング事業者からの資金調達を実施しています。

なお、ソーシャルレンディングというビジネスモデルは、借り手企業がソーシャルレンディング事業者に対して、事前約定通りに、利息、及び元金の返済を行うことが、重要な前提条件とされています。
このため、投資家目線から見ると、借り手企業の財務状況や返済原資等に関する情報は、極めて大切なものとなりますが、国内のソーシャルレンディング業界では、むしろ長きに渡り、主に(貸金業法の定める)借り手保護の観点から、投資家に対し、借り手企業に関する具体的な情報は、非開示(匿名化)とされてきました。

その後、金融庁が公式見解(=ソーシャルレンディング事業者が、投資家に対して、借り手企業の具体的情報を開示したとしても、その点をもって、貸金業法違反に問われることはない、とする見解)を発表したことにより、情報開示に積極的なソーシャルレンディング事業者を中心に、借り手情報の公開が進んでいますが、依然として、一部の事業者においては、借り手匿名化が継続されている、という点には、注意が必要です。

ソーシャルレンディング事業者の役割とは

ソーシャルレンディング事業者の役割は、

  • 第二種金融商品取引業の登録に基づき、投資家からの出資を募り(募集業務)、
  • かつ、貸金業法の登録に基づいて、外部の借り手企業に対して、資金を融資し、回収する(融資業務)、

という2点に大別されます。

「ソーシャルレンディング」という投資モデルについて、「個人が、企業に対して、インターネットを経由して、お金を貸すことが出来るビジネスモデル」と考えておられる方もいるようですが、これは、些か、誤解です。

日本国では、貸金業法の規制により、貸金業の登録を受けていない個人・法人が、融資を(事業として)反復・継続的に行うことは、禁止されています。
このため、「ソーシャルレンディング」においても、借り手企業へと実際に融資を行うのは、投資家ではなく、あくまでも、貸金業の登録を受けた、ソーシャルレンディング事業者です。
そして、投資家は、(借り手企業に対して、直接融資するのではなく、)ソーシャルレンディング事業者の募集するファンドに「匿名組合出資」をするだけ、という体裁となります。

こうした事情から、「ソーシャルレンディング」という投資モデルを正確に表現するためには、「貸金業者の融資プロジェクトに、小口出資をすること」とするのが、正確性の観点からは、適当と言えましょう。

3ヶ月程度の短期運用のソーシャルレンディングファンドは存在する。

ソーシャルレンディングファンド(匿名組合)の運用期間は、まさに、ファンドによって千差万別であり、中には、3ヶ月程度の極めて短い運用期間を予定しているソーシャルレンディングファンドも、複数、存在します。

3ヶ月運用のソーシャルレンディングファンド例:maneoの場合

3ヶ月運用のソーシャルレンディングファンド例:maneoの場合

引用元:maneo「事業性資金支援ローンファンド1542号」https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=7079

↑maneoのソーシャルレンディングファンド、「事業性資金支援ローンファンド1542号」の場合、運用期間については、

3ヶ月運用のソーシャルレンディングファンド例:maneoの場合01

引用元:maneo「事業性資金支援ローンファンド1542号」https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=7079

↑上掲スクリーンショットの通り、2019年4月初旬から7月下旬までの、3ヶ月程度を予定していることが明記されています。

3ヶ月運用のソーシャルレンディングファンド例:さくらソーシャルレンディングの場合

3ヶ月運用のソーシャルレンディングファンド例:さくらソーシャルレンディングの場合

引用元:さくらソーシャルレンディング「さくら近畿(大阪)セレクトファンド33号」https://www.sociallending.co.jp/fund/detail?fund_id=337

↑さくらソーシャルレンディングのファンド「さくら近畿(大阪)セレクトファンド33号」の場合も、その運用期間については、

3ヶ月運用のソーシャルレンディングファンド例:さくらソーシャルレンディングの場合02

引用元:さくらソーシャルレンディング「さくら近畿(大阪)セレクトファンド33号」https://www.sociallending.co.jp/fund/detail?fund_id=337

↑このように、約3ヶ月を予定していることが記載されています。

3ヶ月運用のソーシャルレンディングファンド例:LCレンディングの場合

3ヶ月運用のソーシャルレンディングファンド例:LCレンディングの場合

引用元:LCレンディング「LCGF552号 3か月運用型」https://www.lclending.jp/apl/fund/detail?fund_id=1083

↑LCレンディングのソーシャルレンディングファンド「LCGF552号 3か月運用型」の場合、運用期間については、まさにファンド名にもある通り、

3ヶ月運用のソーシャルレンディングファンド例:LCレンディングの場合02

引用元:LCレンディング「LCGF552号 3か月運用型」https://www.lclending.jp/apl/fund/detail?fund_id=1083

↑このように、3ヶ月程度を予定している旨が明記されています。

3ヶ月~半年程度の短期運用ファンドに出資する場合の注意点

上掲致しました通り、ソーシャルレンディング事業者の中には、3ヶ月程度の短期運用型のファンドを取り扱っているところも、複数、存在します。
しかしながら、そのような短期運用型ファンドに出資する場合、複数の点に注意を要するものと思料されます。

資金が本当に3ヶ月で返ってくるとは限らない。

ファンド(匿名組合)が満期を迎えた場合、ソーシャルレンディング事業者(匿名組合の営業者)は、投資家(匿名組合員)に対して、益金等の最終的な分配(=元本の償還を含む)を行います。
ただし、ソーシャルレンディング事業者が投資家に対する分配を行う、その「分配原資」は、あくまでも、借り手企業がソーシャルレンディング事業者に対して返済した、元利金です。
このため、万が一、借り手企業からソーシャルレンディング事業者に対する元利金返済(特に、金銭消費貸借契約終了に伴う、元金の返済)に、遅延が発生した場合、ソーシャルレンディング事業者から投資家への分配にも、当然、遅れが生じることとなります。

すなわち、

  • 匿名組合(ファンド)が事業を開始した時点では、約3ヶ月程度の運用を予定していたファンドの場合でも、
  • 借り手企業からソーシャルレンディング事業者への元利金返済状況等によっては、従来の貸付・運用予定期間(約3ヶ月)を経過した後になっても、

投資家への元本償還を行えない、という事態に陥る可能性があります。

ソーシャルレンディング事業者は、元本保証義務を負わない。

匿名組合契約(=投資家が、ソーシャルレンディング事業者のファンドへと出資する際に、締結することとなる、契約)において、ソーシャルレンディング事業者は、投資家に対し、投資元本の保証を行いません。
借り手企業からソーシャルレンディング事業者への元利金返済に遅延が生じた場合、ソーシャルレンディング事業者は、金銭消費貸借契約に基づき、借り手企業に対して、遅延損害金を請求します(金銭消費貸借契約において定めがある場合)。
しかしながら、この「遅延損害金」は、あくまでも、ソーシャルレンディング事業者(債権者)が、借り手企業(債務者)に対し請求するものであり、投資家がソーシャルレンディング事業者に対し請求するものではありません。

これらの事情により、

  • 投資家が出資した資金は、元本割れする場合があります(=ソーシャルレンディング事業者は、棄損した元本を補てんする義務を負いません)。
  • ファンドからの満期分配が遅延した場合においても、投資家は、ソーシャルレンディング事業者に対し、遅延損害金を請求することは出来ません。

※ソーシャルレンディングと遅延損害金の関係については、こちらの別記事をご参照下さい。

ソーシャルレンディングと遅延損害金

ソーシャルレンディング投資は、あくまでも純粋な余裕資金で。

上掲致しました通り、ソーシャルレンディングファンド(匿名組合)に対し出資した資金は、その償還に遅延が生じる可能性があり、かつ、元本棄損リスクを含有しています。
これらの事情を勘案致しますと、「3ヶ月後に、必ず返ってきてもらわないと、困るお金」を、ソーシャルレンディング投資に回すことは、危険である、といえます。
ソーシャルレンディング投資を行われる場合におきましては、あくまでも、純粋な余裕資金を充てられるよう、十分にご留意ください。

追記:ソーシャルレンディングで【1ヶ月】の超短期運用は可能か

頂戴したご質問

「3ヶ月程度のスパンで投資ができるファンドがある点については、了解しました。
加えてお伺いしたいのですが、さらに短く、例えば、1ヶ月程度で満期償還となるようなファンドは、ありますでしょうか?」
(30代・女性・ソーシャルレンディング投資歴なし ※冒頭ご質問者様と同一)

当ラボにて調査した限りにおいては、ソーシャルレンディング各社のファンドの中で、運用予定期間を、当初から【1ヶ月】という超短期に設定しているケースは、極めて稀です。

1ヶ月程度の超短期運用では、さすがに、ソーシャルレンディング事業者としても、利益が出ないのでは

一般的に、ソーシャルレンディング事業者の営業者報酬は、「貸付総額×営業者報酬料率×貸付期間」の計算式によって求められます。
例えば、貸付総額1,000万円、というファンドの場合、営業者報酬料率が5パーセントであったとしても、貸付期間がわずか1ヶ月であれば、営業者報酬は、1,000万円×5パーセント×1ヶ月/12ヶ月=4万円強程度にしかなりません。
ソーシャルレンディング事業者としても、ファンドを組成・公開する以上、それなりのコストは負担しているはずから、見込み収益が数万円程度、では、損益上のメリットがない、と判断するものと思われます。

早期償還の結果、たまたま、運用が1ヶ月で終了した、というケースは実在するが…

1ヶ月で運用終了となったソーシャルレンディングファンド

引用元:オーナーズブック(https://www.ownersbook.jp/project/index/all/4/2/)

オーナーズブックのソーシャルレンディングファンド「御苑高木ビル 第2回」(※詳細URL:https://www.ownersbook.jp/project-detail/index/1008/)は、元来、9ヶ月の運用を予定していましたが、期限前償還によって、運用は、1ヶ月という短期で、終了することとなりました。
こうしたケースが実在することは確かですが、期限前償還は、あくまでも、ソーシャルレンディング事業者(及び、借り手企業)の判断によって為されるものであり、投資家が関与・判断できる物ではありません。

1ヶ月以内に償還が必要な資金≠余裕資金

大前提として、投資には、余裕資金を充てて臨むことが肝要です。
ましてや、ソーシャルレンディング投資の場合、上述も致しました通り、

  • ファンドの延滞リスクもありますし、
  • 元本割れのリスクもあります。

こうした事情を勘案すると、「1ヶ月間しか運用に回せない資金」を、ソーシャルレンディング投資に回すことは、不合理、かつ、危険な投資行為となりかねません。
くれぐれも、ご注意・ご留意を頂きますよう、推奨申し上げます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
少しでも、ご参考と為さって頂ける内容と出来たのであれば、幸甚です。

投資家、資金需要者、双方から、高い注目を集めている、ソーシャルレンディング。
しかしながら、業界にまだ未成熟の部分も多く、いくつかの「危険会社」の存在も気にかかります。
ソーシャルレンディング投資開始にあたっては、こちらの過去記事も、是非、ご参照下さい。

ソーシャルレンディング危険会社ランキング【最新版】

それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会いいたしましょう。

※本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ソーシャルレンディングファンド等)への投資勧誘等を目的としたものでは、ありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設等、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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