ソーシャルレンディング初心者入門講座【第7回】ソーシャルレンディング投資の未来展望。

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

全8講座でお届けする、ソーシャルレンディング初心者入門講座。
本コンテンツでは、ソーシャルレンディング投資の未来展望を共有させて頂きます。

ソーシャルレンディングの未来展望①【規制緩和による情報提供拡大】

現行法下のソーシャルレンディング投資の場合、貸金業法による規制の関係で、「貸付先企業の具体的名称等が、匿名化されている」という、大きなネックがあります。

今のソーシャルレンディングは、「闇鍋」状態。

当該規制の関係で、現行ソーシャルレンディング投資においては、各ファンドへの投資是非判断の局面にて、何はともあれ、ソーシャルレンディング事業者を信頼するしかない、というのが、原則となっています。

資金の借り手事業者の具体的情報は、各ファンドの概要情報において、「不動産事業者A」等と表現されている程度で、とてもではないですが、わたしたち個人投資家の立場から、事業者を特定することは出来ません。
融資先事業者の「資金使途」についても、同じく、「あくまでも、ファンド概要情報に記載されている情報を、信頼するしかない」という状態です。

「業界の有力企業が、将来性の極めて高い、太陽光発電事業に取り組む」
ための資金募集、と書かれていても、本当は、
「ソーシャルレンディング事業者の社長の親族が、趣味で飲食店を開くために、お金を調達したいと思った」
等という、とんでもない資金使途であったたとしても、おかしくはない、というのが現実なのです。

匿名化廃止へ、一筋の光が。

こうした現況に対し、2018年6月17日の日経新聞記事による報道は、大きなインパクトを与えるものでした。

引用元:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31871260W8A610C1MM8000/

実際にこの後、実際に規制緩和・情報開示が進めば、
現状のような「闇鍋状態」は、明らかに改善されることが期待できます。
ひいては、私たち個人投資家としては、各投資案件を、より緻密に精査できることとなります。

ソーシャルレンディング事業者の身内(親族)の経営する会社に融資、などは、論外、となるでしょうし、
自転車操業をしている会社(=ファンドから資金を借り、そのファンドへの償還が近づくと、また新たなファンドを組成してもらって、借り換える、というのを、繰り返している会社)も、ソーシャルレンディングを通しての資金調達が難しくなるでしょう。
開示される情報の程度にもよりますが、もし、想定される最大限の情報開示が為される、ということであれば、

  • 融資先企業に関する具体的情報のみならず、
  • 融資先企業が、担保として提供する、担保物に関する詳細情報も、明らかになる可能性があります。

もしもそうなれば、各ファンドへの出資是非の判断は、より緻密に行えるようになります。
その気になれば(たとえば、担保物が、不動産なのであれば)、担保物を実際に、自分の足で、確認しに行くことも、出来るようになるわけです。
登記事項証明書も、自分で取得・閲覧すればいいことです。

「担保物(不動産の場合)の評価額は、本当に妥当なのか。」
「その不動産には、先順位抵当権が付いてしまっているのではないか。」
そのような不安は、自分の目で物件をきちんと見れば、解消され得ることでしょう。
わたしたち個人投資家にとって、まさに、福音と言っても良い、規制緩和だと思います。

どこまで情報開示が進むか、には、留意の要が。

ただし、情報開示の具体性については、いくつか、疑問点もあります。

まず、情報開示は、義務となるのか、任意となるのか。
前述の日経新聞記事では、「情報開示が【可能となる】」との表現となっています。
情報開示が【義務化されるのか】、あくまでも、【任意なのか】、という点については、本特典コンテンツ執筆現時点では、明朗な情報がありません。
ただし、わたしの個人的な見解として、

  • 融資先企業に関する情報開示が、少なくとも、「可能」となる以上、
  • それでも尚、情報開示を「しない」という選択をするソーシャルレンディング事業者は(※そのような事業者が存在すれば、ですが)、淘汰されていくこととなるものと思います。

ごく平易に考えて、
「年利10パーセント! でも、どこの会社に資金融資をするかは、内緒です。情報開示は法令で許されていますが、敢えて、開示は差し控えます」
というファンドと、
「年利は5パーセントです。資金の融資先は、株式会社〇〇です。代表者は〇〇という人物です。担保物は、同社が所有する不動産(土地・建物)であり、〇県〇市〇町〇番地にあります。登記事項証明書を御覧頂ければと存じますが、現在、有効な抵当権は設定されていません」
というファンド、どちらに投資するでしょうか。
私であれば、完全に後者です。

なお、どの程度の開示が為されるのか、という点についても、注意が必要です。
あくまでも、「融資先企業」に関する情報開示が可能となる、とのことですが、

  • 単に、会社名だけが開示となるのか、
  • 担保物に関する情報や、返済原資確保に関するその余の情報等々についても、開示対象となるのか、

という点については、本コンテンツ執筆現時点では、まだ分かりません。

まず、担保物に関する情報が開示されることの意義は、上述した通りです。
そのほかに、例えば「ファンドからの融資金を原資に仕入れる不動産を、速やかに第三者に譲渡することによって、元利金の返済原資を確保する」というタイプのファンドであれば、その売却計画の具体的な情報(例:既に購入意思を示している企業名等)が開示されれば、わたしたち個人投資家にとって、投資是非の判断は、より緻密さを増すこととなります。
そのように深度のある情報についても開示対象となるのか、どうか、という点については、大きなポイントとなってくるでしょう。

いずれにせよ、ソーシャルレンディング業界にとっては、大きな追風となる規制緩和です。
特に、「投資家保護」の姿勢が鮮明に打ち出された、規制緩和だと思います。
時々、行き過ぎた「投資家保護」姿勢は、かえって投資家を遠ざけてしまうことになる場合がありますが、今回の施策は、ソーシャルレンディング投資に、わたしたち個人投資家をさらに惹き付ける契機となり得るものだと、私は個人的に、考えています。
今後の新情報に、注意が欠かせません。

ソーシャルレンディングの未来展望②【期待される税制改革】

現在の所得税法下においては、
ソーシャルレンディング投資を通して得た利益は、所得分類上、雑所得に該当し、
また、課税制度としては、分離課税ではなく、総合課税制度の対象となります。

このことは、既に課税所得が多く、累進課税の影響下にあるような人々にとって、大きな制約となります。

総合課税制度の対象となる以上、その人が日頃受け取っている給与所得等の多寡によっては、
累進課税の影響により、場合によっては、利益金の50パーセント前後ものお金が、税金として、徴収されてしまいます。

これに対して、株式投資等の場合、利益金は分離課税の対象であり、税率は20パーセント程度です。
あくまでも分離課税の対象である以上、その人のその他の所得(例:給与所得)の多寡とは、一切、関連がありません。

もしも、将来、ソーシャルレンディング投資による分配金所得に対する課税制度が、
株式投資によって得た収益に対する課税制度と同様、分離課税、となれば、

  • 株式投資と比較すれば、多少なりとも、高い再現性を有する
  • しかし、課税制度は、株式投資の場合と同じく、分離課税

ということで、より多くの資金が、ソーシャルレンディング投資へと流れ込んで来て、
ひいては、市場の更なる活性化へと繋がることでしょう。

今後、ソーシャルレンディング投資が更なる盛り上がりを見せ続ければ、
力をつけた各ソーシャルレンディング事業者によるロビー活動も、活発になるでしょうし、
また逆に、既に政財界に強いネットワークを持つ大手企業が、ソーシャルレンディング事業へと参入してくる可能性もあります。

今後の有意な流れに、期待したいところです。

ソーシャルレンディングの未来展望③【フィンテック連携による個人向け融資や、自動積立機能の搭載など】

現在のソーシャルレンディング投資の場合、ファンドからの資金貸付先は、基本的に、事業者です。

しかし現在、日本でも、
銀行やクレジットカード会社から取引履歴を抽出し、各個人の家計の状況を自動で管理してくれるサービス、具体的には、マネーフォワードのような家計簿系サービスが充実してきています。

こうした家計簿系のサービスの一つの到達点は、
そのサービス提供事業者が、ひとりひとりのユーザーの、膨大、かつ正確な、金融上のスコアリングデータを手中にすることにあります。
必要十分に匿名化された状態で、各ユーザーに関し、

  • 毎月、どの程度の収入があり、
  • いかほどの支出があり、
  • 総資産の量はどのくらいであり、どう推移しているか、

をデータ化し、それをもとに、推奨され得る投資商品を提案したり、住宅ローンや学資ローンといった、借り入れ型の金融商品をサジェストしたり、といった形をとっていくのが、ひとつのモデルパターンです。

ソーシャルレンディング事業者と、こうしたフィンテック企業とが連携すれば、

  1. 様々なユーザーに、適度なリスク性向の中で、推奨され得るソーシャルレンディングファンドを自動提案することも、可能となるでしょうし、
  2. 逆に、各ユーザーの借入能力に関する、迅速、かつ確度の高いスコアリングデータ(与信データ)を元に、ソーシャルレンディング事業者にとってのボロワー(借り手)マーケットに、そうした個人を組み込んでいく、という事も、可能でしょう。

そうすれば、現在は「対事業者」にほぼ特化されている、ソーシャルレンディング投資の借り手マーケットが、個人をも取り込むことが可能となり、
必然的に、マーケットは一気に拡大することとなるでしょう。

次回のソーシャルレンディング初心者入門講座は…

次回はいよいよ、初心者入門講座、【ラストコンテンツ】となります。
公開を楽しみにお待ちください。

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本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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