【ソーシャルレンディングファンド分析】SBIソーシャルレンディング「バイオマスブリッジローンファンド4号」の場合
個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。
ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを題材に、各社の特徴や、ファンドごとのリスク・リターンのバランス等を検証する本企画。
今回は、SBIソーシャルレンディングが2018年9月に資金募集を行ったソーシャルレンディングファンド、「バイオマスブリッジローンファンド4号」を題材に、読み解きを進めて参りましょう。
本ファンドの概要
引用元:https://www.sbi-sociallending.jp/
SBIソーシャルレンディングのホームページ(https://www.sbi-sociallending.jp/pages/bbl4_fund)から確認した、同ファンドの概要としては、下記の通りです。
本ソーシャルレンディングファンドの情報URL
こちらです。
↓
https://www.sbi-sociallending.jp/pages/bbl4_fund
本ソーシャルレンディングファンドのスキーム図
引用元:https://www.sbi-sociallending.jp/pages/bbl4_fund
ファンドからの資金の借り手
- バイオマス発電事業に必要な権利等を確保し、バイオマス発電設備の設置を行うことを予定している事業者と、
- 上記事業者の取締役が代表取締役を務める法人
がボロワー(資金の借り手)となります。
貸付資金の総額
本ファンドによる貸付は、15億円、とのこと。
借り手の資金使途
ボロワーとしては、
- 今回のバイオマス発電事業のための用地取得費用。
- バイオマス発電した電力を、所定の条件で電力会社へと売電するための権利・地位の確保。
- バイオマス発電を安定して行うために必要な原材料の供給を受けるための権利の確保。
- 建物を含むバイオマス発電設備等の建設・設置。
上記のような事柄のために、資金を使用していく、とのこと。
本ソーシャルレンディングファンドの貸付・運用期間
2018年9月下旬~2020年9月末日の、約2年間の貸付・運用となります。
設定担保
- ボロワー(バイオマス発電を行う予定の事業者)の株式に、質権を設定。
- バイオマス発電事業のために使用する予定である事業用地に、抵当権を設定。
- 発電設備を管理する建物(建築予定)に、抵当権を設定。
- 建設及び設置予定である燃料精製設備(具体的には、堆肥貯蔵施設、発酵槽、ガスホルダー等)、発電設備一式(※具体的には、バイオガス発電機、キューピクル等)に対して譲渡担保権を設定。
とのこと。
担保評価総額としては、15億6,500万円との記載があります。
返済原資
ボロワーとしては、
- 他の金融機関からの借換え(リファイナンス)か、
- 今回のバイオマス発電事業に係る権利や、発電設備を含む関連建物等を、第三者に売却し、その売却代金等を、
返済原資に充てる計画である、とのこと。
わたしたち個人投資家の期待利回り
7パーセント、とのことです。
本ソーシャルレンディングファンドの資金募集達成度は
引用元:SBIソーシャルレンディング
↑
同ファンドは現在運用中であり、「貸付総額」欄には、「819,000,000」(=8億1900万円)との表記があります。
15億円の募集に対して、集まった資金が、8億円強であった、ということでしょう。
運用・返済状況は
上掲の通り、本記事執筆本日現在、目下運用中、というところのようです。
本ソーシャルレンディングファンドのポイント
私が考える、本ソーシャルレンディングファンドのポイントは、下記の通りです。
なお、あくまでも、私の個人的な見解です。
バイオマス発電事業そのものは、非常に興味を惹かれる物。
SBIソーシャルレンディングが用意してくれている、「SBISLバイオマスブリッジローンファンドコンセプト」ページに、
非常に分かりやすく、丁寧に情報がまとめられています。
是非、ご一読下さい。
↓
SBISLバイオマスブリッジローンファンドコンセプト
https://www.sbi-sociallending.jp/pages/bbl4_fund_3
詳細は上記ページに譲りますが、大まかにまとめると、下記のようになります。
- 太陽光や太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱、といったエネルギー源が、「再生可能エネルギー」と総称される。
※これに対して、石油・石炭などの化石燃料は、有限資源。 - 上記のうち、「バイオマス」とは、動物・植物などを由来とする生物資源の総称。
- 一口に「バイオマス発電」といっても、発電方式や燃料の違いにより、いくつかの種類がある。
- 今回ボロワーが行うのは、生物化学的ガス化方式、と呼ばれるバイオマス発電方式。
- 家畜の糞尿や、生ゴミなどの食品残渣(ざんさ)を発酵させて、メタンなどのガスを発生させ、そのメタンガスを燃料にしてタービンを回し、発電を行う、という物。
- 「家畜の糞尿や、生ゴミなどの食品残渣(ざんさ)」は、当然、「ゴミ」にあたる。そのゴミを燃料として使用できるわけなので、燃料調達コストが安い。
- 生物化学的ガス化方式によるバイオマス発電を通して発電された電力の「買取価格」は、他の再生可能エネルギーの買取価格よりも、優遇されている。
特に、上記の第7点目に関しては、経済産業省・資源エネルギー庁が公表している、下記の資料が明朗です。
↓
引用元:http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/setsumei_shiryou.pdf
太陽光(事業用・住宅用、双方)や、風力等による発電エネルギーの買取価格が、少しずつながら、低減していくのに対して、
メタン発酵ガスによるバイオマス発電に関しては、
引用元:http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/setsumei_shiryou.pdf
↑このように、しっかりと「据え置き」を確保している模様です。
これからの点を勘案すれば、
確かに、バイオマス発電事業、特に、メタン発酵ガスを用いた方式による物については、
非常に面白い事業である、とは、私も思います。
ファンドとしては、いくつかの要留意点を持つ。
私としては、主に下記の数点が、気になりました。
バイオマス発電事業は、本当にスタートできるか。
本ファンドの、「ファンドの概要・手数料・リスクについて」資料(https://www.sbi-sociallending.jp/assets/pdf/biomass_loan_fund_4.pdf)に、下記事項が明記されています。
もっとも、当該各権利の全部若しくは一部又は必要な許認可を取得できないこと、
当該部材の購⼊又は本件建物の建築若しくはバイオマス発電設備等の建設・設置等に⽀障を及ぼす事由(原材料費・資材費・工事費の増⼤、原材料の調達に⽀障を及ぼす事象の発⽣、当該建築・建設・設置等を⾏う事業者の倒産等)の発⽣、
法令等の制定又は改廃等により、
本件バイオマス発電事業の実施が遅延し又は困難となる可能性があります。
引用元:https://www.sbi-sociallending.jp/assets/pdf/biomass_loan_fund_4.pdf
あくまでも、専門性の高いプロが集まっての事業計画でしょうから、上記のような事態が具現化する可能性は、決して、高くないのでしょうが、
急な法改正リスク等の外部・不可抗力要因は、いささか、気になるところではあります。
※買取価格等が、(確かに、一定期間の間は、据え置きが見込めるのでしょうが)どうしても、政府機関等、外部ステークホルダーの決定に左右され得る、という点も、気にかかります…。
担保設定
今回、ボロワーとなるバイオマス発電事業者の株式に対し、質権を設定する、とのこと。
確かに、ボロワーに対する心理的な圧力、という効果はあり得るでしょうが、
実際に、当該株式を換価しなければならない、というシチュエーションにおかれたとき、
未上場株式の換価(=現金化)は、実務上、極めて困難なケースが多いです。
この点は、SBIソーシャルレンディング側の説明書きにも、しっかりと記載されています。
↓
(7)質権の実⾏として担保有価証券を換価する場合、
担保有価証券は未上場株式であり、流動性が乏しいため、売却ができないことにより、
結果として本貸付債権等の返済が遅延し、又は本貸付債権等の回収を⾏うことが困難になる可能性があること。
引用元:https://www.sbi-sociallending.jp/assets/pdf/biomass_loan_fund_4.pdf
また、事業用地、及び建物、という、不動産に対する、担保設定(抵当権の設定)にも、若干の不安要素があります。
↓
カ 弊社は、担保有価証券に対する質権の設定、本件事業用地及び本件建物に対する抵当権の設定並びにバイオマス発電設備等に対する譲渡担保権の設定を⾏う予定であり、
担保目的物の評価額の合計を⾦1,565,000,000 円としております。なお、担保有価証券及びバイオマス発電設備等については評価額を算出することが困難であるため、
個別の価格を算定していないことから、上記⾦額は実質的に、本件事業用地及び本件建物の価格を担保目的物の評価額とみなしたものとなります。
そして、本件事業用地及び本件建物の各価格は、本件バイオマス発電事業者が本件バイオマス発電事業を開始することにより得られることが想定される将来の事業収益に基づいて算出されております。
引用元:https://www.sbi-sociallending.jp/assets/pdf/biomass_loan_fund_4.pdf
要は、事業用地・建物、の評価額を算出するために、収益還元法を用いている、ということです。
そのこと自体には特段問題は無いのですが、
「では、万が一、当該事業が順調にスタート出来なかった場合は、どうなのか。収益還元法に基づいて算出された評価額は、通用し得るのか」
という懸念が残ります。
返済原資について
リファイナンス(借り換え)か、発電事業の売却によって、返済原資を確保する、とのことですが、
(リファイナンスはともかくとして)事業の売却が、真に順調にいくのか、という点については、
少なくとも、私のような素人投資家にとっては、なんとも把握しかねる、という思いがぬぐえません。
また、SBIソーシャルレンディングのリスク説明書にも、下記のような明記があります。
↓
もっとも、他の⾦融機関からの借換え融資を受けられず、又は借換え融資の実⾏の遅れが⽣じる可能性があります。
また、当該本件バイオマス発電事業に係る権利及び発電設備を含む本件建物等を第三者に売却しようとしても、
購⼊希望者が現れず、又は当初の予定価格よりも低い⾦額でしか売却できない可能性もあります。
これらの事情により、結果として本貸付債権等の返済が遅延し、又は本貸付債権等の回収を⾏うことが困難になる可能性があります。
引用元:https://www.sbi-sociallending.jp/assets/pdf/biomass_loan_fund_4.pdf
ごくシンプルな「収益不動産(例えば、賃貸アパート等)」の売却でも、
なかなか予定通りの価額で進まぬ、というケースは、枚挙にいとまがありません。
そうした中、これだけ特異性のある事業、及び不動産(バイオマス発電事業用の用地、及び建物)ですから、
どれだけスムースに売却が出来るのか、という点は、なかなか判断が難しいところではなかろうか、と、少なくとも私には、思えてしまいます(単に私が心配性なのかも知れません)。
- バイオマス発電事業は、非常に先進的な、興味深い取り組みである。
- 利回りも魅力的。
- ただし、いくつか、不可抗力により左右されかねない留意点が存在する。
※リスクについては、SBIソーシャルレンディング側も、「ファンドの概要・手数料・リスクについて」資料において、明記しています。
このあたりのバランスを、いかように判断するか。
その点が、投資是非の判断の、分水嶺となりましょう。
本ソーシャルレンディングファンド検証のまとめ
ソーシャルレンディング各社の過去ファンドを検証し、各社の特徴や、ソーシャルレンディングファンドごとの特色、そして、ファンド概要の読み解きのヒントを探る本シリーズ。
今回は、SBIソーシャルレンディングのファンド「バイオマスブリッジローンファンド4号」を題材に、検証をさせて頂きました。
しつこいようで申し訳ありませんが、
本記事文中の表現は、いずれも、私のごく個人的な意見に過ぎません。
その点は、くれぐれも、ご承知おきください。
しかし、あくまでも、その限りにおいて、
少しでも、「これからソーシャルレンディング投資を始めてみよう」とお考えの読者様にとり、
ファンド概要の読み込みの具体例として、ご参考になさって頂ける内容と出来たのであれば、嬉しい限りです。
なお、
上掲のSBIソーシャルレンディングの組成するファンドの場合、ファンドシリーズによっては、かなりのスピードで資金が集まり、
ひいては、あっという間に資金募集枠がいっぱいに、というケースが、少なくありません。
いざ、というときの投資機会を逃さぬためにも、
出来るだけ時間的にゆとりをもって、投資口座開設だけでも、済ませておくと良いかもしれません。
「とりあえず、投資口座だけでも開いておくか」という方は、こちらの公式ページからどうぞ。
↓
SBIソーシャルレンディング(公式)
SBIソーシャルレンディングの投資口座開設は、極めてシンプルですが、
初めてで不安、という方は、あらかじめこちらの別記事もご参照下さい。
↓
[blogcard url=”https://social-lending.online/sl-companies/sbi-sl/sbi-account-openning/”]
それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会い致しましょう。
追伸:
私は、現在、国内23社のソーシャルレンディング事業者に、資金を分散投資していますが、
私の周りの人々に、最低限、ある程度の自信をもっておすすめできるソーシャルレンディング会社、というのは、かなしいかな、限られます。
下記の記事では、私の、数少ない、おすすめソーシャルレンディング会社を、紹介させて頂いております。是非、ご覧下さい。
SBIソーシャルレンディングも、記事中に登場します。
↓
【おすすめのソーシャルレンディング業者はどこですか?】国内23社分散投資中の筆者が、ソーシャルレンディング初心者様におすすめする、厳選3社がこちら。
本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。
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