【申告分離?損益通算?】ソーシャルレンディングに期待される税制改正とは

ソーシャルレンディングの現在の税制上の課題

「定期預金等と比べて、高い利回りが期待できる」
「1万円程度の小額から投資をスタートできる」
「投資期間中は、運用に手を割く必要が無い」
等として、個人投資家からの関心を集めているソーシャルレンディング。

しかしながら、ソーシャルレンディングの場合、日本で裾野を広げ始めてから、まだ間もないこともあって、その投資収益に関し、税制上は、必ずしも、優遇されているとは言えない状態です。

所得の種類としては「雑所得」に該当

投資家がソーシャルレンディング投資を経て受け取る利益(分配金)は、所得の種類としては「雑所得」に該当します。
そして、雑所得の場合、たとえ、その所得に「損失」が生じたとしても、他種の所得との間で損益通算の対象とはならない、という難点があります(※ただし、雑所得内であれば、原則として、損益通算が可能です)。

たとえば、不動産投資家にとってはお馴染みの「不動産所得」であれば、減価償却等で赤字が生じた場合、会社からの給料等で構成される「給与所得」との間で、所得区分をまたいだ損益通算を行うことが出来ますが、
「雑所得」に該当するソーシャルレンディングの場合、たとえ投資で損失が発生したとしても、他の所得区分の所得(例えば、給与所得)との間で、損益通算を行うことは出来ません。


参考:
No.2250 損益通算|国税庁

申告分離課税は使えず、総合課税の一択

ソーシャルレンディング投資収益に対する実際の課税制度としては「総合課税」が適用されます。
同じ雑所得でも、「申告分離課税」制度の適用対象となっているFX投資などと比較し、この点は、ソーシャルレンディング投資の大きなデメリットのひとつです。

総合課税制度が適用される以上、ソーシャルレンディング投資収益は、給与所得等と合算されることとなるため、
既に給与所得が高く、高い所得税率を課せられている方の場合、ソーシャルレンディング投資収益に対しても同様に、高税率(最高税率45パーセント)が課せられることとなるから、です。

反面、申告分離課税制度適用が認められているFX投資の場合、税率は(給与所得の多寡に関わらず、)一律で、20.315パーセント(復興特別所得税、及び、地方税を含む)です。

求められる税制改正の形

ソーシャルレンディング投資がさらにその裾野を広げるためには、投資家にとって、より投資しやすい形への、税制改正が望まれます。

まずは、申告分離課税の適用を

具体的な税制改正としては、まず、上述の”総合課税一択”状態が緩和され、申告分離課税の適用が認められるようになることが期待されましょう。
給与所得が高く、所得税率が高い投資家でも、FX投資等と同様、比較的低い税率(利益に対し20パーセント強程度)で投資できることとなりますので、裾野は大きく広がっていくことが予想されます。

第2段階で損益通算も

さらに次のステップとして、不動産投資収益(不動産所得)の場合と同様、
ソーシャルレンディング投資収益で生じた損金(赤字)について、給与所得等との損益通算が認められるようになれば、
たとえソーシャルレンディング投資で損失が生じたとしても(例:融資債権のデフォルトなど)、そのダメージを軽減することが可能となります。

他の投資商品に関して為された税制改正

現在は申告分離課税に一本化されているFX投資も、実は、2012年の税制改正までの間は、総合課税を中心とした課税が為されていました。
このように、業界からのロビー活動等を通して、特定の投資分野に対し、税制の改正が行われることは、決して珍しい事ではありません。

株式投資についても、つみたてNISAの延長など、基本的に投資家にとって有利となる税制改正が続いています。


参考:
つみたてNISAの概要|金融庁


しかし、税制改正が投資家にとって有利なものとは限らない、というのも事実。
たとえば不動産投資の場合、2020年の税制改正で、主に海外不動産を活用した節税スキームが、大きな制約を受けることとなりました。

このように時代の趨勢や、諸々のマクロ・ミクロ事情に左右されながら、様々な税制改正が行われていくこととなりますので、
各投資家においては、自身の投資ポートフォリオ全体を俯瞰しつつ、適宜、臨機応変に対応していくことが肝要となります。


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