ソーシャルレンディングファンドの成功例
成功例も?今話題のソーシャルレンディングとは
「貸金業」と「金融商品取引業」の登録を併せ持つ「ソーシャルレンディング事業者」の募集するファンドに対して出資し、その後、ソーシャルレンディング事業者が得た利息収入を原資とした、利益分配に期待する投資手法が、「ソーシャルレンディング」と呼ばれています。
元来、許可を得た貸金業者の独占領域とされてきた「貸金ビジネス」に、「匿名組合出資」というスキームを利用して小口出資することが出来る、として、投資に高い期待利回りを求める個人投資家層を中心に、昨今、関心が高まりつつあります。
ソーシャルレンディング投資の基本的なフロー
- 投資家登録を募集しているソーシャルレンディング事業者の中から、気に入ったソーシャルレンディング事業者を選び、オンラインで「投資家登録」を行う。
- 投資家登録を済ませたソーシャルレンディング事業者の「募集中ファンド」情報を閲覧し、出資したい案件があれば、同じくオンラインで、出資申込を行う。
- 出資が成立したら、ソーシャルレンディング事業者に対して、出資用資金の振込を行う(※ソーシャルレンディング事業者によっては、出資用資金の事前預託・デポジットが必要となるケースもあります)。
- ソーシャルレンディング事業者は、投資家から集めた資金を、外部の(ただし、ソーシャルレンディング事業者自身のグループ会社のこともある)資金需要者に対して、融資する。その後、融資先企業から、利息・元金を回収する。
- ソーシャルレンディング事業者は、融資先から回収した利息金を元手に、投資家への利益分配を行う。また、最終的に回収した元本を原資に、元本償還を行う。
ソーシャルレンディング投資の魅力
- 審査業務や、実際の融資、その後の回収業務等は、全て、貸金業の登録を受けたソーシャルレンディング事業者(ないしは、そのグループ会社)が行うため、投資家自身がそうした作業に着手する必要はない(むしろ、貸金業の登録を受けていない一般個人・法人が、そうした業務にタッチすることは、貸金業法で禁止されている)。
- 伊藤忠商事などの大企業や、民間の著名ベンチャーキャピタルから、多額の出資を受けているソーシャルレンディング事業者も存在する。また、上場企業の100パーセント子会社(完全子会社)が運営にあたるソーシャルレンディング・サービスも、複数ある。
- ファンドの運営は、匿名組合の営業者であるソーシャルレンディング事業者が行うため、個別株式銘柄投資やFX投資、仮想通貨投資等と違い、投資家の力量・ノウハウの違いが、運用成績の違いに直結することが無い(=投資初心者でも、ベテラン投資家と同じリターンを期待することが出来る)。
- ソーシャルレンディング事業者と投資家との間の契約関係としては「匿名組合」が利用されているため、投資家の有限責任性が確保されている(=投資家の損失の上限は、出資した資金の全額。それを超過する賠償義務等を投資家が負うことは無い)。
- 上場企業に対して融資を行うファンドや、貸付にあたり、借り手の所有資産に担保権を設定(不動産への抵当権設定や、債権への質権設定)するファンドも存在する。
参考:
【2021年9月最新版】ソーシャルレンディングおすすめ10社&危ない3社比較ランキング【投資初心者必見】
ソーシャルレンディング投資のリスク・注意点
- 貸金業法の求める「借り手保護」の観点から、資金の融資先企業(=借り手企業)に関する情報が、投資家に対して、非開示とされているケース(アルファベット表記等により、匿名化されているケース)がある。この場合、投資家としては、ファンドへの出資にあたり、そのファンドが、どのような企業に対して融資を行うことを営業内容とするのか、正確に把握することが難しい。
- 借り手企業が、ソーシャルレンディング事業者への利息・元金返済を遅延させた場合、即座に、ソーシャルレンディング事業者から投資家への分配・償還にも、遅れが生じることとなる。延滞が長引けば、ファンドの運用期間も、ずるずると(場合によっては、実質的に無利息で)延長されてしまうリスクがある。
- 出資の中途解約は原則として認められていない。また、ソーシャルレンディング・ファンドへの出資持分をトレードするための市場も存在しないため、途中の換金が困難である(=流動性が低い)。
- ソーシャルレンディング業界では、これまでに、複数の事業者が行政処分を受けるなど、不祥事が相次いでいる。
- 分配金に関しては、税制上の優遇策が一切講じられていない(申告分離課税は利用できず、総合課税の一択。他分野所得との損益通算や、損失の繰越控除も出来ない。NISA口座やiDeCo口座を利用したトレードも出来ない)。
ソーシャルレンディングにおける、ファンド別の成功例とは
高い期待利回りが呈示されているとして、個人投資家を中心に、大きな注目を集めている、ソーシャルレンディング。
本記事におきましては、国内ソーシャルレンディング事業者が組成した、数あるソーシャルレンディングファンドの中から、「ファンド事業としての成功例」と呼び得るものを数点、ピックアップし、ご紹介致します。
ソーシャルレンディングファンドの成功例:クラウドクレジットの場合
引用元:クラウドクレジット(https://crowdcredit.jp/)
多数の海外案件ファンドが掲載されていることで知られる、クラウドクレジット。
同社が組成・公開してきたソーシャルレンディングファンドの中で、成功例と言えるものとしては、下記のようなものがあるでしょう。
東欧金融事業者支援ファンド 17 号
クラウドクレジットが公開している、東欧金融事業者支援ファンド 17 号の満期時報告書面( https://crowdcredit.jp/img/blog/upload/upload_1515654059.)によると、当ファンドの場合、
- 募集時期待利回りは、9.5パーセントであったのに対して、
- 実現利回りは、26. 6パーセントと、極めて高利となった、
とのこと。
なお、当ファンドがこのような成功を収めた原因は、円・ユーロ間の為替変動です。
同上資料によると、
- 運用開始時点では、1ユーロ当たり 124.58 円であった為替換算レートが、
- 運用終了時点では、1ユーロ当たり134.20 円と、大幅な円安・ユーロ高が進んだ結果、
最終的に円建てに換算した際の利回りが、事前想定と比し、大きく向上することとなりました。
東欧金融事業者支援ファンド 16 号
クラウドクレジットの「東欧金融事業者支援ファンド 16 号」もまた、為替変動の影響によって成功を得たファンドの一つと言えます。
同ファンドの満期時報告書面(https://crowdcredit.jp/img/blog/upload/upload_1515653962.)によると、同ファンドの運用開始時の為替換算レートは、1ユーロあたり124.56円であったのに対し、運用終了時においては、1ユーロあたり134.20円まで、円安・ユーロ高が進行。
この結果、
- 募集時期待利回りは、9.6パーセントであったのに対して、
- 実現利回りは、25.4パーセントと、
従前想定を大きく上回る、高い実現利回りを得るところとなりました。
為替変動による成功例の裏には、失敗例も。
為替変動の結果、大きな成功を得ることとなったファンドがある一方で、為替変動の影響を受けることによって、最終損益がマイナスとなってしまったファンドも存在します。
例えば、クラウドクレジットの「東欧金融事業者支援ファンド 74 号」の場合、同ファンドの満期時報告書(https://crowdcredit.jp/img/blog/upload/upload_1554425871.pdf)によれば、
- 募集時期待利回りは、6.0パーセントであったのに対して、
- 実現利回りは、-(マイナス)1.0パーセント、
すなわち、投資・運用の結果、損益が「マイナス」となってしまった、との結果が公表されています。
同報告書によると、同ファンドの場合、現地鵜通貨ベースでは、予定通りの投資収益を得ることが出来たものの、
- ファンドの運用開始時点では、1ユーロあたり129.17円であった、為替換算レートが、
- 運用終了時点では、1ユーロあたり124.16円まで、「円高・ユーロ安」が進行していた結果、
最終的な円換算での損益が、マイナスとなってしまった、とのこと。
クラウドクレジットにて組成・公開されている、為替ヘッジ付帯のないファンドにおいては、上掲したように、事前想定を上回る、大きな成功例がある一方で、こうした失敗例の存在があることも、忘れてはなりません。
ソーシャルレンディングファンドの成功例:オーナーズブックの場合
引用元:オーナーズブック(https://www.ownersbook.jp/)
- 上場企業(ロードスターキャピタル株式会社)による運営
- 全ソーシャルレンディング案件に、不動産担保付
といった点を切り口に、広く投資家からの人気を集めている、オーナーズブック。
同社の組成してきたソーシャルレンディングファンドの中で、その実現利回りに着眼した際、成功例と呼べるものとしては、下記のようなものが挙げられるでしょう。
府中市レジデンス素地第1号ファンド第1回
オーナーズブックの「府中市レジデンス素地第1号ファンド第1回」の場合、
- 予定利回り(年換算)は5.0パーセントであったのに対して、
- 確定利回り(同じく年換算)は、7.5パーセントとなりました。
年利が当初想定と比し1.5倍となったわけですから、一(いち)ソーシャルレンディングファンドとしては、少なくともその実現利回りにおいては、成功例ということが出来るでしょう。
大田区マンション第2号ファンド第1回
「大田区マンション第2号ファンド第1回」もまた、予定利回りと実現利回りとのポジティブな乖離が発生した成功例として、例示対象とすることの出来るファンドです。
こちらは、
- 予定利回りが、年換算5.0パーセントであったのに対し、
- 確定利回りは、同じく年換算で、8.8パーセントとなっています。
予定利回りと確定利回りとの間のギャップは、前掲の「府中市レジデンス素地第1号ファンド第1回」をも上回っています。
年利換算での高い利回りの背景には、早期償還が。
上掲した2ファンド双方、確定した実現利回りが、従前の予定利回りを、大きく凌駕している点は、ファンド成功例として評価に値するものと思料します。
ただし、同時に、例示した「府中市レジデンス素地第1号ファンド第1回」及び「大田区マンション第2号ファンド第1回」の双方において、元来の予定運用終了期日よりも遥かに早い時点で、期限前償還が為されている点について、看過してはなりません。
具体的には、「府中市レジデンス素地第1号ファンド第1回」の場合、予定運用期間は、1年2カ月間であったところ、実際の運用は、わずか3カ月で終了しています。
また、「大田区マンション第2号ファンド第1回」の場合、予定されていた運用期間は、1年6カ月間だったにも関わらず、期限前償還によって、わずか4カ月間で、運用は終了となっています。
例えば、投資家が、「府中市レジデンス素地第1号ファンド第1回」に、10万円を出資したとします。
募集の時点では、「府中市レジデンス素地第1号ファンド第1回」の予定利回りは5.0パーセント。
運用期間としては、1年2カ月間を予定していました。
このため、投資家としては、当ファンドに対し、
10万円×5.0パーセント×14カ月/12カ月=5,833円ほどの収益を期待していたこととなります。
これに対し、最終的な実現利回りは、7.5パーセントを記録。
ただし、運用期間自体は、わずか3カ月で終了、と相成りました。
このため、投資家が獲得できた収益は、
10万円×7.5パーセント×3カ月/12カ月=1,875円となります。
従来想定していた収益金(約5,833円)と比べると、最終的な実現収益が、極めて小さくなってしまっていることが、お分かりいただけるものと思います。
実現利回りが、予定利回りを、大きく上回ったとしても、同時に、実際の運用期間が、予定運用期間よりも遥かに短いものとなってしまえば、実現収益の絶対額が、予定収益額を下回ってしまうことがあり得る点について、放念してはなりません。
ソーシャルレンディングファンドの成功例検証まとめ
本記事におきましては、クラウドクレジット、及び、オーナーズブックの、満期償還済みファンドの実績を確認しながら、ソーシャルレンディングファンドの成功例について、検証を行わせて頂きました。
なお、本記事にて取り上げた各ファンドの成功例情報は、あくまでも、各ソーシャルレンディン事業者の公開情報に基づいて記述されています。
各ソーシャルレンディン事業者の記述・公開内容の真偽精査は致しておりませんので、あらかじめご留意ください。
また、各ファンドの満期償還実績は、あくまでも、過去号の実績を追跡した内容となっており、同一シリーズ・類似ファンドと言えども、同様の結果を得ることを予想・保証等致すものでは、決して、ございませんので、あらかじめ、十分にご留意ください。
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